翌日、福井県福井市の赤谷鉱山を訪れ、素晴らしい「メタ輝安鉱」などこの産地を代表する鉱
物を一通り採集し、産地を後にしたのはまだお昼前だった。
・ 福井県赤谷町赤谷鉱山 2015年秋
( Current information of Akadani Mine , Fall 2015 , Fukui Pref. )
この後どうしようか迷ったが、いつものように自然と中龍鉱山仙翁坑に車は向かっていた。
( 2015年9月採集 )
・ 岐阜県五加(ごか)鉱山の2次鉱物
( Secondary Minerals from Goka Mine , Gifu Pref. )
・ 2013年10月 北関東ミネラル・ウオッチング
( Mineral Watching in Northern Kanto Area , Oct. 2013 )
この産地の「水鉛鉛鉱」の産出状況として、次の2つのタイプがある。
@ 異極鉱の上に生成したもの
この場合、「モリブデン鉛鉱」の上を「異極鉱」が覆っており、生成の順序が「異極鉱」
→「水鉛鉛鉱」→「異極鉱」だったことを暗示している。
白い異極鉱がついた鉱石を片っ端からルーペで覗きながら探すと良いだろう。また、ズリ石
をハンマで叩いて割ると、「異極鉱」で覆われた晶洞の中に発見することもある。
A 閃亜鉛鉱や方鉛鉱の塊を覆う茶褐色の”ヤケ”の上や晶洞の中に生成したもの。
ズリ石の表面を舐めるように見回し、太陽光で「モリブデン鉛鉱」の結晶が”キラリ”と光る
のを見逃さないようにする。
各産地の標本を手にして比べてみると、やはりここ「仙翁坑」のものが日本一で、今回発見し
たものは、晶洞の中の純白の異極鉱の上に生成したものなので文句なしに『お気に入りの逸品』
だ。
(2) 方硫カドミウム鉱【HAWLEYITE:CdS】
閃亜鉛鉱の中に、副成分として含まれるカドミウム(Cd)が、鉱床の露頭付近やズリで雨水の
作用を受けて2次鉱物として生成したものである。
「硫カドミウム鉱【GREENOCKITE:CdS】」ろ組成(化学式)は同じだが、方硫カドミウム鉱は
「等軸晶」なのに対して、硫カドミウム鉱は「六方晶系」と結晶系が違う、『同質異像』関係にあ
る。両者は共存する場合もあり、鉄(Fe)を含む真っ黒い閃亜鉛鉱、いわゆる「鉄閃亜鉛鉱」に
伴うことが多い。
絵の具としても使われる、鮮やかな黄色”カドミウム・イエロー”の粉状や皮膜状で産する。
しかし、カドミウムは”イタイイタイ病”鉱害の元凶でもある。
5. おわりに
初めて通る道なので、崖崩れなどで途中から引き返すことになるのではと一抹の不安はあったが
「通行止」の表示もないし、ごくまれだが対向車も来るので大丈夫だろうと進む。道が狭くなり
対向車が来たらすれ違う場所を探さねばならないくらいだ。笹生川湖を通り過ぎ、「伊勢峠
(767m)」を越えると下り坂だ。
九頭竜湖が見えるようになると、見たことのある雰囲気で、面谷橋の西を南に入れば、「面谷
鉱山」だ。ここまで1時間と少しだから、所要時間はどちらを回っても同じようなものだが、新しい
ルートを開拓したのは気持ちいいものだ。
最近、骨董市で「面谷鉱山」にちなむ品を何点か入手したので、鉱山の近況を写真に撮って
おきたかったのだが、薄暗くなり始めていたので断念した。
( 仮に撮ってきたとしても、PCのHDDが壊れてしまったので、データが消えてしまったので結果は
同じだった。)
6. 参考文献