湯之奥金山博物館 - 2015年砂金掘り大会 -














              湯之奥金山博物館
            - 2015年砂金掘り大会 -

1. はじめに

    2015年6月、山梨県身延町(旧下部町)にある湯之奥金山博物館から送られてきた会報で、
   今年も恒例の砂金掘り大会が開催されると知った。例年のようにボランティアとして競技結果の集計
   をお手伝いできることを伝えておいた。

    湯之奥金山博物館では、年間を通して、いろいろな催しを企画していて好評だ。夏休みに開催
   する行事の1つに、2001年に始まり、今年で15回目を迎えた「砂金掘り大会」がある。

    「砂金掘り大会」は、世界大会も開催されるほどで、外国では人気の高い趣味(スポーツ?)だ。
   湯之奥金山博物館の小松学芸員は、国際大会で世界チャンピオンになっている事からも解るよう
   に、湯之奥金山博物館主催のこの大会のレベルは高い。

      
               開会式を待つ参加者
                 【NHKも取材中】

    2014年から、前年まで1日で開催していた一般の砂金掘り大会と高校生対抗を2日に分けて開
   催することにしたので、一般の砂金掘り大会参加者は減るだろうと予想したのだが、減るどころか
   200名を越え過去最高だ。どうやら、高校生たちは前日に大会の雰囲気を経験し、本番に臨もう
   ということらしく、一校がそうするとなると、他校もそれにならったようだ。
    ( 関西地区から参加する高校生は当然宿泊することになり、この大会は地元経済にも貢献して
     いるはずだ。)

    私は、博物館応援団の団員でもあり、ボランティア+競技者として第3回から欠かさず参加して
   いる。今年も、PCを使った競技結果の記録・集計と順位決定のボランティアとベテランの部の競技
   者として参加した。
    会場には初めて参加する石友・T夫妻や10日ほど前湯沼鉱泉で知り合ったOさんの姿もあった。
   ( 参加費用 500円、小中学生 300円 )

    今回も小松学芸員の”意地悪”(本人の性格ではないことをお断りしておく)なたくらみで、私の
   でる「ベテランの部」は「初心者の部」と混じって競技する予選があり、上位20名が本選に進出でき
   る厳しい条件だ。

    私の成績は、男女初心者の部・参加129名中70位で、『予選敗退!!』という屈辱的な結果
   に終わった。「ベテラン」29人の中で本選に進出できたのが4名しかいないのだから当然だろう。正に、
   ”後生(こうせい)畏(おそ)るべし” だ。
    初参加のTさんは、見逃しがない「パーフェクト賞」を受け、奥さんよりはるかに上位で、溜飲を下
   げたようだ。私も、「古希(数え70歳)」の年に相応しい70位の「キリ番賞」をいただき、思い出深い
   大会になった。

    楽しい1日を過ごさせて頂き、谷口館長、小松学芸員はじめ湯之奥金山博物館の関係者に
   深く感謝している。
   ( 2015年7月 体験 )

2. 「砂金掘り大会」のルール

    砂金掘り大会は、主催者が砂の中に隠した砂金を、”早く”しかも”見逃しなく、正確に”パン
   ニングする技を競う。
    湯之奥金山博物館の砂金掘り大会のルールは、基本的に「国際ルール」に従い、第15回は、
   次の通りである。

    (1) 種目
 部  門
(参加資格)
砂の量
  (kg)
制限時間
  (分)
使用するパンニング皿
ジュニア
(小学生〜中学生)
6 10 規格以内ならマイパンも可能
パンニング皿のない人には
貸出する。
規格サイズ:40×40×15センチ以内
男女初心者
ベテランの部の予選
(高校生以上の男女)
10 10 博物館で準備した皿
(プラスチックパン)を全員使用
ベテラン
(初心者の部上位20名)
16 15 博物館で準備した皿
(スチールパン)を全員使用

    (2) 砂金の数:競技終了まで秘密(部門別に違うことがあり、今回は下表の通り)
    (3) 順位の決め方:
      @ 館長の「3、2、1、ピー!」という笛の合図から、競技者が砂金回収ビンにフタを
        して手を挙げ、終了を宣言するまでの時間(分)
         + (見逃し砂金数×3分) の合計時間が短いほうが上位

      【例】

       Aさん:9分で全部見つけた   総合タイム=9分 +(0×3)= 9分
            (見逃し 0ケ---「パーフェクト」
       Bさん:7分で1ケ見逃した    総合タイム=7分 +(1×3)= 10分

       この場合、総合タイムが短い、Aさんが上位になる。

       実際の競技では、下の競技結果からもわかるように、秒単位の争いになることも
      あるため、1/100秒まで記録している。

      A 制限時間(10分もしくは15分)以内に終了しなかった人は、” Time Over ” で、
        最下位。
        最近は参加者も慣れてきたせいか、制限時間ジャストで終了する人もいる。

3. 『 第15回 砂金掘り大会 −2015− 』

 (1) 模範演技とルール説明
      競技開始に先立ち、博物館応援団団員2名による模範演技を通して、小松学芸員から競技
     ルールの説明があった。”ボケ”と”突っ込み”漫才コンビのような2人の演技では、「こぼした
     砂を拾う」、「落とした砂金粒をビンに入れる」、「船の中の砂をもう一度パンニングする」などの
     違反行為を次々と演じてくれ、特に初めて参加する人には判り易かったのではないだろうか。
      2011年から、「電光掲示板」が導入され、競技の残り時間が一目でわかるようになり、ペース
     配分に役立つようになった。
      ( もっとも、競技者の脇でタイムを計測する”タイム・キーパー”が経過時間や残り時間を教え
       てくれるので、「電光掲示板」振り返って見る必要はなかった。私に限っては、「電光掲示
       板」を見る余裕はなかった、というのが正確かもしれない。 )

         
             模範演技とルール説明                   「電光掲示板」

 (2) 集計のボランティア活動

    私は、今回もテントの中の「集計」席で、競技者別にタイムと採取した砂金の数をPCのEXCEL
   シートに入力し、総合タイムの短い順にソート(並べ替え)して”仮の順位”を出し、印刷し、速報と
   して掲示板に貼り出すのをお手伝いさせていただいた。
    2015年から1人のタイムキーパーが5人のタイムを計測するようになったので、タイムの入力での混乱
   がなくなった。
    使い慣れたマイPCを持参してデータ処理をし、それをUSBメモリーに入れ、小走りで事務室に行き
   印刷していたので、往復の時間が馬鹿にならず次の競技のスタートを待ってもらうシーンも以前は
   あった。
    今回は、小松学芸員から「毎回でなくて、水替えの時に結果を表示してくれれば十分です」、と
   言われていたので、それほど忙しい思いをすることはなかった。

       
                   集計作業                       競技結果の掲示
                【撮影:Ms.Tさん】

 (3) 競技風景
      T夫妻の競技風景を撮ってあげたいと思っていたが、「集計」作業に追われて席を外すことがで
     きず失礼した。私の前の組で、10日ほど前に湯沼鉱泉で知り合ったOさんが競技していたので、
     写させてもらった。

      
                  「男女初心者の部」Oさん

      夢中で気づかなかったのだが私の競技している姿をMs.Tさんが撮ってくれていた。

      
                「男女初心者の部」で苦戦するMH
                     【撮影:Ms.Tさん】

4. 競技結果

    各部門の上位入賞者と石友、そして私の記録を、湯之奥金山博物館のHPから引用させていた
   だいた。

部門 ジュニア 競技の砂金数 6
順位 氏    名 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
備  考
1 木村 哲平 3.0463 6 3.0463 桐朋中3
2 近藤 和貴 3.1762 6 3.1762 灘中3
3 栗原 真希 3.3384 6 3.3384 大妻中

     ・ 1〜3位、全員見逃しなしの”パーフェクト”。1位は3分を切る勢いだ。
部門 男女初心者
(ベテランの部予選)
競技の砂金数 7
順位  氏   名 クラス 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
   備    考
1 澤藤 萌絵 初心者 5.0329 7 5.0329 大妻
2 鈴木 謙太郎 初心者 5.1560 7 5.1560 桐朋高2
3 中川 浩希 初心者 5.1562 7 5.1562 灘高2
29 Oさん ベテラン 6.5062 6 9.5062 湯沼鉱泉で知り合った
31 Tさん 初心者 10.0000 7 10.0000 石友・パーフェクト
35 広瀬 義朗 ベテラン 4.1943 5 10.1943 2014年総合チャンピオン
70 MH ベテラン 8.0441 5 14.0441
72 Ms.Tさん 初心者 8.3112 5 14.3112 石友

     ・ 1〜3位、全員見逃しなしの”パーフェクト”。1位は5分を切る勢いだ。
     ・ ”ベテラン”が29名混じっているのだが、上位は”初心者”で占められている。
     ・ "ベテラン"の最高位が6位で、過去に総合優勝した広瀬氏が35位なのが、”ベテラン”勢の
       不振ぶりを象徴している。

部門 ベテラン 競技の砂金数 平 8 丸 8 計 16
部門 順位 氏    名 クラス 時  間
(分.秒 1/100秒)
採集した砂金数 総合成績
(分.秒 1/100秒)
備  考
合計
ベテラン 1 首藤 弘志 初心者 14.1222 8 7 15 17.1222
競技の砂金数 2 深尾 優理 初心者 10.1550 6 7 13 19.1550 大妻
平 8 3 中川 浩希 初心者 14.3691 6 7 13 23.3691 灘高2
丸 8 4 野村 敏郎 ベテラン 10.5035 4 7 11 25.5035 灘引率
合計 16 5 木口 寛人 初心者 11.2283 6 5 11 26.2283 灘高2

     ・ スチールパンと多量の砂鉄は難物で、”パーフェクト”は一人もいなかった。
     ・ 上位者は1分間に2キロ処理するので、砂の量だけからすれば8分台で終わるはずだが、
       スチールパンと多量の砂鉄は難敵で、10分以上かけても”パーフェクト”は一人もいなかった。
、      ・ 1〜3位は”初心者”で占められ、”ベテラン”の野村先生が4位に食い込むのがやっと。

5. おわりに

 (1) 上位入賞の条件
      上の表を眺めてみると、上位入賞の条件が浮き彫りになる。

      @ 『パーフェクト』
          2015年も、ジュニアの部と男女初心者の部の入賞者6名、全員が”見逃した砂金数ゼロ”
         の『パーフェクト』達成者だ。
          1個見逃しごとに3分のペナルティはやはり痛いのだ。
          ただベテラン部門は、スチールパンと多量の土砂・砂鉄が初めての”初心者”クラスから
         参加した人が多く、不慣れなせいか珍しく”パーフェクト”はいなかった。

      A 『スピード時代』 ?
          ジュニアの部と男女初心者の部は、3分、5分台と制限時間の1/2〜1/3でないと上位
         入賞は難しいようで、その意味ではスピードだ。

          ただ、ベテランの部は、2011年以降、土砂の量が多い上に、混ぜられた砂鉄と小石の
         量も半端でなく、ジックリ時間をかける作戦に変わってきているようだ。

 (2) Mineral Hunters 「キリ番賞」ゲット!!
      上位入賞者だけでなく、見落としがない「パーフェクト賞」、「ブビー賞」そして「キリ番賞」など
     の表彰があった。
      男女初心者の部に初めて参加した石友・T夫妻のTさんは、制限時間ギリギリの10分をかけ、
     見逃しがない「パーフェクト賞」を受賞した。
      「私のほうが"絶対"上位だと思ったのに・・・・」という奥さんの72位よりもはるかに上位の31位
     で、溜飲を下げたようだ。
      私も、「古希(数え70歳)」の年に相応しい70位の「キリ番賞」をいただき、思い出深い大会
     になった。

     
              石友・Tさん「パーフェクト賞」

          私も、「古希(数え70歳)」の年に相応しい70位で「キリ番賞」をいただき思い出深い大会に
     になった。

        
                MH 70位「キリ番賞」                            賞品
                 【撮影:Ms.Tさん】                    【アメシストの人形の鼻が砂金粒】

6.参考文献

 1) 山田 賀一:金属鉱物の選鉱法,岩波書店,昭和8年
 2) 宮島 宏:日本の新鉱物 1934-2000 ,フォッサマグナミュージアム,2001年
 3) 松原 聰、宮脇 律郎編、日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 4) 国立科学博物館、毎日新聞社編:金GOLD 黄金の国 展示図録
                         科学博物館、毎日新聞社,2009年
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