山梨県甲府市黒平竜の平の電気石入り煙水晶

山梨県甲府市黒平竜の平の電気石入り煙水晶

1.初めに

 土曜日の夕刻、石友のAさんから電話があった。『今、友人のASと甲府の
ホテルにいます。明日、黒平に行きましょう。』
 突然の電話ではあったが、今年から、山梨県内の鉱物産地を重点的に
探索する計画なので、山梨県内の産地での採集には、都合がつく限り参加する
積りなので、2つ返事で承諾した。
 黒平は産地が広く、どこに行くかが成果にも大きく影響する。Aさんの父親と
ASさんが、晶洞を開けたという、竜の平のガレ場を更に追跡してみることにした。
 ここには、過去に数回来ており、産状が比較的飲み込めているせいか、晶洞が
あるだろ、と睨んで掘った場所には、必ずといってよいほど晶洞があり
小さいながら、水晶や長石が面白いように採集できた。
 今年は異常な天候で、4月5日、桜が満開の甲府市内でも雪が積もるほどで
黒平にはまだまだ雪が残っていますが、雪が融ければ、本格的な採集が楽しめ
そうです。
(2003年3月採集)

2.産地

黒平に行くには、次の3つのルートがあります。
@甲府・韮崎方面から昇仙峡の奥を黒平の集落に向かう。
A焼山峠からクリスタルラインで黒平の集落に向かう。
B増富鉱山方面からクリスタルラインで木賊峠を越える。
名古屋方面の人には@、東京方面の人にはAが便利が良いでしょう。
ただ、A、Bは、冬の間クリスタルラインが通行止めですので使えません。
@のコースの場合、荒川ダムの脇を通る道路は、土砂崩れが起こりやすく
通行止めになっている事が多く、「燕岩岩脈」を通ったほうが無難です。
(今回も通行止めだったが、この夏、長野県のSさんが、黒平に行ったときは
逆だったそうなので、道路脇の「通行止」の表示を良く見ないと、とんだロスを
しかねません。)
 今回訪れた産地は、精進川の上流にかかる「竜の平橋」の下流左岸に広がる
花崗岩が真砂化して崩落して草木が生えていない個所(ガレ場)です。

3.産状と採集方法

 水晶などのペグマタイト鉱物は晶洞(Pocket)部分にあります。真砂の上に
落ちている水晶や長石の破片や微晶を手がかりに上に登り、崖の表面を良く
観察したり、積もっている真砂を取り除き、ペグマタイト脈を探し
隠れている晶洞を掘り出します。
 晶洞の中で黄土色のガマ粘土に覆われて何十万年の眠りに就いていた推奨を
突然揺り起し、ガマ粘土を指先でそっと拭うと、ヒンヤリとした水晶独特の
感触が指先に伝わり、水晶の陵は、指が切れるのではないかと錯覚するほどの
鋭さで迫ってくる。
 取り上げた水晶を、青空に透かしてみると、気品のある薄い煙が掛かり
その中に、表面がキラキラ輝く真っ黒い針状の鉄電気石が何本も入っている。
 晶洞を専門にしている石友は、ズリで採集する気にならない、と言うが その気持ちも分かる。
 晶洞が崩落して、水晶などのペグマタイト鉱物が真砂の上や沢筋に落ちている
こともあり、運が良ければ、表面採集でも美晶を採集できることもあります。

4.産出鉱物

 竜の平で採集できる主な鉱物は、各種の水晶、長石や電気石などが一般的です。
(1)電気石入り煙水晶【Smokey Qualtz including Schorl:SiO2】
   真っ黒い針状の鉄電気石が何本も入っている煙水晶で、ここの水晶は
  透明度が高いのが特徴です。
電気石入り煙水晶
(2)鉄電気石【Schorl:(Na,Ca)(Mg,Fe)B3Al3(Al3Si6O27)(O,OH)4】
   ガレ場の南端、最上部近くで、真っ黒い塊状で産出しました。
鉄電気石【塊状】
(3)水晶トッコ【Cluster of Rock Crystal and Orthoclase:SiO2/KAlSi3O8】
   ここでは水晶、長石、黒雲母(緑泥石)が共生するトッコ(クラスター)も
  採集できます。
水晶トッコ

5.おわりに

(1)黒平では、大きさを問わなければ、今でも水晶や長石などのペグマタイト
  鉱物を確実に採れます。
(2)この春は遅くまで雪が残り、東側のガレ場の下半分、北側では全面に
   雪が残っている状態でした。滑落などの事故を起こさないよう、安全に
   充分注意しましょう。

6.参考文献

1)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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