2007年 晩秋のミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】 「山梨・長野の古典的産地を訪ねて」

    2007年 晩秋のミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】
        「山梨・長野の古典的産地を訪ねて」

1. 初めに

   私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと定期的に
  ミネラルウオッチングを開催するようになって7年目を迎えた。
   今回は、「「山梨・長野の古典的産地を訪ねて」と題して、私の妻すら連れて行ったこと
  がない古典的な鉱物産地を1泊2日で、延べ30名の皆さんと訪れた。

   第1日目・・・・・・・山梨県甲府市向山鉱山(西側)
   第2日目・・・・・・・長野県川上村穴沢(御所平や赤面山と呼ばれている)

   参加者は、関東各都県、、長野、愛知、滋賀と広範囲で、定連さんのほかに新しい顔
  ぶれも加わり、和気藹々のミネラルウオッチングになった。

   今回、天気予報では2日間とも90%雨の予報で、小雨がぱらつき、集合場所に集まった
  みなさん悲壮な表情だったが、2日間とも、産地に到着する頃には雨も止み、”晴れ男”
  復活だった。

   初日、中央道「韮崎IC」出口に集合し、黒平集落を目指す。雨は時折強く降り、駐車場
  に到着したころは、本降りとなり、雨ガッパに身を包み出発する。と、雨はやみ、登り坂に
  差し掛かると暑いほどだった。
   「前棚」坑道前では、”エビフライ水晶”を全員が採集し、愛知・Sさんが長さ6cmの頭付
  水晶を掘り出すなど、みなさんこの産地の特徴的な標本を採集できた。
   尾根を越え、「大穴」坑跡で昼食と採集、そしてこの日最後の採集地「下附穴」跡を目
  指す。ここには、ガラスのような透明感のある水晶片がたくさん散らばっていて、素晴らし
  い水晶が採掘されたことをうかがわせている。
   滋賀・Oさんが「左水晶かな?」とつぶやいたのを聞きつけ、鑑定すると、直径5cm、透
  明感の高い柱状、左ドフィーネ双晶で灰鉄輝石と思われるインクルージョンまで入ってい
  る素晴らしい標本だった。

   駐車場に戻り、トイレ休憩などをはさみ、信州峠を越え長野県川上村の「湯沼鉱泉」に
  到着したのは、夕闇が迫るころだった。

   「標本玉手箱」「オークション」担当のSさん一家、H君が出品を鑑定してくれ、テーブルの
  上に陳列する。
   熱めの風呂に入り、汗と泥を落とし、さっぱりして、お待ちかねの宴会だ。宴会部長代理
  Iさんに司会をお願いし、Sさんの乾杯の挨拶でスタートした。
   地元・川上村の素材を使った「岩魚の生造り」などの料理に舌鼓を打ち、ジュースや
  ビールを飲みながら、参加者全グループの近況報告もあり、湯沼鉱泉の夜は更けていっ
  た。
   仕上げの「松茸ご飯」と「蕎麦掻」をいただき、今日一番の良品を採集したOさんの締め
  の挨拶で宴会がお開きとなった。
   皆さん待望の「オークション」と「標本玉手箱」が開始した。「きれいな石榴石」、今回訪れ
  ることができなかった向山鉱山東側の「水晶巨晶」「美晶」、新発見の「洋紅石」「車骨鉱」
  「エシキン石」そして明日訪れる「穴沢の電気石」など全国各地の有名標本が並ぶ。入念
  な下見の後、入札そして開票、落札者が決まるたびに会場が歓声に包まれる。
   無料の「玉手箱」にも「デソーテルス石」など「オークション」に入れてもおかしくないような
  品々が並び、参加者の”目利き度”が試される。

   気がつくと21時も過ぎ、”大人の時間”で、愛知・ヘナK小隊が”陣中見舞い”として差入
  れてくれた田口鉱山のある田口町の地酒「可(べし)」の一升瓶を酌み交わしながら、産地
  情報を交換、鉱物談義に花が咲き、22時にお開きとした。

   2日目、出発前に湯沼鉱泉社長を囲んで記念写真を撮るころ、雨が本降りとなり、先が
  思いやられたらしく、女性陣から弱気な声が聞かれた。林道を登り、駐車する頃には雨も
  止み、試掘坑とそのズリで「電気石」と「水晶」を探す。
   昼ごろ、また雨が降り出し、試掘坑内で昼食をとっていると、長野・Tさんが「これが電気
  石でしょうか?」と差し出したのは、紛れもない扁平電気石だった。さすが、保科五無斎の
  教育者人脈を引き継ぐ高校教師だけのことはある。
   これを見て、昼食を終えた男性陣は、Tさんが採集した附近のズリを掘りはじめると、雨
  は上がり、太陽が姿を出した。
   引き上げる5分前、私の脇を掘っていた、中学生のT君が私に見せてくれたのは、紛れも
  ない「電気石」で今時としては大きなものだった。”ラスト5分の伝説”は、引き継がれた。

   今回も、安全を優先し、参加人員を先着順で「湯沼鉱泉宿泊者」20名に制限せざるを
  得なかった点を心苦しく思っている。次回のミネラルウオッチングで皆さんと再会できる
  のを楽しみにしている。
   ( 2007年11月開催 同月撮影担当Oさんの写真追加 同月愛知・Tさんの写真追加)

2. 【第1日目】

 (1) 「韮崎IC」に集まれ!!
     私たち夫婦が、集合1時間前の7時に「韮崎IC」に行くと、さすがに誰もいない。近くの
    ファミレスに入ると、愛知・Sさん一家がいるではないか。私たちを見たSさんの”眼が
    点”になっていた。9月末の石川県小松市でのサプライズの再現である。
     ( 私たちは、表の名古屋ナンバの車でSさん一家がいることが予測でき、心の準備
      ができていた。 )

     「韮崎IC」に行くと、常連の滋賀・Oさん、愛知・Iさん、Tさん親子、東京・H君、初参加の
    横浜K夫妻、長野・Aさん親子が集合してきた。初対面の挨拶の後、8台の車を連ねて
    出発だ。
     雨が降り出しているが、今回、”雨男”のH氏、N隊長もいないし、”晴れ男”の自信が
    気分を楽にさせる。

     「饅頭石」産地で有名なホッチ峠を越え、御岳集落を過ぎ、黒平集落の入口で長野
    Tさんと合流する。

 (2) ”エビフライ水晶”を探せ!!
     黒平分校跡近くの駐車スペースに車を止め、採集準備を始めるころ、雨は強く本降
    りになってきた。全員、雨カッパを着用し、最初の目的地の「前棚」坑を目指す。
     荒川の水量が普段より多く、手助けしながら、注意深く、全員無事渡河する。
     「日陰沢」と「大ドミノ沢」の合流点附近の沢の中から、大きな石英塊を見つけて、この
    上流に水晶産地があることを説明する。( 水晶産地探索のイロハ )
     参加者中最年少K君(小3)は、この石英塊をお土産用に道端にキープ

     歩き始めて15分もすると雨も止み、暑くて、みなさん雨ガッパを脱ぎはじめる。約1時
    間で「前棚」坑跡に到着した。

     ここには、大きな坑道とその前にズリが残され、チタン石などのチタン鉱物を伴う”エビ
    フライ水晶”が採集できる。また、緑泥石(鉄雲母?)を含む、透明感ある水晶もある。
     産地保護の観点から、『 ”エビフライ水晶”は、1グループ10本以下に制限 』させて
    いただいた。

     Sさんの奥さんが採集した水晶は、透明感が高く、緑泥石(鉄雲母?)のインクルージョン
    を含むこの産地の代表的な標本だった。”エビフライ水晶”は全員が採集でき、私が
    採集したものには、肉眼サイズの「チタン石(くさび石)が付いており、全員に産状を観
    察していただいた。

        
           採集風景        水晶【採集:Sさん奥さん】
                       前棚

     「前棚」には大きな坑道が残され、崩落の跡が全くない安全な坑道なので、希望者
    のみ、案内した。坑道には、傾斜した石英脈が走り、ところどころ小さな晶洞があり、
    脈に沿って掘り進んだことを理解していただいた。
     坑道の天井には、冬眠中のコウモリの姿が見られ、中学生のT君、小学生のK君は
    大喜びだった。

        
         石英脈を見るT君            コウモリ
         【撮影:Oさん】        【雨も上がり、”たたんだ”状態?】
                      前棚坑道内

 (3) 大穴(おおあな)は”外れ”?
      「前棚」から、獣道をたどり、尾根をいくつか越え、「大穴」坑を目指す。途中、”チョコ
     ボール”(鹿の糞)が、ところどころに見られる。
      「大穴」坑道前で昼食を摂り、終わった人からズリで採集する。ズリ一面に石英塊が
     落ちているのだが、頭付の良品は極めて少ない。

      ♪♪ ねらった大穴、見事に外れ〜 ♪♪

        
           坑道跡           採集風景
                   大穴

    【後日談】
      長野・Tさんから、次のようなメールをいただいた。早く、写真と現物を見たいものだ。

      『 大穴坑で、頭はないのですが、3cmの連続松茸を拾えました。説明しにくいの
       ですが、沖縄のお菓子・ちんすこうみたいな水晶です。
        上手く写真に撮れれば、又見ていただきたいと思います。・・・・・・・・・・・・  』

 (4) 水晶採掘の遺物発見
      急な尾根を越えて、この日最後の採集地、「下附穴(したつきあな)」を目指す。小
     中学生コンビが一番元気だ。
      そこには、「大穴」坑よりも広い範囲に、ガラスのような透明感の高い水晶片が多
     数落ちていて、素晴らしい水晶が採掘できたことをうかがわせている。
      愛知・Sさんがこんなのがあった、と掲げたのは、”クマデ”である。いまどきホーム
     センターで売っているものと違い、針金を折り曲げたものを寄せ集め、取っ手部分に
     針金を巻きつけた、”手製”のもので、黒平集落の人が、ズリを掘って水晶を探すた
     めに使ったものらしい。
      往年の水晶採掘を偲ばせる『産業遺物』である。

      手製のクマデ

    【後日談】
      ミネラル・ウオッチングの翌日、湯沼鉱泉社長、お姐さん、石友・小Yさんが拙宅を
     訪れてくれた。社長にこの話をすると、『 是非、欲しい! 』、と言うので、雪が降る
     前に水晶探しでなく、「クマデ探し」に行く予定だ。

      沢筋を掘っていると、滋賀・Oさんが「左水晶かな?」とつぶやいたのを聞きつけ、
     近寄って鑑定すると、直径5cm、透明感の高い柱状、左ドフィーネ双晶で灰鉄輝石と
     思われるインクルージョンまで入っている素晴らしい標本だった。
      みなさん集まって拝見し、『今日一番』の声が掛かった。

       ドフィーネ双晶【採集・撮影:Oさん】

      予定の14時過ぎに下山を開始する。勘を頼りに、道なき山腹を下り、行きに通った
     作業用林道に合流し、予定通り15時に無事、駐車場に到着した。

 (5) 今夜の宿「湯沼鉱泉」を目指せ

      途中、トイレ休憩、「黒奈戸神社」の水晶の手洗い場見学、記念写真撮影などの後
     今夜の宿「湯沼鉱泉」を目指す。その途中にある鉱物産地は、いずれも1箇所で1日
     楽しめるだけに、みなさん心残りだったようだ。
     ( 向山東、大株沢、五郎沢・・・・・・・小尾八幡山、増富鉱山・・・・などなど )

     
  黒奈戸神社記念写真【中央に水晶の手洗い場】
           【撮影:Oさん】

      信州峠を越え長野県川上村に入ると、雨が降った形跡もなく、翌日訪れる予定の
     赤顔山はじめ一体の唐松林は金色のじゅうたんに覆われたような素晴らしい景色で
     まさに紅葉真っ盛りである。

      全車9台、「湯沼鉱泉」に無事到着したのは、夕闇が迫るころだった。

 (6) 湯沼鉱泉の夜は深けて

      部屋割りの発表、持ち寄った鉱物標本を、「標本玉手箱」、「オークション」担当の
     Sさん一家とH君が振り分け、値段付けしてくれ、社長が準備してくれた、宴席脇の
     テーブルの上に陳列する。
      「オークション」の候補品が多すぎて、「500円」「300円」「100円」均一のテーブルを
     急遽準備する。
      懇親会まで間があり、お風呂を浴びたり、「水晶洞」を見学したり、思い思いに時
     間を過ごす。
      18:30から、大広間を借り切っての懇親会がスタートした。

   @ 「懇親会」
      常任宴会部長の愛知・H氏が不参加なので、司会を愛知・Iさんにお願いし、この
     ミネラルウオッチング参加7年目を迎えるベテランの一人愛知・Sさんの乾杯の音頭で
     「懇親会」がスタートした。冷えたビールが喉にしみる。

         
           司会・Iさん             Sさんの乾杯挨拶
                    懇親会スタート!!

     岩魚の生造り、天ぷらなど地元の季節の食材を生かした料理に舌鼓を打つ。宴たけ
    なわとなり、各グループごとの近況報告が始まる。
     この会発足以来の参加者から今回が初めてグループまで、和気藹々に歓談する。
    宴は続き、次々と料理が並ぶが食べきれない。それでも、仕上げの「松茸ご飯」と「蕎
    麦掻」をいただき、今日一番の良品を採集したOさんの締めの挨拶で宴会がお開きと
    なった。

   A 「オークション」
      恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されている
     「逆ブービー方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利を得る。
     これは、悪戯に、価格を引き上げないための配慮である。

      「標本玉手箱」に提供された標本の中から、オークション担当が15点の標本を選ん
     でくれ、一人1つの標本しか入手できない(全員が1つは入手できる)ようにして、落
     札者決定が簡単になるよう、開票する標本の順番をT君に決めてもらった。

       オークション入札風景

    オークション品(入札品)は、次の通りである。
    【これらの標本は、採集禁止になる前の採集品であることをお断りしておきます】

No. 鉱     物 産地・場所 出品者 落札単価
  合計
1 トパズ(約200個) 苗木 愛知・Sさん 400
2 川上村の鉱物セット(2産地6種) 川上村 Mineralhunters 500
3 氷長石と方解石(共に自形結晶)甲武信鉱山 Mineralhunters 300
4 水晶(巨晶) 向山鉱山 Mineralhunters 100
5 水晶(巨晶) 向山鉱山 Mineralhunters 500
6 水晶セット 苗木・無名鉱山 愛知・Iさん 200
7 水晶(巨晶) 向山鉱山 Mineralhunters 200
8 紫水晶 遊泉寺銅山 Mineralhunters 300
9 ベスブ石 甲武信鉱山 Mineralhunters 600
10 松茸水晶 川上村・穴沢 Mineralhunters 300
11 ベスブ石(巨晶) 川上村 Mineralhunters 1,100
12 水晶(美晶) 向山鉱山 Mineralhunters 700
13 車骨鉱(自形結晶) 山梨県・新産地 Mineralhunters 700
14 透緑閃石 五良津山 滋賀・Oさん 400
15 灰重石 甲武信鉱山 Mineralhunters 300
500円均一の例きれいなザクロ石(3点) 奈良県 滋賀・Oさん 1,500
300円均一の例1灰クロムザクロ石(3点) 白木 滋賀・Oさん 900
300円均一の例2記念写真(3点) 2007年GW 湯沼l鉱泉 滋賀・Oさん 900
300円均一の例3洋紅石(3点) 山梨県・新産地 Mineralhunters 900
300円均一の例4エシキン石(3点) 三重県・湯の山温泉 Mineralhunters 900
100円均一の例1扁平苦土電気石(5点) 穴沢 Mineralhunters 500

     No11 「ベスブ石(巨晶)」は、出品を眺めた湯沼鉱泉社長が『 こりゃ、良いものだ』
    と何回も言ったので、下馬評が高まり、単品として最高値で落札した。
     ( それでも、1,100円だから、市場価格の1/5〜1/10 だろう )

   A 「標本玉手箱」
      故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が採集した重品を持ち寄って
     欲しい人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
      ここには、「オークション」に入れてもおかしくない、隠れた名品もヒッソリと並び、参
     加者の”目利き度”が試された。

      私は、愛知・Tさんが出品してくれた「河合鉱山の硫カドミウム鉱」 1点をいただいた。

    B 「大人の時間」
      愛知・ヘナK小隊が”陣中見舞い”として差入れてくれた田口鉱山のある田口町の
     地酒「蓬莱泉 可(べし)」の一升瓶を酌み交わしながら、産地情報を交換、鉱物談
     義に花が咲く。
      この日一番の良品を採った滋賀・Oさんから、この日のエピソードが披露された。
      「 枯れ沢筋に水が流れていたときをイメージし、このあたりに転げ落ちて埋まって
       いるはずだと信じて掘った場所から採れた」とのこと。鉱物談義は尽きない。しか
       し、この日の早朝(早いグループは午前3時)、あるいは前夜に出発したグループ
       も多く、22時にお開きにした。

      私は、部屋に戻ると、今日一日の採集の疲れと酒の酔いもあり、たちまち Zzz・・・・

3. 【第2日目】

 (1) 「朝飯前のミネラルウオッチング」
     今回は、案内する私の体調がいまひとつで、割愛させていただいた。

 (2) 2日目のスタートだ!!
     『 腹が減っては・・・・』 、と全員揃って、朝食を戴く。お姐さんが全員のおにぎりを
    作ってくれている間に、湯沼鉱泉が初めての人を中心に、「天然水晶洞」を約30分か
    けて案内した。

       湯沼「天然水晶洞」記念写真【撮影:Oさん】

     @ 山の一部を削り、天然のまま、緑双晶の群晶を保存
     A 川上村を中心とする地元の鉱物の一級標本を展示
        この日訪れた「穴沢の電気石の母岩付き」は、世界中探しても、ここにしかない
       ものだろう。
        もし、「水晶洞の中の標本を1つをくれる」と社長が言ったとしたら、私は迷わず
       この母岩付き電気石を選ぶ。
     B 「甲武信鉱山」「水晶峠」「向山鉱山」など、最近採集した従来の産状を覆すような
        巨晶・美晶
        などに、みなさん圧倒されたようだ。

      小中学生は、最近生まれた川上犬を抱っこして、その”モコモコ”した抱き心地と
     可愛らしさに、いつまでも離したくない、様子だった。

       川上犬を抱くK君、T君(左から)

      全員揃ったところで、会計担当の愛知・Tさんから簡潔な会計報告があり、男性、
     女性・高校生、小中学生で”格差”をつけた参加費が伝えられる。
      「湯沼鉱泉」を出発する前に、湯沼鉱泉社長を交え、全員で記念写真を撮影する頃
     雨が本降りになり、急遽、玄関先をお借りし、社長を囲んで ”はい チ〜ズ”

       湯沼鉱泉記念写真【撮影:Oさん】

      雨脚が強まり、先が思いやられたらしく、女性陣から弱気な声が聞かれたが、湯沼
     鉱泉に別れを告げ、この日の採集地をめざす。

 (3) 「幻の電気石」を求めて
     △△の登山口に到着。雨は降り続いている。ここからの山道は、普通車では無理
    なので、4WDで車高の高い4台に15人が分乗して登る。しかし、路肩の崩れた場所
    などの難所では、長野・Aさん(k君のお母さん)の運転を代わってあげて、乗り切る。
     それでも、いつもの駐車場の手前200mにある、粘土質の急坂は、折からの雨でズル
    ズルに滑り、登りきれず、ここに車を置いて行くことにする。

     すると、雨は止み、部分的に青空が顔を出してきたのが、せめてもの救いだ。ここで
    採集用具を準備し、一列になって登り始める。道なき山腹を、できるだけ歩きやすい
    ルートを選んで案内する。
     その名に相応しい、△△の荒々しい山容が間近に見える。

      産地間近

     この日も、小学生のK君が先頭でがんばっている。約30分で、産地の「試掘坑」に
    到着した。

     産地では、「試掘坑」「試掘坑前ズリ」「試掘坑下ズリ」の3箇所に分かれてズリ掘りを
    主体にした採集を行う。【 安全上の注意を徹底 】

        
             坑内派              ズリ派
                   穴沢採集風景

     坑前のズリを掘っていた、Sさんの奥さんが、”松茸があった!!”と叫び、見せてもら
    うと、約3cmで、透明感の強い松茸水晶だった。
     昼近くになり、にわかに雲行きがおかしくなり、冷たい雨が降り始めた。坑道内で昼
    ごはんにするよう、皆さんをよび集める。
     少し遅れて集まってきた長野・Tさんが「これが電気石でしょうか?」と差し出したのは
    紛れもない扁平電気石だった。しかも3ケある。さすが、保科五無斎の教育者人脈を
    引き継ぐ高校教師だけのことはある。

        
          松茸水晶           扁平苦土電気石
      【採集:Sさんの奥さん】      【採集:長野・Tさん】
                 穴沢採集品

      これを見て、昼食を終えた男性陣は、Tさんが採集した附近のズリを掘りはじめる頃、
     雨は上がり、太陽が姿を出した。
      引き上げる5分前、私の脇を掘っていた、中学生のT君が私に見せてくれたのは、
     紛れもない「電気石」で今時としては大きなものだった。”ラスト5分の伝説”は、引き
     継がれた。
      結局、カケラを含めて「電気石」を自力採集できたのは、Tさん(3)、H君(1)、S夫妻(2?)
     T君(1)、そして私(6)の6人(計13個)だけで、”幻の電気石”になりつつあるようだ。
     ( 私の採集品は、次回のミネラルウオッチングで全部供出するので、今回採集、参
      加できなかった方も、入手のチャンスがあります )

         
             現地で          洗浄後自宅で【撮影:Tさん】
                          【左:T君採集、右:私の贈呈品】
                  電気石【採集:T君】

      われわれが産地を後にするころ、今日の成果を祝福するかのように、青空が姿を
     現わし、はるか下に雲海が横たわる幻想的な風景が見られた。

 (4) また会う日まで
      御所平の駐車スペースまで下り、解散式を行い、またお会いすることを約束し、それ
     ぞれの家路についた。東京方面に帰るK夫妻、H君を先導し、「韮崎IC」に向かって
     最短・信号なしコースを走る。
      途中、塩川ダムでトイレ休憩すると、周囲の山々の紅葉が湖に映えて美しい。
      K夫妻、H君とIC近くで別れ、私たち夫婦が帰宅したのは17時だった。

4. おわりに

 (1) ミネラル・ウオッチングを終え無事帰宅した参加者から、今回の感想が寄せられたので
    いくつかを紹介したい。

     『 今回は、五無斎ゆかりの産地に、自分の足で立つことができ、それだけでも満足
      なのですが、小さいものとはいえ自分の手でいくつかの標本を採集でき、これ以上
      望むものはないほどです。
       ・・・・・
       連れて行っていただくたびに思うのですが、Mineralhuntersの鉱物への情熱は
      シュリーマンなみですね。
       お金儲けとか有名になってやろうだとか、そういう欲がないからこそ、自分の愛する
      ものに全力を傾けられるのでしょうね。・・・・・・・』
(長野・Tさん)
      ( 褒めすぎです・・・・・・M・H )

     『 採集会での収穫は今一でしたが、微妙な天気の移り変わりで景色の様子が
      変わり、水墨画あり、日本画あり、洋画有りといった見事な二日間で感動しました。
       しかし、向山は興奮する産地でしたね。また再チャレンジして、巨晶を掴んで
      みたいものです。                  』
(愛知・Iさん)
      ( デザイナーのIさんらしい感想ですね・・・・・・・M・H )

     『 体調不良のところを、ありがとうございました。・・・・現場では気がつかなかった
      もので凄いものがみつかりました。
       そろばん玉の結晶(扁平電気石の完全結晶?)です。次回、お会いしたときに
      お披露目いたします。・・・・・・・・・・・・・      』
(愛知・Sさん一家)
       ( エ!! 本当ですか!! ”幻の電気石”の完全結晶!? 拝見するのが、
        嬉しいような・・・・・・・・・・、複雑な心境です。
         初日、風邪気味で、関節が痛み、微熱があったのですが、皆さんを案内し、山の
        精気を吸い、皆さんの喜ぶ顔を見て、ヘナk小隊差し入れの”可(べし)”を飲んだら
        スッカリ良くなりました・・・・・・・・M・H )
       【後日談】
         ソロバン玉の結晶なるものの写真を送っていただいた。それを見ると、へき開
        片で、完全結晶とは程遠いものである。( これでも、貴重なものには間違いない)
         完全結晶を持っているのは、私が知っている範囲では、湯沼鉱泉、堀先生
        KNさん、小Yさん、Mさん、そして私だけで、そのほとんどが湯沼鉱泉社長が発見
        したものである。見たことがない人が多いようなので、私が持っているものの写真
        を掲載する。実に見栄えのしない外観なので、知らない人は、ズリで拾っても捨
        ててしまうだろう。

          電気石完全結晶【マイコレクション:横6cm】

     『 川上犬の写真を送っていただき、ありがとうございます。息子のTもとても喜んで
      います。Tが採集した電気石を洗浄してみたところ、一部に面らしきものも見られま
      した。
       採集した向山鉱山のエビフライ水晶の中に「逆松茸?」と思われるものがありまし
      たので、鑑定をお願いいたします。・・・・・・       』
(愛知・Tさん親子)

          エビフライ水晶【採集・撮影:Tさん】

       ( これは、”頭付き”と呼ぶべきでしょう。エビフライ水晶の頭付きは、極めて少な
        く貴重なものです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・M・H)

 (2) 初回に参加した当時小学5年生だった子たちは高校1年生になり、鉱物から離れて
    行ったり、部活などがあり参加できる子(とその親)が少なくなってきている。
     その代わり、Kくん(小3)、T君のように新しいメンバーも増え、活性化も図りつつある。

 (3) 以前のHPにも書いたが、鉱物標本を手に入れるだけなら、高速代、ガソリン代、宿泊費を
    考えれば、ネットオークションで購入したほうがはるかに安上がりなことは間違いない。

    懇親会での参加者の挨拶を聞いていると、鉱物標本を手に入れることだけが目的でないこと
   が良くわかった。永くこの会が続くよう、改めてがんばる決意を固めた。

5. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
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