茨城県ひたちなか市にある、最先端半導体工場から技術コンサルタントとして
試行錯誤を重ねながら、かつて山梨県の名産の1つであった、水晶印章の本当の姿に
『 甲府東方の塩山市竹森の草入水晶は、土地の人は薄(ススキ)入りと称し、日本
「山梨物産会社商報」の『珍品水晶印章』のページを「高級水晶印」のページと比較
4.2 草入水晶印のキャッチ・フレーズ
(1) 草入水晶印
4.3 草入水晶印の価値
この表にある価格は、「サック(印章入れ)」を含んでいるので、印章単体の
(1) 「草入水晶印」は茶水晶製と同じように、”珍品水晶印章”として、上等品でも
『 ススキ入りなどインクルージョンの入った印材は、商品価値がなく、”屑
(2) さらに、「山梨物産会社商報」のカタログを入手し、次のようなことが明らかに
@ 「草入水晶印」は、”珍品水晶印章”として、茶水晶のものと並んで、透明
(3) 試行錯誤を重ねながら、一歩一歩、かつて山梨県の名産の1つであった、水晶
(4) 骨董市から山梨に戻る途中、北関東のある都市の街角に「水晶印」の看板がある
招請され2006年7月に赴任した。
仕事が軌道に乗るまでは、『ハンマに封印』してという決意で赴任したが
最初の1週間の現状分析で、改善策提言の粗筋が読め、2週間目の週末には骨董市や
ミネラルウオッチングで産地を回る余裕も出てきた。
関西の石友たちの間では、『Mineralhuntersのことだから、ハンマの封印は
3ケ月持たないだろう』、と噂されていたらしいが、3ケ月どころか、3週間も
持たなかったことになる。
2006年7月、北関東の骨董市をのぞくと、「草(ススキ)入り水晶実印」があった
ので早速購入した。
以前入手した水晶印の通信販売カタログに、「草入水晶印」は、”珍品水晶印章”
として、茶水晶のものと並んで、透明水晶製の約2倍の価格であったと書かれていたが
氏名が彫られ、実際に使われたものを手にするのは初めてであった。
一歩一歩、近づきつつある、と感じている。
これからも資料を収集した結果をまとめて、現物とともに後世に残したいもの、と
思っている。
( 2006年7月入手 )
2. 草(ススキ)入り水晶実印
草入り水晶実印は、一目見て、山梨県塩山市(現甲州市)竹森の草(ススキ)入り
水晶を加工したものであることがわかった。
印面には、”林晋吾”と姓名が彫られ、実印として使われたものと想像される。
また、印面の周縁部には、”欠け”が見られ、長い間使いこまれたものであること
をうかがわせている。
ススキ入り水晶印39mm(1寸3分) 印面・長径12mm(4分)
3. 草入水晶
益富先生の「鉱物 −やさしい鉱物学−」の「草入水晶」の項に、次のように竹森の
ものが紹介されている。
では草入りの典型とされている。
この薄なるものは、実は電気石の針状結晶で、結晶が非常に細くなっているため
光を通し、褐色や緑色にみえる 』
4. 草入水晶印の価値
4.1 草入水晶印のカタログ
2006年に入手した水晶製品の通販カタログ「山梨物産会社商報」を読むと、「草入り
水晶印を『珍品水晶印章』としてPRしており、立派な商品であることが分かった。
して示す。
珍品水晶印章 高級水晶印
『珍品水晶印章』のタイトルのもと、次のようなキャッチ・フレーズがついて
いる。篆刻師の名前が載っているのは、紫水晶印と草入水晶印の2種類だけで
ある。
■ 茶水晶同値段
■ 篆刻師 宮澤 華城先生刀
■ 草入水晶は茶水晶共も天然に出来たる珍
品で立派なる品であります。下等品は時に
は地方へも行ますが上等品の御求めが難
事ですから當社へお申越下さい
「高級水晶印」とされる白(透明)水晶を使ったものと、「草入水晶印」のカタ
ログ価格を、今回購入した実印、長さ39mm(1寸3分)に近い長さ(丈:たけ)の
もので、比較してみる。
印 材 カタログ価格
(昭和8〜9年発行)現在の価格 備 考
白水晶 3円50銭 約 11,700 円
物価指数は
郵便料金の比較から
3,333倍とした草入水晶(上等品) 8円 約 26,700 円
草入水晶(優等品) 14円 約 46,700 円
カタログ価格とは単純に比較することはできない。
しかし、下表のように「サック」の価格は1円以下で、この表の価格はほぼ水晶
印材と篆刻料と考えられる。
材質 カタログ価格 備 考
ワニ皮 70銭
印伝 40銭
マブル 30銭
白(透明)水晶製の約2倍、優等品なら約4倍の価格であった。
(2) 価格差が大きくなっているのは、大きな「草入水晶」は、得難かった、
ことによるのだろう。
5.おわりに
(1) 今まで、骨董市などで入手した印材をみて、古い文献にもとずいた推測や一部の
水晶加工に携わる人々の意見を聞き、HPに継続的に記載している。
2006年3月に「ススキ入り水晶印」、そして今回「草入り実印」を入手して、以前
水晶”を使った商品見本として使われた 』 と書いたが、これは訂正する
必要がありそうだ、との認識をもつようになった。
なった。
水晶製の約2倍の価格であった。
印章の本当の姿に近づきつつある、と感じている。
これからも資料を収集した結果をまとめ、現物とともに、後世に残したいもの
と思っている。
のが目に入り、記念として撮影・記録した。
山梨の宝飾業者は、通信販売や出張所を設けたりして、全国各地に水晶製品を
売り込んだと記録されている。
それらの品物が、全国各地に残されているはずであり、これからも各地の骨董市
などで買い求めたいと考えている。
水晶印看板 拡大
6.参考文献
1)山梨物産会社編:山梨物産会社商報,同社,昭和8〜9年
2)山梨県水晶商工業協同組合編纂:水晶宝飾史,甲府商工会議所,昭和43年
3)益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−」,保育社,昭和60年