2003年5月鉱物採集会【ダイジェスト版】

2003年5月鉱物採集会【ダイジェスト版】

1.初めに

 私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた
人たちと5月連休に採集会を開催するようになって、3年目を迎えた。
 今回は、「山梨・長野の水晶産地を訪ねて」と題して、山梨県の八幡山
長野県甲武信鉱山を2日間にわたり、延べ65名の皆さんと訪れた。
 参加者は、関東各都県、静岡、愛知、兵庫と広範囲で、久しぶりの
出会いを喜びながら、和気藹々の採集会となった。
 初日の小尾八幡山では、快晴で新緑の中、ハイキング気分の採集で
これだけの人数で訪れると”大発見”もあった。
 初日の夜は、長野県川上村の湯沼鉱泉で、地元の素材を使った料理に
舌鼓を打ち、持ち寄った各地の銘酒を酌み交わし、「標本玉手箱」では
子ども達も眠気を忘れ、22時過ぎまで”ジャンケン”の声が宿に響いた。
 2日目は、恒例の「朝飯前の採集」でウオームアップし、甲武信鉱山で
緑・松茸・日本式双晶の水晶を採集し、16時過ぎに全員、無事下山した。
 全員無事帰宅のメールと共に、医師国家試験を控えて参加できなかった
兵庫のT君から、見事合格の知らせがあり、世話人として、”ホッ”と
しています。
 次回の採集会で、皆さんと再会できるのを楽しみにしています。
(2003年5月採集)

2.【第1日目】

(1)「韮崎IC」に集まれ!!
 連休後半初日の3日、8:00中央道韮崎ICに集合にした。高速道路の
渋滞予想では、3日の中央道下りは最悪30km以上とあり、予定通り集合
できるか、心配であった。
 集合予定より早めの7時に韮崎ICに行くと、既に駐車場には千葉のTさんが
来ており、続々と集まってくる。渋滞を心配して、前の晩に電話をくれた
千葉のOさん一家も早々に到着した。
 法曹界のM先生から、「湯沼鉱泉から韮崎ICに向かう」という連絡が携帯に
入るが、中間地点の「増富温泉」で合流することにして、8時前に出発!!
(2)増富にて
 前に八ヶ岳、左に南アルプス、後ろに富士。いずれも、残雪を頂く山並みを
見ながら、快調に茅が岳山麓の農道を9台の車は快走する。
 8:30過ぎ、増富温泉に到着すると、温泉郷入口で懐かしいヒゲ面の
M先生が待っていた。挨拶もそこそこに、次の駐車ポイントの増富鉱山跡に
向かう。
 林道に乗り入れる台数を少なくする乗替えのために貯鉱場近くに停車すると
目聡い人たちは、貯鉱場跡で、早々と採集を開始する。
 千葉のYさんの奥さんが、「中川さん、この黒いのは何でしょう?」と
掌サイズの石を持ってきた。一見して、石英塊に真っ黒い層状に生成した
硫砒銅鉱で、晶洞部分には図鑑にあるのと同じ、自形結晶が見える。
 いつもながら、良品をさりげなく採集する、Yさんの奥さんです。
 私は、このタイプのものは、採集したことがなかったので、採集した場所を
聞くや駆け出し、1ケ同等レベルの標本を採集。
増富鉱山産硫砒銅鉱
 某氏が「中川さん、この黒いのは何でしょう?」と見せてくれたのは
一見して、「コールタールです。」とにべもない。
(3)八幡山A坑へ
 枇杷窪沢脇林道ゲート前駐車スペースは一杯で、仕方なくクリスタルラインの
路肩に駐車する。本谷川沿いの林道から、その支流の踏み分け道に沿って
沢を遡上する。
遡上する一行【Yさん撮影】
 石英塊が見え始め、2、3結晶面のある石英があり、やがて柱面だけの
水晶が見え、ついに頭付きの水晶が見つかり、ズリは近い。
 駐車して、1時間余りで、「八幡山A坑」のズリに到着。荷物を置くのも
もどかしく、皆さん、ここぞと狙った場所で、採集に取り掛かる。
A坑採集風景【Yさん撮影】
 昨年、暮れのときに比べ、特に荒れた様子もなく、子ども達でも、小さな
水晶なら比較的簡単に見つけられ、そのたびに得意そうに、私に見せてくれ
そのたびに、私は「スゴイ」、「素晴らしい」を連発。子ども達も大喜び。
 昼食にすることになり、食べ始めると、何処からともなく良いニオイが
漂ってくる。M先生が、コンロ持参で、ラーメンを作っているニオイでした。
(4)八幡山B坑へ
 昨年暮れの下見で、八幡山B坑に行く途中に急な斜面の危険な場所もあるので
B坑へは、中学生以上で、体力に自信のある希望者に限定したところ、10名が
参加することになり、残りのメンバはA坑で採集を続け、15時に会うことにする。
 沢を更に、遡上し、坑口跡を目指し、木の根、岩角にすがって登る。
危険と思われる場所には、持参したロープを張って、滑落を防止するなどして
1時間近くかかって、ズリに到着する。
B坑への険しい道【Yさん撮影】
 ここでも、皆さん、ここぞと狙った場所で、採集に取り掛かる。
10cmを越える水晶もでるが、頭が今ひとつで、表面がすりガラス状なのは
何とも、致し方なし。
 「日本式双晶」と「燐灰石」に後ろ髪を惹かれる思いで、皆の待つA坑ズリに
15時ジャスト帰着。下山を開始。
静岡のMさんの息子K君、千葉のOさんの息子N君など、小学校中学年も(のほうが?)
元気でした。
(5)湯沼鉱泉の夜は深けて
 枇杷窪沢から、増富鉱山、信州峠を抜け、長野県川上村に、17時過ぎに到着。
兵庫県のNさん一家も既に到着し、今夜の宿泊予定者は、全員揃った。
まだ陽が高いので、初めての人たちは、「水晶洞」や「水芭蕉」を見学する。
 夕食までのひととき、法曹界のM先生や鉱物採集会の裏情報に詳しいメンバと
石油ストーブの回りで、私の「掲示板」への書き込みについての対応策を
議論する。

 ・「懇親会」
  19時から、Tさんの乾杯の音頭で、29名参加の大懇親会が始まった。
  岩魚の生造りはじめ地元の食材を生かした料理に舌鼓を打つ。
  (千葉のOさんの娘のHさんは、「岩魚の目が自分を見るので怖くて
   食べられなかった」とのこと。)
  宴たけなわとなり、近況報告、初めてのメンバは自己紹介。
懇親会【Yさん撮影】
  宴は続き、参加者が持ち寄った、各地の銘酒を酌み交わす。
  愛知のKさんは、3週間前SARSが猛威を振るう中国の出張から戻ったが、出張中
  毎日飲んでアルコール消毒をしていたというアルコール度52度の”汾酒”を
  愛知のHさんは、中宇利鉱山のある新城市の醸造元「朝日嶽」を、そして私は
  地元山梨県の「金泊入り 武田信玄秘鉱 甲州黒川金山」を提供し、大いに
  盛り上がる。

 ・「標本玉手箱」
  故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が採集した重品を持ち寄り
  欲しい人に無料配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。
  初日の採集会に参加できなかった、奈良のAさんや横浜のMさんから、「桜石」や
  「車骨鉱」、初参加のSさんから「茨城県妙見山のリチア電気石(青、ピンク)」
  兵庫のNさんから「山宝の灰クロム柘榴石」などの超1級標本、初日の採集に
  参加できなかった人のために「八幡山の水晶」が早々と出品されたのをはじめ
  静岡のMさんから鉱物梱包材など各種のなどの提供があった。
 (この梱包材が、翌日早速役立つとは、愛知のHさんは夢にも思っていなかった。)
  欲しい人がジャンケンで優先順を決め、勝った人(あるいは負けた人)から
  順番に好きな標本を選びます。
  Oさんは、今まで採集した標本の何倍も、今回の「標本玉手箱」で手に入れた
  とのこと。
  22時過ぎに、散会とし、今日一日の採集の疲れもあり、たちまちZzzz・・・・

3.【第2日目】

(1)「朝飯前の採集会」
  これも恒例となっている朝飯前の採集会は、湯沼鉱泉近くの「角閃石入り
 水晶」と「大深山の日本式双晶」のグループに分かれて出発。私は、三重の
 Mさんの到着を待って、「角閃石入り水晶」グループを案内し、6時に出発。
 湯沼鉱泉の社長の産地保護に対する要望もあり、前回の採集会から、参加者は
 @今まで、訪れたことがない人に限定。
 A採集は、1人数個に限定する。
  朝一番の起き抜けで、チョットした丘を登るのに、日頃元気な東京のTさんの
 息子のT君も苦しそう。
  産地に着き、各人数個の標本を採集し、早々に引き上げる。
角閃石入り水晶産地
  「大深山の日本式双晶」グループは、坑道に入ったが、既に先客があり、早々に
  引き上げて着たとのこと。
(2)2日目スタートだ!!
  奈良のAさんと息子のT君、東京のOさん夫妻と息子のT君(3歳)、東京のOさん
  一家4人の2日目参加組も、続々集合してきた。
   昨夜の「標本玉手箱」で配布し切れなかった「瀬戸の呉須(リシオフォル石)」が
  愛知のKさんから全員に配られる。(去年のミネラル・ショーでは、1ケ2、3000円
  していたもの。)
  8時過ぎに、湯沼鉱泉を出発するが、車の台数が多いため、途中のコンビにで
  昼食を買うにも込み合うと思い、2グループに分かれて、千葉のOさん家族が
  見送ってくれる中、時間差で出発する。
  38名が、甲武信鉱山の登山口に集合すると、流石に壮観だ。
  1列になって、登りはじめるが、最初の急坂が苦しい。
  東京のOさんは、息子のT君(3歳・13kg)を、背負子に乗せて、急な坂を登る。
  父は(母も)強かった。
甲武信登山【Yさん撮影】
(3)ピカピカのベスブ石産地
  急な坂を角閃石のズリ、磁鉄鉱のズリと登り、3ステップの仕上げが、ピカピカの
 ベスブ石の産地である。
  落ち葉を掻き分け、母岩付きや分離結晶などを、ピカピカのベスブ石を全員が
 採集した。
(4)松茸水晶ズリ
  松茸水晶のズリに取り付き、ここぞと思う場所で、採集を始める。初参加の千葉の
 Sさんが、早速採集。結局、Sさんは、3本採集。場所かと思いきや、全く離れた
ズリの末端で、初参加の東京のTさんの娘のMさんが、良品をゲット。鉱物採集に限らず
初めての人が良品を採集する”Biginer's Luck”は存在するのですね。
  結局7本、約4人に1本の確率でした。(4回行けば、採集できる?)
松茸ズリにて【Aさん撮影】

 愛知のHさんも、松茸水晶と緑水晶の群晶(No2)の良品を採集し、ニコニコ。
 (しかし、これは、序曲に過ぎなかった。)
  3歳のT君を連れたOさん一家は、これ以上は無理と判断し、残念ながらここから
 下山することになり、お別れする。
(5)緑水晶ズリ
  緑水晶のズリで採集を初めて間もなく、愛知のHさんが「ここに、群晶がある」と
 叫ぶ。おっとり刀で近づいてみると、30cmの群晶(No1)で、信じられないことに
 殆ど全ての水晶に頭がついている。昨夜のジャンケン大会で負け続けたのは
 この幸運を呼び込むためだったのか?
  昨夜、焼津のMさんが「標本玉手箱」で配ってくれた、梱包材が早速役立つ。
  愛知のHさんは、松茸、緑水晶群晶(No1,2,3)と、2日目のラッキー・ボーイ
 (おじさん?)でした。
緑水晶ズリにて

  この緑水晶の群晶には、続編があります。
(6)日本式双晶坑道
   ここから、最後の急な斜面を登ると、日本式双晶が採集できる坑道がある。
  誰一人、落伍することなく、坑道前に到着する。奈良県のAさんが準備してくれた
  土嚢袋を持ってAさん、千葉のYさん、筑波大のF君が坑内に入る。坑内は、ツララが
  残っているそうで、運び出した日本式双晶を含む水晶塊がヒンヤリと冷たい。
   奈良のAさんの息子のT君と私が、日本式双晶の選別係となる。運び出しを待つ間
  皆さん、坑口付近のズリ石を、眺めて日本式双晶を捜す。
   千葉のYさんの奥さん、焼津のMさんの娘のAさんから、「これは違いますか?」と
  声がかかり、見てみると、正しく日本式双晶だ。不思議なもので、1つ自分で
  見つけると面白いように、見つかるようだ。
   T君は、運び出された水晶塊の中にテキパキと日本式双晶の有無を判定する。
  流石に、昨年夏田口鉱山でパイマンの良品を採集した眼力は、ますます冴えている。
  たちまち、参加人員分の標本が採集できた。ここで、標本の分配(分捕り合戦?)
   優先は
   @坑内に入った人
   A小中高大生
   B女性
   C男性
   の順とし、グループ内は、ジャンケンで、優先順位を決める。
   自力で採集した人を含め、全員が1つ以上、日本式双晶を手にすることができ
   目出度し、メデタシでした。
   私は、途中から引き返したOさん一家のために、1ついただきました。
(7)下山
   坑道から、昔の鉱山道(林業作業道?)の九十九折れの道を下山する。
下山する参加者
   途中から、沢に沿って、直滑降となり、1時間余りで、登山口に全員無事到着。
(8)お別れ
   帰宅するグループ、今夜の新たな宿に向けて出発するグループ、それぞれ
  次回の採集会での再会を約束して、お別れする。

4.おわりに

(1)今回参加された皆さんから、無事帰宅され、採集会が楽しかったので
  次回も、また参加したいと、お礼のメールを、たくさんいただき、世話人と
  しては望外の喜びです。
   兵庫県のNさんの奥さんは、「今日もルーペで日本式双晶を捜している」と
  娘のNさんから、メールがありました。
   どの産地でも、子ども達(大人も子どもに帰って?)が嬉々として
  採集している姿は、見るだけでも楽しいものです。
(2)法曹界のM先生や鉱物採集会の裏情報に詳しいメンバからいただいた
  アドバイスを参考に、私の「掲示板」への書き込みされた方々に、誠意を
  もって対応し、理解が得られた。
   「持つべきものは、(石)友」です。
(3)採集会も3年目を迎え、参加者も多くなり、今回、医師国家試験の兵庫のT君
  司法試験の千葉のK君、そして稼業が書入れ時の静岡のYさん一家などが参加
  できませんでしたが、フル・メンバが参加すれば、参加者は50名近くになり
  運営方法を見直す時期にきているかもしれません。
   私一人では、とても手が回り兼ねる場面もあり、参加者の皆さんにも
  何かと、お願いすることが増えそうです。

5.参考文献

1)柴田 秀賢:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
inserted by FC2 system