石川県恋路海岸のセラドン石

       石川県恋路海岸のセラドン石

1. 初めに

 『2004年 鉱物採集納め -Part2- 能登・加賀の鉱物』のページを読まれた、千葉の石友
Mさんから次のようなご質問のメールをいただいた。

『嘗て『静岡県河津町やんだの沸石採集』の記事を拝読致しました、『やんだ』では
モルデン沸石に共生するセラドン石を沢山確認されたと思いますが、『恋路海岸の緑色霰石』
とは『セラドン石が霞石に含まれた物』の事でしょうか?』

 不肖私は、"セラドン石"なるものを知らなかった。

 今になって思うと、恋路海岸で採集していたときに、Nさん夫妻が盛んに『セラドン石、
セラドン石』と言っていた気がする。
 改めて、文献を調べ、標本を見直してみた。この時期は、産地のほとんどが雪、氷に覆われ
今まで採集した標本や新しい産地について調査する貴重な時期だと考えています。
(2005年2月調査)

2. セラドン石とは

 松原先生の「日本産鉱物種」を改めて調べてみると、セラドン石とは次のような鉱物である。

 セラドン石【Celadonite:K(Mg,Fe2+)(Fe3+,AL)Si4O10(OH)2】
 単斜晶系で、霰石が産する小さな楕円体の晶洞内壁を覆っている"緑色・皮膜状"の鉱物らしい。

     セラドン石

3. セラドン石と緑霰石

 霰石は、セラドン石の上に生成しており、セラドン石の生成が終わってから霰石は成長したと
考えられる。 霰石の化学式は方解石と同じ、【CaCO3】であり、セラドン石との間に目に見える
化学成分のやりとりがあったとは考え難い。
 緑色に見える霰石ができた原因は、次のいずれかであろうと考えた。
(1) 既にできあがっていたセラドン石との間で、微量の元素のやりとりがあった。
(2) 霰石の生成が終わった後に、再びセラドン石が生成し、霰石の表面を薄く覆った。
(3)霰石を生成する過程で、セラドン石の残液(成分)を取り込んだ。
   白やピンク色の霰石のほとんどが空洞を完全に充満する形で産するのに、緑色の霰石は
   空洞の一部にしか結晶していないことに何か理由があるのかも知れません。

     セラドン石と緑霰石

4. おわりに

(1)HPの愛読者の質問をキッカケに、今まで一顧だにしなかった、”セラドン石”を調べてみた。
   結論としては、あまりよく分からなかったが、「綺麗な鉱物」「立派な結晶」だけでなく
   地味な鉱物を見直す契機とはなった。
   Mさんに、厚く御礼申し上げます。

5. 参考文献

1)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,1992年
2)草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
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