2011年月遅れGWミネラルウオッチング







         2011年月遅れGWミネラルウオッチング

1. 初めに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋に
   ミネラル・ウオッチングを開催するようになって11年目を迎えた。
    今回は、「五無斎100年忌 五無斎の足跡とマル秘産地を訪ねて in 信濃国」と題して、
   長野県の古典的産地と新産地をたずねることにし開催をお知らせしたところ、翌日には当
   初予定の15名をオーバーし、最終的に25名(2日間延べ50名)の皆さんが参加してくれた。

    第1日目・・・・・・・五無斎の足跡を訪ねて
               ・ 長門町の「満礬柘榴石」
               ・ 落合の「五無斎家紋・九曜星」
               ・ 本入の「焼餅石(緑簾石)」
               ・ 武石の「武石」

    第2日目・・・・・・・長野県の新産鉱物産地
               ・ 向谷鉱山の「都茂鉱」
               ・ 金鶏鉱山の「フローレンス石」と「自然金」

    参加者は、関東各都県、、愛知、三重、奈良、大阪、滋賀、京都そして兵庫と広範囲で、
   久しぶりに参加してくれたOBさんのほか、新しい顔ぶれも加わり、和気藹々(わきあいあい)
   のミネラル・ウオッチングになった。

    ミネラル・ウオッチングを開催し、一番気になるのは”安全”で、まずは天気だ。集合し、産
   地に着くまで雨が降り続いていたが、採集を始めると雨が止み、産地を後にしたとたん、雨
   が降り出した。
    ”参加者の日ごろの行いが良い”わけではなく、”自他共に(?)雨男”と認める愛知・H氏、
   滋賀・N氏が不参加だったお蔭だ。多少、二人の”晴れ(腫れ?)男”が貢献しているかも知
   れない。

    初日の五無斎の足跡を訪ねてでは、長野県や教育関係者、そして大学受験生や高校生
   の参加者も多いせいか、「九曜星」の前に線香と好きだったお酒を供え、熱心に祈る姿が見
   られた。

      
       線香と五無斎が好きだったお酒を供える

    午後からは、夏の暑い日差しの中で「焼餅石」を採集したあと、「武石」を採集したのが初
   日のミネラル・ウオッチングの締めくくりで、長野県川上村の定宿「湯沼鉱泉」に18時ごろ到
   着した。

    夜は、地元・川上村の素材を使った料理に舌鼓を打ち、ビールやジュースも入り、今回
   から「宴会部長」に就任した神奈川・Hさんの名司会で参加者全グループの近況報告があり
   湯沼鉱泉の夜は更けていった。
    20時過ぎから、皆さんお待ちかねの「オークション」が兵庫・N夫妻の担当で始まった。”関
   西のオバチャン風・オークショナー”のユーモアあふれる競りで、ついつい財布の紐が緩んだ
   人も多く、4万円近い売上金は宿泊費に還元された。

    次は、若手の東京の大学生・H君と長野・Mさん担当の「標本玉手箱」で、「金鶏鉱山のフ
   ローレンス石」などをゲットした目利きもいたようだ。

    「大人の時間」では、神奈川・Hさん、京都・Tさんが持参したスパークリングワインを飲み
   ながら産地、鉱物談義で盛り上がり、気がつけば消灯時間の22時30分だった。

    2日目、久々に復活した「朝飯前の採集」を初参加を含む5名の方々に体験していただき、
   朝食を美味しくいただき「湯沼鉱泉」前で社長を囲んで記念写真を撮り、出発!!

      
        湯沼鉱泉社長を囲んで記念写真【撮影:湯沼Kさん】

    中央道の「南諏訪IC」で降り、2日目のみ初参加の長野・Mさんと合流し新産地を目指す。
   向谷鉱山の「都茂鉱」は初めての人が多く、鑑定依頼が次々に舞い込んだ。特徴をつかみ
   目が慣れてくると、”いかに大きな結晶”を採るか、になった。

    産地を後にし、駐車場に戻ると初参加、長野・Mさんから皆さんへの「標本玉手箱」が待っ
   ていた。「奈留島の双晶」、「長垂の紅雲母」など九州の名品が無料配布された。

    昼食の後、金鶏鉱山に向かった。「フローレンス石」などの新産鉱物、「自然金(砂金)」、
   そして「水晶」と想いおもいの鉱物種を狙って採集する。露頭と格闘していた、東京・H君と
   愛知・T君が大きな晶洞を割り出したのは、若者パワーだ。

    15時、駐車場に戻り、再会を約束し皆さんとお別れした。今回も、事故もなく、無事終了で
   きたのは参加者の安全意識の高さとご協力の賜物と感謝している。
    次回のミネラルウ・オッチングで多くの皆さんと再会できるのを楽しみにしている。
   ( 2011年6月開催 )

2. 【第1日目】

 (1) 「○○に集合」!!
      夢うつつの中で大雨が降っている気配がする。案の定、朝起きると雨脚は強い。自宅
     を5時30分に出て、大阪・Oさんをピックアップするため韮崎駅に向かう。
      しばらく待っていると、大阪発の夜行長距離バス、その名も「クリスタル・ライナー」が定
     刻に到着する。名神の工事で渋滞があったが、途中で挽回したらしい。
      「韮崎IC」から高速に乗り、「諏訪SA」で朝食バイキング。私は、シルバーで100円安い。
      ここから、見る最初に訪れる産地の方角は厚い雨雲に覆われていて、天気が心配だ。

         
             クリスタル・ライナー                 諏訪湖

      集合場所に行くと、兵庫・N夫妻、奈良・Uさん親子、Yさん、愛知・Tさん親子、S夫妻
     三重・Oさん、滋賀・Oさん(兄弟か?)、京都・T夫妻の愛知以西組がいた。
      関東勢では、神奈川・K夫妻、Hさん、Tさん、東京・H夫妻、H君、地元長野・Tさん、初
     参加のMさん、これで1日目の全員が揃った。

      初参加の人もいるので、簡単な自己紹介の後、この日の予定を説明し、雨合羽に身を
     包んだり傘をさして最初のポイントに向けて雨の中出発した。

         
                自己紹介                雨の中、産地に向かう

 (2) 「長門町の満礬柘榴石」
      ここは、採集禁止になっている沢から離れた場所で、古い採石場の跡だ。もう20年近く
     昔に「母岩付き満礬柘榴石」を採集できた場所だ。近くの沢では、「分離結晶」も拾えた
     記憶があった。
      「満礬柘榴石」採集が初めての人は、沢でパンニングやフルイ掛け、経験したことがあ
     る人は「母岩付き」と別れて採集する事にした。
      「母岩付き」は、流紋岩の晶洞の中に、「クリストバル石」を伴って産出するので、ひた
     すらそれらしい石を叩いて晶洞を出す。

      産地に着いてしばらくすると目が慣れてきたのか、兵庫・Nさんの奥さんが、「MH、ここ
     の大きな塊の表面に石榴石が付いている」、と教えてくれた。なるほど、流紋岩の表面を
     見回すと、点々と柘榴石がみられる。
      そうこうする内、広い採石場跡の下のほうから、「MH、ここに石榴石が付いた岩がたく
     さんある!!」、と神奈川・Hさんの叫び声がした。駆け寄ってみると、大きなものは30〜
     40cmの岩に点々と付いている。
      この声を聞き逃さなかった数人が駆け寄って、Hさんを押しのけるようにして、良い品を
     漁って行く。愛知・Sさんが見つけた(横取りした?)のは、5mmクラスの大きな結晶が付い
     たものだった。

         
                 採集風景                     採集品
                           「母岩付き」グループ

      発見者Hさんのボヤき。「小さなものしかない。自分で良いのを採ってからMHに声をかけ
     ればよかった☆★・・・・・」
      このミネラル・ウオッチングでは、必ずしも、ポイント発見者=ベスト標本の採集者とな
     らず、非力な女性でもすばらしい標本が採れることがあるのも面白いところかも知れない。
      (甲武信鉱山で緑水晶ズリを発見した奈良のAさん、Hさんも同じ思いをしたようです)

      「母岩付き」グループは皆さんそれぞれ満足できる品を採集できた様なので、「分離単晶」
     グループと合流すべく産地を後にした。途端に雨が降り出した。

      「分離単晶」グループに同行した滋賀・Oさんが、その模様をカメラに収めてくれた。フェ
     ミニスト(?)の奈良・Yさんが、土砂をスコップですくって女性陣のパニング皿やフルイに
     入れてくれたらしい。

      奈良・M君は、1cmの分離単晶を採集してニコニコだった。神奈川・Tさんが採集した褐鉄鉱
     に20ケ以上のピカピカ「満礬柘榴石」が付いたものは、皆さんから『珍品!!』、との声が
     上がった。
      この成因を考えるだけでも、この夏の暑さをひと時忘れることができそうだ。

         
          採集風景【撮影:滋賀・Oさん】         採集品【採集・撮影:Tさん】
                          「分離単晶」グループ

 (3) 落合の「五無斎家紋・九曜星」
      長野県の教育者であり、鉱物採集旅行で県内をくまなく採集して回り、採集した鉱物・
     岩石の標本を製作し、県内外の学校に寄贈した五無斎こと保科百助は、明治元年に生まれ
     明治44年(1911年)6月7日に亡くなった。つまり、今年(2011年)は、『五無斎100年忌』
     という記念すべき年になっている。

      五無斎は、鉱物採集旅行のたび、家紋の「九曜星」を露頭に彫り込んだとされ、その数
     は100箇所以上と伝えられている。
      しかし、私が確認できているのは、「長門町落合」の1箇所だけだ。鉱物に関心のある
     人なら知っておくべきと考え、皆さんを案内し、線香と五無斎が大好きだった○○○を
     お供えし、それぞれ願い事をした。

      
               九曜星の前で記念写真
                【撮影:滋賀・Oさん】

      ここを最初に訪れたのは、2004年8月だった。

      ・五無斎 保科百助の残した「九曜星」紋の跡を訪ねて
       ( Visiting " 9 Stars " Family Crest engraved by "Gomusai" (Hyakusuke Hoshina)
        Nagato Town , Nagano Pref.)

      その時、拓本を採ったが、3行×3列に9個の円がハッキリわかったのだが、今回訪れ
     てみると、「ここにある」、と教えられなければ探し出せないほど露頭の剥落(はくらく)が
     進んでいた。本格的な保存が望まれるのだが・・・・・・・。

         
           拓本【2004年8月採拓】       2011年6月【撮影:滋賀・Oさん】
                      五無斎家紋「九曜星」

      【閑話休題】
       暑さを忘れる寒ぶ〜イ 駄洒落を一つ

       MH 「 五無斎は、生前から九曜星を長野県内のアチコチに彫り、『 俺が死んだら
           供養せい(九曜星)、供養せい 』、と言っていたので、皆さんに供養して頂き、
           泉下でさぞかし満足しているでしょう                         」

      ここから2kmほどの道の駅「ながと」で昼食とする。ここにはレストランが併設されてお
     り、神奈川・Tさん、滋賀・Oさんと入り、私は「信州蕎麦(そば)」を注文する。

       「蕎麦定食」【道の駅・ながと】

 (3) 本入りの「焼餅石(やきもちいし)」
      五無斎の名が神保博士はじめ中央で知られるようになったキッカケの1つが、「焼餅
     石」だ。
      草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」にある『やきもち沢』を訪れた。有名になって
     から長い年月が経ち、大勢で探しても球顆状の「焼餅石」と呼べるものはなかったが、
     晶洞の中に「緑色の緑簾石・うぐいす餡」や「透明〜白色の水晶(石英)の白餡」が入っ
     た標本は採集できた。

         
            採集風景【撮影:滋賀・Oさん】           「焼餅石」【昔の採集品】

      このような事態も想定されたので、昔採集した標本をいくつかオークションに出品した
     ところ、好評だったようだ。

 (4) 武石(たけし)の「武石」
      平成の大合併以前は、「武石村」があったのだが、今は上田市武石地区になっている
     ようだ。ここでのミネラル・ウオッチングは地区の名前からとった「武石(ぶせき)」だ。
      五無斎は、武石小学校の校長を務めたことがあるなど、ゆかりの地でもある。

      【閑話休題】
       下見で妻と武石小学校を訪れた。校舎の壁に学校の校章のモニュメントが据え付け
      てある。それをよくよく見ると中央に六面体の一面を描いた「武石」になっている。

       武石小学校の校章

      地区には、遠くからでも見える大きな凝灰岩質の露頭があり、ここが「武石」の産地だ。

      ここに着いたころには雨はすっかりあがり、初夏の日差しが強く、汗ばむほどだった。

         
                産地                    産状【撮影:滋賀・Oさん】
                         「武石」産地と産状

      「武石」は、ご承知のように「黄鉄鉱」が俗に”褐鉄鉱”と呼ばれる「ゲーテ鉱」などに
     置き換わったもので、ここが『原産地』だ。

      結晶は、「六面体」のものと「五角十二面体」のものがあり、両者の住み分けはハッキリ
     していて、混在して産出する事はなさそうだ。
     ( それだけ、結晶成長の条件に差があった、ということだろうか。 )

      奈良・Yさんの「ここに大きい結晶がある!!」の叫び声を聞いて近づいてみると、最大
     1cmほどの「五角十二面体」結晶の母岩付を採集している。
      ( お主、腕を上げたな・・・・・・・周りの評 )

      下の方の安全なところで、神奈川・Tさんが「六面体」を採集していた。何でも、露頭が
     ”ペロリ”と剥がれ、その裏から出てきたらしい。

         
          六面体【採集、撮影:神奈川・Tさん】          五角十二面体
                                 「武石」

      初日のミネラル・ウオッチングはこれでおしまい。道の駅「ながと」に戻り、初日だけの
     参加になった滋賀・Oさんとお別れする。
      定宿になっている、川上村の「湯沼鉱泉」まで2時間のドライブだ。

4. 「湯沼鉱泉」の夜は更けて

    湯沼鉱泉に到着すると、社長、お姐さんそしてKさんが暖かく出迎えてくれた。既に、お姐
   さんが部屋割り表を壁に張ってくれていた。

    「玉手箱」、「オークション」担当役員たちが、参加者が持ち寄った標本を区分けして手際
   良く、テーブルの上に並べてくれる。
    19時からの食事までの間、入浴する人、「水晶洞」を見学する人、川上犬と戯(たわむ)れ
   る人と思い思いに時間を過ごす。宴会まで待てずに、ビールで水分補給している人もいる。

   A) 宴会
       19時ジャスト、宴会がスタートした。今回から宴会部長に就任したHさんの開会の辞で
      夜の部第1部「宴会」がスタート。
       長老組・Yさんの乾杯の音頭で冷えたビール、ジュースを喉に流し込むと、今日一日の
      疲れが吹き飛ぶ。

       宴会部長・Hさん撮影:長野・Mさん】

       地元・川上村の新鮮な素材を使った料理に舌鼓を打ち、ビールやジュースがぞくぞく
      と運ばれてくる。

       適度にアルコールが入ったところで、参加者全員の近況報告があった。いつも仲の良い
      京都・T夫妻、大学受験の年で「学業とミネラル・ウオッチングを両立」、と決意を語る
      T君など、挨拶のたびに大きな拍手が沸き起こった。

         
                T夫妻                        T君
                         近況報告と自己紹介

       宴もたけなわとなったころ、私が締めの挨拶をさせていただくことになった。ミネラル
      ファンにとってメッカ・川上村の「湯沼鉱泉」と「水晶洞」がいつまでも存続するよう
      この会として応援したく、参加者に引き続き協力をお願いした。

   B) オークション
       恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されている
      「逆ブービー方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利を得る方式を
      採用していた。2008年、売上金を社長へのお見舞金に回すため”青天井方式”を試行した
      ところ、皆さん良識があり、悪戯(いたずら)に、価格は引き上がらないことが分かった
      ので、今回も”青天井方式”にした。

       東のH財閥とHファンド、そして西のN基金などが高額で買ってくれれば、宿泊費が安くな
      るメリットもある。何より、出品した人も納得できる。
       今回は、兵庫・N夫妻にオークショナーと記録係をお願いした。

       「標本玉手箱」に提供された標本の中から、良品を選んで「オークション」にまわし
      写真、書籍などは定額で、欲しい人がジャンケンするルールになっている。
       今回日帰りで参加できなかった滋賀・Oさんから、「大坂峠の玉髄」や「ミネラルウオッチ
      ングの写真」を出品していただいていたので、「オークション」品と「玉手箱」に並べさせ
      ていただいた。

       関西のオバちゃん風オークショナー・Nさんの奥さんの呼び声に釣られ、値が上がり、
      人気の標本には希望者が殺到し、賑やかなジャンケンの声が湯沼鉱泉に響きわたった。

       
          オークショナーNさんの奥さん

       オークションの結果をNさんがEXCELデータにまとめてくれたので紹介する。

                                                   敬称略

No 標本名 数量 産地 出品者 落札額 落札者
1 採集会記念写真 4 湯沼鉱泉 滋賀・O 300 MH他
2 保科五無斎写真葉書2枚一組 3 長野県 MH 100 長野・T他
3 やきもち石(武石入りのも有り) 10 長野県武石村 MH 100〜1100 神奈川・K他
4 飾石風やきもち石 1 長野県武石村 MH 2,500 京都・T
5 大隈石 4 鹿児島県咲花平 奈良・Y、大阪・O 100〜800 神奈川・H他
6 金雲母 1 熊本県宇城市豊福 奈良・Y 100 兵庫・N
7 満ばん石榴石 3 長野県 MH 700〜800 東京(京都)・H他
8 単身赴任の想い出-石英、玉髄、千葉石 1 千葉県南房総市荒川 MH 2,000 東京・H
9 古銅輝石、沸石、ウグイス砂、メノウ(父島)赤玉(母島)のセット 3 東京都小笠原父島母島 京都・T 500 愛知・T他
10 ミアジル鉱 1 鹿児島県豊城鉱山 大阪・O 600 長野・M
11 緑鉛鉱 1 石川県尾小屋鉱山 長野・M 100 奈良・U
12 紅柱石(鋼玉付き) 1 長野県天龍村向方 長野・M 200 奈良・Y
13 ヒスイ輝石 1 新潟県金山 長野・M 800 奈良・Y
14 普通輝石 1 長野県大岡樋口沢 長野・M 100 神奈川・T
15 ベスブ石 1 埼玉県秩父石灰沢 長野・M 300 奈良・Y
16 苦土フォイト電気石 1 山梨県京の沢 長野・M 100 兵庫・N
17 霰石 3 長野県大町市平湯俣 長野・M 700〜1000 MH他
18 自然砒 1 福井県赤谷鉱山 愛知・T 700 三重・O
19 褐簾石 1 京都府如意ヶ岳 愛知・T 300 神奈川・K
20 重晶石 1 岩手県鷲の巣鉱山 愛知・T 300 MH
21 珪灰石 1 長野県大町市仏崎 長野・M 200 兵庫・N
22 珪孔雀石 1 山口県山上鉱山 愛知・T 400 MH
23 擬孔雀石 2 秋田県日三市鉱山 愛知・T 400〜500 長野・M他
24 白鉛鉱 1 秋田県亀山盛鉱山 愛知・T 500 東京・H
25 蛍石 2 和歌山県大塔鉱山 奈良・U 100 長野・T他
26 鉄ばん柘榴石 1 三重県美杉町八手俣 奈良・U 500 三重・O
27 煙水晶 1 山梨県水晶峠 三重・O 200 神奈川・K
28 火山弾 1 兵庫県神鍋山 兵庫・N 200 愛知・T
29 ハーキマー水晶 2 三重県海山町 三重・O 700〜1500 MH他
30 鏡鉄鉱 1 岩手県和賀仙人鉱山 愛知・T 300 兵庫・N
31 緑水晶 1 秋田県荒川鉱山 愛知・T 400 神奈川・H
32 紫水晶、草入水晶のセット 1 山梨県水晶峠 長野・T 700 兵庫・N
33 ベリル 1 茨城県山の尾 長野・T 700 大阪・O
34 斧石 1 大分県尾平鉱山 長野・T 300 兵庫・N
35 水晶 1 長野県大日向鉱山 長野・T 100 奈良・U
36 車骨鉱 1 秩父鉱山大黒上一番抗 長野・T 400 兵庫・N
37 ピクロファーマコ石 1 大分県木浦鉱山 三重・O 2,000 MH
38 灰鉄石榴石 1 奈良県川迫鉱山 三重・O 500 兵庫・N
39 レインボー菱鉄鉱 1 三重県北在家 三重・O 600 東京・H
40 水晶 1 福島県鬼が城 神奈川・T 300 愛知・T
41 灰鉄石榴石 1 埼玉県秩父中津川 東京・H 1,500 神奈川・H
42 鉄ばん石榴石 2 茨城県山の尾 東京・H 500〜900 京都・T他

       私は、「焼餅石(緑簾石)」、「千葉県の石英」、「五無斎写真絵葉書」などを10点あまり
      出品し、下記のような標本を落札した。

No. 鉱 物 ・ 品 名  産 地 ・ 場 所  出 品 者   標     本
ピクロファーマコ石大分県木浦鉱山三重・Oさん
2球状霰石長野県湯股(俣)長野・Mさん
            塊状

          分離結晶
3重晶石秋田県鷲巣鉱山愛知・Tさん
4ハーキマ水晶三重県海山町三重・Oさん

   B) 「標本玉手箱」
       故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が入手した重品を持ち寄って、欲
      しい人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。担当は、東京・H君と長野・M
      さんの”若手2人組”だ。

       女性、学生を優先し、男性が後になる順番が”ジャンケン”で決まった。予め下見を
      する時間はタップリあり、神奈川・Kさんが出品した、ルーペサイズだが「金鶏鉱山の
      フローレンス石」や「黄金沢鉱山の車骨鉱」などを目聡い人は見つけたようだ。

        玉手箱下見

       私がいただいた標本は、下記の1点だ。

No. 鉱 物 ・ 品 名  産 地 ・ 場 所  出 品 者   標     本
珪灰石 岐阜県春日愛知・Tさん

       2巡してから、”取り放題”になり、あっという間に標本は引き取られていった。

   D) 「大人の時間」
       「大人の時間」では、神奈川・Hさん、京都・T夫妻が持参したスパークリグ・ワインを
      飲みながら産地、鉱物談義で盛り上がり、気がつけば消灯時間の22時30分だった。

4. 【第2日目】

 (1) 「朝飯前のミネラル・ウオッチング」
      恒例となっている「朝飯前のミネラル・ウオッチング」は、千曲川の砂金採集に案内する
     ことにした。
      2010年11月に開催したミネラル・ウオッチングで好評だったからだ。朝5時に起きると、
     キリが山すそから頂(いただき)に向けて上がっていくのがわかり、今日も天気は大丈夫
     そうだ。
      参加者は、H君、Tさん親子、Mさん、M君の5人だ。川べりの土砂を神奈川・Kさんに借り
     た”カッチャ”で掘り起こし、パンニングすると、最初の皿から”黄金色”の砂金が残る。

        
             カッチャで掘る                 パンニング
                    千曲川砂金産地で朝飯前採集
                        【撮影:長野・Mさん】

      小さなパンニング皿のMさんは、苦戦したようだが、それでも数ケは採集できたようで、
     一応満足して引き上げた。

 (2) 2日目のスタートだ!!
      7時から全員揃って、朝食をいただく。その前に、会計担当の愛知・Tさんから簡潔な
     会計報告があった。

      会計報告/愛知・Tさん

      オークションの売り上げが、4万円近くになり、単純平均1人当たり宿泊費が約1,500円
     安くなり、男性、女性、学生で”格差”をつけた徴収額が伝えられる。

      全員揃って朝食を”いただきま〜す”。奈良・Yさんが、かいがいしく全員のご飯を五郎八
     茶碗によそってくれた。

      家でもやっているの??

      この頃になると、朝日が差し込み、今日も採集日和のようで、HさんとNさんに御礼を申し
     上げる。

      「湯沼鉱泉」を出発する前に、恒例となっている湯沼鉱泉社長を交えての全員で記念
     写真を撮影する。

 (3) 向谷鉱山の「都茂鉱」を目指せ
      長野県の新鉱物産地を目指し、長坂ICから中央道に乗り、南諏訪ICでおり、コンビニで
     トイレ休憩をし、2日目のみ参加の長野・Mさんと合流する。
      10kmほど林道を登ると鉱山の入口で、すでに先客の車が2台停まっているほどの人気ス
     ポットだ。
      林道を1kmも行くと、ハンマーで石を叩く音が聞こえる。この産地は、2010年、ビスマス
     (Bi)-テルル(Te)鉱物の「都茂鉱」と「自然金」が産出する事で急に脚光を浴びた古い金山
     跡だ。

      向谷鉱山採集風景

      一番の富鉱が出た露頭の周辺の思い思いの場所に陣取って叩きはじめる。ビスマス−テ
    ルル鉱物に馴染みの少ない人にとって、どれが「都茂鉱」なのか判断がつかないようで、
     ひっきりなしに鑑定依頼が舞い込む。どうやら、「硫砒鉄鉱」との判断がつかないようだ。
     「硫砒鉄鉱」はほとんどの場合、細かい凹凸のある破面になることが多いのだが、「ビスマ
     ス−テルル鉱物」は、鏡のように平らな鏡面になっている。
      一人ひとりに説明し納得していただくと鑑定依頼がガクンと少なくなった。こうなると
     いかに大きな結晶の標本を見つけるかになる。その内、愛知・Tさんが持ってきた標本は、
     結晶面が3mmはありそうで、肉眼でもハッキリわかる。これを見せてもらった人は、完全に
     ビスマス−テルル鉱物の特徴を理解できたようだ。

      やがて、奈良・Uさんから「これは金ですか?」と鑑定依頼があった。ルーペで見ると、
     ”黄金色”の破面が見える。「100%金です」、とは言いかねるが、「金かもしれないから
     持ち帰って、実体顕微鏡で判定するように」と話す。夢があると、3人を乗せた奈良までの
     運転も少しは楽になるはずだ。

      初参加のMさんが、「磁硫鉄鉱の六角板状自形結晶がある」、と教えてくれた。周りにいた
     神奈川・Hさんや妻から鑑定依頼された標本の晶洞の中に、新鮮な白銀色〜赤錆びた
     ものまで、かなりの頻度で産出するようだ。

      向谷鉱山産「磁硫鉄鉱」

      こうして、全員が「都茂鉱」を採集し、産地を後にした。

      【後日談】

       大阪・Oさんから、『MHから恵与され、自模(つも)れなかった、「都茂鉱」』、とどこ
      かで聞いた駄洒落とともに写真が送られてきたので紹介する。

      向谷鉱山産「都茂鉱」【撮影:大阪・Oさん】

      駐車場に戻ると初参加、長野・Mさんから皆さんへの「標本玉手箱」が待っていた。「奈
     留島の双晶」、「長垂の紅雲母」などMさんが6年間学生生活を過ごした九州の名品が無
     料配布された。

      向谷鉱山で「玉手箱」

      「奈留島の日本式双晶母岩付き」などは、次回のオークション用に、予め選別させていた
     だいてあるので、次回参加のお楽しみ。

 (3) 金鶏鉱山の新産鉱物と「自然金」
      昼食の後、金鶏鉱山に向かった。「フローレンス石」などの新産鉱物、「自然金(砂金)」、
     そして「水晶」と想いおもいの鉱物種を狙って採集する。
      水晶組で露頭と格闘していた、東京・H君と愛知・T君が大きな晶洞を割り出したのは、
     若者パワーで、大学入試と大学卒業試験もこの勢いで突破できるだろう。

          
          晶洞を掘り出した若者2人                   砂金組
                           金鶏鉱山採集風景

      砂金組の奈良・Yさんは大き目の砂金をゲットし、朝日金山以来砂金づいているようだ。
     東京・H夫妻や長野・Mさんは砂金のある層まで掘り込むのとパンニング技術で苦戦して
     いたようだが、要は『習うより慣れろ』 だ。

      新産鉱物組の三重・Oさんは、「フローレンス石」と「デューク石」が狙いのようだが、
     すれっからしのズリには、出そうな晶洞のあるズリ石がほとんど見当たらないほどで苦戦を
     強いられたようだ。

      【後日談】
       2010年に金鶏鉱山を訪れた後、帰宅間もなく大阪・Oさんからメールとともに「フロ
      ーレンス石」の写真が送られてきた。”これ見よがし”だ。

       今回は、ミネラル・ウオッチングが終わって2週間になろうというのに音沙汰がなく
      駄目だったんだろうな、と思っていた矢先、『フローレンス石があった!!』、とOさん
      から写真付きメールが送られてきた。2010年のものほど結晶の形がハッキリしてい
      ないが、特有のピンク色をしていて、間違いないだろう。

        『 もうは未だなり、・・・・・・ 』

        「フローレンス石」【採集、撮影:大阪・Oさん】

      15時、駐車場に戻り、再会を約束し皆さんとお別れした。今回も、事故もなく、無事終了で
     きたのは参加者の安全意識の高さとご協力の賜物と感謝している。
      次回のミネラルウ・オッチングで多くの皆さんと再会できるのを楽しみにしている。

5. おわりに

 5.1 ミネラル・ウオッチング
      5月連休のミネラル・ウオッチングも11年目を迎えた。救護係・東京のH夫妻の出番は
     なく、無事終了でき、参加した皆様の安全への協力に感謝している。

      初回に参加した当時小学5年生だった子たちは高校を卒業し、それぞれの道に進んで
     いる。
      1期生の一人、奈良・Aさんの息子T君はこの春20歳になり、「鉱物」以外の趣味を持っ
     ていると教えていただいた。
      当時の子供たちで参加できる人が少なくなってきているが、今回、初参加の新しいメンバー
     3名が加わり活性化が維持できているのは嬉しいことだ。

 5.2 石友の恵与品
     石友にお会いすると、出張先で採集した鉱物標本や地元の鉱山ゆかりの品などをお土
    産にいただくことがある。

    (1) 小笠原父島の鉱物
         京都・T夫妻から、Tさんが小笠原・父島に出張した時に採集した鉱物標本セット
        をいただいた。同じものが、夜の「オークション」にも何組か出品されていた。
         ミネラル・ウオッチングで南極に行くことはあっても、小笠原に行く可能性は少ない
        ので、私にとって貴重な標本だ。

          
                 古銅輝石                     輝沸石(?)

       
                  鶯砂

                           小笠原/父島の鉱物
                           【京都・T夫妻恵与品】

 (2) 「生野鉱山のハヤシライス」

      兵庫・N夫妻から単身赴任している私のために「生野鉱山のハヤシライス」をいただい
     た。兵庫県生野鉱山の社宅で、昭和30年〜40年代に食べられた思い出の味らしい。

       
                生野鉱山のハヤシライス
                 【兵庫・N夫妻恵与品】

      田舎育ちの私にとって、ハヤシライスとカレーライスの違いも定かではないが、朝食に
     いただいたら、気のせいかその日の馬力(馬鹿力?)が違った。

      赴任先の会社は、今月末に上場が決まった。とは言え、某製作所のような大企業なら
     外部の業者に依頼するような専門的な仕事も内部で処理してしまう。これが、高収益の
     秘密なのかも知れない。

      私の主たる仕事は、理論計算やシュミレーションを通しての技術コンサルティングなの
     だが、シュミレーションならぬ趣味が石採りは皆さんが知っている。石採りの実力(?)を
     発揮する絶好の機会が訪れた。
      新ラインに設備を移転する場所の床に、1.2m×1.2m×高さ0.1m、つまり0.15立方メート
     ルのコンクリートの出っ張りがある。これを”はつって”取り除く仕事を業者に見積もりを
     頼んだら十万円を超える、という。それなら、休日に私がやってやると大見栄を切って
     しまった。

      昔(江戸時代)の坑夫は一日に3尺立方(0.03立方メートル)の鉱石を掘り出すのが
     一人前の仕事量だったらしい。これから考えると、0.15立方メートルは、5日分の仕事量
     だ。コンクリートで鉱石ほど手強くは無いにしても、3日の仕事と読んだ。
      4kハンマーや4ポンドハンマーとタガネ、それにエアハンマーを駆使し、朝9時に叩き始
     めて16時過ぎに全部をはつり終えた。
      我ながら、”アラ古希”パワーに驚いている。

          
                 Before                        After
                             はつり作業

 5.3 自然に触れる
      夏場の節電対策として5月、6月は、土曜日も出勤して作りだめしている。週休2日に
     馴れた身体には週に1日の休みしかないのは辛い。
      皆さんと馬鹿話をしながら山道を歩いていると、路傍の動植物の姿に心癒され疲れが
     吹き飛ぶ。
      この時期、長野県の山を歩くと”ジィ〜、ジィ〜”と耳障りな音が聞こえる。「蝉」だという
     人と「蛙(カエル)」だという人がいる。立木の枝先を見ると”脱皮”したばかりの蝉の姿が
     あちこちにあった。正解は「蝉」だった。
      この地域には、湿地帯が多く、そこには可憐な「九輪草」のピンクの花があった。

          
                 春蝉                     九輪草
                           産地の自然

5. 参考文献

 1) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 2) 松原 聰:鉱物 ウオーキングガイド 全国版 ,丸善株式会社,2010年
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