岐阜県中津川市関戸川の希元素鉱物とトパーズ

岐阜県中津川市関戸川の希元素鉱物とトパーズ

1.初めに

兵庫県のNさんと奈良県のAさんが関戸川でバッタリ出会って、共に
トパーズの良品を採集したとの情報をメールで頂いた。
2002年7月に、ここで採集会を開催し、そこそこの収穫があった。これに味を
しめた人も、不満足だった人も、その後独自に行かれたようです。
採集会の後の産地の変化の確認もあり、京都紅葉観光・奈良鉱物採集旅行の
帰途立ち寄ってみた。
旧川床が7月の時よりやや広い範囲で、掘り込まれてはいるものの
竹森、乙女のように立ち木が倒されるようなことは全くなく、一安心しました。
関戸川【2002年11月】
今回
@フルイ掛けによるトパーズ、水晶採集
Aパンニングによる希元素鉱物などの重鉱の採集
を行い、頭付きトパーズやゼノタイムなどが採集できた。
(2002年11月採集)

2.産地

中津川市苗木から国道256号線で北に向かうと「関戸」のバス停が
左側にある。
反対側にやや上りになった道があり、ここを入り、ものの20mも行くと
右に下る道がある。この道はやがて急坂を登るようになり、道なりに行くと
平坦になり、関戸川に掛かる「関戸川橋?」がある。ここまで、関戸の
バス停から700m位でしょう。
この橋から上流にある橋の間の川と昔の川床が産地です。

3.産状と採集方法

花崗岩ペグマタイトにあったトパーズ、水晶などが花崗岩の風化・崩落で
川に流され堆積した1種の漂砂鉱床と考えられます。
産地の関戸川は、サラサラと水が流れる小川で、その模式図は和田峠の
満バン柘榴石が採れた和田川と同じです。ただひとつ違うのは、川底が
硬い花崗岩で、その上に積もった土砂や花崗岩の窪みの中にトパーズなどが
眠っています。
川底は何度も採集されているため、今は河川敷となっている昔の川床の方が
良品を採集できる可能性が高いでしょう。

関戸川模式図

(1)フルイ掛け採集
ここでは、スコップで土砂を堀り起し、フルイに入れ、川の中で篩って探すので
鉱物採集につきもののハンマは全く不要です。
フルイ掛け
(2)パンニングによる採集
比重が大きい”重鉱”とよばれる錫石や希元素鉱物はパンニングで採集します。
フルイの目から落ちた土砂をスコップで掬い、パンニング皿に入れ
水の中で揺り動かすと、比重の軽い石英、長石などが流れ去り、”重鉱”
だけがパンニング皿の底に残ります。
(こう書くと簡単そうですが、慣れるまで経験が必要です。)
パンニング

4.産出鉱物

(1)トパーズ(黄玉);【Topaz:Al2SiO4(F,OH)2】
ここでは、柱状結晶と空隙を埋めるような形で出来たと思われる脈状の
2通りの形態があり、両方採集できました。

     頭付き結晶        脈状
          トパーズ2態
(2)水晶【Rock Crystal:SiO2】
今回、どういう訳かトパーズよりも水晶が多産するポイントに当ってしまい
川ずれしているものがほとんどですが、両錐を初め、各種の水晶が採集できました。
@山入り水晶【Phantom Quartz:SiO2】
煙水晶の頭の部分に、”チョコン”と透明水晶の冠を被ったような
山入り水晶です。
数年前、高峰湖堰堤の改修のときに湖底から産出したものや、田原のある
採石場から出たものと同じ形態です。
山入り水晶
A巨大水晶【RockCrystal:SiO2】
川擦れしていますが、頭付きの大きな水晶が何本か採集できた。
大水晶
B透明水晶【RockCrystal:SiO2】
珍しく、川擦れしていない、ピカピカ水晶が採集できた。ペグマタイトの
崩落は、現在でも続いているという証左でしょう。
ピカピカ水晶
(3)錫石【Cassiterite:SnO2】
真っ黒〜黄褐色半透明までの結晶で産出する。鉱山として稼行した木積沢に
比べると量が少なく、結晶粒も小さい。
錫石
(4)ゼノタイム【Xenotime:YPO4】
ゼノタイムは、リンとイットリウムからなるので、燐酸イットリウム鉱と
呼ばれることもある。ゼノタイムは”算盤玉”状の結晶であるが
ゼノタイムとジルコンは同じ構造のため、平行連晶をなし易く
この標本もその一つと思われる。

   関戸川産ゼノタイム     ゼノタイムとジルコンの双晶【日本の鉱物より引用】

5.おわりに

(1)今回は、皆さんのフルイ残しのパンニングをやってみました。
ブラジルでは、このようにパンニングして鉱物や宝石を採集する労働者を
ポルトガル語で”ガリンペイロ”(Garinpeiro)と呼び、もともとは、金や
ダイヤモンドを探す山師を指したようですが、転じて無許可で採掘する人も
意味するようになったようです。
千葉県の石友のTさんが、外国人に”私の趣味は、ガリンペイロだ”と
自己紹介したら、相手が目を丸くしていたと言う話を思い出しました。
ブラジルの職業切手シリーズに”ガリンペイロ”を描いた一枚があります。
Tさんにお渡しするのを楽しみにしています。
ガリンペイロを描く切手

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-
    築地書館,1982年
2)益富地学会館編:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)浜口乃二雄・佐野泰彦編:ポルトガル語小辞典,大学書林,昭和49年
inserted by FC2 system