七尾市佐野の黄鉄鉱

         石川県七尾市佐野の黄鉄鉱

1. 初めに

  石川県の石友・Yさんがわれわれの採集会に参加してくれる度に、恒例となっている
 「標本玉手箱」や「オークション」に、地元石川県産の良品を数多く提供して頂いている。
  2005年3月に愛知県で開催した『2005年春休み鉱物採集の旅』のオークションに
 「七尾市の黄鉄鉱」を提供して頂いたところ、「黄鉄鉱」というありふれた鉱物でありながら
 ”キラキラ”と輝く美しさと、珪化木(亜炭?)の上に晶出するという、珍しい産状もあって
 高い人気で、目聡い滋賀県のOさんが落札したと記憶している。
  是非産地を訪れてみたいと思っていたところ、Yさんから案内していただけるとのことで
 2つ返事で、お願いした。
  産地は、鉱物が採集できるとは思えない、Yさん以外誰も採集したことがない新産地で
 表面採集のみで、黄鉄鉱結晶の群晶をはじめ、玉髄、珪化木などを採集できた。
  案内していただいた、Yさんに厚く御礼を申し上げます。
  (2005年7月採集)

2. 産地

   七尾市の南東、「佐野」にある、土砂の堆積場が産地です。したがって、もともとの産地は
  違った場所だと思います。

     佐野

3. 産状と採集方法

    廃棄土と思われる土砂の中に黄鉄鉱をはじめ各種の鉱物が埋もれています。雨上がりには
   それらが地表に姿を現しています。広い産地をくまなく見て回る”表面採集”です。

     黄鉄鉱の産状【撮影:滋賀・Oさん】

4. 採集鉱物

 (1)黄鉄鉱【Pyrite:FeS2】
     珪化木(亜炭?)の上やそれらを置換したような形で、六面体や五角十二面体の
    集合体として団塊状に晶出していて、ひとつ1つの結晶の大きさは最大でも1cm以下
    である。
     磁硫鉄鉱と思われる六角板状の結晶が積み重なったものや、鍾乳石状になった
    白鉄鉱を思わせるものなどもある。

         
    黄鉄鉱【珪化木の上に晶出】          白鉄鉱(?)
                     黄鉄鉱

 (2)玉髄【Chalcedony:SiO2】
     白色、半透明で、半球が多数集合した仏頭状(腎臓状?)をなしたものと
    層状のものがあり、層状のものの空隙(すきま)には、不完全で小さな水晶も
    見られる。

     玉髄【仏頭状/腎臓状】

 (3)針鉄鉱【Goethite:FeOOH】
     黄鉄鉱の鉄分が溶け、再び母岩に付着し、赤褐色〜黄色〜黒色の球状集合をなす
    針鉄鉱も採集できたが、量的には多くない。
     また、カッパー・ピッチあるいはピッチ・カッパーと俗称される褐色〜黒色、透明〜半透明
    ガラス光沢の物質(鉱物かはどうかは疑問視されている)も見られる。

     針鉄鉱【球状集合体】

 (4)輝沸石【Heulandite:Ca(Al2Si7O18)・6H2O】
     青緑色の”セラドン石”と思われる鉱物が付着した母岩の気孔部分に、セラドン石に
    一部覆われるように、六角板状、ガラス光沢、透明結晶が重なり合った形で産する。
    同じような、ガラス光沢、透明結晶だが菱面体をなす、方解石の自形結晶も産する。

     輝沸石【セラドン石を伴う】

5. おわりに

(1)「七尾市佐野」は、今までどの文献や採集記事にも見かけなかったYさんが開拓してくれた
   新産地です。
    この新産地で、目玉の”ピカピカの黄鉄鉱”を初め、大文豪”ゲーテ”の名を冠する
   「針鉄鉱」など各種の鉱物を採集できた。
    1つ1つの鉱物は、ごくありふれたものだが、貝化石も一部に見られるなどの産出状況を
   総合すると、比較的浅い淡水湖で生成されたものではないか、と考えられる。
    遠い昔、この辺りがどのような風景だったのかに思いを馳せると、しばし暑さを忘れます。
    案内していただいたYさんに、厚く御礼申し上げます。

 (2)現地は、造成地のように整地されていますので、女性や子どもたちでも簡単に採集を
   楽しむことができます。
   ”掘ったり、崩したりしない”で、いつまでも楽しめる産地にしたいものです。

6.参考文献

1)益富 寿之助:鉱物,保育社,昭和60年
2)草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
3)加藤 昭:二次鉱物読本,関東鉱物同好会,2000年
4)加藤 昭:沸石読本,関東鉱物同好会,1997年
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