2004年7月ミニ鉱物採集会【ダイジェスト版】    −甲武信鉱山と川端下の鉱物を訪ねて−

   2004年7月ミニ鉱物採集会【ダイジェスト版】
     −甲武信鉱山と川端下の鉱物を訪ねて−

1.初めに

 私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと鉱物採集会を
開催し、4年目を迎えた。2001年、最初の鉱物採集会の時に小学生だった少年・少女が申し
合わせように、この4月から中学生になり、”部活”などで忙しくなり、何人かが2004年5月の
GWに小川山と甲武信鉱山で開催した鉱物採集会に参加できなかった。
 その親御さんから、再度川端下での鉱物採集会を開催して欲しい、との要望があった。
 また、最近、私のHPを見た人たちから、「"Scepter Quartz(松茸水晶)”を採集したい」
「水晶を採集したい」との声が寄せられた。そこで、甲州支部主催で、2004年7月としては2回目の
ミニ鉱物採集会を「甲武信鉱山と川端下の鉱物を訪ねて」と題して開催したところ、14名の
皆さんが参加して下さった。
 初参加の東京・Kさん一家4人、千葉県のHさん、Fさん初め、定連の兵庫・Nさん夫妻
奈良・Aさん親子、木曽福島のIさん、そして”雨男”こと愛知・Hさん、それに対抗する”晴男”の
私と妻であった。
 集合し、産地に向かう途中、雨が降り、先が思いやられたが、登山口に着いた頃には雨も
上がり、尾根筋では、標高2000mの心地よい風が吹き、肌寒さを覚えるほどであった。
 いつもながら、これだけの人数で訪れると、採集品も立派なものが多かった。

 @初参加の東京・Kさん、千葉・Hさんが”ビギナーズ・ラック”で、定連の愛知・Hさんは
  ”念願の”松茸水晶良品
 A木曽福島・Iさんが松茸ズリで「Y字型日本式双晶」
 B別行動だった兵庫・Nさんが、松茸ズリで灰鉄柘榴石の美晶
  さらに奥さんが、松茸ズリで「軍配型日本式双晶」とベスブ露頭で1.5cmのベスブ石美晶
 C奈良・Aさんが、トイレ休憩で”緑水晶露頭”を発見し、全員その余慶に与る。
 D極め付きは、Aさんの息子・T君が川端下で60cm(12kg)の巨大水晶採集

  ”松茸水晶”を探しに、初参加の千葉・Fさんは残念ながら松茸水晶を採集できませんでしたが
 『今回の採集結果に満足しています』、と言っていただき、”ホッ”としています。
  Kさんのお嬢さん・Fちゃん(小3)、Hちゃん(小1)も川端下まで踏破し、最年少記録を
 樹立し、全員無事17時前に下山した。
  今回参加できなかった皆さんとも、次回の鉱物採集会でご一緒できるのを、楽しみにしています。
(2004年7月採集)

2. 甲武信鉱山採集

 (1)湯沼鉱泉に集合
   7月最後の土曜日、我々夫婦が湯沼鉱泉に集合時間の30分前に到着すると、初参加の
  千葉・Hさんのように前夜からの宿泊組を含め、全員が集合していた。
   (兵庫・Nさん夫妻とは、午後に甲武信鉱山で落ち合うことにしていた。)
   湯沼鉱泉社長に挨拶と「天然水晶洞」に展示していただく標本をお土産に渡し、各自入山料
  (大人:1,000円、子ども:500円、湯沼鉱泉宿泊者:無料)を払う。
   初対面の方もいるので、自己紹介の後、早速出発する。

 (2)いきなりの登りはキツイ
    1列になって、登りはじめるが、最初の急坂が苦しい。余りの苦しさにか最年少・Hちゃんが
   泣き出すほど。しばらく休憩のあと、Hちゃんを先頭に再び登りはじめる。
    最初の坂を登りきると、身体もやや順応し、Hちゃんも元気を取り戻し、”ホッ”とする。

    元気を取り戻した小学生

 (3)磁鉄鉱坑道
    角閃石のズリを過ぎ、急坂を登ると、アチコチに、方解石や灰鉄輝石を伴った磁鉄鉱が落ちて
   いるのが眼に入り、初参加組の千葉・Fさんはそれらを拾って、感激の面持ち。坑道前で
   小学生のFちゃんとHちゃんに、持参した「糸付き磁石」が磁鉄鉱に吸い付くのを体験してもらい
   ”理科の出前授業”
   (これで、理数系が好きな子どもが増え、日本の製造業が強さを取り戻せれば、日本国ひいては
    私の老後も安心との深謀遠慮なのです。)

 (4)ピカピカのベスブ石産地
    急な坂、3ステップの仕上げが、ピカピカのベスブ石の産地である。今朝までの雨に洗われ
   遠くからでも”キラキラ”輝く母岩付きや分離結晶が見つけられる絶好の採集日和。
    短い時間で、ピカピカのベスブ石を全員が採集した。

    ベスブ石採集風景

   【後日談】
    遅れてきた兵庫・Nさん夫妻は、「柱石」露頭から戻る途中、偶然ベスブ石のズリの真上に
   あるベスブ露頭に行き着いた。最近、訪れる人もなかったのか、奥さんの”眼力”なのか
   1.5cmを超えるピカピカの単晶を採集し、帰りに合流した時、全員拝観させていただいた。

 (5)松茸水晶ズリの日本式双晶
    松茸水晶のズリに到着するや、2004年GWの採集会で松茸水晶が多産した周辺に全員が
   集まった。
    間もなく、私の右下でズリを掘っていた初参加のKさんが、「こんなのがあった」と
   差し出したのは、4cmを超える立派なもの。やがて、さらに下流にいた初参加の千葉・Hさんが
   「ありました!!」、と同等サイズのものを高々と掲げる。
    今回も、初めての人が良品を採集する”Biginer's Luck”が存在しました。
    いつも密かに良品を採集する愛知・Hさんも、両錐松茸を採集し、『ここも卒業』宣言
   一方、この産地は相性が悪いと言っていた奈良・Aさん、あちこち掘ってもダメで最後に
   ズリの表面採集で、小さいながら両錐松茸を採集したが、未だ満足していない模様。
    木曽福島・Iさんが採集品を口に入れたのが間接視野に入った。何か良いものを見つけたに
   違いない、と思っていると、「これは日本式双晶ですか?」と見せてくれた。
    紛れもない!!。平板しかも緑閃石入りY字型日本式双晶である。
    千葉・Hさんは、しばらく松茸ズリに残るとの事なので、兵庫・Nさん夫妻が来たら、掘る
   べきマル秘の場所を託けて、松茸ズリを後にした。

    両錐松茸水晶

   【後日談】
     採集会の後、兵庫・Nさん夫妻と「湯沼鉱泉」に1泊した。夕食前に、Nさん夫妻に
    見せていただいた採集品の中に松茸ズリで採集した「平板水晶」があった。大きさは1cm
    足らずだが、「縫合線」があり、「軍配型」の一部である。
     今回、松茸ズリで2例の日本式双晶が発見されたことになる。湯沼鉱泉の社長によれば
    2つだけ、と言う事はないはずで、もっとあるだろうとの事。また、夢が膨らみます。

3. 川端下採集

 (1)新産地発見!!
    いつもながら、後ろ髪を引かれる思いで、松茸水晶産地を後にし、川端下水晶産地に向かう。
   途中から標高2,000m近い尾根を歩くと、甲武信岳に連なる山並みから吹く風が心地良さを
   通り越し、肌寒さすら感じ、休憩の合間に何人かが長袖を着込むほど。
    ここで、今回も、奈良・Aさんが白倉谷に続いて大発見。トイレ休憩で姿が見えないと
   思ったら、6cm位の「緑水晶」の平行連晶を持って姿を現した。皆、ワッと集まり
   Aさんの後に続く。
    最近、誰かが開けた露頭の前に、水晶が散乱しており、付近はたちまち戦場のような有様
   (私は、戦後生まれで実体験はないのですが)
    愛知・Hさんは、シッカリと大きな群晶をいくつかキープし、その1つを私が頂いた。
    発見者Aさんのぼやき『私が発見したのに、良い物は採れなかった。』(しかし、天の神様は
   良く見ておられ、この後川端下で息子のT君が巨大水晶を発見する。)

       
        発見者のAさん親子        緑水晶群晶
                   緑水晶新産地

    甲武信は、奥が深い、と一同唸り、12時も過ぎたので、ここで昼食となった。

 (2)川端下水晶坑道・ズリ
    長峰(2,065m)との鞍部にある川端下鉱山は、草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」にも
   水晶、柘榴石、方解石などの巨晶が採集できると紹介されている通りである。
    古い坑道とその前に広がる”大ズリ”が採集場所である。

        
    坑道前【Kさん一家】      大ズリ【1,000mはない】
              川端下産地

    まず、皆さん、キャップランプや懐中電灯をもって坑道内に入り、アチコチ掘り返す。
   坑道内は、2004年GWのころより掘り込まれ、以前埋まっていた支洞にも、入れるようになって
   おり、相変わらず、訪れる人が跡をたたないようである。
    坑道内は粘土質のベタ土で、採集した水晶の良し悪しが坑道内では判別できず、ある程度
   まとまると表に出て、選別作業にかかる。大きいと喜んだのも束の間、明るいところで見れば
   ”頭なし”でガッカリしたり、細長いチャチなものと思ったら”両錐”だったり、一喜一憂。
    奈良・Aさんの息子・T君は、60cm(12kg)の一抱えもある巨晶を発見した。

       
      巨晶を抱くT君          坑道産群晶
               川端下産標本

 (3)下山
    15時前に、来た道を下山する。下りは流石に、楽だ。
   下山の途中、松茸ズリで兵庫・Nさん夫妻に会えるかと予想していたが、姿が見えない。やがて
   磁鉄鉱ズリが見えるあたりに、Nさん夫妻の姿を認め、大声で呼び止め、一緒に下山した。

 (4)お別れ
    そのまま帰宅するグループ、今夜は湯沼鉱泉に宿泊するグループ、それぞれ次回の鉱物
   採集会での再会を約束して、お別れした。

4. おわりに

(1)最近、ご当地の皆さまに、地元の産地を案内していただくスタイルが定着しつつある。
   前々回の中部支部(?)主催「戸沢鉱山と蛭川村」、前回は近畿支部主催「白倉谷の灰鉄
   柘榴石巨晶と田上山の鉱物」に続き甲州支部主催のミニ採集会であった。
    いつもながら、これだけの人数で訪れると、松茸ズリの日本式双晶のように、ここを
   何回も訪れている私でも今まで眼にすることがなかった佳品を誰かが採集し、それを見て
   ”眼の保養”をさせていただくとともに、採集意欲を掻き立てられた。
(2)参加できなかった石友から甲武信鉱山での採集会の様子を聞かれ、”ややオーバー”に
   採集成果を伝えたせいか、「近々、甲武信鉱山での鉱物採集会を」の声が強い。
   秋口にでも計画してみたい、と考えています。

5. 参考文献

1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂,1994年
2)草下英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
inserted by FC2 system