2015年 秋のミネラル・ウオッチング










         2015年 秋のミネラル・ウオッチング

1. はじめに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋にミネラル・
   ウオッチングを開催するようになって17年目を迎えた。
    いつもながら、皆さんをどこに案内するかで頭を悩ます。長野県川上村の湯沼鉱泉に宿泊する
   のが前提だから、訪れる産地はその周辺で、さらに20名前後が楽しめる場所となるとそうそう見つ
   からない。

    2015年8月T大生を3泊4日で鉱物巡検に案内した。学生の一人が拾い上げたのは、緑水晶の
   上に透明水晶の傘を被(かぶ)った、まぎれもない『松茸水晶』だった。さらに、女子学生が鑑定を
   依頼してほしい持ち込んだ平板水晶は、完全ではないが、『軍配型・日本式双晶』だった。このほ
   か、1センチを超える大きさで結晶面が黒光りする「ざくろ石」を採集した学生もいた。

   ・ 2015年夏 T大学地学ゼミ ミネラル・ウオッチング in Nagano
   ( T Univ. Geology Semi. Mineral Watching Tour , Aug. 2015 , Nagano Pref. )

    9月になって、この産地を下見に訪れると、『松茸水晶』や『軍配型・日本式双晶の完形品』のほ
   かに、「ザクロ石分離結晶」や「武石」、さらに「六角板状の磁硫鉄鉱」などが採集できた。
    まだまだ隠れていそうな雰囲気なので、初日はここを案内することにした。

        
              「松茸水晶」                「軍配型・日本式双晶」
                       下見で採集した鉱物

    その1週間後、川上村でガマ開けに挑戦する臨時のミネラル・ウオッチングを開催した。夜の大人の
   時間で、初参加のMs.Oが見せてくれた『ナゲット』と呼べそうな大粒の砂金には皆さん目を奪われ、
   ”次回はナゲットに挑戦!!”、だと思った。

    ・ 2015年9月 ミネラル・ウオッチング・ウオッチング【ガマ開けに挑戦!!】
    ( Mineral Watching " Open Druse(Sesame) " , Sep. 2015 , Nagano Pref. )

    ただ、場所が問題だ。砂金にズブ素人の私が知っている産地A、産地Bで下見のためし掘りをして
   みたら、どちらでもソコソコ採れそうなので、どちらにするかは前日の『大人の時間』で決めてもらうこと
   にした。

        
                  産地A                           産地B
                               下見で採集した砂金

    こうして、紅葉真っ盛りの10月末、『ナゲットを求めて!!』と題する1泊2日の『2015年秋 ミネラル・
   ウオッチング』が開幕した。
    ( 2015年10月 開催 )

2. 【第1日目】

 (1) 「湯沼鉱泉」に集合!!
      朝5時に起きると甲府の町は薄靄(もや)に包まれていた。一番心配な天気は予報では2日間
     とも晴れなので、そのうちの晴れあがるはずだ。
      自宅近くのSAに入り、東京・KさんとMs.Tをピックアップし、須玉ICを出て、集合場所の川上村・
     湯沼鉱泉を目指す。
      7時半に着くと、ほとんどが揃っている。三重・O兄、長野・Aさん、MTさん、茨城・K兄弟、滋賀・
     O弟、兵庫・N夫妻。滋賀・Yさんは初参加の大阪・TMさんを連れてきてくれた。久しぶりに参加の
     愛知・T親子。Ms.Oは初参加の神奈川・Zさんを誘ってきてくれた。
      携帯が鳴って東京・Hさんが「渋滞にはまって1時間くらい遅れる」と連絡がある。産地はわかって
     いるはずなので、待たずに出発することにした。

 (2) まずは、自己紹介
      初めて会う人も多いので、まずは自己紹介だ。

       
                   自己紹介
                  【撮影:O弟】

      産地の駐車スペースが広くないので、1台の車にできるだけ詰めて乗ってもらい、台数を少なく
     して出発だ。

 (3) 「松茸水晶」産地
      初日に訪れたのは、川上村の水晶産地だ。ここでは、『松茸水晶(セプタークオーツ)』と呼ば
     れる水晶が採れる。青緑色の水晶の先端に透明感が高い水晶の傘がついたものや、柱面に透
     明感のある「ランドセル」を背負った『おんぶ水晶』などと呼ばれる水晶がここの目玉だ。
      美しいザクロ石の分離結晶は比較的多いし、「武石」、さらに「磁硫鉄鉱の自形結晶」もある。
     希に「日本式双晶」も出るから油断ができない。

      ここは、1980年代の第一次ブームの時に掘り返された”すれっからしのズリ”で、今では本格的
     に採集しようなどというもの好きはいない。この上にある産地を目指すときに休憩がてら30分くらい
     採集する人が多いようで、「この産地の松茸水晶をもっていますか」、と尋ねると「持っていない」と
     答える人が多いので、今回は一日かけてジックリ採集するプランにしたのだ。

      重たい採集道具を担ぐと、私の足でも片道45分、普通だと1時間以上はかかる厳しいコースだ。
     皆さんの顔つきを観たり、息遣いを聞いて、適宜休憩を取りながらすすむ。

      産地に到着して、産状を説明する。実は、事前にこの産地の成り立ちと採集要領を説明する
     資料を皆さんに送っておいたのだ。

       
                          産地の歴史と採集方法

      ズリに横一列に並び、”ベンチカット方式”で上に掘り上げていく組織的採集だ。下見の時に
     良品が採れた流れに女性を配置するやさしさ(??)も忘れないMHだ。

       
                    採集風景

      掘り始めてすぐに、Ms.Oが「これ何でしょう」と見せてくれたのは、「おんぶ水晶」だった。第1号
     ゲットだ。
      皆さんのところを巡回し、「松茸水晶」が出てくる層、つまり掘り進むべき深さをアドバイスする。
     一番左端の長野・Aさんに声をかけると立派な松茸水晶をすでに手にしていた。右端のO兄は、
     大きめのズリ石を崩しているが今一つのようだ。
      黒くピカピカに輝くきれいな結晶面をもつ鉱物は「灰ばんザクロ石」で、あちこちから「あった!!」
     の声が出る。茶褐色六面体の結晶がでてきたら、黄鉄鉱が針鉄鉱(ゲーテ鉱)に変わった「武石
     (ぶせき:升石(ますいし)とも呼ぶ)」だ。

      私が掘り進めていた先に大きな岩が出てきた。ズリ掘りでは、『木の根、大岩の下』は絶好の
     ポイントなのだ。右端のO兄を見ると芳しくないようなので、呼び寄せて私の代わりに掘り進めても
     らう。まもなく、「あった!!」とO兄の歓声が上がる。見せてもらうと、「松茸水晶」と「ランドセル
     水晶」が合体したすばらしい標本だ。

       
              良品をゲットし余裕のO兄
                  【撮影:O弟】

      「昼ごはんの後、ポジションチェンジ」を皆さんにお知らせして10分ほどで昼食だ。青空のもと、
     暖かな(南極の寒中水泳で鍛えた(??)私にとっては暑いほど)日差しの中で昼食をいただく。

      午後からは、まだ「松茸水晶」が採れていない人に豊鉱帯に入ってもらう。採れたら次の人に
     交代だ。採れた人は15分以内で採れているので、15分以上やって採れない人は、無条件で次
     の人に代わるという厳しい掟だ。不思議なもので、長くやっても、”運(縁)”のない人は採れない
     のだ。
      私はO兄がやっていた右端に入って掘り進む。ものの15分で、何本かの松茸水晶が寄り添った
     写真の標本を掘り出した。交代したN夫人も10分もしない内に松茸の傘の上に細長い水晶が
     成長した”珍奇な”松茸水晶をゲットした。(どちらが上なのか??)

        
                MH採集              N夫人【採集・撮影】
                        「松茸水晶」

      次に交代したT父が採集したのは、”雁高(かりだか)”(わかるかな?)のほれぼれするような
     松茸水晶だった。息子はすでに立派な松茸水晶をゲットしている。
      東京・Kさんに代わったが出ない。そろそろ交代時間になったころ、白い平板水晶を出した。本
     人は気づかなかったがN夫人が「日本式双晶かも?」、というので見てみると紛れもない「日本式
     双晶」で、片翼は先が欠けているが2センチはある、この産地としては大きい部類だ。
      Zさんに代わると、「頭だけとか、頭のないのは出るのだが・・・」、とパッとしない口ぶりだ。だが、
     採集したものを見せてもらうと、立派な「松茸水晶」があるではないか。
      端っこ近くでやっていたYさんがニコニコしながら近づき、見せてくれたのは、軸は短いが”傘の大
     きな”松茸だった。いつも佳品を採集するYさんだ。
      まだ採っていない残り少ない人たちがラストスパートだ。MTさんが見つけたのは、V字型に交差し
     た2本の軸それぞれにランドセルが付いた珍しいものだ。
      佳品をすでに手にしたO兄は、後ろ手で皆さんの様子を見る余裕だ。

       
            採集風景(ラストスパート)

      Ms.Oが「この角張った鉱物は何かしら」というので鑑定だ。O兄、鉱物鑑定士のMTさん、そして
     MHで鑑定だ。角張った結晶なので、「ザクロ石」かとも思ったが色が茶褐色なので「武石」のよう
     にも見えるが条線があるのが気に入らない。見る方向を変えると六角形の一部が見え、「磁硫
     鉄鉱」だろうと結論した。念のため、強い磁石を近づけてみると吸引するので間違いない。
      下見のときに私が採集した「磁硫鉄鉱」は、写真のように六角板状の教科書にあるような形状
     だ。ただ、不思議なのは、「磁硫鉄鉱」は保存が難しい鉱物の一つで、形が崩れてしまうはずだ
     が、写真の標本は右の「武石(ぶせき)」と同じようにキッチリした外形を保っているのだ。

          
                   「磁硫鉄鉱」                         「武石」
                                 【下見のときに採集】

      未だ採れていないK兄が豊鉱帯に入るが、なかなか出ない。ズリの土砂が一気に崩れ危険を
     感じ、これで撤退することにした。時間は15時を回っていた。
      帰りは楽だ。ほとんど休憩の必要もなく車に戻ったのは16時過ぎだった。この後のスケジュールを
     伝え、今夜の宿・湯沼鉱泉に戻る。

3. 【湯沼鉱泉の夜は更けて】

    この日の宿・湯沼鉱泉に着いて採集した「松茸水晶」や「日本式双晶」を社長に見せると、「まだ、
   あるんだな〜、立派なもんだ」と喜んでくれた。料理の手を休めて厨房から出てきたお姐さんも、感心
   してくれた。

    いつものように、宴会場の一隅が「オークション」、舞台が「玉手箱」の会場だ。続々と「オークション」
   と「玉手箱」の標本が集まり、担当者がテーブルの上に並べていく。
    O兄から「選りすぐりを持参する」とプレアナウンスがあった通り、オークション品に『大阪石』なども並
   ぶ豪華さだ。

 (1) 宴会
      全員がそろった19時から宴会だ。宴会部長役も板についた東京・Kさんの司会で夜の部がスタ
     ートした。

          
                宴会部長・Kさん                     乾杯のあいさつ・O兄
               【採集、撮影:O弟】

      まずは三重・O兄の音頭で「乾杯!!」。冷たいビールが今日の疲れを忘れさせてくれる。地
     元川上村の新鮮な野菜やワタリガニの鍋、サーモンのムニエル、酢の物などお姐さんの料理を
     肴にコップを傾ける。

       
                    寒くなったら鍋
                    【撮影:O弟】

      しばし歓談の後、参加者の近況報告だ。大阪・Tさんと神奈川・Zさんは初参加だ。久しぶりに
     参加の長野・Aさん、愛知・T親子。
      T君は「ミネラル・ウオッチングと勉強を両立します」と5年前に語っていた通り、来春からは院生
     だ。

          
                初参加の大阪・Tさん                    愛知・Tさん親子

      若手の一人、東京・Hさんの近況報告で、「入籍しました」、といううれしい発表があった。お相
     手は、7月に開催した灰クロムザクロ石を採集したミネラル・ウオッチングに一緒に来た彼女だ。

      ・ 2015年月遅れGWミネラル・ウオッチング 【フォローアップ】
      ( Mineral Watching Tour - Folow Up -, Jun. 2015 , Nagano Pref. )

      参加者には、親子だけでなく、夫婦、兄弟のコンビもいる。

          
      『婦唱夫随』が家庭円満のもと・N夫妻    いつも仲の良い茨城・K兄弟

      私の番になり、「湯沼鉱泉」がいつまでも続くよう、皆さんのご支援とご協力をお願いした。

      宴会の〆は、社長が自分の山で採った「マツタケ」を炊き込んだ「マツタケごはん」だ。分厚く
     切ったマツタケがたくさん入っていて、2膳お代わりしたが、まだたくさん残っていた。

       
                    「マツタケごはん」
                     【撮影:O弟】

 (2) 「オークション」
      宴会を終え、「オークション」に移ったのは、8時過ぎだった。今回のオークショナーは、定評のある、
     兵庫・N夫人だ。ユーモア溢れる売り声に釣られて売り上げは順調に伸びる。

       
                  「オークション」風景
          (「膝が痛く、こんな格好で失礼」・・・昔乙女

      IT化の波はミネラル・ウオッチングにまで及び、神奈川・Tさんの手で標本名・産地・出品者・
     落札者・落札金額がPCに入力されていく。この会がスタートした16年前に、黒板に手書きしてい
     たころとは様変わりだ。

      オークションの目玉は、大阪府で発見された新鉱物「大阪石」だった。T父と私の競り合いにな
     ったが、互いに一歩も譲らず値が上がっていったが、結局Tさんが譲ってくれ、2,100円と市価の
     1/10以下で落札した。

      翌朝の緊急オークションを加えて76点が落札され、売上高は29,570円で、一人平均1,500円
     参加費が安くなった計算だ。

      Tさん夫妻が入力してくれたEXCELデータを一覧表にしてみた。このミネラル・ウオッチングに
     参加される皆さんの鑑定眼は確かなようで、希少な標本は競る人も多く、市価に比べれば大
     幅に廉(やす)いものの、それなりの高値がついた。

      一部の標本は、『採集禁止』になる前の採集品や『購入品』であることをご承知ください。   敬称略

No 標本名 産地 出品者 落札者 落札値
1 異極鉱 明延鉱山 N夫妻 O兄 100
2 電気石 平岳 MTさん MTさん 100
3 黄銅鉱 佐山鉱山 茨城・O兄 大阪・Tさん 100
4 閃亜鉛鉱 阿仁鉱山 Ms.T 東京・Hさん 200
5 黄鉄鉱 秩父鉱山 東京・Kさん 大阪・Tさん 100
6 灰鉄柘榴石 長久木 O弟 東京・Hさん 100
7 斧石 梅ケ島村 大阪・Tさん Yさん 100
8 黄銅鉱 阿仁鉱山 東京・Hさん MH 100
9 青鉛鉱 多良木鉱山 Yさん Ms.O 100
10 正長石 長谷鉱山 O兄 Ms.T 100
11 日本式双晶 奈留島 O兄 Yさん 1000
12 ペクトライト 菅島 O兄 Zさん 600
13 閃マンガン鉱 美利加鉱山 O兄 東京・Hさん 400
14 束沸石 久万町 O兄 Ms.O 600
15 ハーキマ―水晶 北牟婁町 O兄 東京・Hさん 1000
16 ハーキマ―水晶 北牟婁町 O兄 MH 1000
17 大阪石 大阪府 O兄 MH 2100
18 緑水晶 牧丘町 O兄 東京・Hさん 600
19 異極鉱 神岡鉱山 O兄 N夫妻 500
20 スーパーレインボウ柘榴石 天川村 O兄 N夫妻 900
21 高師小僧 木津川 O兄 N夫妻 300
22 蛍石 関市 O兄 Zさん 500
23 水晶 海山町 O兄 Ms.O 100
24 黄鉄鉱 本郷鉱山 O兄 Ms.O 100
25 輝水鉛鉱入り水晶 五郎山 N夫妻 Yさん 100
26 輝水鉛鉱入り水晶 五郎山 N夫妻 Zさん 100
27 セリウム褐簾石 大菩薩峠 MH 大阪・Tさん 200
28 セリウム褐簾石 大菩薩峠 MH Zさん 200
29 セリウム褐簾石 大菩薩峠 MH N夫妻 200
30 硫カドミウム鉱 中龍鉱山 MH O兄 100
31 硫カドミウム鉱 中龍鉱山 MH 東京・Hさん 100
32 白雲母 花園山 MH Ms.O 100
33 西股沢水晶製キーホルダー 西股沢 茨城・O兄 MH 100
34 紫水晶 卯根倉鉱山 茨城・O弟 T親子 100
35 紫水晶 足尾鉛沢 茨城・O弟 東京・Hさん 500
36 紫水晶他 亀盛鉱山 茨城・O弟 O兄 200
37 黄銅鉱 亀盛鉱山 茨城・O弟 Ms.O 100
38 普通輝石 獅子岩 Ms.O 東京・Hさん 100
39 普通輝石 獅子岩 Ms.O O兄 200
40 砂金 山北町 Ms.O T親子 1500
41 砂金 山北町 Ms.O 大阪・Tさん 1500
42 苗木石 黒平 MH Zさん 600
43 緑水晶 甲武信鉱山 MH Ms.O 500
44 輝水鉛鉱 蓬莱鉱山 MH O兄 300
45 輝水鉛鉱 蓬莱鉱山 MH N夫妻 200
46 水晶 水晶峠 MH Yさん 300
47 チタン石 向山鉱山 MH O兄 300
48 チタン石 向山鉱山 MH MTさん 300
49 薬石 糸魚川 MH Ms.O 100
50 水晶群晶 延坂 Zさん T親子 1200
51 松茸水晶 甲武信鉱山 MH 大阪・Tさん 200
52 水晶 川端下 Aさん O兄 1000
53 日本式双晶 川端下 Aさん MTさん 700
54 緑水晶 荒川鉱山 Ms.T Yさん 400
55 緑水晶 荒川鉱山 Ms.T Ms.O 800
56 水晶 向山鉱山 MH 大阪・Tさん 200
57 微斜長石 黒平 MH T親子 100
58 クリストバル石黒曜石 麦草峠 Ms.O MH 100
59 クリストバル石黒曜石 麦草峠 Ms.O 大阪・Tさん 100
60 クリストバル石黒曜石 麦草峠 Ms.O N夫妻 100
61 輝安鉱+メタ輝安鉱セット 赤谷鉱山 MH O弟 100
62 輝安鉱+メタ輝安鉱セット 赤谷鉱山 MH N夫妻 100
63 輝安鉱+メタ輝安鉱セット 赤谷鉱山 MH MTさん 100
64 三重県 O兄 全員 570
65 銀杏 滋賀県 O弟 O兄ほか 900
66 写真(中) 2015.6 O弟 N夫妻ほか 400
67 写真(小) 2015.6 O弟 O兄ほか 500
68 写真(中) 2015.9 O弟 Ms.Oほか 400
69 写真(小) 2015.9 O弟 茨城・Kさんほか 400
70 写真(中) 2015.9 O弟 MH 400
71 写真(小) 2015.9 O弟 Ms.Tほか 200
72 お酒 茨城 茨城・O弟 Ms.O 1000
73 お酒 大阪府 大阪・Tさん N夫妻 800
       合       計 29,570

      今回の目玉標本はO兄が出品してくれた、新鉱物「大阪石」だった。ご存知のように、大阪石
     (おおさかせき)【OSAKAITE:Zn4SO4(OH)6・5H2O】は、亜鉛の硫酸塩鉱物の一種で、淡青色の
     薄い六角板状結晶が特徴だ。
      発見そのものは古く、1999年に大西政之氏が大阪府箕面市にある廃坑・平尾旧坑で発見し、
     岡山大学在学中の2007年2月に新鉱物として国際鉱物学連合(IMA)から認定された。日本で
     発見された100番目の新鉱物である。

      O兄が出品してくれた標本も、六角板状結晶が見られる素晴らしい標本だ。

       
                     「大阪石」
                    【提供:O兄】

 (3) 「標本玉手箱」
      故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が入手した重品を持ち寄って、欲しい
     人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
      量も少なかったので、好きなものを好きなだけ採ってももらうことにして、”売れ残り”は少なかった。

       
                   「玉手箱」風景
                    【撮影:O弟】

      これから新妻の待つ東京に帰宅するHさんとは、これでお別れした。

 (4) 「大人の時間」
      時計は22時と早いので、恒例の”大人の時間”を開催した。今回参加できなかった
     愛知・Hさんが送ってくれた鉱物産地の地酒2本、K兄弟、Yさん、大阪・Tさんが地元のお酒を差
     し入れてくれ、私は地元山梨産ワインの新酒を持参した。

      それらを飲みながら、まずは翌日訪れる砂金産地の選定だ。下見で採集した砂金と現場の写
     真を回覧し、皆さんの意見や砂金が専門のMs.OとZさんのアドバイスで『産地A』を訪れることに
     決まった。

      そうと決まれば、あとは飲む、喋るだけだ。近くの何人かでそれぞれの話題に花が咲く。23時を
     回ったころ、朝早く出発し、登山・採集の重労働で疲れが見え始めた人もいるのでお開きとした。

4. 【第2日目】

 (1) 2日目のスタートだ!!
      2日目、朝6時過ぎに起きると寒い。外は快晴だが風が強そうだ。身繕いをしてストーブのある
     事務所に行くと皆さん集まっている。
      出発時にバタバタしないよう、昨夜の落札品や「玉手箱」の残りを車に積み込んでおく。

      皆さんも続々と集まってくる。7時に全員そろって朝食だ。味噌汁の具は、O弟こだわりの「アサ
     リ」がここのところ続いている。

       
                   朝食風景
                  【撮影:O弟】

      皆さんが食事している間に、PCに宿泊料金を入力すると、個人・グループ別の参加費が一発
     で出る。会計・Tさん夫妻が集金してくれ、1円の違いもなく、”御名算”だ。次回への繰越金、
     3,850円は私が預かる。

 (2) 出発前のセレモニー
      お姐さんが作ってくれた昼食を持って出発準備だ。午前8時に前庭に集合する。出発前に湯
     沼鉱泉の前で、社長・お姐さんと記念写真を撮る。

       
                社長・お姐さんを囲んで記念写真
                      【撮影:O弟】

      兵庫・N夫妻とは湯沼鉱泉でお別れだ。

 (3) ”ナゲットに挑戦だ!!”
      車を連ねて出発だ。産地は近いのだが、駐車スペースがないので公共施設の駐車場をお借り
     してとめさせてもらう。

      ウェーダー(胴長靴)を着込み、手にカッチャとパンニング皿を持った姿はいっぱしの”砂金採り”
     だが、半数は砂金採りが初めてという素人集団だ。
      この日は、東京地方でも”木枯らし一号”が吹いたほどで、風が強く、標高の高い、しかも河原
     の吹きっさらしなので防寒対策も欠かせない。

      20名近くが一か所に固まっての採集は難しいので、Ms.T、Zさん、そしてMHの3チームに分かれて、
     昼食を背負って、ゾロゾロと産地に向かう。
      われわれ素人にとって一番楽な川に設置された人工物の隙間に溜まった土砂の中から、砂金
     を採集しようという算段だ。
      カッチャを使って、溝の土砂をすくい上げ、パンニング皿に移すと、赤さびた針金のようなものが
     見える。ベテラン・Ms.Tの話では、このような場所は有望らしい。

          
              土砂をすくって皿に入れる                 皿には赤錆びた鉄屑も

      この日一番の砂金を採集した人に贈る”黄金のカップ”をO弟が準備してくれていた。

       
             砂金採り優勝カップ
                【提供:O弟】

      これを見ている参加者は気合は入るのだが腕が伴わない。Ms.TやZさんに手取り(足取り)
     してもらいながらパンニング方法を教えてもいらっている。そうこうしてしているうちに昼食の時間だ。
      湯沼鉱泉のお姐さんが作ってくれたお弁当をみんなでいただく。

      午後になると、指導の成果が出始めたのか、パンニング皿の底に”黄金色の粒”が見られるよ
     うになった。「これだけ小さい粒の砂金が見つかれば、”ナゲット”は絶対見逃さない」、とMs.Oに
     声を掛けられ、褒められているのか慰められているのか・・・・・。

       
                  パンニング皿に残る砂金
                   【採集、撮影:O弟】

 (4) 栄冠に輝くのは誰?
      溝の底に固まった粘土質の土があるのが気になった。大きな金棒で突き崩して、皆さんにパン
     ニングしてもらう。
      遠くからだが、K兄のパンニング皿に金色に光るものが見えた。近寄ってみると、真っ黒い砂鉄の
     中に小判型の砂金が半ば埋もれている。砂鉄はそのままにして大きな砂金だけを回収するように
     アドバイスする。
      長さは3mmくらいだが、厚みがあって、Ms.Oも「いいものだ」、とどこかで聞いたセリフを吐く。

      2時過ぎになって、三重、滋賀、大阪組が撤収することになり、関東組もソロソロその準備にか
     かる。
      ここで、大変なことが起きた。O兄が瓶に入れた採集した砂金に見惚れていたのか、瓶を落とし
     てしまったのだ。瓶のフタが開いていたから、中身が飛び散ってしまった。
      Ms.Oと私が瓶の周りの土砂をパンニング皿に入れて揺り分けて探すことにした。手早いMs.Oが
     「なかった」という。私は慎重に揺り分けていくと砂鉄の中からO兄が落とした大きな砂金のほかに
     小さなのが何粒か無事回収できた。

      駐車場に戻って、表彰式だ。大きな砂金をとった方に自己申告してもらうが、どうやらK兄のが
     一番のようだ。
      ( 「Zさんが採ったのは大きかった」、とか「K兄のを最後に採ったのはMHだ」とか、陰の声があった
       そこは良識ある大人の世界で、K兄に決定だ。 )
      この日のインストラクターの一人、Ms.Oから、優勝カップをK兄に授与していただく。

       
              Ms.OからK兄に優勝カップ授与

 (5) また会う日まで
      いつも、お天気には悩まされることが多いミネラル・ウオッチングにしては、珍しく2日間とも素晴ら
     しい秋晴れに恵まれた。こんなのは17年やって初めてのような気がする。
      採集している間は夢中になっていて気づかなかったが、”ふと”見渡せば川上村は秋真っ盛りで
     カラマツ(落葉松)の紅葉が美しい。
      ( 木枯らし一号が吹いたので、文字通り葉は落ちてしまうだろう )

       
                   川上村の紅葉
                    【撮影:MsT】

      初日、「松茸水晶」か「日本式双晶」はほとんどの人が入手できたが、2日目の砂金採集は
     難しかったようで、”ナゲット(1グラム以上を指すらしい)”は出なかった。
      ただ、パンニング技法は砂金だけでなく、希元素鉱物、トパズ、サファイアなどの採集にも役立
     つ便利な採集方法なので、それをほぼマスターできたのは大きな収穫だったはずだ。

      またお会いできるのを楽しみに、名残惜しいがお別れした。

5. おわりに

 5.1 『 ミネラル・ウオッチング 』
    われわれが採集していると、夫婦連れが登ってきた。ここを訪れるのが初めてらしく、湯沼鉱泉でも
   らった地図を手にしていた。

    ご主人と話をすると、私がミネラル・ウオッチングを始めた30年前に感じたと同じ悩みをお持ちだと知
   った。つまり、判らないことだらけなのだ。

    ・ どこで何が採れるか
    ・ そこにはどう行けばたどり着けるのか
    ・ どのように採ればよいのか(採集用具・方法)
    ・ 見つけた鉱物は何なのか
 などなど

    われわれから少し離れたところで採集していたが、めぼしい標本は採れなかったようで、N夫人はじ
   めメンバーが採った「松茸水晶」、「武石」、「灰ばんザクロ石」、そして「逆松茸水晶」などを見せて
   あげると感嘆しておられた。

       
                   「武石」
                 【採集、撮影:MsT】

          
                 「灰ばんザクロ石」                「逆松茸水晶」
                             メンバーの採集品の一部

    もともとこのHPを立ち上げたり、ミネラル・ウオッチングを開催するようにしたのも、上のような悩みを持
   っている人々に少しでもお役に立てればと始めたことなので、メールアドレスを書いたメモをお渡しした。
    ( 当然、私たちのグループにふさわしいご夫妻だとお見受けしたからだ )

    帰宅してまもなくSさんからメールが届いた。次回(2016年春)のミネラル・ウオッチングにはご一緒
   できるのを楽しみにしている。

6. 参考文献

 1) 八木 貞助:信濃鉱物誌,古今書院,大正12年
 2) 藤本 治義:南佐久郡地質誌,社団法人 南佐久教育会,昭和33年
 3) 長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,昭和35年
 4) 荻原 敬治:大日鉱山サンプル分析体験記2/2 水晶VOL15,鉱物同志会,2002年
 5) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
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