さらに、会場で乙女鉱山産の水晶を安く売っていたので、それらも購入した。
帰宅後、これらの水晶を良くよく見ると、「右(左)水晶」「ドフィーネ式」さらに「ブラジル式」
などの双晶があることが分かった。
乙女鉱山といえば、日本式双晶で余りに有名だが、ほかの水晶産地では産出が稀な
「ドフィーネ式」「ブラジル式」などの双晶も比較的多産した。また、これらの双晶を理解する
上で、水晶には「右水晶」と「左水晶」があることも知っていただきたく、このページを
まとめてみた。
こんど、水晶を手にする機会があったら、「右水晶」か「左水晶」かを調べてみるのも
楽しいでしょう。
(2005年10月調査)
項目 | 左水晶 | 右水晶 | 備 考 | 説明図 | 実例 |
このように、外観を見ただけで右水晶、左水晶の判別が簡単にできることは、むしろ稀で
ほとんどの産地の水晶で明瞭なs面やx面を見つけることは極めて難しい。
長野県川上村川端下産と乙女鉱山産の水晶をそれぞれランダムに10本選び、S面やx面が
現れているものを調べると下表の通りであった。
乙女鉱山産のものは、80%という極めて高い確率でみることができ、日本でも例外的な
水晶産地です。
産 地 | S面やx面が現れているもの | 確率 | 備 考 | 乙女鉱山(山梨県) | 8本 | 80% | 右・左は、ほぼ半々 | 川端下(長野県) | 0本 | 0% |
しからば、s面やx面が現れていない”カクレ右(左)水晶”は、どうすれば分かるのか、それには
光学的な性質の違いや弗酸でエッチング(腐蝕)させたときにできる模様の違いで判別する
とだけ、紹介しておきます。
3.1 傾軸式双晶と共軸(透入)双晶
双晶とは、読んで字の如く、”双璧”や”双子”に使われるように2つ(以上)の結晶が
合体して全体として1つの結晶形を示しているものを指す。
( 『 2つの結晶が形態的要素の一部を共通するもの』 と定義している本もある )
水晶の結晶学では、主軸(C軸)と呼ぶ、柱の延長方向を示す仮想的な軸を決め
2つの水晶の主軸(C軸)がどのような関係にあるかで、水晶の双晶を大きく分けて
@傾軸式双晶 と A共軸双晶の2つとしている。
3.2 傾軸式双晶
日本式双晶に代表される傾軸式双晶は、”2つの主軸(C軸)がどれだけ傾いているか”
つまり、2つの主軸がなす角度がキーポイントとなり、この角度の違いによって次のように
分類できる。
主軸のなす 角度 | 双晶の名称 | 説明図 | 実 例 | 備 考 | 84度33分 | 日本式双晶 | 真上から見ると 中心に陵がくる 主軸:C1,C2 赤い線:縫合線 条線のなす角度も 84度33分 |
76度26分 | エステレル双晶 | 真上から見ると 中心に柱面がくる 主軸:C1,C2 |
3.3 共軸双晶
ドフィーネ式双晶に代表される共軸双晶は、”2つの水晶が主軸(C軸)を共有している”
事に由来する。2つの右あるいは左水晶がどのように組み合わさっているかが双晶の形を
決めている。
組み合わせ | 双晶の名称 | 説明図 | 実 例 | 備 考 | 右水晶+右水晶 | ドフィーネ式右双晶 | 理想的には 6つの柱面全ての右肩に s面、x面が現れる しかし、現実には 一部にしか現れていないことも多い |
左水晶+左水晶 | ドフィーネ式左双晶 | 理想的には 6つの柱面全ての左肩に s面、x面が現れる しかし、現実には 一部にしか現れていないことも多い |
左水晶+右水晶 | ブラジル式双晶 | 理想的には 1つおきの3つの柱面全ての 両方の肩に s面、x面が現れる しかし、現実には 一部にしか現れていないことも多い |
しからば、ドフィーネ式右双晶とドフィーネ式左双晶が共軸双晶になったものも理論では
考えられます。これだと、6つの柱面全ての両肩にs面、x面が現れるはずです。
文献を調べるとありました。ドフィーネ−ブラジル式双晶と呼ばれるもので、アメリカの
ペンシルバニア州のある産地では、ドフィーネ式よりも10倍以上出現頻度が高いとあり
水晶の双晶の奥深さを思い知らされます。
共軸双晶は、2つの結晶軸が平行であるところから、平行連晶の1種とみることもできる。
平行連晶は、次の2つのケースに分けることができる。
@ 2つの同種の結晶が対応する結晶軸を平行にして配置する場合
【 自然硫黄の平行連晶など】
A 異種の結晶がその結晶軸の方向に簡単な関係を保って結合している場合
【 ジルコンとゼノタイムの透入(平行)連晶など】
ドフィーネ式双晶に代表される水晶の共軸双晶は前者とも考えられる。
(2) 産地荒廃を防ぐ1つの方法は、”皆と同じものを追い求めない”事でしょう。 ”自分流の
採集スタイル” を確立したいと思いながら、凡人の悲しさ。
『 東に綺麗な紫水晶あれば行って掘り、西に珍しい柘榴石あり、と聞けば心ときめかす 』
『 喝!! 』