2014年秋のミネラル・ウオッチング














           2014年秋のミネラル・ウオッチング
             『水晶に始まり、・・・・・・・』

1. はじめに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋にミネラル・
   ウオッチングを開催するようになって16年目を迎えた。
    今回のテーマは、私の持論、『ミネラル・ウオッチングは水晶に始まり、水晶に終わる』をもじって、
   『水晶に始まり、・・・・・』と題して参加者を募ったところ、善男・善女18名が東は茨城県、西は大阪
   から集まって下さった。

    第1日目・・・・・・・山梨県の古典的産地を訪ねて

    第2日目・・・・・・・長野県の新産地を訪ねて

    参加者は、関東各都県、地元長野県、奈良、滋賀、そして大阪と広範囲で、初めて参加の茨城・
   Yさんや、3年ぶりの参加となった東京・KMさん、そして常連の皆さんで、和気藹々(わきあいあい)
   のミネラル・ウオッチングになった。

    初日の集合時間を9時に設定した。私が集合1時間前の8時に行くと遠方の人たちが何人か集ま
   っていたので、増富鉱山で『集合前の採集会』となった。
    ここの目玉は「コベリン(銅藍)」で、皆さんを以前良品を採集したポイントに案内し、何とか青紫の
   新鮮なサンプル標本を分配できた。

    全員が揃ったところで車を乗り合わせて林道を進み、駐車スペースで車を停める。前回、”ヒヤリ”
   としたことがあったので、全員でストレッチをして身体を軟らかくして出発だ。

     
             ストレッチして出発!!
               【撮影:O弟】

    道なき道を進むこと1時間あまり、白い水晶片が点々と見えてくる。産地は近い。10日ほど前の
   下見で、女性向けの「乙女鉱山」、男性向けの「坑口ズリ」に案内し採集開始だ。
    ”あった”、”大きい”という歓声がアチコチであがる。気が付けばお昼だ。「乙女鉱山」を訪れると
   Ms.Tがすばらしい巨晶を手にニコニコしている。妻が手にしているのは透明感の高い両錐の美晶
   だ。

     
                昼休み
               【撮影:O弟】

    お昼を食べた後は続きだ。一段落したら次の産地に移動する予定だったので、出発の声をかけ
   たが皆さん動く気配がない。ここから更に1時間も登って採集するより、良品の出ているこの場での
   採集を暗黙のうちに選択したようだ。
    標高の高いこの辺りは、晩秋の冷気が迫ってきたので下山の時間だ。今夜の宿「湯沼鉱泉」の
   湯に浸かって温まるのを夢見ながら、下山する。

    湯沼鉱泉に着くと前泊したTさんの奥さん、現地集合の茨城・Nさんと初参加のYさんが待っていた。
   社長にMs.Tと妻の採集品を見てもらうと、「馬鹿にしていたが、良(い)いもんだ」、と褒めてくれた。

    今回参加できなかった兵庫・N夫妻、長野・MZさん、東京・MYさん、2日目のみ参加の長野・MTさ
   んが送ってくれた標本や皆さんが持ち寄ってくれた標本が仕分けされ、続々と「オークション」と「玉
   手箱」のテーブルに並べられていく。
    まだ浴槽が1つしかないので宴会までの間に、男性→女性の順で入浴する。

    女性陣が風呂から上ると宴会だ。宴会部長役も板についた東京・Kさんの司会で夜の部がスター
   トし、まずはO兄の音頭で「乾杯!!」。冷たいビールが今日の疲れを忘れさせてくれる。お姐さん
   が腕によりをかけた料理には湯沼鉱泉の山で社長が採った『松茸』も入る豪華版だ。しばし歓談の
   後、参加者の近況報告だ。皆さんの笑顔がすばらしい。

       
        貴重な『湯沼鉱泉産 松茸』料理

    宴会を終え、「オークション」に移ったのは、8時半だった。いつもオークショナーを努めてくれる兵
   庫・Nさんの奥さんが病むなく(?)欠席のため、若手のHGさんがオークショナーだ。最初はギコチな
   かったが、次第に熱が入り、売り上げは順調に伸びる。神奈川・Tさんの手で標本名・産地・出品者・
   落札者・落札金額がPCに次々と入力され、15年前とは様変わりだ。
    90点近い標本がセリ落され、売上金は25,000円で、一人当たり1,500円あまり宿泊費が安くなる
   勘定だ。

    「標本玉手箱」には、”隠れた名品”がひそみ、全員一斉に好きなだけ取ってもらい、例年になく
   ”売れ残り”が少なかった。時計は10時半を回り、短時間だけ”大人の時間”を開催した。
    石(酒、それとも話?)好きなメンバーが集まり、私の持ち込んだヌーボー(新酒ワイン)や滋賀・
   Nさん、茨城・Nさん持参の地酒をいただきながら、話は尽きなかったが、11時30分前にお開きにし
   た。

    2日目、5時前に眼が覚め、6時前に駐車場に行くと空には晴れ間も見えるが朝焼けだ。7時から
   朝食だ。皆さんが食事している間に、PCに宿泊料金を入力すると、個人・グループ別の参加費が
   一発で出る。会計・T夫妻が集金してくれ、1円の違いもなく、”御名算”だ。
    社長・お姐さんに入ってもらい記念写真を撮り、出発だ。

    「長野県の新産地訪ねて」で、最初に訪れたのは、2013年秋に発見された水晶の新産地だ。9月
   中旬下見に訪れると、派手に掘り返されて”絶産”かと思ったが、まだ手付かずのポイントが残され
   ており、この産地が初めての人も多いのでそこに皆さんを案内した。2日目のみ参加の長野・MTさ
   ん、3年ぶりに参加の東京・KMさんも合流だ。
    雨がパラついたがいつの間にか止んでいた。初めての人を優先し、私のポイントを掘ってもらうと
   次々に巨晶、美晶が出てくる。滋賀・Nさんが手にしたのは、大きくて透明感のある良品だ。大阪・
   Tさんが手にしたのは、この産地一、二を争う逸品だ。

    昼時が近づいたが、雨足が強まり、最後の産地へと急いだ。昼食は手の空いたときに銘々勝手
   に摂ってもらうことにする。
    ここでは露頭を叩いて晶洞を開けるかズリ採集かだ。この頃になると雨も止んだ。滋賀・Nさんと
   茨城・K兄が露頭に取り付いて離れない。近づいてみると、石英脈の膨らんだところから水晶や黄
   鉄鉱が付いた群晶を掘り出している。解散時間が近づき、急いで掘り出してもらう。両氏が持ち帰
   らない分は、その場でジャンケンして皆さんに分配された。

    今回のミネラル・ウオッチングは『水晶に始まり、水晶に終わる』2日間だった。皆さんが採集した
   すばらしい標本を見せていただき、深山で日ごろの雑事を忘れ、気の置けない石友と過ごした時間
   は何ものにも代えがたい。
    私の気力・体力の続く限り、継続したいと考えているので、参加してください。
    ( 2014年11月 開催 )

2. 第一日目【山梨県の古典的産地を訪ねて】

 (1) 集合前のミネラル・ウオッチング
      初日の集合場所はICから離れているので余裕をみて、9時集合にしていた。神奈川・T夫妻と
     ICで合流し、1時間前の8時に集合場所に着くと遠方の人たちが何人か集まっていた。集合まで
     1時間近くあるので、『集合前のミネラル・ウオッチング』だ。
      ここには、「コベリン(銅藍)」や「硫砒銅鉱」で有名な増富鉱山があったので、以前良品を採集
     したポイントに皆さんを案内した。

     ・ 山梨県増富鉱山のコベリン(銅藍)
       増富鉱山の鉱物(1)
       (Covelline of Masutomi Mine , Minerals of Masutomi Mine (1) , Yamanashi Pref.)

      実は、10月中旬、中高生を甲武信鉱山に案内したとき支援してくれた石友・MYさんが増富鉱
     山に行きたいというのでポイントの地図を書いて渡した。その日の夜、MYさんから、「教えてもら
     ったポイントでコベリンが採れました」とメールがあり、今でも採れると判っていたからだ。

       
        『集合前のミネラル・ウオッチング』
              at Masutomi Mine

      それらしい石を叩くと、黒く変色したコベリンは出てくるのだが新鮮なのが出ない。集合時間の
     間際になって、ようやく破面に『青紫色』のコベリンが見られる標本が得られ、小割して遠方から
     の朋に差し上げた。

 (2) 登山口へ
      全員揃ったところで、乗り合わせて登山口へ行く。採集道具や昼食をザックに詰め、出発の準
     備ができたところで”ストレッチ”だ。前回、足元の悪いズリで転倒した弾みで掌をしたたか打ち
     ”晴れ女”ならぬ”腫れ女”になってしまった参加者がいたので、その反省から導入したのだ。皆
     さん、日ごろの運動不足と歳のせい(失礼!)で硬くなった身体をほぐしたところで出発だ。

 (3) 古典的産地を目指せ
      道なき道を縦列で進む。少し進んでふと見た木立には、熊が引っ掻いた爪痕がある。まだ新
     鮮で、その辺りをウロウロしているかも知れないと思うと不安だが、大人数なのが救いだ。

       
                  熊の爪痕

      小休止していると、後尾を歩いていた京都・Tさんが、「こんなんがありました」、と見せてくれた
     のは頭があり太さ2センチ、長さ5センチはある立派な水晶だ。ここまで石英のカケラ一つなかっ
     たのに、突然の水晶出現はミステリーだ。「熊さんのコレクションなので、それを横取りした人間
     を追ってくる」、という私の推理を披露したら、気のせいか皆さんのペースが上ったようだ。

 (3) 初めての古典的産地
       歩くこと1時間あまり、白い水晶片が点々と見えてくる。産地は近い。皆さんにとって、ここは
      初めて訪れる産地なので否が応でも期待が高まる。10日ほど前の下見で、女性向けと男性
      向けの採集ポイントを決めておいた。
       女性向けは、斜面の下のほうだが、沢筋から離れた高台にあるので、落石があっても安全
      な場所だ。ここで、Ms.Tと妻が採集することにした。ここを、O兄は「乙女鉱山」と呼んでいたが、
      某氏は「昔乙女鉱山だ」、と呟(つぶや)いていた。
       ( 良好な人間関係を損ねないよう、誰かは秘しておく)
       男性向けは、転げたら10メートルは落ちそうな急斜面の上の「坑口前のズリ」で、横一列に
      並ぶ。それぞれの場所で採集開始だ。

          
                 「坑口前のズリ」                      「乙女鉱山」
                                  採集風景

       この近くにいくつかあった坑道の1つなので、私はここを『A坑』と名づけている。採集を始めて
      まもなく、”あった”、”大きい”という歓声がアチコチであがる。肩と肩が触れ合う間隔で掘って
      いるのだが、場所の当たり外れ(運、それとも日ごろの行いの良否)もあるようだ。
       掘っていると、”下の方(深く掘った方)が良さそうだ”、となった。ここで、一つ

       『 ○○○と掛けて、大名行列と解く
         その心は、
         下に〜、下に〜
                         by MH 』

       気が付けばお昼だ。下に置いたリュックの所まで戻る途中、「乙女鉱山」を訪れるとMs.Tが
      すばらしい水晶を手にニコニコしている。妻が手にしているのは透明感の高い両錐の美晶だ。
       ( これは、左が「右水晶」、右が「左水晶」という珍しい連晶だ。何のことかわかります?)

       急斜面を下る途中でK兄が拾った水晶も大きくて良いものだ。
       ( 斜面の上にあれだけあるのだから、斜面の下にはもっとあるはずだ
                                        ・・・・「次回もここか」 MH )

        
                  妻が採った水晶

       お昼を食べた後、続きを掘る。一段落したら次の産地に移動する予定だったので、出発の声
      をかけたが皆さん動く気配がない。ここから更に1時間も登って採集するより、良品の出ている
      この場での採集を暗黙のうちに選択したようだ。

       出が止まったのを見てか、O兄は「乙女鉱山」に移動だ。O弟も後を追う。滋賀・Nさんは、アッ
      チを掘り、コッチを掘ってポイントを探しているが、「出〜へんナ」とぼやいている。
       ( これは、幸運(強運?)を使い切らない老獪(失礼)な作戦だったと2日目に知ることになる )

       標高の高いこの辺りは、晩秋の冷気が迫ってきたので下山の時間だ。「乙女鉱山」に立ち寄
      るとMs.Tがさらに立派な巨晶を手にニコニコしている。O兄が「奥さんの採った両錐は大きくて
      エ〜でェ」というので見せてもらうと”良いモン”だ。

       【後日談】
        ここで水晶を採掘していた当時の遺物=『産業遺物』を私が集めていることを知っている
       Ms.Tが「碁石」を妻に渡してくれていた。妻は、皿や湯呑みなどの陶磁器の破片を掘り出し
       ていた。
         2つに割れた湯呑みは、割れ口がピッタリ合い、接合すると縁に多少の欠けがあるものの
       往年の姿を取り戻した。

           
                  碁石                     湯呑み
                     「乙女鉱山」の『産業異物』

        これらを見ると、水晶採掘のため集落を離れここでキャンプ生活をしていたようだ。一日の
       労働が終わったあと、お茶を飲みながら碁を打っていたのだろうか。あるいは、定期的に町
       から水晶を買いに来る業者とお茶を飲みながら値段の交渉でもしていたのだろうか。

       リュックのところに戻り、K弟が見せてくれたインクルージョン入りの透明水晶は美しい。イン
      クルは、「武石」のように見えるが緑黒色で直方体だから「灰鉄輝石」かなとも思われる。

       出発間際に、京都・Tさんが、「こんなんがありました」と見せてくれた水晶もすばらしい。
      『水晶に始まり、・・・・』はTさんのこの日を一言で表している名句だ。(自画自賛)

 (4) 心は軽く、リュックは重く
       今回のテーマ『水晶に始まり、・・・・』にふさわしい成果が皆さんあったようだ。今夜の宿
      「湯沼鉱泉」の湯に浸かって温まるのを夢見ながら、下山する。

       
              心も軽く下山する一行

      ○○峠を越えて川上村に入ったころには、陽もトップリと暮れていた。皆さんの大好きな「ナナ
     ーズ」でお買い物。私は、ワインの新酒「ヌーボー」があったので”大人の時間”用に仕入れた。

3. 【湯沼鉱泉の夜は更けて】

 (1) 定宿・「湯沼鉱泉」に到着
      この日の宿・湯沼鉱泉に着くと、前泊したTさんの奥さん、現地集合の茨城・Nさんと初参加の
     Yさんが待っていた。
      社長にMs.Tと妻の採集品を見てもらうと、「○○○の産地は馬鹿にしていたが、良(い)いもん
     だ」と褒めてくれた。

      今回参加できなかった兵庫・N夫妻、長野・MZさん、東京・MYさん、2日目のみ参加の長野・
     MTさんが送ってくれた標本や皆さんが持ち寄ってくれた標本が仕分けされ、続々と「オークショ
     ン」と「玉手箱」のテーブルに並べられていく。
      まだ浴槽が1つしかないので宴会までの間に、男性→女性の順で入浴する。

 (2) 宴会
      女性陣が風呂から上ると宴会だ。宴会部長役が板についた東京・Kさんの司会で夜の部が
     スタートした。まずはO兄の音頭で「乾杯!!」だ。

        
         司会役がピッタリの東京・Kさん

      冷たいビールが今日一日の疲れを忘れさせてくれる。私の携帯の万歩計を見ると、12,194歩
     歩いている。下見の時、私が一人で2時間以上長く歩いて『A坑』→『A’坑』(新産地)→『B坑』
     を回った時の歩数が10,875歩だったから、この日は皆さんを待って足踏みしていたことになる。
      それにしても、皆さん1万歩以上歩いたのは確かで、お疲れだったはずだ。

      しばし歓談の後、参加者の近況報告だ。神奈川・Tさん夫妻は愛犬・Sちゃんを連れての参加
     だ。東京・HGさんは院を修了しても大学に残り、「ハヤブサ2」と同時に打ち上げる予定の小型
     衛星のソフト開発に取り組んでいる。

           
              神奈川・Tさん一家                 東京・HGさん

      京都・T夫妻は久しぶりにお二人揃っての参加だ。Tさんが定年退職されたので、これからは
     今まで以上にご一緒できそうだ。大阪・Tさんは、この4月から家族を関東に残しての単身赴任
     生活にも慣れたようだ。来週末は奥さんが大阪に来るとのこと、新婚時代に戻ったようだ。

           
                 京都・T夫妻                       大阪・Tさん

      茨城からNさんが初参加のYさんを誘ってきてくれた。”この会に相応しい人物”とお見受けした
     ので、常連になってくれるのを願っている。

           
                   茨城・Nさん                初参加・Yさん

      同じく茨城からいつも仲の良いK兄弟が駆けつけてくれた。滋賀・Nさんは、「ドタキャンのN」の
     汚名を返上すべく、万障繰り合わせての参加だ。

           
                   茨城・K兄弟                 滋賀・Nさん

      締めは、O兄弟だ。O兄は、「日本産鉱物の自力での完全収集」だけでなく、農園も忙しそうだ。
     O弟は、糸魚川で採集したすばらしいヒスイを熱心に解説してくれ、司会者に結論を急かされる
     一幕もあった。

           
                  O兄                    O弟

      蛇足は私たち夫婦だ。妻は仕事とお茶、私は町内会とこどもたちの案内で自分のためのミネ
     ラル・ウオッチングは数えるほどしかできていない。
      これからも、皆さんとって初めての産地(できれば新産地)や車横付け産地を案内させていた
     だく決意を述べさせてもらった。

 (3) 「オークション」
      宴会を終え、「オークション」に移ったのは、8時半だった。いつもオークショナーを努めてくれる
     兵庫・Nさんの奥さんがご主人の都合で病むなく(?)欠席のため、若手のHGさんがオークショ
     ナーだ。最初はギコチなかったが、次第に熱が入り、売り上げは順調に伸びる。今回、湯沼鉱
     泉を手伝ってくれている地元のMさんが参加するという新しい試みも取り入れた。
      ( 日曜日も連泊した茨城・Nさん一行は、月曜日にMさんに甲武信鉱山を案内してもらい、
       念願の標本が採集できたとメールがあった。先週の朝の連続ドラマ「マッサン」ではないが、
       『情けは人の為ならず』だ。)

      神奈川・Tさんの手で標本名・産地・出品者・落札者・落札金額がPCに次々と入力され、この
     会がスタートした15年前に黒板に書いていたのとは様変わりだ。

           
              オークショナー・Hさん                データ集計・Tさん一家

      Tさんが入力してくれたEXCELデータを一覧表にしてみた。このミネラル・ウオッチングに参加さ
     れる皆さんの鑑定眼は確かなようで、希少な標本は競る人も多く、市価に比べれば大幅に廉
     (やす)いものの、それなりの高値がついた。
      今回参加できなかったメンバーが送ってくれた標本にも高値がついた。N夫妻が送ってくれた
     「希元素鉱物」セットは、この種の鉱物が好きな長野・MTさんがいないため、次回に出品させて
     いただくこと、ご了解ください。

      一部の標本は、『採集禁止』になる前の採集品や『購入品』であることをご承知ください。
                    敬称略

No 標本名 産地・仕様 出品者 落札者 落札金額
1 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 100
2 亜鉛スピネル 長垂 MZ MH 600
3 魚眼石 久万町 MZ 東京・K 100
4 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 100
5 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 50
6 パイロファン石 萩平鉱山 MH O兄 50
7 満バン柘榴石 和田峠 MH 京都・T 300
8 満バン柘榴石 和田峠 MH HG 800
9 満バン柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH Ms.T 200
10 満バン柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH 大阪・T 500
11 ホセ鉱+自然金 甲武信鉱山 MH 東京・K 1,300
12 コバルト華 北山村 O兄 茨城・N 400
13 オパール 国見 O兄 茨城・Y 500
14 轟石 船岡鉱山 O兄 茨城・Y 100
15 含銅アロフェン 船岡鉱山 O兄 HG 200
16 紫水晶 朝来町 O兄 MH 300
17 針ニッケル鉱 奥村鉱山 O兄 HG 300
18 灰バン柘榴石 東沢 MH 京都・T 100
19 黒曜石 和田峠 MH 茨城・Y 100
20 黒曜石 和田峠 MH 地元・M 100
21 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 500
22 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 800
23 黒曜石 和田峠 MH 京都・T 1,000
24 やんだ鉱物セット やんだ Ms.T HG 300
25 白鉛鉱 亀山盛鉱山 茨城・K 茨城・Y 200
26 ブラウン鉱 戸根鉱山 MZ MH 300
27 中宇利石 中宇利鉱山 O弟 茨城・N 500
28 中宇利石 中宇利鉱山 O弟 茨城・N 700
29 パイマン 田口鉱山 NS O兄 800
30 パイマン 田口鉱山 NS O兄 400
31 弘三石 満越 NS 大阪・T 500
32 弘三石 満越 NS 大阪・T 500
33 菱沸石 春日鉱山 MZ MH 100
34 蛋白石 波佐見町 MZ MH 400
35 ベスブ石 東沢 MH 茨城・Y 100
36 ベスブ石 東沢 MH 地元・M 100
37 ベスブ石 東沢 MH HG 100
38 ベスブ石 東沢 MH O兄 100
39 ベスブ石 東沢 MH 茨城・N 600
40 ベスブ石 東沢 HG 茨城・N 500
41 ベスブ石 東沢 MH 地元・M 1,100
42 鋭錐石 竹森 MH O兄 100
43 ハイドロウッドワード石 御池鉱山 NS 茨城・Y 100
44 クリストバル石 麦草峠 O弟 HG 200
45 亜鉛スピネル 長垂 MZ 茨城・Y 100
46 亜鉛スピネル 長垂 MZ MH 100
47 灰バン石榴石 東沢 MH 地元・M 600
48 紅電気石 長垂 MZ MH 100
49 方解石(蛍光) 生野鉱山 HG O兄 200
50 方解石(蛍光) 生野鉱山 HG 茨城・Y 300
51 ソーダ束沸石 福津市 MZ 茨城・Y 100
52 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 500
53 ソーダ束沸石 福津市 MZ MH 100
54 斜開簾石 秩父鉱山 MY MH 200
55 斜開簾石 秩父鉱山 MY 大阪・T 300
56 斜開簾石 秩父鉱山 MY 京都・T 500
57 斜開簾石 秩父鉱山 MY 茨城・Y 50
58 斜開簾石 秩父鉱山 MY 茨城・Y 50
59 ベスブ石 秩父鉱山 MT 京都・T 400
60 苦土スピネル 秩父鉱山 MT 茨城・N 100
61 クリントン石 秩父鉱山 MT 茨城・Y 100
62 燐灰ウラン石 長垂 MZ MH 500
63 燐灰ウラン石 長垂 MZ 大阪・T 500
64 束沸石 久万町 MZ O兄 800
65 紅電気石 長垂 MZ HG 200
66 束沸石 久万町 MZ MH 100
67 クリノメーター MH O兄 100
68 饅頭峠写真 A3 O弟 MH 300
69 饅頭峠写真 A3 O弟 MH 300
70 2014年月遅れGWMW写真 A3 O弟 MH 300
71 2014年月遅れGWMW写真 A3 O弟 MH 300
72 饅頭峠写真 L版 O弟 大阪・T 100
73 饅頭峠写真 L版 O弟 東京・K 100
74 饅頭峠写真 L版 O弟 Ms.T 100
75 饅頭峠写真 L版 O弟 HG 100
76 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
77 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
78 饅頭峠写真 L版 O弟 MH 100
79 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 大阪・T 100
80 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 東京・K 100
81 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 茨城・K 100
82 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 HG 100
83 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 Ms.T 100
84 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 MH 100
85 2014年月遅れGWMW写真 L版 O弟 MH 100
86 電動歯ブラシ 乾電池付き O弟 地元・M 100
87 水晶絵葉書 甲府市 MH Ms.T 50
88 水晶絵葉書 甲府市 MH Ms.T 50
  合 計    25,000

      90点近い標本がセリ落され、売上金は25,000円で、一人当たり1,500円あまり宿泊費が安くな
     る勘定だ。

 (4) 「標本玉手箱」
      故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が入手した重品を持ち寄って、欲しい
     人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。担当は、K兄弟だ。

      「標本玉手箱」には、”隠れた名品”がひそみ、全員一斉に好きなだけ取ってもらい、例年にな
     く”売れ残り”が少なかった。時計は10時半を回り、短時間だけ”大人の時間”を開催した。

 (5) 「大人の時間」
      石(酒、それとも話?)好きなメンバーが集まり、私の持ち込んだヌーボー(新酒ワイン)や滋
     賀・Nさん、茨城・Nさん持参の地酒をいただきながら、話は尽きなかったが、11時30分前にお開
     きにした。

4. 【第2日目】

 (1) 2日目のスタートだ!!
      5時前に眼が覚め、6時前に駐車場に行くと空には晴れ間も見えるが朝焼けだ。古来、天気に
     ちなむ諺(ことわざ)には『朝焼けは雨』とあるが、雨降りに会う確率が高いこの会としては驚く
     ほどのことはない。
      いつものように、7時から朝食だ。皆さんが食事している間に、PCに宿泊料金を入力すると、
     個人・グループ別の参加費が一発で出る(筈だった。少し式を今回に合わせて修正し)、会計・
     Tさんから徴収金額が発表され、夫妻が集金してくれた結果、1円の違いもなく”御名算”だ。

           
               徴収金額発表                    集金
                         会計担当・H夫妻

      社長・お姐さんに入ってもらい記念写真を撮り、出発だ。

        
                  社長・お姐さんと記念写真
                       【撮影:O弟】

 (2) 「水晶」新産地
      産地の入口で、2日目だけ参加の長野・MTさん、3年ぶりに参加の東京・KMさんと合流して
     駐車場に入った。
      2日目の「長野県の新産地を訪ねて」で、最初に訪れたのは、2013年秋に発見された水晶の
     新産地だ。6月の『月遅れGWミネラル・ウオッチング』や8月の『T大地学巡検』などで訪れていた
     が、今回の参加者の半数にとって初めての産地だし、9月中旬下見に立寄ったとき、狙ったポイ
     ントでの試掘ではまだまだ出そうな雰囲気だったので案内することにしたのだ。

      雨が降り出したので、カッパを着て産地に向う。30分ほど歩いてようやく産地に着くと、9月に
     訪れたときよりも掘り込まれているが、私が狙ったポイントは荒らされていない。そこに初めての
     人たちに入ってもらい、2回目の人はそれぞれ好きな場所で採集してもらうことにした。

       
              新産地での「水晶」採集

      掘り始めてすぐに、”あった”、”きれい”の声があがる。ここの水晶は、透明感が高く、形も松
     茸、断面が三角とバラエティに富んでいる。私は『紫水晶』も採っているので注意を促す。
      私は初めての人たちのところで”土の掻きだし”のお手伝いだ。ズリを掘ってでたドロドロの重
     たい土を後に移動する力が要る仕事(?)だ。雨もやみ、暑いのでカッパを脱いで奮闘だ。
      水晶を掘っている人たちは泥にまみれた水晶を見逃すことが多く、これを拾って未だ採ってい
     ない人に分配するのがもう一つの私の役目だ。

      滋賀・Nさんは、私の斜め上の”ベテラン領域”でやっていて、出ていないようだった。「初心者
     はコッチですよ」、と声かけたが遠慮しているらしくその場を動こうとしなかった。やがて、「こん
     なんがあった!」とNさんが皆に見せてくれたのは、遠めにも透明感と大きさが判る良品だ。
     「ヘヘー、恐れ入りました」と平身低頭するO兄と私だった。
      更に追い討ちをかけるようにNさんが「日本式双晶ポイのがありました」と言うではないか。見
     せてもらうと両翼の面が平行で、c1、c2軸の角度も90度前後だ。

       
              Nさん採集の『日本式双晶』

      裏面を見ると、2枚の水晶の面が傾いているので双晶ではない。自分が採ったものだと”双晶
     だ!”、”双晶であって欲しい”と未練がましいが、他人が採ったものだと”即断”するMHだ。

      Nさんに負けじと大阪・Tさんが掘り出したのは、すべて頭付きの何本かが束になった大きな
     水晶だ。この産地で今まで私が見た中で1、2を争う『美晶』だ。

       
                 Tさん採集の『美晶』

 (3) 「露頭」の新産地
      昼時が近づいたが、雨足が強まり、最後の産地へと急いだ。昼食は手の空いたときに銘々で
     摂ってもらうことにする。

      ここでは露頭を叩いて晶洞を開けるかズリ採集かだ。この頃になると雨も止んだ。滋賀・Nさん
     と茨城・K兄が露頭に取り付いて離れない。近づいてみると、石英脈の膨らんだところから水晶
     や黄鉄鉱が付いた群晶を掘り出している。またしても滋賀・Nさんの上に幸運の女神が微笑ん
     でいる。解散時間が近づき、急いで掘り出してもらう。

      解散場所に集合すると、滋賀・Nさんと茨城・K兄が持ち帰らない先ほどの”ガマだし品”を「玉
     手箱」に提供してくれた。その場で、ジャンケンし、勝った人から好きな標本を取ってもらい分配
     した。

       
              現地で「標本玉手箱」

 (4) また会う日まで
      今回のミネラル・ウオッチングは『水晶に始まり、水晶に終わる』2日間だった。皆さんが採集し
     たすばらしい標本を見せていただき、深山で日ごろの雑事を忘れ気の置けない石友との過ごし
     た時間は何ものにも代えがたい。

5. おわりに

 5.1 『 安全第一 』
      2014年6月、参加者の一人が下山途中滑って転んだ弾みで、打ち身というアクシデントに見
     舞われた。そこで、今回は出発前に「ストレッチ」を導入したり、両手を空けて移動などを徹底し
     た。また、参加者数も私の眼が十分届くのは20名位が限度なので、参加をお断りせざるを得な
     い方もあったが事情をご了解いただきたい。これらの結果、参加者の協力もあり、無事終了する
     ことができた。
      これからも、『安全第一』のミネラル・ウオッチングを私の気力・体力の続く限り続けたい。

      ただ、15年目を迎え、参加者の半数は還暦を過ぎ、関西組にとって土日で片道500kmも
     の運転とミネラル・ウオッチングが”シンドく”なり、アクシデントの危険性が高まってくるのも事
     実だ。
      今回も産地横付けの場所を選んでコースに入れたのも、ミネラル・ウオッチングで歩く負担を
     出来るだけ減らそうという配慮からだ。

      そもそも、このミネラル・ウオッチングは「湯沼鉱泉」の宿泊客確保の目的で企画しているので
     解決策は簡単ではないのだが、新しい参加者を増やすことはその一つになりうると思う。

      参加してみたいという方はメールください。
      メールアドレス: mineralhunters@yahoo.co.jp

      【後日談】
      帰宅後、採集品を洗ってみると、面白い産状、形の鉱物があったので紹介する。皆さんが採集
     した中にも同じようなものや、もっと珍しいものがあるに違いない。

             
              細長い水晶              「武石」を抱く水晶

             
                平板水晶                 松茸水晶
                         1日目の採集品

       もっと細長いのをHGさんが採っていた。茨城・K弟の採った水晶のインクルは「武石」なのか・・。
      「平板水晶」は全員が採ったはず。ここでは「松茸水晶」は出ない、と言ったが訂正する。
      そのくらい産状のバラエティが豊富な産地だ。

       
              不明鉱物(雲母?)
               2日目の採集品

       2日目に採集したのは、NさんとK兄から分配してもらったこの標本だけだ。外観や硬度など
      から「白雲母」だと思われるが、だとすると珍しい産状だ。

 5.2 『 干し柿づくり 』
     「秋のミネラル・ウオッチング」の時期がちょうどわが家の『 干し柿づくり 』の時期だ。湯沼の
    お姐さんから、「MHからいただいた干し柿は美味しかった」と言われると作る張り合いもでようと
    いうものだ。

     北風が吹き庭のハナミズキの木の葉が落ち始めるのを目安に、「甲州百匁柿」を買いに行く。
    今年は柿が豊作ということで、小ぶりなものは50円、大き目のものでも1個70円くらいだ。40個あ
    まり買ってきたがこれでは足りず、20個あまり買い足しに走った。妻の勤務先の同僚から40個
    買うことになっていて、その半数が届いた。
     皮むきは私の仕事だ。その前に包丁を研いで切れ味を良くしておく念の入れようだ。そして、紐
    に挟んで軒先に吊るす。
     後は、北風と太陽にお任せだ。

     お正月間近になれば渋柿が甘柿に変身し、毎年到着を心待ちにしている知人、親類縁者に送
    る予定だ。

       
            わが家の「干し柿」

6. 参考文献

 1) 藤本 治義:南佐久郡地質誌,社団法人 南佐久教育会,昭和33年
 2) 長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,昭和35年
 3) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
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