2006年月遅れGWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

2006年月遅れGWミネラルウオッチング 【ダイジェスト版】

1. 初めに

   私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと
  5月のGWに採集会を開催するようになって5年目を迎えた。例年なら、4月末に
  開催するのだが、2006年は春の訪れが遅く、ほぼ1ケ月遅い「月遅れGWミネラル
  ウオッチング」と題して、長野県の代表的な鉱物産地を1泊2日で皆さんと一緒に
  訪れた。

   第1日目・・・・・・・小川山
   第2日目・・・・・・・梓(甲武信)鉱山

   参加者は、関東各都県、、愛知、奈良、兵庫と広範囲で、ほとんどが定連さんで
  和気藹々の採集会となった。
   今回、天気予報では99%雨であったが、”雨男”が都合で参加できなかったことも
  あり、2日間とも降ったのは霧雨程度で、”晴れ男”のジンクス通り、天気にも
  恵まれ、2日目は快晴になった。
   新緑の中で、女性や年配者にはやや厳しいコースも一部あったが、疲れを
  忘れさせる”収穫”があった。
   初日の小川山では東京・Mさんが、「エステレル双晶」と「日本式双晶」をゲッ
  トし、奈良・Yさんは、ズシリと重い水晶の群晶を背負って、足取りも軽く宿に
  引き揚げた。
   初日の夜は、長野県川上村の湯沼鉱泉で、地元の素材を使った料理に舌鼓
  を打ち、採集会恒例となった「オークション」では、子ども達や女性陣に混じって
  オジサンの”ジャンケン”の声が宿に響いた。
   無料配布の「標本玉手箱」には、ベテランの愛知・KAさんによれば、ミネラル
  ショーやネット・オークションなら3,000円はするという「田口鉱山のパイロックス
  マンガン」などが並び、参加者の”目利度”が試された。
   2日目、初参加の山梨・Mさんが”ビギナーズラック”で、「松茸水晶」の逸品を
  採集したのを皮切りに、甲武信鉱山の代表的な鉱物を採集できた。
   『 絶産、と言われて久しいが、初心者(失礼!!)でも、まだまだ採れます 』
   今回も、安全を優先し、さらに掲示板に書き込みがあった「無断入山者」の件
  もあり、参加人員を先着順で「湯沼鉱泉宿泊者」15名+αに制限せざるを得な
  かった点を心苦しく思っている。次回の採集会で皆さんと再会できるのを楽しみに
  しています。
  ( 2006年5月開催 )

2.【第1日目】

 (1) 「湯沼鉱泉」に集まれ!!
     私たち夫婦は、大坂からの夜行バスで早朝に甲府に到着する奈良・Yさんを
    甲府市外で出迎えた。前泊の兵庫・Nさん夫妻とともに、信州峠を越えて長野県
    川上村に入る。
     湯沼鉱泉に到着すると、定連の奈良・Aさん、愛知・Kさん、KAさん、Sさん
    一家、KOさん、KZさん、長野・Tさん、東京・Hさん夫妻、Mさんが到着してきた。
     しかし、集合時間の8:00になっても、初参加の神奈川・Hさん一家、山梨
    Mさんが到着していない。空を見上げると、今にも降り出しそう。
     私を残して、第一陣、16名は出発!!

     やがて、Hさん一家が到着。Mさんの到着を待つが、一向に来ない。仕方なく
    第2陣も出発となった。
    ( 結局、Mさんが到着したのは、16時ごろだったらしい )

 (2) 小川山を目指して
     湯沼鉱泉を私が先導する形で出発して、100mほど走ったところで、バック
    ミラーを見て仰天した。Hさん一家の車は、ドイツの名車・Bで、しかも車高が
    極めて低い。これで、「金峰山荘」の先の凸凹道を走らせるのは酷だと思い
    湯沼鉱泉に引き返し、私の車(正確には、妻の車)に同乗してもらうことにした。
     登山道のゲートの手前に駐車し、ここから歩きはじめる。Hさんの長男・Y君
    (小2)も一緒なので、できるだけ頻繁に休憩を入れながら、登山道を進む。

     「金峰山登山道」【撮影:Hさん】

     小川山に向かう林道も整備されていて、歩きやすい。すると、道端に見慣
    れたザックが置いてある。”オーイ”と声を掛けると、愛知・KAさんとKさんの
    声が返ってきた。愛知・Kコンビが、湯沼鉱泉社長に言わせると『日本一汚くて
    大きい日本式双晶』 
が出たという抗道とそのズリを漁っているらしい。
     こちらは、立ち止まる余裕もなく、先を急ぐことにした。

 (3) ”エステレル”を求めて
     西股沢に入り、遡行すること1時間余り、アチコチから”カン”、”カン”という
    ハンマーの音が聞こえる。
     Hさんの奥さんは、「カンカン鳥が鳴いているのかしら?」と思ったとのこと。
    ようやく、第一陣に追いついたのは、11時を過ぎたころで、既に皆さん思い
    思い場所を叩いたり、掘ったり、表面を見て回ったりしてして採集している。

     採集風景【撮影:Hさん】

     初参加のHさん一家や愛知・KZさんにとっては、一面にピカピカと結晶面が
    見えるのに、驚いている。何回か訪れているメンバーは、ここぞ、と思う場所に
    陣取って、”今日一”を狙っている。(むろん、”エステレル”か”日本式”)
     やがて、KZさんが怪我をした、というので駆け寄ってみると、自分の手を
    ハンマーで打った拍子に、切り傷を負ったらしく、蚊に刺されたほどの血が
    滲んでいる。救護係・Hさんの奥さんの初出動
     採集に熱中していると、あっという間に時間が過ぎ引き揚げの15:00が迫って
    きた。集合場所で、奈良・Yさんが、いくつもの群晶・単晶を並べて、どれを持ち
    帰るべきか悩んでいる。何でも、先回訪れた時に採集した群晶は、クリ―ニ
    ングを失敗して、黄色い付着物に覆われてしまったので、標本を作り直すとの
    ことで、小さなリュック一杯に詰め込んでいた。

    ( 後日談
       この時点では、”エステレル式双晶”と”日本式双晶”を採った人はいない
      と思っていたが、翌朝、Mさんが、鑑定して欲しいと見せてくれたものは、正
      しく、”エステレル式双晶”と”日本式双晶”であった。まだまだ、あるのです )

 (4) 下山
     下山は、結構膝に来て、登りよりも辛い。1時間ほどで、登山道に戻り、駐車場
    に到着したのは、17時前であった。駐車料金を各自で精算し、今夜の宿「湯沼
    鉱泉」に向かう。
     ( 駐車料金は、以前1人当たり300円であったが、今回は100円だった。キャ
      ンプ場を使用しない入山者は、安くなっているらしかったが、300円取られた
      人もあり、??? )

 (5)湯沼鉱泉の夜は深けて
    17時ごろ、今夜の宿「湯沼鉱泉」に到着。湯沼鉱泉では、社長はじめ、5月に生
   れたばかりの「川上犬」たちが待っていた。

     川上犬を抱くH君【撮影:Hさん】

    また、出発時に到着していなかった山梨のMさんも到着していた。何でも、集合
   時間に間に合いそうもなかったので、「瑞牆山」から「小川山」を目指して、合流
   する積りで、瑞牆山の頂上まで登り、居合わせた登山者に小川山へのルートを
   尋ねたところ、悪天候なので止めたほうが良い、と言われて、下山し、16時ごろ
   湯沼鉱泉に到着したらしい。
   ( これは、賢明な選択であった。鉱物関係者が言う「小川山」とは、地図上の
    「小川山」から南にのびた稜線の東斜面を指しており、地図やコンパスなしで
   初めての人が行き着ける場所ではない )
    これで、参加者21名が全員そろい、先ずはめでたし。

    懇親会までに、お風呂を浴び、その間に、標本玉手箱とオークション用の標本が
   続々と集まってくる。

  @「懇親会」
    ”天敵”あるいは”雨男”と称される、常任宴会部長の愛知・H氏が不参加なの
   で、司会を愛知・Kさんにお願いし、奈良・Aさんの乾杯の音頭で「懇親会」が
   スタートした。

     Aさんの乾杯挨拶

    岩魚の生造り、山菜の天ぷらなど地元の季節の食材を生かした料理に舌鼓を
   打つ。宴たけなわとなり、近況報告が始まる。
    宴は続き、次々と料理が並ぶが食べきれない。参加者のお目当ては、次に
   控えている、「標本玉手箱」と「オークション」で食事が終わると、そそくさと標本
   玉手箱、オークションコーナーに移動する。

  A「オークション」
    恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されて
   いる「逆ブービー方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利
   を得ます。これは、悪戯に、価格を引き上げないための配慮です。
    今回の担当は、愛知・Sさん一家、愛知・KOさん、奈良・Yさんにお願いした。

     「標本玉手箱」に提供された標本の中から、オークション担当が21点の標本を
    選んでくれた。「玉手箱」の中にあった『田口鉱山のパイマン』も急遽追加され
    最終的に22点になった。

       
       オークション担当          Y君敗退の瞬間
               オークション風景【撮影:Hさん】

    オークション品(入札品)は、次の通りである。
    【これらの標本は、採集禁止になる前の採集品であることをお断りしておきます】

No 鉱物名 産地 落札者 落札値
1 ドーソン石 群馬県藤岡市下日野たたら沢 奈良・Yさん 210
2 ドーソン石 群馬県藤岡市下日野たたら沢 兵庫・Nさん夫妻 150
3 ペクトライト 千葉県安房富山町久里中 兵庫・Nさん夫妻 300
4 霰石 千葉県安房郡鋸南町下佐久間 愛知・KOさん 530
5 霰石 千葉県銚子市長崎鼻 山梨・N夫妻 480
6 ぶどう石 山梨県身延町(旧下部町)杉山 東京・Hさん夫妻 500
7 緑柱石 茨城県真壁郡山の尾 山梨・N夫妻 800
8 鉄電気石 福島県石川郡石川町 山梨・Mさん 500
9 水晶 秋田県仙北郡協和町荒川鉱山 兵庫・Nさん夫妻 980
10 水晶 奈良県上北山村橡谷川 愛知・Sさん一家 550
11 輝沸石 静岡県賀茂郡河津町浜やんだ 長野・Tさん 480
12 藍銅鉱 静岡県下田市蓮台寺河津鉱山 東京・Hさん夫妻 380
13 藍銅鉱 静岡県下田市蓮台寺河津鉱山 神奈川・Hさん一家 580
14 鉄重石 茨城県桂村錫高野 兵庫・Nさん夫妻 500
15 錫石 茨城県七会村大正鉱山 愛知・KZさん 500
16 中宇利石 愛知県新城市中宇利 山梨・N夫妻 300
17 青鉛鉱 兵庫県川辺郡猪名川町多田鉱山 神奈川・Hさん一家 100
18 斧石 大分県大野郡緒方町尾平鉱山亜鉛ビ 山梨・Mさん 900
19 異極鉱 大分県南海部郡宇目町木浦鉱山 山梨・N夫妻 500
20 バビントン石 福島県いわき市四倉八茎鉱山 兵庫・Nさん夫妻 680
21 山梨県地学のガイド 愛知・KOさん 400
22 パイマン 愛知県北設楽郡設楽町 山梨・Mさん 500

  B「標本玉手箱」
    故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が採集した重品を持ち寄り
   欲しい人に無料配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
    ここには、「オークション」に入れてもおかしくない、愛知・KOさんが昭和30年代に
   採集した『田口鉱山のパイマン』や最近話題の『北関東の水鉛鉛鉱』など、隠れた
   名品もヒッソリと並び、参加者の”目利き度”が試された。

    玉手箱下見

   ( 後日談
      「緑鉛鉱(水鉛鉛鉱?)」に気付いた奈良・Aさんが標本を1つ持ち帰り、「30倍
     のルーペで穴があくほど眺めたが、「水鉛鉛鉱」はなかった 」とメールがあった。
     手元に残っていた引き取り手がなかった「緑鉛鉱」を小割にすると、小さいながら
     3個体ほど「水鉛鉛鉱」標本が得られたので、その1つをお送りした )

   部屋に戻ると、今日一日の採集の疲れと酒の酔いもあり、たちまちZzzz・・・・

3.【第2日目】

 (1)「朝飯前の採集会」
    すでに何回か参加された方が多いので、今回は、中止

 (2)2日目のスタートだ!!
    天気が気になり、夜中に何回か眼がさめ、外を見ると”シトシト”と梅雨を思わせ
   る雨が降り続き、朝起きると時折、雨脚が一段と強まった気配すらする。
    『 腹が減っては・・・・』 、と全員揃って、朝食を戴く。会計担当の兵庫・Nさんか
   ら、簡潔な会計報告があり、男性、女性、子どもで”格差”をつけた参加費が伝え
   られる。この会計報告ソフトは、愛知・Kさんが作成したもので、2005年のミネラル
   ウオッチング以来、大活躍である。

    「湯沼鉱泉」を出発する段階で、体調がすぐれない3名の方が残念ながらリタイ
   アすることになってしまった。

 (3)ベスブのズリへ
    登山口に到着。以前は、直登していたが、私自身も苦しくなってきたので、つづら
   折れのコースを辿ることにした。
    あちこちに、山野草があり、農学部卒の奈良・Yさんの解説に、うなずく。

 (4)ピカピカのベスブ石産地
    急な坂を角閃石のズリ、磁鉄鉱のズリと登り、3ステップの仕上げが、ピカピカの
   ベスブ石の産地である。
    落ち葉を掻き分け、母岩付きや分離結晶など、ピカピカのベスブ石を全員が採
   集した。

 (5)松茸水晶ズリ
    松茸水晶のズリに取り付き、皆さんここぞと思う場所で、採集を始める。初参加の
   山梨・Mさんが早々に、母岩についた良品をゲット。2005年GWの滋賀県・Oさんに
   続いて”ビギナーズラック”の伝説は健在であった。
    神奈川・Hさんが、こんなのがありましたと、約20cm角の母岩に灰鉄柘榴石の
   大きな結晶がついたものを発見した。Hさんは重くて持って帰れないと言うので
   私が預かって、「湯沼鉱泉の水晶洞」に寄贈することにした。しかし、これを持っ
   て、灰重石抗道まで登るのは無理と判断、落葉を被せて、いつか回収することに
   した。

    松茸ズリのHさん一家

    遠路参加の兵庫・Nさん夫妻、愛知・Sさん一家、そして子ども連れのHさん一家は
   ここを終点とし、昼食の後、引き揚げることになった。

 (6)新産地「緑水晶ズリ」
    ここは、2004年に奈良・Aさんが発見した産地で、以前から知られていた緑水晶
   産地のものより結晶が大きく、頭付き群晶も多産した。
    小さな産地なので、ここを訪れるのが初めての人を優先に採集していただいた。
    先行した愛知・Kさんは、H氏と”天敵”関係の元となった、この産地の独特の水晶
   で、その形状から最近流行のTVドラマにちなんで”鬼嫁”と名付けたものを探して
   いたが、見つかっていなかった。
    ここでは、平板水晶や『鋭錐石』のついたものも採集できてた。

    若手トリオ【平均三十うん才】

 (7)緑Y字双晶・灰重石坑道
    水晶抗道に向かう。坑道内は、未だ冬で氷が残っている。Y字双晶の抗道に入
   った奈良・Aさんと愛知・Kさんが、双晶を含む母岩を坑外に運び出してくれ、確認
   するが1個体しかなかった。若手トリオでジャンケンして、勝った人の手に納まった。
    灰重石抗道に移動すると、先行した愛知・KAさんとKOさんが、ミネラライトを手に
   露頭と格闘していた。天井付近を叩くため、灰重石の良品がついたものが運が
   悪いと抗道の奥に吸い込まれていく。

    灰重石抗道採集風景

    格闘2時間余り、下山の時間が迫る。採集品を初めての人を中心に山分けし
   下山する。
    愛知・KOさんにとって、今回参加の最大の目的であった「灰重石結晶」は、まず
   まずの標本が採れたらしい。( 上を見れば、キリがない・・・・・・)

 (8)下山途中の恐怖
    抗道組は、成人男子のみなので、真っ直ぐに沢筋をおりることにした。中ほど
   までおりてきたとき、最後尾にいた山梨・Mさんが、『 落石だ!!』 と叫
   んだ。先頭の私が振り返ると、われわれ一行の後ろから、ゴロンゴロン、と直径が
   1m近い巨岩が転がり迫っている。
    蜘蛛の子を散らすように、高いところや太い木の陰に避難すると、その巨岩は
   われわれの間を疾駆して、70m先で止った。
    一同、顔を見合わせて、安堵した。もし、Mさんが気付くのが遅れて、あれが
   誰かに当たっていたら、と思うと、今でも、ゾッとしている。

   ( われわれが下山し、車で出発しようとしたとき、迷彩服に身を包んだ、「無断
    入山者」が下山してきた。落石は、・・・・・ )

4. おわりに

 (1) 5月連休の採集会も5年目を迎えた。最終番で、”ヒヤリ”としたが、今回も無事
    終了でき、参加者の皆様の協力に感謝している。
    ただ、”ヒヤリ”が重なると、重大事故につながる、という「ハインリッヒの法則」も
    あり、以前にもまして、安全には留意したいと決意を新たにした。

 (2) 初回に参加した当時小学5年生だった子たちは中学3年生になり、鉱物から
    離れて行ったり、受験を迎えるなどで、参加できる子が少なくなってきている。
     これも、自然の流れなのであろう。

 (3) 今回は、長野県の有名な鉱物産地2箇所を回ると言う、新鮮味のない企画に
    なってしまった。
    しかし、”絶産”、”もう採れない”と言われて久しい鉱物の良品を初めての人が
    採集するなど、ミネラルウオッチングの醍醐味を感じさせらた。
     次回は、今まで訪れていない産地を回る企画を、と考えている。

5. 参考文献

 1)原田 明ほか:長野県川上村小川山の水晶産地,ペグマタイト 第76号,2006年
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