2013年秋のミネラル・ウオッチング









         2013年秋のミネラル・ウオッチング

1. はじめに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋に
   ミネラル・ウオッチングを開催するようになって14年目を迎えた。
    今回は、「長野県と山梨県の産地を訪ねて」と題して参加を呼び掛けたところ、
   OB、OGそして新しい顔ぶれがそろった。

    第1日目・・・・・・・長野県の水晶産地を訪ねて

    第2日目・・・・・・・長野県の鉱山跡を訪ねて

    第3日目・・・・・・・山梨県の希元素鉱物産地を訪ねて

    山梨県では、水晶盗掘で逮捕者がでている状況なので、水晶は採れない希元素鉱物
   産地を案内した。

    参加者は、関東各都県、、長野、愛知、三重、滋賀そして京都と広範囲で、久しぶりに
   参加してくれたOB、OGさんのほか、京都・Yさんなどの新しい顔ぶれと、小2のA君のよう
   若い顔ぶれも加わり、和気藹々(わきあいあい)のミネラル・ウオッチングになった。
    ただ、兵庫・N夫妻、奈良・Aさん、滋賀・Nさんなどの常連さんが参加できなかったのは
   チョッピリ寂しかった。

    ミネラル・ウオッチングを開催し、一番気になるのは”安全”で、まずは天気だ。”自称”
   ”隠れ”『雨男』がいるこの会では、雨が降るのが当り前になってきた感じだ。
    しかし、2日目の夜から3日目の朝にかけて雨が降っただけで、ミネラル・ウオッチングの
   間は、雨が降らないという、近来珍しいことだった。

    初日の「長野県の水晶産地を訪ねて」では、『大きな群晶』や『各種の双晶』で知られた
   産地を訪れた。群晶の採集には皆さん苦戦したようで、以前の訪山者が置いて行った
   群晶を分けあって下山した。

    定宿・湯沼鉱泉に着いたのは、17時過ぎだった。皆さんが持寄った標本を担当者が
   鑑定し、「オークション」と「玉手箱」のテーブルに並べていく。その間に、皆さんは風呂に
   入って、冷えた身体を温め、人心地がついたようだ。

    いつもより遅い19時30分から、お待ちかねの宴会だ。地元・川上村の素材を使った料
   理に舌鼓を打った。「松茸ごはん」も出る豪勢さだ。ビールやジュースも入り、「宴会部
   長」東京・Kさんの名司会で、参加者全グループの近況報告があり湯沼鉱泉の夜は更け
   ていった。

    21時近くになって、皆さんお待ちかねの「オークション」が愛知・S夫妻と神奈川・T夫妻
   の担当で始まった。目の肥えた人が多いせいか、100円で落札される標本が多い。それ
   でも、茨城県の砂金や長野県の水晶群晶には高値が付き、2万円を超える売上金は宿
   泊費に還元された。

    次は、「標本玉手箱」で、こども、女性、男性の順に欲しい標本を無料でいただく。締め
   は、『大人の時間』で、持寄った地元の銘酒を酌み交わしながら鉱物談義をしていると、
   23時30分の消灯時間だった。

    2日目の朝、起きると天気は大丈夫そうだ。全員揃って、朝食を「頂きます〜」。食事中、
   会計担当のT夫妻からオークションの売り上げ高や、グループ(個人)別の徴収額が告
   げられた。
    「湯沼鉱泉」前で社長を囲んで記念写真を撮り、2日目の目的地に向けて出発!!

      
             第2日目 湯沼鉱泉社長を囲んで記念写真
                  【撮影:滋賀・Oさん】

    この日は、古い鉱山跡でガマ出し組とズリ組に分かれ、それぞれ『カクタス水晶』と『珪
   灰鉄鉱』採集だ。湯沼鉱泉社長から聞いた新しいポイントの探査に回るグループもいた。

    ガマ出し組は準備作業に1時間ほどかけてから、晶洞探しを始めると、『カクタス水晶』
   の単晶や群晶が次々と出てくる。ズリ組も頭付き珪灰鉄鉱を次々と採集しているようだ。
   お昼を済ませると、ガマ出しも仕舞いに入り、14時30分過ぎに、再会を誓って解散した。

    3日目も参加するメンバーは湯沼鉱泉に向かう。途中から雨が”パラパラ”降り出した。
   17時前に宿に戻り、入浴して夕食の時間をまつ。前日と同じく19時30分から夕食だ。
   この日はすき焼きで、「松茸のお吸い物」がつく豪勢さだ。
    21時から、「大人の時間」で、持ち寄った地酒を飲み、お疲れなので早めに散会した。
   雨は本降りになってきたようだったが、夢うつつだった。

    3日目の朝、雨は止んでいた。この日は、いくつかの産地に分かれることになり、出発
   前に社長とお姐さんを囲んで記念写真を撮る。
    私と埼玉・Tさんは、山梨県の希元素鉱物産地に向かう。信号が1つもない林道を走る
   と、まるで紅葉のトンネルだ。
    産地に着き、ズリを丹念に探すと母岩付き「ガドリン石」が見つかり、昼食を食べた後、
   ズリの土砂を袋に詰め下山し、途中の沢でパンニングすると「ガドリン石」の分離結晶が
   採集できた。
    Tさんを高速道路の入り口まで誘導し、帰宅したのは15時過ぎだった。

    今回も、事故もなく、無事終了できたのは参加者の安全意識の高さとご協力の賜物と
   感謝している。
    次回のミネラルウ・オッチングでも多くの皆さんと再会できるのを楽しみにしている。
   ( 2013年11月開催 )

2. 【第1日目】

 (1) 「湯沼鉱泉に集合」!!
      朝5時過ぎに自宅を出て、ファミレスで朝食を済ませ、湯沼鉱泉に向かう。7時30分
     湯沼鉱泉に到着すると先行組が出発するところだった。この日の産地は、歩く距離が
     長く、足弱な人は先行するようにお願いしていたのだ。
      そうこうするうち、東京・H夫妻と茨城・K兄弟から、「道路が渋滞し遅れる」、との連
     絡があり、本隊は出発することにした。

 (2) 「水晶群晶産地」
      産地に向かって林道を歩くと先行組に追いつく。前夜宿泊先行組の千葉・Aさんが
     分岐点で待っているので、私は先を急ぐ。Aさんは、待ちくたびれた様子でまっていた。
      後続部隊が到着し、道が判る人もいるので先行してもらい、遅れて到着するK兄弟を
     待っていると、30分ほどで到着した。
      先行部隊を追い掛け、急な沢の入口で追いつき、ここから私が先導する。喘(あえ)
     ぎながら急斜面を登り、この日の採集ポイントに到着したのは10時30分だった。

      群晶の採集には皆さん苦戦したようだ。私が”崩落がま”と名付けた、露頭が自然
     に崩れて、晶洞の水晶が群晶や単晶となって落ちている場所から群晶の良品を撮り
     出した。これを見ていたK兄が、同じレベルにある”崩落ガマ”から大きな群晶を取り
     出し大喜びだ。

          
               群晶の品定め                          マイ・コレ
                                             【横 12cm、塩酸洗浄後】

      結局、以前の訪山者が置いて行った群晶を”ジャンケン”で分けあって下山した。
     下山は比較的楽なせいか、往きの2/3の時間で駐車場に着いた。

 (3) 「湯沼鉱泉」の夜は更けて
      定宿・湯沼鉱泉に戻ったのは、17時過ぎだった。ストーブの周りには、「貯鉱場コー
     ス」のメンバーや私に置いてきぼりを食わされたH夫妻なども顔をそろえお待ちかね
     だった。
      夕食まで時間がある。皆さんが持寄った重品標本をオークションと標本玉手箱の
     担当者が鑑定し、「オークション」と「玉手箱」のテーブルに並べていく。その間に、皆
     さんは熱々の風呂に入って、冷えた身体を温め、人心地がついたようだ。

   A) 宴会
       いつもより遅い19時30分から、お待ちかねの宴会だ。大広間には2台もストーブが
      焚かれ、外の気温は10℃前半台のようだ。そんな外の寒さを吹き飛ばすかのよう
      に、「宴会部長」東京・Kさんの名司会で、盛大な宴会のスタートだ。O兄の音頭で
      ”とりあえず、ビール”で乾杯だ。

        「乾杯!!」【撮影 O弟】

       お姐さんが腕によりをかけた地元・川上村の素材を使った料理に舌鼓を打つ。
      初めて参加する京都のYさんや小学2年生でこの日の難コースを踏破したA君はじ
      め、参加者全グループの近況報告があり湯沼鉱泉の夜は更けていった。

        初参加Yさん

       宴会料理の〆(しめ)は、社長とお姐さんがこの秋に採ったおいた松茸を炊き込ん
      だ「松茸ごはん」も出る豪勢さだ。
       ( 京都・Tさんの奥さん、次回は是非参加してください! )

   B) オークション
       21時近くになって、皆さんお待ちかねの「オークション」が愛知・S夫妻と神奈川・
      T夫妻の担当で始まった。いつも高額で落札する西のNファンド、東のH財閥がいな
      いせいか、それとも目が肥えた人が多いせいか、100円で落札される標本が多い。
       それでも、茨城県の砂金や長野県の水晶群晶には高値が付き、2万円を超える
      売上金は宿泊費に還元された。

        オークショナー・S夫妻

       オークションの結果は、オークションの進行に合わせて、標本名・産地・出品者・
      落札金額、そして落札者EXCELデータに入力するようにしたので、合計落札金額
      だけでなく個人別の落札金額も逐次集計されるので、会計業務が格段に楽になっ
      たはずだ。
       今回は、Ms.Tにデータ入力をお願いした結果を紹介する。

No  標   本   名  産   地 出品者 落札者 落札金額
1 赤鉄鉱 和賀仙人 K兄弟 MH 100
2 鏡鉄鉱 赤谷鉱山 Kさん Tさん 200
3 方解石 秩父鉱山 Mさん MH 200
4 クリントン石 秩父鉱山 Mさん Tさん 100
5 ダキアルデー沸石 保基谷岳 Mさん MH 100
6 車骨鉱 秩父鉱山 Mさん Mさん 600
7 満礬ザクロ石 久良沢鉱山 Mさん Mさん 100
8 菫青石 浅間山 Mさん M一家 100
9 バニヤ石 鳥羽市白木 O兄 Aさん 100
10 斜開銅鉱 日光鉱山 Mさん Hさん 100
11 緑マンガン鉱 奥村鉱山 O兄 Aさん 100
12 黒雲母 滋賀県土山町 O兄 Nさん 100
13 ゲージ石 栗原鉱山 O兄 Mさん 100
14 オリーブ銅鉱 三盛鉱山 O兄 Mさん 100
15 車骨鉱 秩父鉱山 O兄 Tさん 200
16 ビンドハイム鉱 秩父鉱山 Mさん MH 1,000
17 黄粉銀鉱 西沢金山 MH Mさん 100
18 黄粉銀鉱 西沢金山 MH M一家 100
19 ホセ鉱A 唐沢鉱山 MH Kさん 100
20 ホセ鉱A 唐沢鉱山 MH Hさん 100
21 自然蒼鉛 大鷲鉱山 MH M一家 100
22 自然蒼鉛 唐沢鉱山 MH Kさん 100
23 満礬ザクロ石 和田峠 MH Yさん 100
24 カクタス水晶 長野県 Hさん O兄 200
25 カクタス水晶 長野県 Hさん Tさん 100
26 カクタス水晶 長野県 Hさん Nさん 100
27 カクタス水晶 長野県 Hさん Yさん 100
28 カクタス水晶 長野県 Hさん T親子 100
29 緑鉛鉱 金平鉱山 MH M一家 100
30 紫水晶 水晶峠 Ms.T Hさん 1,000
31 翡翠 朝日海岸 Tさん Yさん 600
32 翡翠 朝日海岸 Tさん Aさん 500
33 砂金 久慈川 Aさん T親子 600
34 水晶群晶 長野県 MH O兄 200
35 水晶群晶 長野県 MH Nさん 400
36 水晶群晶 長野県 MH O兄 500
37 水晶群晶 長野県 MH Yさん 800
38 水晶群晶 長野県 MH Kさん 1,000
39 水晶群晶 長野県 MH Tさん 2,000
40 水晶群晶 長野県 MH Nさん 3,000
41 水晶群晶 長野県 MH O兄 200
42 水晶群晶 長野県 MH T親子 200
43 水晶群晶 長野県 MH M一家 100
44 水晶群晶 長野県 MH M一家 200
45 水晶群晶 長野県 MH Tさん 1,000
46 ヘッドライト LED MH O兄 200
47 石器づくりセット 和田峠 MH Ms.T 100
48 石器づくりセット 和田峠 MH O弟 100
49 自然金 朝日鉱山 Nさん Ms.T 100
50 ルビー 羽根谷 Nさん M一家 400
51 玉手箱の落ち穂 玉川メノウほか MH Yさん 100
52 A3写真 2013年 7/28 O弟 Ms.Tほか 600
53 A3写真 2013年 6/16 O弟 Ms.Tほか 900
54 L版写真 2013年 6/16、7/28 O弟 T親子ほか 800
55 紫水晶 戸神鉱山 Mさん T親子 600
56 三重県 O兄 Tさんほか 1,950
57 書籍
「みどり市周辺の鉱業遺産」
岩宿博物館編 MH O兄 200
合計 23,050

   C) 玉手箱
       オークションの次は、益富先生がはじめられたのを真似た「標本玉手箱」で、こど
      も、女性、男性の順に欲しい標本を無料でいただく。オークションから流れた標本も
      混じっていて、目聡い人は佳品標本を無料で手に入れたようだ。

       翌日用事があるHさんは、残念そうな顔で東京に帰って行った。

   D) 大人の時間
       この日の締めは、『大人の時間』で、持寄った地元の銘酒を酌み交わしながら、
      山梨県で水晶盗掘容疑で逮捕された男がいる話など、鉱物談義をしていると、23時
      30分の消灯時間だった。

3. 【第2日目】

 (1) 2日目のスタートだ!!
      6時に起床、事務所に行くとストーブの周りに集まっている。K兄が炒れてくれたコー
     ヒーを飲み、ノンビリする。今日も天気は大丈夫そうだ。
      7時から朝食だ。全員揃って、「頂きます〜」。O弟が事あるごとに言い続けていた
     アサリの味噌汁がタップリでていて、お代わりをする人もいた。
      食事中、会計担当のT夫妻から、グループ(個人)別の徴収額が告げられた。オー
     クションの売り上げが23,000円余で、単純計算で一人あたり1,000円弱、宿泊料+飲
     み物代が安くなった勘定だ。

        T夫妻から会計報告【撮影 O弟】

      Mr.Tさんは、ミネラル・ウオッチングには参加せず、会計のためだけに来てくれたよ
     うなもので、申し訳なく、ありがたく思っている。この集まりが15年も長続きしているの
     は、Ms.Tさんのような人がそれぞれの役割を淡々とこなしてくれているお蔭だ。

 (2) 鉱山跡に向かって出発だ!!
      産地に向かう前に、社長を囲んで記念写真だ。お姐さんの作ってくれたお弁当を
     持って出発だ。
      この日は、長野県の古い鉱山跡でガマ出し組とズリ組に分かれ、それぞれ『カクタ
     ス水晶』と『珪灰鉄鉱』採集だ。車を停め、産地に向かう踏みわけ道は紅葉も終わり
     に近く、落葉松(カラマツ)が”黄金色の針”を降らせている。

        紅葉【撮影 Ms.T】

 (3) 鉱山跡でミネラル・ウオッチング
      産地に着いてすぐ、K兄が拾い上げた塊を見て、”ドキ”っとした。『珪灰鉄鉱』の頭
     付きが群晶になったものだ。
      K兄に、「これ要らなければ貰っていいかな?」、と聞くと、しばし間(何とも言えない)
     があって「良いですよ」、と言ってくれた。

        『珪灰鉄鉱』【横 12cm、K兄恵与品】

      ガマ出し組は、準備作業に1時間ほどかけ、採集にうつると、『カクタス水晶』の単晶
     や群晶が次々と出てくる。
      ズリ組も頭付き珪灰鉄鉱を次々と採集しているようで、A君が「これ何ですか?」、と
     持ってきたのは頭がシッカリ付いた『珪灰鉄鉱』だった。
      社長から聞いた、『インクルージョンの入った○色スプレー水晶』のポイントを探しに
     ズリや坑道の探査に回るグループもある。

      12時過ぎに、お昼にする。昼食が済むと、ガマ出しもお仕舞いで、採集した標本の
     分配だ。いつもながら、”公平”に分けるのが難しい。

      Aグループ・・・・・・この産地が初めてで、ガマ出しに積極参加
      Bグループ・・・・・・この産地が2回目以上で、ガマ出しに積極参加
      Cグループ・・・・・・この産地が初めての人
      Dグループ・・・・・・A、B、C以外の人

      A(3ケ)→B(2ケ)→C(1ケ)→C(1ケ)→B(1ケ)→A(1ケ)→全員(取り放題)
     で持ち帰ってもらった。それでも残った群晶や単晶は、今回参加できなかった人々の
     分を私が預かって持ち帰り、それでも残った標本は次に来る人のために、まとめて
     置いてきた。

 (4) また会う日まで
      2日間だけ参加の人とはここでお別れだ。14時30分過ぎに、再会を誓って解散した。
     ガマ出し組が掘り出した褐鉄鉱の塊の晶洞には、水晶が何本か生えていて、「水晶
     洞」に展示するのにピッタリの標本だが10kg以上の重さがあり、どう運ぼうか悩んで
     いると、若いMさんが、「車まで運びますよ」、と言ってくれ、ご厚意に甘えてしまった。

 (5) 「湯沼鉱泉」の夜は更けて
      3日目も参加するメンバーは湯沼鉱泉に向かって車を走らせていると、途中から雨
     が”パラパラ”降り出した。
      17時前に宿に戻り、社長に「水晶洞」に展示してもらう標本を渡すと、「こりゃ良いも
     んダ」、と喜んでくれ、「水晶洞に飾らア」、と言っているので、次に行く時は「水晶洞」
     で見られるはずだ。

        褐鉄鉱晶洞に生えた水晶

      入浴して夕食の時間をまつ。前日と同じく19時30分から夕食が始まった。この日は
     すき焼きで、「松茸のお吸い物」がつく豪勢さだ。

        「松茸のお吸い物」

      21時から、「大人の時間」で、持ち寄った地酒を飲み、お疲れなので早めに散会した。
       雨は本降りになってきたようだが、夢うつつだった。

4. 【第3日目】

 (1) それぞれの目的地へ
      朝起きると雨は上がっていた。ただ、雲が厚く垂れこめ、予断を許さない。7時から
     朝食をいただき、宿の清算を済ませる。
      社長とお姐さんに入ってもらい、記念写真を撮り、それぞれの目的地に向かって出
     発だ。

        3日目記念写真

      H夫妻は、自宅へ。S夫妻とT親子は甲武信鉱山貯鉱場。Ms.Tは???。Aさんは、
     山梨の砂金産地へ。私は、Tさんを案内して甲府市の希元素鉱物産地を目指す。

 (2) 甲府市の希元素鉱物産地
      湯沼鉱泉から峠を越え山梨県に入る。紅葉に彩られた林道を縫うように走る。観光
     地・昇仙峡から奥の集落を目指し車を停める。この60kmの間に信号機が1つもない
     のだ。
      荒れ果てた林道を進み、峠に差し掛かると苔むした石仏が迎えてくれる。ここから、
     急な岩場を登り、平らな尾根を進むと産地だ。甲府市では、水晶盗掘で逮捕された
     人がいるが、ここでは水晶は採集できない。ズリの表面を見て回り、石英や長石を
     拾って、希元素鉱物を確認する。

          
                石仏                 希元素鉱物産地

      石英塊の中に「ガドリン石」が付いたものをTさんと私が採集した。Tさんのは、松原
     先生の「日本の鉱物」に載っている横9mmのこの産地の「ガドリン石」よりも10倍近く
     大きな母岩だ。
      私が拾った石英を熊手の背で割ってみると、煙石英の中心に真っ白い鉱物がある。
     どうやら、『ハロを伴う変種ジルコン』だ。

          
                「ガドリン石」                「変種ジルコン」
                【横 10mm】                  【横 10cm】
                         甲府市産・希元素鉱物

      ちょうど昼時になり、湯沼のお姐さんが作ってくれた弁当を食べる。ズリの土砂を
     袋に入れて下山だ。途中の沢に水たまりをこしらえ、その中でパンニングする。Tさん
     にとっては、今まで出番がほとんどなかったパンニング皿の使い初めらしい。

        パンニング初め・Tさん

      パンニング皿の底には、緑色の「ガドリン石」や黒褐色柱状の「褐簾石」などの希
     元素鉱物が残る。これらを持参したタッパーに回収して車に戻った。

      途中で、山梨産の水晶や鉱物を展示している土産物店を2つほど見て、TさんをSA
     のスマートIC入口まで案内しお別れし、帰宅したのは15時だった。

5. おわりに

 5.1 『 水晶盗掘で逮捕 』
      今回のミネラル・ウオッチングでの最大の話題は、山梨県甲府市の男が、水晶盗掘
     容疑で逮捕されたことだった。
      逮捕の新聞記事はすでにHPに全文掲載したが、これをコピーしたものを参加者に
     読んでもらった。

      ・ 小中学生 ミネラル・ウオッチング ガイド 2013年
       ( Mineral Watching Guide for School Children 2013 , Nagano Pref. )

      ただ、今まで報道されている新聞情報からだけでは、逮捕された本当の理由がハ
     ッキリしない。逮捕されたのは森林法違反(森林窃盗)の容疑で、新聞には、「森林
     法では、水晶などの森林内の産物を無断で持ち出すことは禁止されている」、とある。
      「入山禁止」などの表示がない場所では、森林内の産物であるキノコ、山菜、そして
     山ブドウなどの果実を誰にも断らないで採っている人は大勢いる。
      柴田容疑者が逮捕されたのは、”悪質”と判断される何らかの状況証拠があった
     ためと推測するしかない。それが、”売却目的で盗った”ことなのか、あるいは他の
     理由があったのか。
      彼から水晶を買った人やネットなどで販売した人も、盗(掘)品と知って買ったこと
     になり、「盗品故買」という罪に問われるのか、捜査の行方に注目している。

      ”甘茶”の私たちとしては、次のような点に注意したい、と自戒している。

      ・ 「李下(りか)に冠を正さず」
          李(すもも)の木の下で傾いた冠を直すと、遠目に見た人から李を盗ったの
         ではないかと、勘ぐられる。あらぬ誤解を受けないようにすべきだろう。
          採集した鉱物を売却するのは、”売るために盗っている”、と判断される虞(お
         それ)がある。

      ・ 「足るを知る」
         今から10年以上前の2001年12月、「平成13年 平地学同好会研究発表会」で
        「鉱物切手の楽しみ」、と題して発表させていただいた。

        ・平成13年平地学同好会研究発表会
         (Presentation at Taira Geological Society 2001 , Fukushima Pref.)

         このページの中で、『蒐集について』の章で、次のように書いた。

          2001年11月11日付日本経済新聞の文化欄に車谷 長吉(くるまたに ちょう
         きつ)氏の「骨董について」が掲載され、興味深く拝読し、眼から鱗の想いがし
         た。
          氏の哲学として、『人間本来、無一物。蒐集ごとは、いくら所持金(時間)を
         つぎ込んでも、最終的には満足できるということはなく、寧ろ飢餓感にさいなま
         れる。
          さらに、自分の所有したものを他人に見せびらかしたくなる悪癖を伴う。』

          鉱物採集も蒐集ごとの例にもれず、”人より良いものを採集(蒐集)したい”と
         いう心理(競争原理?)が働いている。
          誰しも、大きくて、美しく、そして珍しい標本を求めて、際限なくのめり込んで
         採掘し、これが産地が荒れたり、採集禁止になる原因の一つだと考える。

          そうなると、”欲張らずに”、「足るを知る」、ということが一番求められるだ
         ろう。

          車谷氏は、この記事の中で、アユ釣り師匠が言う、『 アユは売ったらアカン
         釣りが荒れる(汚のうなる) 』
、も紹介している。”アユ”を”鉱物”に、
         ”釣り”を”採集”に置き換えて、心して耳を傾けるべき言葉だろう。
          ( 孔子は、60歳を「耳順(じじゅん:みみしたがう)」と称していた、と記憶して
           いるが、・・・・・・・・  )

 5.2 ミネラル・ウオッチングの継続
      今回のミネラル・ウオッチングに参加された皆さんから、また参加したいとのメールが
     多数寄せられた。しかし、上に紹介したように、ミネラル・ウオッチングを取り巻く世間
     の風当たりには厳しいものがある。次回、どこの産地に皆さんを案内するか、今から
     頭を悩ましている。
      先週末、ある地域の鉱物産地を妻と下見で訪れた。大体の場所は判ったのだが
     ポイントを絞り切れずにウロウロしていると、地元の方が通りかかった。思い余って、
     「この辺りで○○が採れる場所を知りませんか」、と尋ねると、先頭に立って案内して
     くれた。その方が子どものころに、ここで○○を採った、と話してくれた。日本全国の
     鉱物産地がこんな風なら、下見に苦労はないのだが・・・・・・。

6. 参考文献

 1) 藤本 治義:南佐久郡地質誌,社団法人 南佐久教育会,昭和33年
 2) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 3) 松原 聰:日本の鉱物,株式会社学研出版,2011年
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