奈良県天川村白倉谷の灰鉄ザクロ石

奈良県天川村白倉谷の灰鉄ザクロ石

1.初めに

  私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた奈良県のAさん主催で
「川迫(こうせ/こうせい)鉱山」を2004年4月に案内していただいた。
  産地への道すがら、「白倉谷」があるのに気付き、10年近く前、愛知県の石友・KDさんに
 いただき、鉱物同志会のバザーでも購入した『白倉谷産の巨大な灰鉄ザクロ石』を採集したく
 なった。
  奈良県のAさんに案内をお願いしたところ、未だ行ったことがないので、調べておきます
 との事であった。
  やがて、次のような朗報がAさんから届いた。

  『奈良県鉱物界の泰斗・Oさんに白倉谷のざくろ石産地に案内して頂く途中で休憩した。
   Aさんが、足元に落ちている”キラリ”と光る石を採り上げたら、紛れもない灰鉄柘榴石で
   その大きさは、半端でなかった。
   本来の白倉谷産地はそっちのけで、その辺を掘り返したところ、ソフトボール大の柘榴石
   も出てきた。』

   それから2週間後、Aさん親子に、この新産地を案内して頂き、巨大な灰鉄柘榴石とレインボー
  柘榴石を採集することができた。
  案内していただいたAさんと息子のT君に厚く御礼申し上げます。
 (2004年5月採集)

2. 産地

   天川(てんかわ)村の新宮川(川迫川)に沿った幅の狭い道を上流に向かうと、左から
  「白倉谷」が流れ込んでいる。

   白倉谷脇で記念写真

   ここから、急斜面を登り、尾根近くの産地に着いたのは、1時間30分後でした。

   産地で記念写真

3. 産状と採集方法

   ここは、植林された桧林で、表面にはズリ石らしいものも殆んど見られず、鉱山跡の様には
  思われませんが、ワイヤーロープなどの切れ端が落ちているのが、鉱業用だったのか林業用だった
  のか、推理は止まるところを知りません。
   ここでは、表土の下にある、露頭が崩落したガレを掘り返して採集します。場所によって
  ”ザラザラ”と”ピカピカ”の柘榴石があるようです。

   採集風景

4. 採集鉱物

  ここで採集できるのは、灰鉄ザクロ石だけです。
(1)灰鉄ザクロ石【Andradite:Ca3Fe2(SiO4)3】
    ”ザラザラ”と”ピカピカ”の2通りあり、圧倒的に”ザラザラ”が多い。
   大きなものは、5cmを越え、日本離れした巨大さです。

     
        ”ピカピカ”           ”ザラザラ”
                 灰鉄ザクロ石

(2)レインボー柘榴石【"Rainbow" Andradite:Ca3Fe2(SiO4)3】
    灰鉄ザクロ石の一部に、赤〜緑の遊色を示すものもあります。これを”レインボー
   柘榴石と呼ぶ人たちがいます。この遊色の原因が、単なるひび割れなのか、結晶粒界の
   隙間なのか判断しかねています。

   レインボー柘榴石

5. おわりに

(1)10年前から訪れたかった「白倉谷の柘榴石」産地を訪れることができた。
   新産地として発見され、僅か2週間目であったが、既に大勢の人たちが訪れた様子であった。
   ある人は、前回、四十数キロの柘榴石を採集したと聞き、暗然たる気分になった。
   鉱物情報の伝達の速さと、その採集振りの凄まじさに、驚いています。
(2)レインボーの原因は、ひび割れか、結晶粒界の隙間かは別として、境界面での光の反射に
   起因しています。
   水溜りに”油滴”が落ち、それが広がるときに虹色を示す現象と同じです。
   油膜の厚さ(レインボー柘榴石では、隙間)dが、nλ(n:自然数,λ:波長)の関係に
   なったとき、入射光と隙間での反射光が強めあって干渉色を示す、と昔物理で習ったことを
   思い出しています。
(3)川迫鉱山がはじめての長野県・IさんをAさんが案内するとの事で、私も同行したところ
   先客がいた。
   滋賀県・Oさんで、私のHPの愛読者とのことである。自著の「滋賀県鉱物目録」をいただき
   厚く感謝しています。

   川迫鉱山Aさん親子

6. 参考文献

1)山田 滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
2)岡田 久:滋賀県鉱物目録,橋本印刷,1987年
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