2008年月遅れGWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

    2008年月遅れGWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

1. 初めに

   私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWに
  ミネラル・ウオッチングを開催するようになって8年目を迎えた。
   例年なら年に数回、ミネラルウオッチングを開催するのだが、2008年1月末から、私が
  千葉県に単身赴任している関係で、2008年の11月以来の開催となった。
   今回は、「山梨県、長野県のマル秘産地をたずねて」と題して、山梨県甲州市(旧塩山
  市)と長野県川上村の代表的な鉱物産地を1泊2日で、延べ48名の皆さんと訪れた。

   第1日目・・・・・・・甲州市黄金沢鉱山、鈴庫鉱山、平澤
              古典的産地と新産地
   第2日目・・・・・・・川端下、梓(甲武信)鉱山
              鉱物の宝庫、2008年に湯沼鉱泉社長が開拓した新産地も巡検

   参加者は、関東各都県、、愛知、奈良、大阪、滋賀、石川と広範囲で、定連さんのほか
  新しい顔ぶれも加わり、和気藹々のミネラル・ウオッチングになった。

   今回、”自他共に(?)雨男”と認める愛知・H氏が不参加とあり、天気の心配はしていな
  かったが、2日間とも梅雨の合間の晴れに恵まれ『晴れ男』健在だった。

   黄金沢鉱山は最近「洋紅石」で脚光を浴びた新産地で、東京から近いこともありズリは
  徹底的に採集しつくされた感があったが、愛知のTさんはじめ何人かは”カーマイン・レッ
  ド”
の「洋紅石」採集した。他に、奈良のAさんは「ビューダン石」を採集し、「ミメット鉱」は
  比較的多産した。圧巻は私が採集した「車骨鉱」だろう。
   鈴庫鉱山は、最近出版された「鉱物観察ガイド」にもある古典的な産地で、「カニュク石」
  を見つけるのに皆さん苦労したが、1つ見つかれば続々と見つかる代物だった。坑道を
  攻めた滋賀・Oさん、石川のYさんは、立派な「孔雀石」を手に出てきた。
   初日最後の産地平澤に行って驚いた。「土石採取禁止」の表示が掲示されている。
  以前「氷長石」が採れたズリを見学しただけで、産地を後にした。

   道の駅「まきおか」で休憩の後、乙女湖→焼山峠→黒平→増富鉱山跡→黒森→信州
  峠を越え長野県に入り、今夜の宿「湯沼鉱泉」に到着したのは、18時を少し回っていた。

   夜は、地元・川上村の素材を使った料理に舌鼓を打ち、ビールやお酒も入り宴会部長
  に昇格した奈良・Yさんの名司会で参加者全グループの近況報告があり、湯沼鉱泉の夜
  は更けていった。
   20:30から皆さんお待ちかねの「オークション」と「標本玉手箱」が奈良・Aさん、滋賀・Nさ
  んの司会・進行で ”現金採集” ”室内採集” が盛り上がった。
   今回、100円〜500円均一標本を多数設け、欲しい人がジャンケンする賑やかな声が
  湯沼鉱泉に響きわたった。気がつくと22時近くだった。

   「大人の時間」には、参加できなかった愛知・Hさん、長野・Tさんなどから贈られた地酒や
  参加者が持ち寄った奈良、石川、岩手の酒がずらりと並んだ。地酒を味比べするグルー
  プと最近愛知・Sさん一家が採集したトパーズの良品の産地を聞き出そうとするグループと
  で盛り上がり、気がつけば消灯時間の23時だった。

   2日目、「湯沼鉱泉」前で社長を囲んで記念写真を撮り、出発!! 新たに開拓したル
  ートで川端下の坑道を目指す。登り始めて1時間あまり過ぎるころから、足元に石英塊や
  水晶群晶が見られ産地が近いことが判る。
   坑道組、ズリ組に別れ、ここぞと思う場所を探す。皆さんの狙いは無論「日本式双晶」だ。

   坑道内の採集ポイントを説明し、外に出ると京都・Tさんがニコニコしている。「ありましたヨ」
  と言うが、まさか双晶のはずはないだろう(失礼)、と見せてもらうと紛れもない日本式双晶
  で川端下特有の「鎌形水晶」だ。
   「柱石」にご執心の奈良・Yさん、埼玉・Tさんを案内し、別な坑道に向かうと、入り口には
  吹き溜まった雪が残っている。
   「柱石」の良品がでた枝坑道は完全に塞がってしまっていたが、その近くで良品が採集
  できた。

   外に出ると、愛知・Yくんママがニコニコして「双晶がありましたヨ」と声をかけてくる。頭が
  折れているが間違いなく双晶だ。
   産地を後にする寸前、半信半疑の様子で坑道から出てきた愛知・Tさんから鑑定を求め
  られたのは、両翼3cm(正確には37mm)ある立派な日本式双晶だった。

   この後、奈良・Aさんが発見した緑水晶ズリ、松茸水晶ズリ。ベスブ露頭と回り、この日の
  締めは、2008年湯沼鉱泉社長が発見した「緑簾石・ピカピカ柘榴石」露頭だった。ここでは
  東京(京都)・H君が「母岩つき緑簾石」などを採集した。
   滋賀・Nさん、Oさんも密かにしかもシッカリと”ピカピカ柘榴石”や”緑簾石”などを確保
  していた。

   今回も、誰一人怪我もなく無事下山し、次回の再会を約して登山口でお別れした。

   今回も、安全を優先し、参加人員を先着順で「湯沼鉱泉宿泊者」20名+αに制限せざ
  るを得なかった点を心苦しく思っている。
   次回のミネラルウオッチングで皆さんと再会できるのを楽しみにしている。
   ( 2008年6月開催 )

2. 【第1日目】

 (1) 「玉宮小学校」に集まれ!!
     私たち夫婦は、大坂からの夜行バスで早朝に甲府に到着する大阪・Oさんを甲府市
    外で出迎えた。近くのファミレスで朝食のあと、昼食を買い込み、愛知・Sさんをピック
    アップすべく中央線塩山駅に向かう。
     Sさんが乗る予定の電車が到着するまで1時間もある。駅前の土産物屋に飾ってある
    水晶の産地や値段を冷やかしで聞いたりしていた。それでも、30分もある。間もなく
    先ほどの土産物屋のショウウインドウに飾ってある水晶前に女主人と話している女性の
    後姿が見えた。
     「Sさん」と声をかけると、振り向いたのは、Sさんだった。普通電車を乗り継いで、予定
    より30分以上早く着いた、とのこと。
     挨拶もソコソコに、集合場所の甲州市(旧塩山市)竹森にある「玉宮小学校」に向かう。

     集合場所には、奈良・A氏、東京・H夫妻、横浜・K夫妻、愛知・S一家、T親子、埼玉
    T氏、S氏、京都・T夫妻そして初参加千葉・E氏がそろっている。
     やがて、石川・Y氏、滋賀・O氏、N氏と奈良・Y氏も到着。残るは東京(京都)・H君だけ
     集合時間を過ぎたので、玉諸神社の境内(?)をお借りして、簡単な自己紹介の後
    石川・Yさんを残し出発する。

 (2) ”カーマイン・レッド”の「洋紅石」を探せ
      最初に訪れるのは「洋紅石」で近年脚光を浴びた甲州市の黄金沢鉱山だ。車を停め
     一列になって産地に向かう。ここは、東京から近いこともありズリは徹底的に採集しつ
     くされた感があった。
      下見のときに多産したポイントを中心に採集を開始する。砒酸塩2次鉱物の「ミメッ
     ト鉱」は発見できるのだが、「洋紅石」はなかなか姿を現さない。
      やがて、愛知のTさんが「あった!!」と鑑定に持ち込んだのは、紛れもない「洋紅
     石」で、皆さんに見ていただく。

         
           洋紅石          「洋紅石はどこ?、どこ?」
      【採集、撮影:愛知Tさん】
                    黄金沢鉱山

      横浜・Kさん
       『ここにある、と言われても判らないのだから、自分で探すのは・・・・・・・』 

      【後日談】
      帰宅後採集標本を整理した参加者からの報告
      奈良・Aさん
      『 洋紅石は採集できませんでした(たぶん)が、ビューダン石は採集できた
       ようです 』

       洋紅石より、ビューダン石の方が採集難しいと思うので、おめでとうございます。

      私が方鉛鉱を含む石英塊をハンマーで割って、割れ口をルーペでのぞくと
     見慣れない柱状結晶が見えた。とっさに、『車骨鉱だ!!』、と叫ぶ。慌てて、
     片割れを探して割れ口を見ると、少し小さいが「車骨鉱」がついている。
      周りの人が集まってきたので、「 ここにあるのが車骨鉱!!」、と説明するが
     皆さんの興味は今ひとつだったようだ。
      このミネラル・ウオッチングに先立って、石友・某氏に産地の状況を聞くと
     「車骨鉱の良品が出ている」、と教えていただいた通りだった。

      
           今回                2007年
                 車骨鉱【私の採集品】

      【後日談】
      小さなものなので、車骨鉱を採集できたのは私だけだろう、と思っていたら、滋賀
     Nさんから、次のようなメールをいただき、比較的多いことがわかった。

      『 洋紅石一個と顕微鏡サイズながら車骨鉱が二個出てきました。まさか車骨鉱が
       自己採集出来るとは思っていなかったので大変感激しています。         』

 (3) 「うぐいす色??のカニュク石」
      黄金沢鉱山を引き上げ、駐車した場所で昼食にする。美しい新緑の木陰で
     皆さんと昼食を摂る。遠くで、「ジイジイ」と私を呼ぶ声がする。Y農学士の解説
     では、”春蝉(はるせみ)”らしい。

      林道をさらに登ると、鈴庫鉱山の入口に到着。12台の車を何とか停める。
     沢沿いの道を上ると、ズリが見えてくる。ここは、2008年に出版された加藤・
     松原両先生の「鉱物観察ガイド」にもある古典的な産地で、「カニュク石」や
     「ブーランジェ鉱」「車骨鉱」が目玉だ。
      「うぐいす色」、と言われても”ピン”と来る人は少なくて、「これですか?」
     「これですか?」と鑑定依頼があるのは全てハズレだった。
      しかし、1つ見つかれば続々と見つかる代物だった。五無斎ではないが標本と
     して1つあれば十分、という品だろう。

      
           採集風景
        【滋賀・Oさん撮影】

      かつて、長島乙吉氏が「褐簾石」を採集したという坑道を攻めた滋賀・Oさん
     石川のYさんは、立派な「孔雀石」を手に出てきた。手に持たせてもらうと、思った
     より軽い。皮膜状らしい。

      【後日談】
        大阪・Oさんから、「灰重石の写真」を添付したメールをいただいた。

       『 車骨鉱 おめでとう御座います。
        その他、ぞくぞくと 楽しいのや綺麗なのがHPに・・・

        添付写真は鈴庫鉱山の灰重石ですよね?
        小さな黄銅鉱があったので記念に持って帰ったら 光りました 』

         ”幻の”灰重石【青白く光る】

        「鈴庫鉱山の灰重石」は、最近出版された加藤、松原先生の「鉱物観察ガイド」の
       鈴庫鉱山の章に、『 輝銅鉱(?)、銅藍、磁硫鉄鉱、灰重石などの産出も報ぜ
       られているが、確認していない 』、とあるように、”幻の鉱物”です。

 (4) 「平澤よお前もか」
     初日最後の産地平澤に行って驚いた。山梨県が作った「鉱物、土石採取禁止」
    の表示が掲示されている。

       平澤の「採取禁止」掲示

     竹森の水晶山に続いて平澤も採集禁止になると、甲州市で大勢が楽しめる産地は
    なくなってしまった。
     以前「氷長石」が採れたズリを見学しただけで、産地を後にした。

 (5) 今夜の宿「湯沼鉱泉」を目ざせ

     道の駅「まきおか」で休憩の後、乙女湖→焼山峠→黒平→増富鉱山跡→黒森
    →信州峠を越え長野県に入り、今夜の宿「湯沼鉱泉」に到着したのは、18時を
    少し回っていた。
     最短ルートは、「大弛峠」を越える林道なのだが、車高の低い普通車では無理と
    判断し、少し遠回りだが、新緑の中、80kmの林間ドライブだった。

     湯沼鉱泉に到着すると、社長、お姐さん、そして生まれて間もない6匹の川上
    犬が暖かく出迎えてくれた。(”モコモコ”の産毛に覆われた子犬たちは、暖かい)

       「川上犬」

     「玉手箱」「オークション」担当役員たちが、参加者が持ち寄った標本を区分、価格
    付けして、テーブルの上に並べてくれる。
     食事までの小一時間、入浴する人、「水晶洞」を見学する人、思い思いに時間を
    過ごす。

 (6) 「湯沼鉱泉」の夜は更けて

   A) 宴会
     19時ジャスト、宴会がスタートした。宴会部長に昇格した奈良・Yさんの開会の辞で
    夜の部第1部「宴会」がスタート。東京・Hさんの乾杯の挨拶で冷えたビール、ジュース
    を喉に流し込むと、今日一日の疲れが吹き飛ぶ。
     地元・川上村の素材を使った料理に舌鼓を打ち、ビールやお酒がぞくぞくと運ばれ
    お腹も一杯になったころ、宴会部長の司会で参加者全員の近況報告があった。
     参加者中最年少の愛知・T君は、今年高校受験の年だが、「勉強とミネラル・ウオッ
    チングを両立させます!」、と力強い抱負を述べ、一段と大きな拍手が起こった。

         
            名司会・Yさん      「勉強と両立させます!」
                               T君【中3】
                     宴会風景

   B) オークション
     恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されている
    「逆ブービー方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利を得る。
    これは、悪戯(いたずら)に、価格を引き上げないための配慮である。
     今回の担当は、奈良・Aさん、滋賀・Nさん、大阪・Oさんにお願いした。

     「標本玉手箱」に提供された標本の中から、オークション担当が24点の標本を選んで
    くれた。一人1つの標本しか入手できない(全員が1つは入手できる)ようにして、落札
    者決定が簡単になるよう、開票する標本の順番をT君(中3)に決めてもらった。
     今回、100円〜500円均一標本を多数設け、欲しい人がジャンケンする賑やかな声
    が湯沼鉱泉に響きわたった。

        
         オークション入札         真剣な顔でジャンケン
                 オークション風景

    オークション品(入札品)は、次の通りである。
    【これらの一部標本は、採集禁止になる前の採集品であることをお断りしておきます】

No. 鉱物 産地・場所 出品者 落札単価(1点)
1 紫水晶群晶 石川・尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 2,000
2 方解石・犬牙状結晶 岐阜県・金生山 愛知・Tさん 300
3 紅柱石 京都府・木屋 京都・Tさん 900
4 鉄パーガス閃石【新鉱物】 三重県・加太採石場 滋賀・Oさん 600
5 ピンク色霰石 千葉県・長崎鼻 Mineralhunters 700
6 ピンク色霰石 千葉県・長崎鼻 Mineralhunters 400
7 石(鉱物)なし県の鉱物たち
千葉県の鉱物6種
@ゾノトラ石(結晶)
Aトベルモリー石
B自然銅
C霰石(緑色)
D鍾乳石(鍾乳管)
Eソーダ沸石
千葉県 Mineralhunters 1,200
8 緑鉛鉱(2点) 石川・尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 600
10 キレイな柘榴石(3点) 奈良県 滋賀・Oさん 500
11 キレイな柘榴石(3点) 奈良県 京都・Tさん 500
12 キレイな柘榴石 奈良県 大阪・Oさん 300
13 ネオジム弘三石(3点) 佐賀県 滋賀・Nさん 400
14 砂金(2点) 山梨県・S川
埼玉・秩父
神奈川・Kさん 400
15 サファイア 大阪府・太子町 大阪・Oさん 700
16 園石 滋賀県・五百井鉱山 愛知・Tさん 800
17 ネオジムランタン石 佐賀県 滋賀・Oさん 400

   C) 「標本玉手箱」
      故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が採集した重品を持ち寄り
     欲しい人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
      ここには、「オークション」に入れてもおかしくない、隠れた名品もヒッソリと並び、
     参加者の”目利き度”が試された。
      気がつくと22時近くだった。

   D) 「大人の時間」
      参加できなかった愛知・Hさん、長野・Tさんなどから贈られた地酒や参加者が持ち
     寄った奈良、石川、岩手の酒がずらりと並んだ。地酒を味比べするグループと最近
     愛知・Sさん一家が採集したトパーズの良品の産地を聞き出そうとするグループと
     で盛り上がり、気がつけば消灯時間の23時だった。

3. 【第2日目】

 (1) 「朝飯前のミネラル・ウオッチング」
     今回は初めての参加者が少なかったので、「朝飯前のミネラル・ウオッチング」は中止

     砂金採りがメインで「土壌掬い師」のブログを持っている、横浜・K夫妻は朝5時に
    起きて、川上村を流れる○川でパンニングし、数粒の砂金を採集した。

     ○川の砂金【採集、撮影:Kさん】

 (2) 2日目のスタートだ!!
     『 腹が減っては・・・・』 、と全員揃って、朝食を戴く。会計担当の愛知・Tさんから
    簡潔な会計報告があり、男性、女性、子どもで1,200円づつ”格差”をつけた参加費が
    伝えられる。
     オークションの売り上げが、初めて2万円を超え、1人当たり参加費が約1,000円安く
    なった勘定
     「湯沼鉱泉」を出発する前に、恒例となっている湯沼鉱泉社長を交えて全員で記念
    写真を撮影する。

     湯沼鉱泉前で記念写真【撮影:滋賀・Oさん】

 (3) 目指せ標高2,000m
     登山口に到着。今回の目玉の1つ「日本式双晶」を求めて、川端下(かわはけ)の
    坑道とズリを直接目指す新ルートを登る。
     標高差約400mあり、大阪・Oさんが持参した高度計で確認、100m昇るごとに荷物を
    下ろして休憩。

     記念写真【撮影:滋賀・Oさん】

     この写真が新ルート開拓記念写真、と私が言えば、某氏が「遭難前の最後の写真」
    とまぜっかえす。

     登り始めて1時間あまり過ぎるころから、足元に石英塊や水晶群晶が見られ産地が
    近いことが判る。
     1時間30分かけて、鞍部のピンポイントに到着した。早速、坑道組、ズリ組に別れ、
    ここぞと思う場所を探す。皆さんの狙いは無論「日本式双晶」だ。

     坑道内の採集ポイントを説明し、愛知・Tさんに場所を譲って外に出ると京都・Tさん
    がニコニコしている。「ありましたヨ」、と言うが、まさか双晶のはずはないだろう(失礼)
    と見せてもらうと紛れもない日本式双晶で川端下特有の「鎌形水晶」だ。

     日本式双晶【採集:京都・Tさん】

     「日本式双晶」には見向きもせず「柱石」にご執心の奈良・Yさん、埼玉・Tさんを案
    内し、別な坑道に向かうと、入り口には吹き溜まった雪が残っている。
     「柱石」の良品がでた枝坑道は完全に塞がってしまっていたが、その近くで良品が
    採集できた。

     外に出ると、愛知・Yくんママがニコニコして「双晶がありましたヨ」と声をかけてくる。
    頭が折れているが間違いなく双晶だ。
     滋賀・Nさんが息を弾ませ、「日本式双晶!」と差し出したのは、母岩が薄く割れて
    平板水晶のようになったもので、この手の”偽日本式双晶”に振り回された人もいた。

     偽日本式双晶

     産地を後にする寸前、半信半疑の様子で坑道から出てきた愛知・Tさんから鑑定を
    求められたのは、両翼3cm(正確には37mm)ある立派な日本式双晶だった。
     いつもなら、1枚出るか出ないかなのに、この日は3枚も日本式双晶が出たことになり
    皆さんの”日ごろの行い”の良さを示している。

        
        愛知・Yくんママ採集品        愛知・Tさん採集品
       両翼1.5cm、蓚酸エステ中         両翼37mm
                      日本式双晶

 (3) また、Aさんズリ発見!?
      鞍部で昼食を摂っていると、その近くを掘り始めた奈良・Aさんが水晶や石英塊を
     掘り出した。それらに混じって、黄褐色の鉄さびに覆われた、『日本式双晶』風の
     ものがあった。
      2004年、トイレに行った時に「緑水晶」新産地を発見した実績のあるAさんだけに
     一同色めきたって周辺を掘り始めた。

     第2Aズリ発見!?

      結局、Aさんが掘り出したのは単なる石ころだったことが判明し、新産地発見の期
     待はしぼんでしまった。

 (4) 新産地「緑水晶ズリ」
     ここは、2004年に奈良・Aさんが発見した産地で、以前から知られていた緑水晶産地
    のものより結晶が大きく、頭付き群晶も多産した。
     小さな産地なので、ここを訪れるのが初めての人を優先に採集していただいた。
    Aさんの発見以来4年が経っているにもかかわらず、「両錐」の良品を採集した人もいた。
     愛知・Sさんは、自分の名前と同じ、「緑」水晶なので、ご満悦の様子だった。

     新緑水晶ズリ

 (5) 松茸水晶ズリ
     第2松茸水晶産地を素通りし、松茸水晶のズリに取り付き、皆さんここぞと思う場所で
    採集を始める。しかし、「松茸水晶があった!!」という歓声は聞かれない。
     結局、この日はだれも採集できなかったことになり、『絶産』が近いかも知れない。

      【後日談】
        「 だれも採集できなかった」と思っていたら、京都・Tさんから、「松茸水晶の写
       真」を添付したメールをいただいた。

       『 ・・・・・・・川端下の日本式双晶ですが、大きさ2センチで間違いありません。
        また、本日採集しました水晶を洗浄したところ、松茸水晶が3本(全て先端あり)
        が出てきました。
        採集場所:松茸水晶が取れると説明していただきました場所の・・・・・・・・・   』

        日本式双晶といい、松茸水晶といい、この日は京都・Tさんディだったようで、
       2日目湯沼鉱泉で待機していた奥さんへの良いお土産となったようだ。

(6) 新「ざくろ石」産地
      この後、ベスブ石の露頭、ズリでピカピカのベスブを採集した一行は、湯沼鉱泉
     社長が1ケ付前に開拓した「ざくろ石」産地に向かう。すぐに場所を突き止め、皆さん
     を呼んで採集していただく。
      東京(京都)・H君が「母岩つき緑簾石」などを採集した。滋賀・Nさん、Oさんも密か
     に、しかもシッカリと”ピカピカ柘榴石”や”緑簾石”などを確保していた。

     ざくろ石【採集、撮影:滋賀・Oさん】

 (7) また会う日まで
     新「ざくろ石」産地で記念撮影の後、登山口まで下山したのは、15:30ごろだった。
    今回も、誰一人怪我もなく無事下山でき、参加された皆さんのご協力に感謝しつつ、
    次回の再会を約して皆さんとお別れした。

     新ざくろ石産地で【撮影:滋賀・Oさん】

4. おわりに

 (1) 5月連休のミネラル・ウオッチングも8年目を迎えた。今回も無事終了でき、参加者の
    皆様の協力に感謝している。

     初回に参加した当時小学5年生だった子たちは高校2年生になり、鉱物から離れて
    行ったり、参加できる子が少なくなってきている。
     また、常連だった皆さんの中には、個人、家庭の”事”情があり、参加できなかった
    方々も多い。

     今回も参加していただいた、奈良・Aさんから次のようなメールをいただいた。

    『 ・・・・・・・ 一番楽しみにしていました湯沼旅館での宴も大いに盛り上がり、これだけ
      でも450kmを走ってきた甲斐があったと喜んでいます。
       欲を言えば、常連さんの参加が少なかったことがちょっぴりさびしかったですね。
      次回は是非とも再会して鉱物談義で大いに盛り上がりたいと願っています。    』

     常連の皆様、お待ちしています。( 申し込みは、お早めに )

 (2) 以前のHPにも書いたが、鉱物標本を手に入れるだけなら、高速代、高騰したガソリン
    代、宿泊費を考えれば、ネットオークションで購入したほうがはるかに安上がりなこと
    は間違いない。

    懇親会での参加者の挨拶を聞いたり、上のAさんのメールを読むと、鉱物標本を手に
   入れることだけが参加している目的でないことが良くわかった。永くこの会が続くよう、
   がんばる決意を固めた。

 (3) 今回、「オークション」に「単身赴任の思い出(Part1) 石(鉱物)なし県の鉱物たち」
    と題して、千葉県の標本6種をセットにして提供した。
    ( Hさんの奥さんが落札してくれた )

     6ケ月の予定の単身赴任は残すところ、1ケ月余りになった・・・・・・・・・・・・

5. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
 2) 松原 聰編著:鉱物観察ガイド,東海大学出版会,2008年
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