愛知県北部と岐阜県中津川市の水晶を訪ねて

愛知県北部と岐阜県中津川市の水晶を訪ねて

1.初めに

 私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた
人たちと採集会を開催するようになって、4年目を迎えた。
 年に何回か採集会を開催しているが、悩みの種は大勢のメンバーで
採集を楽しめる場所が年々減っていることである。
 苦しいときの「小川山」「甲武信鉱山」「水晶峠」頼みとなっている。
 これではならじと、最近では、各地のメンバーに”ご当地の鉱物産地”を
案内していただくスタイルも定着しつつある。
 次回の採集会の下見として、名古屋支部のSさん一家に案内して頂き
「愛知県津具村の白鳥山」と「岐阜県中津川市ちんの峠」での水晶採集を
楽しんだ。
 白鳥山では、10cmを越える単晶や紫水晶などを採集できたが
ちんの峠では名物の「南洋美人」の採集もメッキリ厳しくなっている。
 これらの情報を勘案し、来春以降の採集会を計画したいと考えている。
 案内いただいた、Sさん一家に厚く御礼申し上げます。
(2004年11月採集)

2.【第1日目】

 2.1 白鳥神社に集合
   退庁後すぐに帰宅し、採集用具を車に積み込み出発。甲府では雲が
  かかっているものの月が見えた。諏訪ICから中央道にのるころには、雨が
  降りだした。
   車中で妻が「茶花のどうだんつつじは漢字でどう書く?」と質問してきた。
  「”つつじ”は、HPにも書いた”躑躅”だろうが、”どうだん”は”どうなんだろ?”」
   正解がこの採集旅行の終わりに出るとは、知る由もなかった。
  駒ケ岳SAで夕食を摂り、ここで車中泊。0時を過ぎた頃には
  車の屋根を叩く雨音と強風で車体が揺れるので、まるで舟のようだった
  とは妻の弁。私は文字通り、”白河夜船”状態。
   5時過ぎに目を覚ますと、夜半の風雨が嘘のように星空が見える。
   飯田ICで高速を下り、「三州街道」を津具村に向かって走る。回りは
  紅葉が見ごろを過ぎて、冬景色となっている。
   集合予定よりはるかに早い7:30分頃白鳥神社前に到着。空は雲ひとつない
  「小春日和」で、”晴れ男”健在であった。
  程なくして、Sさん一家も到着。採集支度もあわただしく、出発。神社にお参りし
  産地を目指す。

 2.2 白鳥山の水晶
   白鳥山では2003年10月に採集会を開催し、「松茸水晶」や「5cmクラスの
  水晶」を採集した。Sさんの今までの最大記録は9cmとのことで、今回は
  ”10cmを越える水晶を採集する”が合言葉であった。

   採集するSさん一家

   Sさんが開拓したポイントで採集し始めてすぐに、「このあたりが良さそう」と
  場所を譲ってくれたところで、私が最大10cmを筆頭に10本近い単晶を採集した。

【後日談】

   Sさんが採集して妻にくれた粘土に覆われた群晶をその日の宿中津川市「高峰山荘」で
  洗って見ると、ほとんどが頭付きの素晴らしい群晶で、最高の”酒の肴”であった。

     
     単晶【最大10cm】        群晶【横20cm】
                 白鳥山産水晶

   やがて、Sさんの奥さんが、12cmの単晶を採集し、今までの記録を
  あっさりと塗り替えてしまった。さらに、10cmの両錐を採集するなど
  Sさんの奥さん”エヘン”の日であった。
   息子のY君によれば、『紫に見える』とのこと。
   この近くでは、Sさんの奥さんが紫水晶を採集したことがあるので、その
  あたりでそれらしいものをいくつか採集した。

【後日談】

   ここの紫水晶も小川山のものと同様に、太陽光の下では白く見えるが、蛍光灯の
  下では紫色に見えることが分かった。

   紫水晶

 2.3 白鳥山頂を目指せ!!
    今まで、白鳥山に来ても山頂を極めたことがなかったので、Sさんに案内して
   いただいた。登山道が整備されており、山頂(標高968m)からは茶臼山をはじめ
   奥三河の山々が見渡せた。

   山頂にて

 2.4 中津川市鉱物博物館見学
    下山したのが14時近くで、今夜の宿中津川市「高峰山荘」に向かう。一旦長野県側の
   根羽村に出て、稲武町、恵那市を経て中津川市に入る。「高峰山荘」と目と鼻の先にある
   中津川市鉱物博物館で「石川地方の鉱物展」をやっていると思い、入館したが、11月7日で
   終わってしまったと聞かされたが後の祭り。
    常設展示を見て回る。

   中津川市鉱物博物館

    企画展の展示図録を3部購入し、1部をSさんの息子Y君にプレゼント。

 2.5 「高峰山荘」の夜は更けて

  (1)先ずは採集品を洗う
     中津川市鉱物博物館の近くにこのような施設があるとは知らなかった。何でも
    地元の森林組合の建てた施設とのことで、木材をふんだんに使っている。私の妻が
    感激したのは、木枠の浴槽で、温めのお湯でジックリ疲れを癒したとか。
     その間、採集旅行で恒例(?)となっているこの日の品評会に備えてこの日の採集品を
    廊下の洗面場で洗っていると、通りかかる人毎に

    『何やっているんですか?』
    『何処で採ったのですか?』
    『水晶と言えば山梨県と思っていたのですが、愛知県でも水晶が採れるのですか?』

    などなど、質問に答えるのに忙しい。
     水晶は、誰にとっても関心を呼び起こす鉱物のようです。

  (2)一足早い忘年会
     夕食の時間となり、大広間で食べる。先ずは、ビールで乾杯だ!!

   ビールで乾杯!!

     できたて、熱々の料理が次々と運ばれ、”熱燗”のお銚子も次々と倒れていく。
    〆は、眼の前で炊く”釜飯”で、タップリお茶碗3杯分はあったが、全部平らげた。

  (3)品評会
     夕食後、部屋に戻り、この日の採集品を見ていただく。最大10cmの単晶はじめ
    頭付きの単晶が10本も並ぶと圧巻。群晶も洗ってみると、ほとんどが頭付きの良品
     泡盛を飲みながら、夜は更けていく。

3.【第2日目】

 3.1 「朝飯前の採集会」はお休み
    採集会恒例となっている「朝飯前の採集会」であるが、朝起きたのが7時近くであり
   この日は当然中止
    外に出てみると、車の周りは氷に覆われている。東に見える恵那山からは東雲を透かして
   日の出が見られた。「高峰湖」の湖面からは、靄が立ち上り、この朝の冷え込みを現わして
   いる。

     
     恵那山の日の出            早朝の高峰湖
               高峰山荘の朝

 3.2 林道脇の晶洞
    静岡県のY氏が話していた、ちんの峠(鎮野峠)の林道脇を掘り込んだ晶洞があるという
   ので訪れた。直径2mはあろうかという晶洞で、訪れる人が多いのかペグマタイト部分は
   残り少なくなっている。
    それでも、モンモリロナイト化した長石の中やその境目には、頭付きの煙水晶が隠れている。
   それらをSさんの息子のY君と掻き採り、晶洞の外で妻が選別する。短時間で頭付きの
   煙(黒)水晶をいくつか採集できた。

   ちんの峠晶洞前で

 3.3 ”南洋美人”に再会!!
    ちんの峠の水晶産地として有名な場所に案内していただいた。

   (1)産地A
      一番手前の産地で、大きな坑道跡の前にズリが広がっている。1cm以下の小さな
     透明水晶が朝日を浴びて”キラキラ”光り、初心者向けの産地と思いきや玄人好みの
     2〜3cmの”茶水晶”もあり、油断がならない。

   (2)産地B
      ”南洋美人”と呼ばれる「真っ白い長石(?)の結晶」が内包された煙(黒)水晶が
      採集できるズリで、表面には水晶はほとんど見られないほどに採集し尽されている。
      それでも、ズリを丹念に掘ると、先人の見落としと思われる頭付きの”南洋美人”が
      あった。
       また、「山入り水晶」も採集できる。

        
        採集風景             南洋美人            山入り
                         ちんの峠

   (3)産地C
       Sさんが新たに開拓した産地である。透明〜黒水晶の単晶、群晶が採集できた。試掘的な
      場所なのか、ズリの量は多くなく、今回限りの産地となってしまった。

 3.4 イザ帰りなん
    何時までも離れがたい産地ではあるが、次の日私は仕事、妻はお茶会の当番があり
   いつもながら後ろ髪を引かれる想いで、Sさん一家とお別れした。
    中津川には、「満天星(どうだん)・一休」という和菓子屋さんがあり、名物の「金鍔」を
   お茶会のお菓子として購入。

   「満天星(どうだん)・一休」

4.おわりに

(1)2004年11月の採集品として「白鳥山の10cm超単晶」を掲載したところ早速多くの石友から
   場所を教えて、とのメールが入った。
   来春の採集会のお楽しみです。

(2)「南洋美人」はSさんの奥さんがちんの峠で水晶を採集していたときに会った私と同年輩の
   オジサンから次のような歌と共に教えていただいたとのこと。

   ”♪♪ 私のラバさん 酋長の娘 色は黒いが南洋じゃ 美人 ♪♪”

    昔、英語の先生からこの歌はおかしい、と聞いたことを思い出しています。

   『この歌は、歌詞からすると男性が自分の”恋人?”を歌っているものだ。
    男性が恋人を呼ぶ場合、"Sweet Heart"であって、”Lover"(ラバさん)ではない』

    と言うものでした。

    改めて和英辞書を引いてみると、その通りです。でも、”ラバさん”だからこそ
    歌詞としてシックリしているのでしょう。

5.参考文献

1)柴田 秀賢:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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