2017年 月遅れGWミネラル・ウオッチング フォローアップ










       2017年 月遅れGWミネラル・ウオッチング フォローアップ

                ( Mineral Watching Tour Follow UP , Jul. 2017 , Nagano Pref. )

1. はじめに

    2017年6月、恒例の『月遅れGWミネラル・ウオッチング』を開催した。初日の長野県の新産地では、日本式
   双晶をはじめ貴重な標本を採集できた。

    「ガマ(晶洞)開け」グループの採集品分配で、私が唯一頂いた「方解石自形結晶」を、昼に食べた冷やし
   中華の空きケースにしまっておいたばかりに、妻が”ゴミ”だと思って2日目の朝に寄ったコンビニで捨ててしまった
   のは、次のページで報告した通りだ。

    ・ 2017年月遅れGWミネラル・ウオッチング
    ( Mineral Watching Tour , Jun. 2017 , Nagano & Yamanashi Pref. )

    幸い参加者の長野県・Mさんが写真に撮っておいてくれそれを送ってくれた。Mさんが、Danaの”System of
   Mineralogy”第6版や桜井先生の「日本鉱物誌」第3版で調べてくれたが、「似たような結晶図はない」、と
   言うので、『百面相』の異名がある方解石でも珍しい晶癖だと知った。

     
          方解石自形結晶(右は完璧)
              【撮影:Mさん】

    こうなると何が何でも欲しくなるのが”Mineralhunter's"の困った性(さが)で、産地のフォローアップを兼ねて
   再訪することにした。ただ、古い坑道に一人で入るのは妻が心配するので、茨城・K兄弟に同行してもらうこと
   にした。
    ( 2017年7月 再訪 )

2. 産地

    甲武信鉱山にある古い坑道が産地だ。湯沼鉱泉で入山料(一人1,000円、宿泊者は無料)を払い、社長に
   場所を聞けば、「○○で、△△から来たXXさんが、”素晴らしい”□□□□を採った」など、ホットなニュースも
   教えてくれるはずだ。

3. 産状と採集方法

    ここには20センチを超えるような方解石の脈が走っているが、自形結晶はそこから少し離れた水晶を伴う
   晶洞の中にある。赤茶けた鉄さび色の部分が目印だ。
    ハンマーとタガネで脈石を崩していくと、晶洞の入り口がでてくる。方解石の結晶は、晶洞壁から成長して
   いたり、分離して晶洞のガマ粘土に埋もれている。晶洞壁をできるだけ大きく掻き採ると、母岩付き自形結晶
   が採集できる。

    今回、O弟が「歯ブラシ」と「マーカー」の修正ペンを持参してくれた。外道(これが目的に方々には失礼!!)
   で出てくる母岩付きの小さな双晶を覆っているガマ粘土を取り除くのと在り処(ありか)の印をつけておくのに
   役に立った。
    脈石は他の双晶産地に比べれば硬くはないのだが、今回も大ハンマの柄が折れてしまった。予備を持参し
   ていたので採集を続けられたが、さもないとスゴスゴ撤退せざるを得なくなる。

          
                 露頭を叩くK兄                 探した双晶をマーキングするK弟

    方解石の自形結晶がある周囲には、この産地を代表する緑水晶の「日本式双晶」や両錐の5センチを超え
   る母岩付きや単晶がある。

4. 採集鉱物

 (1) 方解石【CALCITE:CaCO3
      今回採集できた自形結晶は、ごく普通の菱面体とそれが長柱状に伸びたものだ。中央に立っているのが
     長柱状自形結晶で、太さ15ミリ、長さ38ミリだ。

       
                      方解石群晶(横  13センチ)

 (2) 水晶/石英【QUARTZ:SiO2
      採集した日本式双晶(Japanese Law Twin)や水晶はK兄弟に優先的にとってもらい、残った標本を
     何点か次回のミネラル・ウオッチングの「オークション」か「標本玉手箱」用にと、お預かりした。

       
                       日本式双晶(横  15ミリ)

5. おわりに

 5.1 大賑わいの『甲武信鉱山』
     この日6時半に登り始めて、15時過ぎに車に戻った。私達が採集している間に、東海地区のシニア(4人)
    T大生(4人)、鉱山会社員(4人)、滋賀のシニア(3人)、長野のシニア(1人)が次々と到着した。中には、
    6月のミネラル・ウオッチングの「昔乙女コース」の産地で妻たちがお世話になった人もいた。
     3連休には、O弟一行が”夢よもう一度”、と『蝶々』(日本式双晶のこと)を採りに来るとメールがあったばか
    りだ。

     これだけ大勢の人が訪れると、中には不心得者もいるようで、坑道の入り口には片方だけの手袋や包装紙
    などのゴミが落ちていたので、拾って下山した。

6. 参考文献

 1) 八木 貞助:信濃鉱物誌,古今書院,大正12年
 2) 藤本 治義:南佐久郡地質誌,社団法人 南佐久教育会,昭和33年
 3) 長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,昭和35年
 4) 山田 滋夫:日本の鉱物産地総覧,つゆねこ企画,2017年
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