2014年秋のミネラル・ウオッチング 『オークション』の鉱物たち














           2014年秋のミネラル・ウオッチング
              『オークション』鉱物たち

1. はじめに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋にミネラル・
   ウオッチングを開催するようになって16年目を迎えた。
    今回のテーマは、私の持論、『ミネラル・ウオッチングは水晶に始まり、水晶に終わる』をもじって、
   『水晶に始まり、・・・・・』と題して参加者を募ったところ、善男・善女18名が東は茨城県、西は大阪
   から集まって下さった。

    ・      2014年秋のミネラル・ウオッチング
     『水晶に始まり、・・・・・・』

     ( Mineral Watching Tour , Fall 2014 , " Start with QUARTZ " , Yamanashi & Nagano Pref. )

    無事帰宅したNさんのメールには、「・・・・ いつも旬(しゅん)の産地を案内していただきありが
   とうございました」とあり、できるだけ一般に知られず荒らされていない新しい産地を案内するように
   心がけている思いが伝わったようで嬉しかった。

    参加者が楽しみにしているイベントの一つは宴会の後の「オークション」だ。参加者が持ち寄ったり
   参加できない人が送ってくれた標本を競り落とし、売上げは宿泊費の一部に充て参加者に還元す
   るのだが、時として支援金として定宿・「湯沼鉱泉」に寄贈すること幾度かあった。

        
              オークショナー・Hさん                データ集計・Tさん一家
                   2014年秋のミネラル・ウオッチング 『オークション』風景

    参加できなかったN夫妻からは、「・・・・オークションでは格安での落札、これだけでも参加したか
   ったです。亜鉛スピネル、パイロファン石、これらが100円、消費税なしだから、まさに100円ショッ
   プ以下のデフレ価格。よだれがでます・・・・・」
と参加できなかった残念さが滲むメールをいただいた。

    2014年秋のミネラル・ウオッチングには88点が出品され、売り上げは25,000円だった。単純には
   一点あたり285円弱だから、1点50円や100円の『銘柄標本』は垂涎の的になってもおかしくない。

    私が出品したり、落札した標本そして「オークション」に引き続いて行われる「無料標本玉手箱」で
   引取り手がなかった『隠れた逸品』などを紹介したい。

    私は『ミネラル・ウオッチングは頭脳と体力を駆使した科学的スポーツ』と定義している。趣味なの
   からその人なりの楽しみ方があって然るべきだが、興味のない鉱物種だからといって標本や記録
   として残さずに棄ててしまうのは”もったいない”だけでなく”産地を荒らしている”との謗(そし)りを
   免れない。
    できるだけ広い知識と興味を持ってミネラル・ウオッチングを楽しみたいと思う今日この頃だ。
    ( 2014年11月 開催・分析 )

2. 『オークション』結果リスト

    Tさんが入力してくれたEXCELデータを一覧表にしたものを再掲する。

No 標本名 産地・仕様 出品者 落札者 落札金額
1 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 100
2 亜鉛スピネル 長垂 MZ MH 600
3 魚眼石 久万町 MZ 東京・K 100
4 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 100
5 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 50
6 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 50
7 満バン柘榴石 和田峠 MH 京都・T 300
8 満バン柘榴石 和田峠 MH HG 800
9 満バン柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH Ms.T 200
10 満バン柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH 大阪・T 500
11 ホセ鉱+自然金 甲武信鉱山 MH 東京・K 1,300
12 コバルト華 北山村 O兄 茨城・N 400
13 オパール 国見 O兄 茨城・Y 500
14 轟石 船岡鉱山 O兄 茨城・Y 100
15 含銅アロフェン 船岡鉱山 O兄 HG 200
16 紫水晶 朝来町 O兄 MH 300
17 針ニッケル鉱 奥村鉱山 O兄 HG 300
18 灰バン柘榴石 東沢 MH 京都・T 100
19 黒曜石 和田峠 MH 茨城・Y 100
20 黒曜石 和田峠 MH 地元・M 100
21 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 500
22 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 800
23 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 1,000
24 やんだ鉱物セット やんだ Ms.T HG 300
25 白鉛鉱 亀山盛鉱山 茨城・K 茨城・Y 200
26 ブラウン鉱 戸根鉱山 MZ MH 300
27 中宇利石 中宇利鉱山 O弟 茨城・N 500
28 中宇利石 中宇利鉱山 O弟 茨城・N 700
29 パイマン 田口鉱山 NS O兄 800
30 パイマン 田口鉱山 NS O兄 400
31 弘三石 満越 NS 大阪・T 500
32 弘三石 満越 NS 大阪・T 500
33 菱沸石 春日鉱山 MZ MH 100
34 蛋白石 波佐見町 MZ MH 400
35 ベスブ石 東沢 MH 茨城・Y 100
36 ベスブ石 東沢 MH 地元・M 100
37 ベスブ石 東沢 MH HG 100
38 ベスブ石 東沢 MH O兄 100
39 ベスブ石 東沢 MH 茨城・N 600
40 ベスブ石 東沢 HG 茨城・N 500
41 ベスブ石 東沢 MH 地元・M 1,100
42 鋭錐石 竹森 MH O兄 100
43 ハイドロウッドワード石 御池鉱山 NS 茨城・Y 100
44 クリストバル石 麦草峠 O弟 HG 200
45 亜鉛スピネル 長垂 MZ 茨城・Y 100
46 亜鉛スピネル 長垂 MZ MH 100
47 灰バン石榴石 東沢 MH 地元・M 600
48 紅電気石 長垂 MZ MH 100
49 方解石(蛍光) 生野鉱山 HG O兄 200
50 方解石(蛍光) 生野鉱山 HG 茨城・Y 300
51 ソーダ束沸石 福津市 MZ 茨城・Y 100
52 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 500
53 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 100
54 斜開簾石 秩父鉱山 MY MH 200
55 斜開簾石 秩父鉱山 MY 大阪・T 300
56 斜開簾石 秩父鉱山 MY 京都・T 500
57 斜開簾石 秩父鉱山 MY 茨城・Y 50
58 斜開簾石 秩父鉱山 MY 茨城・Y 50
59 ベスブ石 秩父鉱山 MT 京都・T 400
60 苦土スピネル 秩父鉱山 MT 茨城・N 100
61 クリントン石 秩父鉱山 MT 茨城・Y 100
62 燐灰ウラン石 長垂 MZ MH 500
63 燐灰ウラン石 長垂 MZ 大阪・T 500
64 束沸石 久万町 MZ O兄 800
65 紅電気石 長垂 MZ HG 200
66 束沸石 久万町 MZ MH 100
67 クリノメーター MH O兄 100
68 饅頭峠写真 A3 O弟 MH 300
69 饅頭峠写真 A3 O弟 MH 300
70 2014年月遅れGWMW写真 A3 O弟 MH 300
71 2014年月遅れGWMW写真 A3 O弟 MH 300
72 饅頭峠写真 L版 O弟 大阪・T 100
73 饅頭峠写真 L版 O弟 東京・K 100
74 饅頭峠写真 L版 O弟 Ms.T 100
75 饅頭峠写真 L版 O弟 HG 100
76 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
77 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
78 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
79 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 大阪・T 100
80 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 東京・K 100
81 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 茨城・K 100
82 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 HG 100
83 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 Ms.T 100
84 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 MH 100
85 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 MH 100
86 電動歯ブラシ 乾電池付き O弟 地元・M 100
87 水晶絵葉書 甲府市 MH Ms.T 50
88 水晶絵葉書 甲府市 MH Ms.T 50
  合 計    25,000

3. 『オークション』結果の分析

 (1) 出品者数と落札者数
      出品者は10人(グループ)、落札者は15人(グループ)だ。オークションに参加していない長野・
     MZさん、MTさん、東京・MYさんが標本を送ってくれたり、寄託してくれていた。
      落札者には飛び入りで参加してくれた地元・Mさんも加わり、参加者のほとんどが落札してくれ
     たことになる。

 (2) 出品分類
      出品されたものを分類して図に示す。

        
                   出品分類

      鉱物標本が66点/88点だから3/4=75%を占めているのは当然だ。写真はミネラル・ウオッチン
     グの産地や宿での記念写真18点(20%)で、O弟が毎回出品してくれている。
      絵葉書は、障害者が作ったもので、水晶群晶の絵に「宝石の町甲府」のキャプションが入って
     定価100円だ。
      採集用具として、「クリノメータ」を出品した。ミネラル・ウオッチングで使うことはまずないのだが、
     地質・地学を学ぶ人にとっては必携だ。遣い方は、私のHPにあることも伝えた。
      その他として、「電動歯ブラシ」が前回に続き今回もO弟から出品された。
      このように、幅広い出品があるのでこのオークションを楽しいものにしてくれている。

 (3) 出品者・落札者ベスト5
      出品者、落札者を金額の多い順に5位まで並べてみた。

No  出 品 の 部 落 札 の 部
 氏 名   金  額  氏 名  金  額
1 MH 8,900 MH 5,100
2 MZ 4,700 京都・T 4,400
3 O弟 4,100 茨城・N 2,800
4 NS 2,300 O兄 2,700
5 O兄 1,800 大阪・T 2,000
地元・M 2,000

      出品金額、落札金額ともにMHがトップだ。今回、兵庫・N財閥、東京・Hファンドなどが参加でき
     なかったのがその理由だろう。
      出品者の2位・MZさんは残念ながら今回参加できなかったが湯沼鉱泉にオークション品を寄
     託して置いてくれた。1980〜90年代に九州で医学生時代に採集したもので、現在では採集でき
     ない貴重な標本が数多くあった。このように、参加できなくても「オークション」に標本を送ってく
     れるメンバーがいることからもこの会の雰囲気がお解りいただけるだろう。
      落札者の2位は京都・T夫妻だ。奥さんに「そんなの家に沢山あるやない」、と言われながらも
     Tさんにはせっせと買っていただき、売り上げに貢献していただいた。

 (4) 高額落札品ベスト5
      高額で落札された標本ベスト5を並べてみた。

No    標 本 名     産   地   出 品 者  落 札 者  落 札 額
1 ホセ鉱+自然金 甲武信鉱山 MH 東京・K 1,300
2 ベスブ石 東沢 地元・M 1,100
3 黒曜石 和田峠 京都・T 1,000
4 満バン柘榴石 和田峠 京都・T 800
5 黒曜石 和田峠 京都・T 800

      人気が高かったのは、甲武信鉱山のホセ鉱、そして東沢のベスブ石巨晶だ。ホセ鉱を落札し
     てくれた東京・Kさんは、「MHのHPにあるような青光りしたホセ鉱が欲しかった」と落札理由を教
     えてくれた。東沢のベスブ石を落札した地元・Mさんは、地元にある東沢を訪れたことがないのが
     理由のようだ。
      このべスブ石は、社長がわざわざ見に来るほどだったし、Ms.Tからは「もう一度案内して欲しい」
     とのリクエストもあり、再訪を計画中だが参加者(できる体力のある人)が何人いるか・・・・・。

      高額落札品を出品したのは全部MHだった。実は、家の標本の整理を始めたところで、ミネラ
     ル・ウオッチングの前に大きな標本収納箱3箱を整理した。1箱分はHPなどに掲載していない
     研究待ちなので手持ちとして残し、2箱分を「オークション」と「標本玉手箱」に出品した。おかげ
     で、居間に少し空きスペースが増え妻は大喜びだ。このサイズの標本箱が100個以上あるので
     ミネラル・ウオッチングの度に整理していこうと思っている。

4. 『オークション』出品・落札標本

    「オークション」と「標本玉手箱」に出品したり、落札した標本、そして「玉手箱」で誰にも取られず
   残った『隠れた逸品』(だと思う) を紹介する。

  区  分  標  本  名   産  地          写     真     説   明
オークション
 出品
パイロファン石 萩平鉱山 ガラス光沢のある
板状結晶
満バン柘榴石 和田峠
               部分


             全体

母岩付
オークション
 落札品
斜灰簾石 秩父鉱山 ピンク色の針状結晶
薬品処理
ソーダ束沸石 渡海岸
渡津屋崎町
礫岩の間を埋める
珍しい産状

ソーダ輝沸石や
濁沸石と共生

亜鉛スピネル 長垂 表面は黒色に見えるが
内部は暗緑色
紅電気石 長垂 リチア電気石
燐灰ウラン石 長垂
            太陽光


            紫外光

ミネラライト
の紫外光で緑色に蛍光
玉手箱 ソーダ沸石 吉川 未訪問産地
ブラウン鉱 戸根鉱山 母岩付き結晶BR>
珪灰鉄鉱 木浦鉱山近く 出品者のMZ氏は
珪灰鉄鉱(?)
としており、「玉手箱」に
とのことだった。

弱い磁性があり、
「珪灰鉄鉱」と
鑑定した

5. おわりに

 5.1 『 フィールド・コーミング( Field Combing ) 』
      結城伸子さんの「海と森の標本函」によれば、『貝、植物の種子、陶片、流木、石など、海岸に
     打ち寄せられた漂流物を拾い集めることをビーチ・コーミング( Beach Combing ) 「海岸を櫛で
     梳(す)くように探す」の意味)と言う。・・・・・著者はさらに、森でのそうした宝探しを「フォレスト・
     コーミングと呼んでいる 』

      HPを読んでいただければお解りのように、MHsのミネラル・ウオッチングは、『フィールド・コー
     ミング』、とでも呼ぶべきものだ。
      鉱物標本だけでも、ズリを掘るなどは序の口で、ふるい掛け、さらにはパンニングまでして採集
     する。その上、陶磁器やガラスの破片に始まる「産業遺物」にまで及ぶという”悪食(あくじき)”
     ぶりだ。
      したがって、持ち帰ったものは種々雑多で、「他の人なら欲しがらないもの」も多いはずだ。

      しかし、今回のオークションの結果、たまたまだろうが”皆さんが欲しがるベスト5”を独占した
     ことは、MHsのミネラル・ウオッチングのスタイルが大きく間違っていないのかな、と思っている。

      『 人も欲しがるものを獲る 』、はコレクションだけでなく、人生全般に通じるような気がする。

 5.2 『 2014年採集納め 』
      今週末で11月が終わり、来週からは師走だ。2014年の採集納めにどこを訪れるか思い悩んで
     いる。そんなに多くはないが良い標本が出た○○○か、その後が気になっている□□鉱山もい
     い。
      いっそのこと一度も訪れたことがない△△地域も来年の運試しにはもってこいかもしれない。
     しばら、アレコレと楽しい悩みが続きそうだ。

6. 参考文献

 1) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
inserted by FC2 system