秩父鉱山石灰沢の鉱物

秩父鉱山石灰沢の鉱物

1.初めに

7月に多量の雨を伴った台風の後、東京の石友・Mさんから秩父鉱山が面白いから
ご一緒しましょうとの誘いを頂いていた。しかし、お盆の帰省や何やかやが重なり
私の都合で延び延びになっていたがようやく一段落し、石灰沢を案内していただいた。
秩父鉱山はスカルン鉱床であるが、元素鉱物の自然金から新鉱物の「水酸エレスタド石」まで
幅広く各種の鉱物が採集できることで知られている。
石灰沢では、数年前に集中豪雨の後、スピネルが採集できるとブームになったことがあります。
今回、「水酸エレスタド石」をはじめ、「ベスブ石」など主要なスカルン鉱物を採集でき
秋の採集会の候補地の1つです。
案内していただいたMさんに感謝します。
(2002年8月採集)

2.産地

八丁トンネルに向かって走り、雁掛トンネルを抜けると、日窒工業株式会社の採掘・選鉱場が
みえる。秩父鉱山簡易郵便局や鉱員社宅などが密集しているところを抜け、「赤岩橋」を渡って
大きく右に曲がると右手に日窒工業の付属施設と思われる建物があり、その手前に駐車する。
川の反対岸に砂防ダムのある沢が流れ込んでいる。これが石灰沢です。
石灰沢

3.産状と採集方法

沢の中には、スカルン塊が落ちているのでこれを割って採集します。また、沢の壁面には
スカルンの露頭もあり、ここからも採集できます。
石灰沢の産地

4.産出鉱物

(1)水酸エレスタド石【Hydroxylellestadite:Ca10(SiO4)3(SO4)3(OH,F)2】
秩父鉱山で発見された新鉱物で、埼玉県から発見された最初の新鉱物です。新鮮な
水酸エレスタド石は淡紫色半透明でガラス光沢を示しますが、風化すると表面に
石膏を主成分とする皮膜ができ、光沢を失い、ザラザラした感じになります。
感じとして「モンブラ石」を思わせます。
水酸エレスタド石【中央淡紫色部】
(2)ベスブ石【Vesuvianite:Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(si2O7)4】
ベスブ石はスカルン帯に普通に産出しますが、秩父鉱山では黄褐色で小さな結晶のものは
灰バン柘榴石と見分けがつかない形で産出する。
かつて、5cmの巨晶も産出しましたが、今回採集できたのは最大3cmで
大きなものはクラック(ひび)で割れやすく、方解石に埋もれた小さな結晶の方が美しい。
ベスブ石【30mm】
(3)灰ばん柘榴石【Grossular:Ca3Al2(SiO4)3】
黄緑色〜黄褐色で12面体もしくは24面体で産出する。方解石に埋もれていたものが
雨水で方解石が溶け結晶が浮き出てきたものは形も完全で美しい。
灰ばん柘榴石

5.おわりに

(1)石灰沢では、スピネル、ザンソフィル石などが報告されており、引き続き
挑戦したいと思います。
(2)現在日窒工業株式会社の施設が集中している場所が旧秩父鉱山の中心地で
秩父市の市街地から遠く離れてここで働く人たちが不便を感じないよう、鉱山町特有の
売店をはじめ郵便局まで整っていました。
「秩父鉱山簡易郵便局」で記念の押印をと思ったのですが、休日だったのでだめでした。
鉱員住宅は空家が多いように見受けられ、この局が今も開いているのか確認しています。
秩父鉱山簡易郵便局

6.参考文献

1)宮島宏著:日本の新鉱物 1934-2000,フォッサマグナミュージアム,2001年
2)加藤昭、松原聡:鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて,築地書館,1982年
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