2007年GWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

      2007年GWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

1. 初めに

   私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWに
  ミネラルウオッチングを開催するようになって7年目を迎えた。
   例年なら年に数回、ミネラルウオッチングを開催するのだが、2006年は、私が茨城県に
  単身赴任していた関係でほぼ1年ぶりの開催となった。
   今回は、長野県川上村の代表的な鉱物産地を1泊2日で、延べ55名の皆さんと訪れた。

   第1日目・・・・・・・小川山
   第2日目・・・・・・・梓山(甲武信)鉱山

   参加者は、関東各都県、、愛知、奈良、大阪、兵庫と広範囲で、定連さんのほかに
  新しい顔ぶれも加わり、和気藹々のミネラルウオッチングになった。

   今回、”自他共に(?)雨男”と認める愛知・H氏が不参加とあり、天気の心配はしていな
  かったが、初日の長野県川上村周辺は真冬に逆戻りした感じで、雪・雷そして積雪に行く
  手を阻まれ、途中から引き返すという、前代未聞のハプニングに見舞われた。

   その分早く、この日の宿「湯沼鉱泉」に引き上げ、明るいうちから、「オークション」と
  「標本玉手箱」を開始し、 ”現金採集” ”室内採集” で盛り上がった。

   夜は、地元・川上村の素材を使った料理に舌鼓を打ち、ビールやお酒も入り宴会副部長
  Yさんの名司会で参加者全グループの近況報告があり、湯沼鉱泉の夜は更けていった。

   2日目、「朝飯前のミネラルウオッチング」を皮切りに、甲武信鉱山の「べスブ石」「松茸
   水晶」「緑水晶」「灰鉄柘榴石」そして「巨大水晶」など代表的な鉱物を採集できた。

    愛知・KAさんをリーダーに新産地開拓に取り組んだ5人組は、「松茸水晶の群晶」を
   手に、誇らし気であった。
    これを見て、甲武信鉱山は、 『 どこで、何が採れるか予想もつかない 』 奥深い
   産地であることを改めて思い知らされた。

    今回も、安全を優先し、参加人員を先着順で「湯沼鉱泉宿泊者」20名+αに制限せざ
   るを得なかった点を心苦しく思っている。また、静岡・ミューシャさんなどアドレスが変更に
   なったらしく、案内のメールが届かなかった方々には失礼した。
    次回のミネラルウオッチングで皆さんと再会できるのを楽しみにしている。
   ( 2007年4月開催 )

2. 【第1日目】

 (1) 「湯沼鉱泉」に集まれ!!
     私たち夫婦は、大坂からの夜行バスで早朝に甲府に到着する奈良・Yさんと初参加の
    大阪・Oさんを甲府市外で出迎えた。前泊の愛知・KNさんとともに、清里を通り、長野県
    川上村に入る。

     清里付近の鯉のぼり

     湯沼鉱泉に到着すると、定連の兵庫・Nさん夫妻、愛知・Kさん、KAさん、Sさん一家、
    Tさん親子、滋賀・Oさん、石川・Yさん、東京・Hさん夫妻、HYさん一家、千葉・Yさん、Oさん
    親子、埼玉・Tさん、Sさんは既に集まっていた。
     湯沼鉱泉の社長の紹介があった東京・Oさん夫妻も案内することになり、総勢28名

 (2) 小川山を目指して
     湯沼鉱泉を出発して、「金峰山荘」の先、登山道のゲートの手前に駐車し、ここから歩き
    はじめる。HYさんの息子・Y君(小3)は、1年間ですっかり大きくなり、その足取りは一番軽い。
     林道の終点付近の吹き溜まりには、20cm以上の積雪が見られ、先行きに不安がよぎる。
    行けるところまで、案内することにして、「西股沢」を遡上するが、場所によって50cmの積雪が
    残り、おまけに雪が降り始め、女性、子供も一緒なのでこれ以上は危険と判断し、引き返す
    ことにした。
     ミネラルウオッチングならぬ、冬山登山になってしまった記念写真を撮る。

       
      雪と戯れ【撮影:HYさん】   「小川山登山記念」【撮影:Oさん】
                 小川山の水晶産地を求めて

 (3) ”日本一大きくて汚い双晶”を求めて
     小川山から引き返すことになったが、まだ11時である。代替産地として「甲武信鉱山の
    貯鉱場」を案内すべく、駐車場に引き返す。
     途中に、湯沼鉱泉社長に言わせると『日本一汚くて大きい日本式双晶』 が出た
    という抗道とそのズリがあるので、愛知・Kさんに案内してもらうことにした。
     ただ、ここは急斜面で、狭い産地なので、初めての人だけ7名に限定に、残りの人たちは
    ズリ末端の沢筋で採集することにした。
     坑口前のズリは、”カチン、カチン”に凍っていて、熊手の歯が立たない。
     ( 結果的には、ここに居残った愛知・Sさんが松茸水晶の素晴らしい標本を採集した
      沢筋が一番良かったことになる )

     かつて、双晶が出た坑道

     ここでの採集品を急遽開催した「玉手箱」で希望者に分配

 (4) 湯沼鉱泉に戻って
     次なる目的地「甲武信鉱山の貯鉱場」に向かうべく駐車場に戻り、車に乗り込んだかと
    思うと、雨が降り出した。雨脚は強まり、雷も鳴り出した。「貯鉱場」には、川を渡らねばならず
    女性、子供連れでは危険と判断し、「湯沼鉱泉」に戻ることにした。
     まだ、14時前である。どうやって時間を潰すか、露頭(?)に迷う。

     結局、従来は宴会の後に実施していた「オークション」と「標本玉手箱」を15時から開催する
    ことにした。そうこうする内、双晶坑下のズリに居残った愛知・Sさん一家も雪・雷に恐れをなし
    ほうほうの態で宿に戻ってきた。

     【後日談】
      小川山でSさんの奥さんが採集した「松茸水晶」のクリーニングが終わった、と写真を送って
      くれたので紹介する。

       松茸水晶【採集、撮影:Sさんの奥さん】

  @「オークション」
    恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されている「逆ブービー
   方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利を得る。これは、悪戯に、価格を
   引き上げないための配慮である。
    今回の担当は、愛知・KNさん、東京・Hさん夫妻にお願いした。

     「標本玉手箱」に提供された標本の中から、オークション担当が28点の標本を選んでくれた。
     一人1つの標本しか入手できない(全員が1つは入手できる)ようにして、落札者決定が簡単に
     なるよう、開票する標本の順番をTさんの息子(中2)とHYさんの息子(小3)に決めてもらった。

      
      オークション入札        真剣な顔でジャンケン
         オークション風景【撮影:HYさん、Oさん】

    オークション品(入札品)は、次の通りである。【表作成:会計担当の兵庫・Nさん夫妻】
    【これらの標本は、採集禁止になる前の採集品であることをお断りしておきます】

No. 鉱物 産地・場所 出品者 落札単価
1 針入水晶 山梨県竹森 東京・Hさん 500
2 鉄バン石榴石 茨城県山ノ尾 東京・Hさん 500
3 緑鉛鉱 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 450
4 紫水晶 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 700
5 紫水晶 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 650
6 紫水晶 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 500
7 緑鉛鉱 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 250
8 緑鉛鉱 尾小屋鉱山(金平) 石川・Yさん 950
9 鋼玉(コランダム) 岩手県興田 埼玉・Tさん 300
10 キレイな柘榴石 長野県 埼玉・Tさん 350
11 キレイな柘榴石 長野県 埼玉・Sさん 500
12 キレイな柘榴石 長野県 埼玉・Sさん 750
13 錫石(母岩付き) 大正鉱山 Mineralhunters 350
14 リシア電気石 茨城県 Mineralhunters 750
15 含マンガン白雲母 戸根鉱山 愛知・KNさん 300
16 単身赴任の思い出(鉱物12種) 茨城県・福島県・栃木県・岐阜県 Mineralhunters 250
17 トパズ 錫高野 Mineralhunters 550
18 ティンティナ鉱 錫高野 Mineralhunters 350
19 亜鉛スピネル 長垂山 大阪・Oさん 450
20 紅廉石 戸根鉱山 大阪・Oさん 400
21 リシア雲母 茨城県 Mineralhunters 300
22 キレイな石榴石 奈良県 滋賀・Oさん 400
23 キレイな石榴石 奈良県 滋賀・Oさん 450
24 キレイな石榴石 奈良県 滋賀・Oさん 500
25 キレイな石榴石 奈良県 滋賀・Oさん 650
26 キレイな石榴石 奈良県 滋賀・Oさん 350
27 ミネラルウオッチング記念集合写真(5点) 湯沼鉱泉前 2005年10月 滋賀・Oさん 300
28 標本洗浄剤(2点)    神奈川・HYさん 700

  A「標本玉手箱」
    故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が採集した重品を持ち寄り欲しい人に
   無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
    ここには、「オークション」に入れてもおかしくない、隠れた名品もヒッソリと並び、参加者の
   ”目利き度”が試された。

    玉手箱下見【撮影:HYさん】

 (5)湯沼鉱泉の夜は深けて

    懇親会まで間があり、お風呂を浴びたり、「水晶洞」を見学したり、思い思いに時間を過ごす。
   18:30から、大広間を借り切っての懇親会がスタートした。

   @「懇親会」
     ”天敵”あるいは”雨男”と称される、常任宴会部長の愛知・H氏が不参加なので、司会を
     奈良・Yさんにお願いし、兵庫・Nさんの乾杯の音頭で「懇親会」がスタートした。

       
           司会・Yさん       Nさんの乾杯挨拶
             懇親会スタート!!【撮影:HY さん】

     岩魚の生造り、山菜の天ぷらなど地元の季節の食材を生かした料理に舌鼓を打つ。宴たけなわ
    となり、近況報告が始まる。

       
              懇親会風景【撮影:HY さん】

     宴は続き、次々と料理が並ぶが食べきれない。21時近くになってお開きとなる。

    A「大人の時間」
      別室に移り、大地震にもめげず参加してくれた石川・Yさんが持参してくれた能登の地酒を
     いただきながら、鉱物談義や産地情報交換に花が咲く。
      この日の早朝、あるいは前夜に出発したグループも多く、22時消灯とする。

     部屋に戻ると、今日一日の採集の疲れと酒の酔いもあり、たちまち ZZZ・・・・

3. 【第2日目】

 (1)「朝飯前のミネラルウオッチング」
     朝5時に起きると、昨日の荒天が嘘のように、雲ひとつない快晴。今回初参加の
    メンバー6名を対象に、「朝飯前のミネラルウオッチング」として「角閃石入り水晶」の
    産地を訪れる。
     産地保護の観点から、一人数本に制限させていただき、短時間で引き上げる。

     朝飯前のミネラルウオッチング

 (2)2日目のスタートだ!!
    『 腹が減っては・・・・』 、と全員揃って、朝食を戴く。会計担当の兵庫・Nさんから簡潔な
   会計報告があり、男性、女性、子どもで”格差”をつけた参加費が伝えられる。
    「湯沼鉱泉」を出発する前に、湯沼鉱泉社長を交え、全員で記念写真を撮影する。

     湯沼鉱泉記念写真【撮影:Oさん】

 (3)ベスブのズリへ
    登山口に到着。以前は、直登していたが、私自身も苦しくなってきたので、つづら折れの
   コースを辿ることにした。
    急な坂を角閃石のズリ、磁鉄鉱(緑水晶)のズリと登り、3ステップの仕上げが、ピカピカの
   ベスブ石の産地である。
    最近、某氏が晶洞を広げた際に散らばったピカピカのベスブ石の母岩付きや分離結晶が
   落ち葉の上に点在し、全員が採集できた。

     べスブ石【表面採集品】

 (4)松茸水晶ズリ
    松茸水晶のズリに取り付き、皆さんここぞと思う場所で、採集を始める。埼玉・Sさんが灰鉄
   柘榴石の分離結晶で1cmを超えるサイズのものを次々とゲット。やがて、初参加の愛知・Tさん
   が”松茸の傘”を採集。しかし、「松茸水晶があった!!」という歓声は聞かれない。

    しかし、採るべき人(?)は、シッカリと採っていた。東京・Hさんの奥さんが採集したものは
   この産地を代表する”寄生松茸水晶”の良品だった。

     松茸水晶【採集:Hさんの奥さん】

 (5)第2松茸水晶産地
     この産地は、湯沼鉱泉社長によって、2005年に発見された新しい産地で、両錐の松茸
    水晶の母岩付が採集できる。湯沼鉱泉では、社長がつい10日ほど前に採集した品を
    展示しており、愛知・KAさんをリーダーとするグループが先行して晶洞を追いかけ、われ
    われ本隊が到着したころには、群晶をいくつか掘り出していた。
     ちょうど12時近くになり、ここで、昼食とした。このとき、東京・Hさんが足元に転がっていた
    石を持ち上げてみると、テニスボール大の灰鉄柘榴石が2つ接合した良品であった。
     先ほどの「松茸水晶」といい、この日は(も?)、Hさん夫妻のラッキーディであった。

      
          昼食風景              採集品
             第2松茸水晶産地【撮影:Oさん、Yさん】

    遠路参加の兵庫・Nさん夫妻と私の妻は、ここを終点とし、昼食の後、湯沼鉱泉に引き
   揚げることになった。

    【後日談】
     Nさん夫妻と私の妻は、湯沼鉱泉に戻る前、滋賀・Oさんと共に、尾根の反対側にある
    「柘榴石巨晶」の産地を訪れたらしい。ここでは、10年以上前、愛知・KAさんが、掌大の
    灰鉄ざくろ石の美品を採集したことがあった。
     ここでは、柘榴石だけでなく、「柱石」そして「氷長石」が採集できたと、Oさんは大喜びだ
    った。
     妻が採集した「氷長石」を半日ほど蓚酸に漬けてクリーニングしたところ、見違えるほどの
    良標本に変身した。

    氷長石

 (6)新産地「緑水晶ズリ」
    ここは、2004年に奈良・Aさんが発見した産地で、以前から知られていた緑水晶産地の
   ものより結晶が大きく、頭付き群晶も多産した。
    小さな産地なので、ここを訪れるのが初めての人を優先に採集していただいた。大勢が
   訪れているにもかかわらず、「両錐」の良品を採集した人も多かった。

    新緑水晶ズリ

 (7)川端下ズリ
     緑Y字双晶・灰重石坑道に向かう東京・Hさん夫妻と別れ、本隊は川端下水晶ズリに
    向かう。
     ( Hさん夫妻は、坑道の場所がわからず、不安になり、早々に下山した、と後から聞いた)

     ズリのところどころには、雪が残り、ズリは”カチカチン”に凍り、掘るのも大変だったが
    10cmちかい水晶を掘り当てた人も多かった。
     2匹目の蝶々(日本式双晶)を狙って坑道内で採集した愛知・Sさんの息子Y君(高1)は
    「 蝶々は飛んでいなかった」と穴から出てきたが、母親はシッカリ20cmの巨大水晶を手に
    していた。

      
         採集風景         良品ゲット!!Vサイン
               川端下ズリ

     後ろ髪を引かれる思いで、14:30に川端下ズリを後にし、16時に全員無事下山した。

4. おわりに

 (1) 5月連休の採集会も6年目を迎えた。今回も無事終了でき、参加者の皆様の協力に感謝して
    いる。

 (2) 初回に参加した当時小学5年生だった子たちは高校1年生になり、鉱物から離れて行ったり
    部活などがあり、参加できる子が少なくなってきている。
     その代わり、Hくん(小3)のように新しいメンバーも増え、活性化も図りつつある。

 (3) 以前のHPにも書いたが、鉱物標本を手に入れるだけなら、高速代、ガソリン代、宿泊費を
    考えれば、ネットオークションで購入したほうがはるかに安上がりなことは間違いない。

    懇親会での参加者の挨拶を聞いていると、鉱物標本を手に入れることだけが目的でないこと
   が良くわかった。永くこの会が続くよう、がんばる決意を固めた。

5. 参考文献

 1)小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
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