2010年 秋のミネラルウオッチング Part2









         2010年 秋のミネラルウオッチング Part2

1. 初めに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWと
   秋の年2回、定期的にミネラル・ウオッチングを開催するようになって9年目を迎えた。
    2010年秋は、「山梨県・長野県のマル秘産地を訪ねて」、と題して開催することにした。しかし
   開催する週に入って、台風の上陸、しかも山梨、長野を直撃することが予想され中止にし
   た。
    しかし、何人かから、『雨が降ろうが、槍が降ろうが行きたい』、とのメールをいただき
   少しでも湯沼鉱泉の売り上げに寄与できれば、との思いもあり、規模を縮小して開催し、
   その顛末はすでにHPに掲載した。

    ・2010年 秋のミネラル・ウオッチング
     ( Mineral Watching Tour , Fall 2010 , Nagano Pref. )

    このとき訪れる予定だった『千曲川の砂金』を採集したい、という希望があり、『長野県
   の金を求めて』
、と題して「2010年秋のミネラル・ウオッチング Part2」 を開催した。

    初日は、セリウム・フローレンス石で一躍有名になり、2010年最もホットな産地の1つだ
   った「金鶏鉱山」を名古屋・S夫妻、千葉・KMさん、神奈川・T夫妻と訪れた。ズリに案内し
   た後、私とTさんは、『自然金』が狙いで、沢の土砂をパンニングすると初回から細かい自
   然金が皿の底に残った。

    駐車場に戻ると見慣れた車が停まっていて、滋賀・Oさんだった。なんでも、信濃路の秋の
   味覚を追って諏訪まで来たついでに様子を見に来たらしい。翌日われわれが『千曲川の
   砂金』に挑戦することを話すと急に乗り気になり、同行することになった。
    私たちの定宿・川上村の「湯沼鉱泉」に明るいうちに到着すると、社長、お姐さんそして
   4匹の”モコモコ”の川上犬の子犬たちが出迎えてくれた。神奈川・KWさんもいて、にぎや
   かになった。

    湯沼鉱泉の熱いお湯を浴びた後、一休みしてから、お待ちかねの宴会がOさんの乾杯の
   音頭でスタートした。
    テーブルには、鹿肉の鍋(シシ鍋)、刺身、てんぷらなど地元の食材を生かしたお姐さん
   自慢の料理が並んでいる。
    熱々の鍋をつつきながら、よく冷えたビールを酌み交わすと身体が火照ってくる。最後は
   『信州信濃の新ソバ』で、これだけ食べると皆さん満腹状態だ。

    食後は、恒例になっているお楽しみの『標本玉手箱』と『オークション』だ。オークショ
   ナーはS夫妻で、小人数なのと「H財閥」、「Hファンド」そして「N家」など資金力豊かな
   メンバー不在でやや盛り上がりに欠けるきらいはあったが逸品にはそこそこの値がついた。
    私は、『乙女鉱山絵葉書セット』や『楢山のソロバン玉石』など10点ほど提供し、『三重
   県桑名市のメッセル石』などを落札した。
    『玉手箱』は、KMさんの担当で、順番を決める”ジャンケン”の決着がなかなかつかなか
   ったが、順番が決まるとあっという間に新しい持ち主が決まった。

    今回大人だけの文字通り『大人の時間』では、私が持参した千葉の地酒「壽萬亀(じゅ
   まんがめ)」を飲みながら、この日あった出来事を振り返り、面白、おかしく、文字通り
   ”酒の肴”にして盛り上がった。

    翌朝、朝食を食べたあと、男女格差をつけた宿泊費を初めて会計を担当するT夫妻に
   支払い、恒例の社長を囲んでの写真を撮り、2日目のミネラル・ウオッチングがスタートだ。

      
          社長を囲んで記念写真【撮影:Oさん】

    すでに下見しておいたポイントでパンニングすると、一皿目から砂金が見つかり、皆さん
   興奮気味だ。砂金採集どころかパンニングそのものもがほとんどの人にとって初めてだが
   砂金掘りのベテラン・KWさんの指導でパンニング技術をのみこんで行く。
    こうして、皆さん満足できる数だけ採集できたようだ。

    Tさんの奥さんが、「大深山の輝石産地に行きたい」、と言うので、帰り道にある『原の
   輝石』産地を案内した。Tさんの奥さんは、「獅子岩の輝石」産地を既に訪れたようだが
   小さいものしかなく不満があったようだ。ここでは、最大1cmクラスもあり、喜んで採集して
   いた。
    私は、この日の内に単身赴任先の千葉県に戻る都合もあり、後ろ髪を引かれる思いで
   皆さんとお別れした。
    帰宅してメールを開くと、皆さん無事帰宅されたようで一安心。いつも変わらず暖かい
   もてなしをしていただいた、湯沼鉱泉社長とお姐さんに厚く御礼を申し上げる。
    ( 2010年11月採集 )

2. 【第1日目】

 (1) 諏訪IC出口「おぎのや」に集合
      中央道・諏訪IC出口近くの釜飯「おぎのや」の駐車場に行くと、名古屋・S夫妻、千葉
     KMさん、神奈川・T夫妻がすでに集合していた。皆さん、すでに顔見知りになっている。
      出発前のトイレ休憩で店内に入ると、”赤”、”金”で彩られ、ハングルや中国語の表
     記が目立つ。この観光地も、海外からのお客が増えているようだ。

       「おぎのや」店内

 (2) 目指せ「セリウム・フローレンス石」
      この日は、T夫妻、KMさんが訪れていない、セリウム・フローレンス石で一躍有名に
     なり、2010年最もホットな産地の1つ、「金鶏鉱山」が目的だった。
      ズリにはすでに先客が何人かいて、相変わらずの賑わいだった。最近某会が採集会
     を開いたそうで、叩かれた露頭は一段と小さくなっていた。
      2010年6月の「月遅れGWミネラル・ウオッチング」で、素晴らしい『緑水晶』を”拾った”
     Sさんの奥さんは、水晶を含むズリ石がメッキリ少ないのに驚いていた。

       「金鶏鉱山」露頭

      私とTさんは、『自然金』が狙いで、沢の土砂をパンニングすると初回から細かい金が
     皿の底に残った。結晶の角がほとんど磨滅していない”山金”のようで、中には2mm
     近い大きなものもある。

         
           パンニング・Tさん                   採集品
                       「自然金」採集

      金鶏鉱山は、元々Bi(ビスマス:蒼鉛)やTe(テルル)鉱物で有名になった場所で、
     縁起の良い名前がついた古い坑道前のズリに移動した。私を含め初心者そろいなの
     で、「硫化鉱物」と「Bi-Te鉱物」の区別にも難儀するほどだ。
      Tさんの奥さんが見つけたズリ石に「Bi-Te」系と思われる特有のへき開のある鉱物
     があり、小割りして皆さんが標本を入手できた。

      駐車場に戻ると見慣れた車が停まっていた。滋賀・Oさんだった。なんでも、信濃路
     の秋の味覚を追って諏訪まで来たらしい。翌日われわれが『千曲川の砂金』に挑戦す
     ることを話すと急に乗り気になり、同行することになった。
      特定のスポットからのみ通じる携帯で湯沼鉱泉のお姐さんに、名古屋のTさんが急に
     これなくなった代わりに、OさんとKWさんが行くと連絡すると大歓迎だった。さらに、
     KWさんは既に来ているとも教えてくれ、今夜の宴会はにぎやかになりそうだ。

 (3) 「湯沼鉱泉」の夜はふけて

  1)宴会
      麓に下り、コンビニでトイレ休憩の後、中央道→141号線と走り、私たちの定宿・川上
     村の「湯沼鉱泉」に明るいうちに到着すると、社長、お姐さんそして4匹の”モコモコ”の
     川上犬の子犬たちが出迎えてくれた。KWさんは、待ちくたびれた様子だった。

       川上犬【撮影:Ms.T】

      湯沼鉱泉の熱いお湯を浴びた後、一休みしてから、お待ちかねの宴会がOさんの乾
     杯の音頭でスタートした。
      テーブルには、鹿肉の鍋(シシ鍋)、刺身、てんぷらなど地元の食材を生かしたお姐
     さん自慢の料理が並んでいる。
      ( 松茸は、無心した某氏に食べられてしまったようだ )

         
              宴会                   鹿(しし)鍋
          【撮影:Oさん】                【撮影:Ms.T】
                        宴会風景

      熱々の鍋をつつきながら、よく冷えたビールを酌み交わすと身体が火照ってくる。最
     後は『信州信濃の新ソバ』で、これだけ食べると皆さん満腹状態だ。

 2) 「オークション」と「標本玉手箱」
      食後は、恒例になっているお楽しみの『標本玉手箱』と『オークション』だ。オークショ
     ナーはS夫妻で、小人数なのと、資金力豊かな「H財閥」、「Hファンド」そして「N家」
     が欠席で、やや盛り上がりに欠けるきらいはあったが、並んだ逸品を見る皆さんの目は
     ランランと輝いていた。

       オークション下見【撮影:Oさん】

      今回も持参したPCでオークション出品をまとめておいたので、その一部を紹介する。

No   標 本 名   産     地 出品者 落札値  落札者
1 カリ長石 甲府市黒平 MH 100 KWさん
2 カリ長石 甲府市黒平 MH 100 Oさん
3 そろばん玉石母岩付 新潟県楢山 MH 200 Oさん
4 そろばん玉石 新潟県楢山 MH 100 T夫妻
5 玉髄 熊本県人吉市 Oさん 100 MH
6 トパズ 関戸川 S夫妻 400 KMさん
7 ルーペ   30倍   Oさん 500 T夫妻
8 メッセル石 三重県桑名市 Oさん 100 MH
9 メッセル石 三重県桑名市 Oさん 100 KWさん
10 高師小僧 三重県志摩市 Oさん 400 MH
11 乙女鉱山絵はがきセット 乙女鉱山 MH 100 KMさん
12 乙女鉱山絵はがきセット 乙女鉱山 MH 100 T夫妻
13 黄鉄鉱 飯豊鉱山 Oさん 200 S夫妻
14 黄鉄鉱 飯豊鉱山 Oさん 100 T夫妻

      私は、『乙女鉱山絵葉書セット』や『楢山のソロバン玉石』など10点余りを提供し、
    『三重県桑名市のメッセル石』、『三重県伊勢市の高師小僧』などを落札した。
     『玉手箱』は、KMさんの担当で、順番を決める”ジャンケン”の決着がなかなかつかな
    かったが、順番が決まるとあっという間に新しい持ち主が決まった。

 3) 「大人の時間」
    今回大人だけの文字通り『大人の時間』では、私が差し入れた千葉の地酒「壽萬亀(じゅ
   まんがめ)」を飲みながら、この日あった出来事を振り返り、面白、おかしく、文字通り
   ”酒の肴”にして盛り上がった。
    採集につきものの「蛭(ヒル)」談義や『足のある蛇』などの薀蓄(うんちく)も披露され
   た。
    また、最近発見された新産地の論文などが回覧され、次回のミネラル・ウオッチングまで
   に探査しておくことが確認された。

    気がつけば、消灯時間の22時を過ぎており、部屋に戻って、Zzzz・・・・

2. 【第2日目】

 (1) 2日目のスタートだ!!
      翌朝、朝食を食べたあと、男女格差をつけた宿泊費を初めて会計を担当するT夫妻に
     支払う。
      恒例の社長を囲んでの写真を撮り、2日目のミネラル・ウオッチングがスタートだ。

 (2) 『千曲川の砂金』に挑戦
      2010年10月に下見しておいたポイントでパンニングすると、一皿目から砂金が見つか
     り、皆さん興奮気味だ。
      砂金採集どころかパンニングそのものもがほとんどの人にとって初めてで、湯之奥金
     山博物館主催の「砂金掘り大会」で優勝したことがあるSさんの奥さんでさえも、川の
     中の砂金採集には苦戦を強いられたようだ。
      砂金掘り師・KWさんの指導で皆さんメキメキ上達し、何粒か採れ余裕がでてきたのか、
     あちこちに散らばって採集するようになった。

         
              頑張る「アラ○」            夫婦仲良く
              【撮影:Oさん】
                        千曲川採集風景

      KMさんが、「 MH!! 一皿に5粒もありました!!」と興奮気味に私を呼ぶ。近寄っ
     て見ると、大きめの砂金が”キラキラ”している。散らばって採集していた皆さんが集ま
     って来て、一斉にカッチャを入れる。しかし、KMさんは、文句も言わない。

         
          「うわぁ!! すごい!!」          KMさん採集品
                        千曲川採集風景
                         【撮影:Oさん】

      【閑話休題】
      以前、某産地に行った時、既に来ていた男女が露頭を占領し、山のように採集して
     いたにもかかわらず、他人を近寄らせないどころか指一本触れさせなかったのを見た
     だけに、KMさんの態度には清々(すがすが)しさを感じた。
      KMさんだけでなく、このミネラル・ウオッチングに参加する皆さんがこのような態度な
     ので兵庫県、奈良県そして石川県など遠方から参加してくれるのだろう。

      こうして、皆さん、念願の砂金が採集できたようだ。風が強まり、暖かい場所でトイレ
     休憩のあと、湯沼鉱泉で作ってもらった昼食をとった。

       昼食【撮影:Oさん】

      ここでKWさん、S夫妻とお別れし、午後は「3皿だけやりたい」、という希望者が再び
     川に向かった。陽が陰り、ますます川面を渡る風は冷たくなり、皆さん満足できる数の
     砂金を採集できたようなので、撤収する事にした。

 (3) 『川上村原の普通輝石』
      Tさんの奥さんが、「大深山の輝石産地に行きたい」、と言うので、S夫妻やOさんが
     行きたいと言っていた『原の輝石』産地をこの後案内した。
      重機が入って掘り崩した直後のようだったが、雨に打たれた土の表面に”ポチポチ”
     と『まっ黒い輝石』が浮き出ている。
      斜面の上の方で、輝石を含む地層を観察してもらう。

       『川上村原の輝石』産地

      ここでも、KMさんが、「1cmクラスがありました!!」、と砂金採集の時に場所を公開
     した”功徳”が早速あったようだ。

 (4) また会う日まで
      私は、この日の内に単身赴任先の千葉県に戻る都合もあり、後ろ髪を引かれる思い
     で皆さんとお別れした。

      帰宅してメールを開くと、皆さん無事帰宅されたようで一安心した。いつも変わらず
     暖かいもてなしをしていただいた、湯沼鉱泉社長とお姐さんに厚く御礼を申し上げる。

4. おわりに

 (1) 信濃(長野県)の自然金
      千葉県の石友・Mさんが、「信濃鉱物誌」の『金』の章を電子データ化して送ってくれ
     た。以下、引用させていただく。

     『 1. 南佐久郡川上村
       2. 諏訪郡金沢鉱山
       3. 東筑摩郡錦部村
       4. 西筑摩郡楢川村片平村

       川上村川端下、向山には戦國時代(天正年間)に武田信玄の採掘せる金鑛脈あり
      同地の古生層地の各所に採掘の跡を残せり。其の後慶長、天保年間にも稼業せる
      ものにして其の盛時は、梓山千戸、川端下千戸を有し、五ケの佛寺さへも建立せら
      れ、今 其の舊蹟を見ることを得べし。
       甲金と稱する一分金は梓山と川端下より産せる 金によりてつくられたるものにし
      て、○中に定の刻印あり。信玄の枕金二十四萬両を産出せりと傳ふ。
       同村梓山部落の南梓川沿岸砂礫層中には砂金を産す。九、十月の農閑期に採集
      することあり。其他産地として聞く処多きも未だ詳査せられたるものなし。      』

       これによると、川上村梓川沿岸で9月、10月(現在の10月、11月か)の農閑期に
      砂金を採集していたようだ。
       今回私たちが採集したのはその下流で、おおもとは同じなのかも知れない。

       金沢鉱山は、現在金鶏鉱山と呼ぶ一帯にあった鉱山のようで、今回パンニングで
      自然金が採集でき、往時は盛大に稼行したようだ。

 (2) 『古泉に水涸れず』
      「信濃鉱物誌」にある2つの産地で自然金を採集でき、『古泉に水涸れず』を実感し
     たミネラル・ウオッチングだった。

      いままで、何気なく『古泉に水枯れず』、と書いていたが、石友・Mさんから指摘され
     上記のように訂正させていただく。

5. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
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