湯之奥金山博物館 - 2017年砂金掘り大会 -














              湯之奥金山博物館
            - 2017年砂金掘り大会 -
 

               ( THE Yu-No-Oku MUSEUM OF GOLD MINING HISTORY
                GOLD Panning Championship 2017 , Yamanashi Pref. )

1. はじめに

    2017年6月、山梨県身延町(旧下部町)にある湯之奥金山博物館から送られてきた会報で、今年も恒例の
   砂金掘り大会が7月29日(土曜日)に開催されると知ってはいたが、『老老介護』の忙しさに追われて申し込み
   するのをスッカリ忘れていた。
    湯之奥金山博物館の学芸員・小松さんからメールをいただいて、例年のように競技者として参加させていただくと
   同時に、ボランティアとして競技結果の集計をお手伝いできることを伝えた。

    湯之奥金山博物館では、年間を通して、いろいろな催しを企画していて好評だ。夏休みに開催する行事の1つ
   に、2001年に始まり、今年で17回目を迎えた「砂金掘り大会」がある。

    「砂金掘り大会」は、世界大会も開催されるほどで、外国では人気の高い趣味(スポーツ?)だ。小松学芸員
   は、国際大会で世界チャンピオンになっている事からも解るように、湯之奥金山博物館主催のこの大会のレベルは
   高い。

    私が7時前に博物館に着くと、7時からのNHK「おはよう日本」の生中継の準備の最中で、この後ももう一度生
   中継があるなど、大忙しの様子だった。

      
                   地元・峡南高校生が出演してのNHK生中継

    2014年から一般の砂金掘り大会と高校・大学対抗『砂金掘り甲子園』とを2日に分けて開催することにしたので、
   一般の砂金掘り大会参加者は減るだろうと予想したのだが、減るどころか今年も200名近かった。どうやら、高校
   生たちは前日に大会の雰囲気を経験し、本番に臨もうということらしく、一校がそうすると他校もそれにならったよう
   だ。
    ( 関西地区から参加する高校生は当然宿泊することになり、この大会は地元経済にも貢献しているはずだ。)

    私は、博物館応援団の団員でもあり、ボランティア+競技者として第3回から欠かさず参加している。今年も、
   PCを使った競技結果の記録・集計と順位決定のボランティアと男女一般の部の競技者として参加した。
   ( 参加費用 500円、小中学生 300円 )

    楽しい1日を過ごさせて頂き、出月館長、小松学芸員はじめ湯之奥金山博物館の関係者に深く感謝している。
   ( 2017年7月 体験 )

2. 「砂金掘り大会」のルール

    砂金掘り大会は、主催者が砂の中に隠した砂金を、”早く”しかも”見逃しなく、正確に”パンニングする
   技を競う。
    湯之奥金山博物館の砂金掘り大会のルールは、基本的に「国際ルール」に従い、第17回は、次の通りである。

    (1) 種目
 部  門
(参加資格)
砂の量
  (kg)
制限時間
  (分)
使用するパンニング皿
ジュニア
(小学生〜中学生)
6 10 博物館で準備した皿
(プラスチックパン)を全員使用内
男女一般
(高校生以上の男女)
10 10
男女一般決勝戦
(男女一般の部上位20名)
16 15 博物館で準備した皿
(スチールパン)を全員使用
頂上決戦
(ジュニアと男女一般の部の優勝者)
87 博物館で準備した皿
Myパンニング皿
(事前申し込み20名)
7 10 参加者が使っているMyパンニング皿
規格サイズ:40×40×15センチ以内
ひょうたんからコマ?
(定員先着30名)
3ひょうたんを二つ割りしたもの

    (2) 砂金の数:競技終了まで秘密(部門別だけでなく、2017年から競技順に違えるようになり、今回は下表
       の通り)

    (3) 順位の決め方:
      @ 館長の「3、2、1、ピー!」という笛の合図から、競技者が砂金回収ビンにフタをして手をタイマーの
        スイッチを押すまでのまでの時間(分)
         + 【見逃し砂金数×3分】 の総合時間が短いほうが上位

      【例】

       Aさん:9分で全部見つけた   総合タイム=9分 +(0×3)= 9分
            (見逃し 0ケ---「パーフェクト」
       Bさん:7分で1ケ見逃した    総合タイム=7分 +(1×3)= 10分

       この場合、総合タイムが短い、Aさんが上位になる。

       実際の競技では、下の競技結果からもわかるように、秒単位の争いになることもある。

      A 制限時間(10分もしくは15分)以内に終了しなかった人は、” Time Over ” で、
        最下位。
        最近は参加者も慣れてきたせいか、制限時間ジャストで終了する人もいる。

3. 『 第17回 砂金掘り大会 −2017− 』

 (1) 模範演技とルール説明
      競技開始に先立ち、博物館応援団団員2名による模範演技を通して、小松学芸員から競技ルールの説明
     があった。”ボケ”と”突っ込み”漫才コンビのような2人の演技では、「こぼした砂を拾う」、「落とした砂金粒を
     ビンに入れる」、「船の中の砂をもう一度パンニングする」などの違反行為を次々と演じてくれ、特に初めて参加
     する人には判り易かったのではないだろうか。

      2011年から、「電光掲示板」が導入され、競技の残り時間が一目でわかるようになり、ペース配分に役立つ
     ようになった。
      ( もっとも、私に限っては、「電光掲示板」を見る余裕はなかった、というのが正確かもしれない。 )

         
             模範演技とルール説明                   「電光掲示板」

 (2) 集計のボランティア活動

    私は、今回もテントの中の「集計」席で、競技者別にタイムと採取した砂金の数をPCのEXCELシートに入力し、
   総合タイムの短い順にソート(並べ替え)して”仮の順位”を出し、印刷し、速報として掲示板に貼り出すのをお手
   伝いさせていただいた。

    博物館のプリンターに外部の私がアクセスするのは望ましくないということで、使い慣れたマイPCとプリンターを持参
   して印刷したので、事務所まで往復する時間やプリンターの起動待ち時間が無くなり、競技終了毎に速報を表示
   することができた。

       
                集計作業のテント                       競技結果の掲示
              【MyPC、プリンタ設置】

 (3) 競技風景
      石友の競技やボランティア活動風景を撮ってあげたいと思っていたが、「集計」作業に追われて、自分が競技
     するとき以外席を外すことができないので、代わりに妻が写真を撮ってくれた。

         
                            「男女一般の部」で奮闘するT夫妻

      石友・Ms.Oは、この夏手術をしたばかりだがスッカリ元気になって、採り損ねて水槽の砂の中に落ちた砂金を
     回収するボランティアで大忙しの様子だった。
      後で頂いたメールによると、ボランティアが少ないからというので2日目もお手伝いしてくれたようだ。

      
                ボランティア活動中のMs.O
              【水槽の砂から砂金を回収する】

    【後刻談】
     この日の夕方、帰宅して地元民放・YBS(山梨放送)の18時のニュースを見ていると、「砂金掘り大会」が放映
    された。大会のルール説明や老若男女の競技風景が放送された。すると、競技している私の姿が映された。どう
    やら、”老の代表”として映してくれたようだ。妻が、「お父さんがパンニングしているのをカメラが写していたわよ」、と
    言っていたのはこのことだったようだ。

      
                         競技するMH
                    【地元・YBS18時のニュースより】

4. 競技結果

    各部門の上位入賞者と石友、そして私の記録を、湯之奥金山博物館のHPから引用させていただいた。

部門 ジュニア 競技の砂金数 8
順位 氏    名 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
備  考
1 富田 朱菜 2.37 8 2.37 中1大妻
2 越智 楓 3.46 8 3.46 中3大妻
3 川ア 麻由 4.53 8 4.53 中3大妻

     ・ 1〜3位を大妻女子中が独占だ。
     ・ 全員見逃しなしの”パーフェクト”
     ・ 1位は初めて3分を切った。

部門 男女一般
(予選)
競技の砂金数 8/10
順位  氏   名 クラス 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
   備    考
1 戸田 百花 3.16 8 3.16 大妻高 2016ジュニア優勝者
2 大道 朱莉 3.47 8 3.47 2016総合優勝 高1大妻
3 及能 麻友 5.05 8 5.05 高2大妻
16 広瀬 義朗 4.29 8 10.29 過去にV3達成
43 石友・Ms.T 5.28 5 14.28  
56 野村 敏郎 4.40 4 16.40 灘高教員
71 石友・Ms.O 7.43 6 19.43  
72 石友・TRさん 7.44 4 19.44  
85 石友・Zさん 3.52 4 21.52  
87 石友・Tさん 7.26 3 22.26 2016年男女一般2位
110 Mineralhunters 6.05 2 30.05  

     ・ 1〜3位を大妻女子高が独占、見逃しなしの”パーフェクト”
     ・ 1位は3分を切る勢いだ。
     ・ "一般男女"の最高位が4位で、過去に3年連続総合優勝した広瀬氏が16位なのが、”一般男女”勢の
       不振ぶりを象徴している。
     ・ 石友の中では、Ms.Tの43位が最高で、それでも20位以内に入れず予選敗退だ。
     ・ 昨年男女一般の部で2位だった、Tさんも振るわなかった。Tさん談 「平たい砂金が難しかった」。

部門 男女一般
(決勝)
競技の砂金数 13
順位  氏   名 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
   備    考
1 大道 朱莉 8.52 12 11.52 2016総合優勝 高1大妻
2 広瀬 義朗 13.34 13 13.34 過去にV3達成
3 山下 将広 12.28 12 15.28 灘高OB
4 戸田 百花 9.32 11 15.32 大妻高 2016ジュニア優勝者
5 及能 麻友 9.51 11 15.51 高2大妻

     ・ 1位は大妻女子高の大道さん。1ケ見落としはあったが、2位との5分近い時間差で逃げ切った。
     ・ スチールパンと多量の砂鉄は難物で、”パーフェクト”は広瀬氏だけだった。

部門 マイパンニング皿 競技の砂金数 6
順位  氏   名 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
   備    考
1 野村 敏郎 1.58 6 1.58
2 広瀬 義朗 2.06 6 2.06
3 田中 則雄 2.32 6 2.32
4 木村 哲平 2.41 6 2.41
5 田村 夏暉 3.32 6 3.32

     ・ 7キロの砂を1分台でパンニング終えるには、@ 道具 A 体力 の両方が必要なようだ。
     ・ 1位の野村先生は、「ターボパン」と呼ばれる世界大会でも多用される皿を使用

部門 頂上決戦
(総合優勝決定)
競技の砂金数 17
順位  氏   名 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
   備    考
1 大道 朱莉 4.50 14 13.50 2016総合優勝 高1大妻
2 富田 朱菜 4.53 13 16.53 中1大妻

     ・ 総合優勝は大妻女子中の富田さんと大妻女子高の大道さんで争われ、高校生の大道さんが制した。
     ・ 小さい砂金12ケ、砂白金5ケ、合計17ケの”パーフェクト”は難しかったようだ。
     ・ 2人のタイム差はわずか3秒で、採集した砂金の差1ケが大きかった。

5. おわりに

 (1) 上位入賞の条件
      上の表を眺めてみると、上位入賞の条件が浮き彫りになる。

      @ 『パーフェクト』
          2017年も、ジュニアの部と男女一般の部の3位までの全員が”見逃した砂金数ゼロ”『パーフェクト』
         達成者だ。
          1個見逃しごとに3分のペナルティはやはり痛いのだ。

      A 『スピード時代』
          ジュニアの部と男女一般の部は、2分、3分台と制限時間の1/5でないと上位入賞は難しいようで、
         その意味ではスピードも重要だ。

 (2) Mineral Hunters 「110番」 !!
      上位入賞者だけでなく、見落としがない「パーフェクト賞」、「ブービー賞」そして「キリ番賞」などの表彰があり、
     豪華な(?)賞品が贈られた。賞品には、”ナゲット(大粒の砂金)”もある。

         
                    賞品の数々                         ナゲット

      2017年春のミネラル・ウオッチングに初めて参加した石友・TRさんは、”パーフェクト”を達成して表彰された。
    "パーフェクト達成”と”スピード”、どちらが難しいかと言えば”パーフェクト達成”だと思うので、来年度のTRさんの
   活躍が期待できそうだ。

     
                石友・TRさん「パーフェクト賞」

          さて、私の成績は、116名中100番と惨憺たるものだった。(私の人生と同じで、)もう後がない状態だ。

      「論語」に次のような有名な節がある。

      『 子曰く 吾 十有五にして学に志し 三十にして立ち 四十にして惑わず 五十にして天命を知る
        六十にして耳順(みみしたが)い 七十にして 心の欲する所に従いて矩(のり) を踰(こ)えず 』

     意味は、「孔子は言う… 私は 15歳で学問に志した。 30歳で 自信がつき、自立できた。
     40歳で 心に惑いがなくなった。 50歳で 天の命じた使命を知り得た。
     60歳では 耳にどんな話が聞こえても素直に受け入れられるようになった。
     70歳になると 自分のすべての行動が道徳の規範(きはん)を逸脱することはなくなった 」

      古希(70歳)を過ぎた私だが、孔子50歳の知名(ちめい)どころか40歳の不惑(ふわく)にも達していない。
     まして70歳の従心(じゅうしん)からは程遠い。
      それでも、60歳の耳順(じじゅん)に因み、小松学芸員の”砂金掘りが上達する5訓”の最後にある、『人の
     話をよく聞く』、をまじめに守らねば、と反省している。

6.参考文献

 1) 山田 賀一:金属鉱物の選鉱法,岩波書店,昭和8年
 2) 宮島 宏:日本の新鉱物 1934-2000 ,フォッサマグナミュージアム,2001年
 3) 松原 聰、宮脇 律郎編、日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 4) 国立科学博物館、毎日新聞社編:金GOLD 黄金の国 展示図録
                         科学博物館、毎日新聞社,2009年
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