それ以来、ネット・オークションや山梨県は無論、各地の骨董市、骨董店そして古書店を訪れ
る毎に、山梨県産の水晶製品とそれに関連するものに眼を光らせていた。
その結果、既に150本あまりの水晶印材と「櫛」、「かんざし」、「帯留」そして「壺」などが集ま
り、入手の経緯とコレクションを中心に「山梨県水晶細工【印材】のミニ歴史」についてHPに
何回か記載した。
2010年1月、甲府市で開催された骨董市をのぞくと、五重塔が浮かび上がって見える水晶製
五重塔が浮かび上がって見えるアイディアは、今でも山梨県の観光土産品にみられ、水晶
ハンコの町・六郷町(現市川三郷町)から来たという骨董商の話では、昨今の経済状況から、
最初、骨董店で見かけたとき
その後、各種のカタログを入手して、
「時計提印」は過去にも何個か入手したことがあり、すでにHPでも紹介した。
水晶印材の形が上から見ると
『反射板』と同じ仕掛けだ。
入手した3本の水晶印の大きさは
このアイディアは今でも山梨県の水晶土産品に引き継がれていて、高さ7cmくらいのも
こうして、水晶細工の技(わざ)が連綿と引き継がれているようだ。
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の「時計提印(とけいさげいん)」が3本並んでいたので、まとめて入手した。
細工の技(わざ)が連綿と引き継がれているようだ。
廃業・転業に追い込まれる印章店もあるようで、今が貴重な印章資料を入手できる最後の機
会なのかも知れない。
このようにしながら、山梨県の特産である水晶製品の加工・販売に関する資料をまとめて
現物と共に後世に伝えるのも、私の余生の生かし方だと思っている。
( 2010年1月入手 )
2. 「時計提(とけいさげ)印」とは
大正〜昭和期の水晶製品の通販カタログをみると、小ぶりの水晶印の上に紐を通す穴が明
いた「時計提印」と呼ばれるものがある。
見慣れない形なので、勝手に
形が似ている『銅鐸(どうたく)印』
と名付けていた。
「時計提印」、という正式な名前が
あることを知った。
↑
時計提印
【冨士屋水晶部カタログから引用】
( Seals made of Quartz from Yamanashi -Part 8- , Yamanashi Pref. )
3. 「五重塔 時計提印」
今回入手したものは、簡単な細工なのだが、正面から見ると五重塔が浮かび上がって見える
優れもので、巧みな創意工夫が感じられる。
正面 裏面
横筋が数本入っているだけ
「五重塔 時計提印」
光
”コーナー・キューブ”のような
三角形をしていて、正面から
入った光のほとんどが戻ってくる。
五重塔 時計提印 【印面】
マチマチで、山梨県産水晶が枯渇し
はじめた時期(明治末〜大正初)に
採掘した原石を最大限活用しようとした
意図が感じられる。
各種の五重塔 時計提印
4. おわりに
(1) 水晶細工の技の系譜
古い水晶細工品のカタログを見ると、五重塔が浮かび上がって見える水晶製品がある。
「五重塔」 水晶細工
【冨士屋水晶部カタログから引用】
のが5,000円前後で売られている。
以前、マレーシアの工場幹部が甲府を訪れたとき、お土産に差し上げたら、大喜びだった。
5.参考文献
1) 甲府停車場前冨士屋水晶部編:甲斐国名産水晶美術細工品畧(略)図,同社,
大正〜昭和
2) 山梨県水晶商工業協同組合編纂:水晶宝飾史,甲府商工会議所,昭和43年
3) 六郷町印章誌編さん委員会編:合併二十周年記念誌 六郷 第二部 六郷町印章誌
六郷町,昭和50年
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