2002年秋の鉱物観察会-乙女鉱山-

2002年秋の鉱物観察会-乙女鉱山-

1.初めに

私のHPを見て、メールで問い合わせがあったり、山梨、長野、茨城などの
産地を案内して差し上げた方々に声を掛け、2002年秋の観察会を開催した。
観察会2日目、水晶峠をお昼前に切り上げ、乙女鉱山を訪れた。
乙女鉱山の晶洞は手ごわくて、簡単に乙女は微笑んでくれずズリでの観察が
主でしたが、私のHPの愛読者の栃木のTさんが採集したばかりの
日本式双晶を見せてくれ、全員が目の保養(ショックを受けた?)をした
観察会でした。
(2002年10月観察)

2. 産地

乙女鉱山に林道「牧丘川上線」から、乙女鉱山への取り付け道路があり
以前あったゲートも撤去され、悪路を覚悟すれば車高の高い車なら産地横付け
となっています。

3.産状と観察方法

乙女鉱山は、昇仙峡の上流、荒川を中心とした、馬蹄形の鉱体で、明治初年から、
昭和50年代まで、長年採掘していた。その結果、坑道、ズリも広範囲に広がって
います。
紅葉の乙女鉱山
ここでの観察は、ズリを掘るか、川岸や昔の坑道の壁面で晶洞を探すかの
いずれかです。
鉱物観察の小学生コンビ

4.観察鉱物

(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
ここの水晶は、大きなものもありますが、結晶形がシャープでなかったり、透明感がなく、
表面が汚いものになります。むしろ、小さいものに透明感があり、美しい結晶が多い。
また、水晶の表面に、鋭錐石の付いたものもありますから、表面を良く見る事が肝心です。
今回、Tさんが採集した日本式双晶を見せてもらいましたが、両翼4cm位で
バタフライ(蝶)形で、縫合線もシッカリした美品でした。
(2)輝水鉛鉱【Molybdenite:MoS2】
石英塊や花崗岩の上に、六角の花びら状の結晶をしたものや、分離結晶などが観察できます。
輝水鉛鉱
(3)硫化鉱物
輝水鉛鉱以外にも、黄銅鉱や黄鉄鉱などの硫化鉱物も採集できます。
今回、水晶晶洞を叩いた拍子に、褐鉄鉱の皮膜が破れ、磁硫鉄鉱の六角結晶を観察できた。
磁硫鉄鉱

5.おわりに

(1)乙女鉱山には、日本式双晶を求めて、大勢の人が入っています。この日も
先客が6名いました。
もう出ないと思われていた日本式双晶の採れたてを目の当たりにできたのは、参加者にとって
幸運でした。
(2)2日間の観察会でしたが、全員怪我もなく、無事帰宅されたのが何よりでした。
また、新しい産地を下見して観察会を開催したいと考えています。
(3)日本式双晶その後
観察会の後、私のHPの愛読者の栃木県のTさんが採集した日本式双晶の画像と共に
解説や鉱物採集への想いをメールで送っていただきましたので、以下にご紹介します。
日本式双晶【採集、撮影:Tさん】

『お約束の双晶の写真をお送りいたします。
じっくりと家に帰ってみたところ、双晶の右側の結晶の柱面 (m) の肩に出現する
x 面が左右の両方に出ていましたので単純な日本式双晶ではなく、
日本式−ブラジル式双晶のようです。
大きな結晶の方の先端部の下の m 面に出ている黒っぽい三角形の部分が
境界の縫合線です。
組織を調べたいのですが、切断する勇気がありません。
虎の子の双晶なので、もったいなくて・・・。

同じ場所で、二個体のエステレル式双晶も見つけることができました。
エステレルは日本式に比べるとわかりづらいですが、詳しい方からお墨付きを頂きました。
時間が空いたら面角測定をする予定です。

        エステレル式双晶【採集、撮影:Tさん】

話は変わりますが、いつもホームページを楽しく拝見させて頂いております。
一部の熱狂的なマニアや商売人による大規模な産地荒らしはウンザリしますが、
親子で連れ立って、鉱物を探しに行くのにはちょうどいいと思います。
子供にとっては、自然科学のとっかかりとして、非常に刺激的な経験になるのでは
ないでしょうか?
極論ですが、鉱物採集をすれば、多かれ少なかれ産地が荒廃するのは当然の成りゆきだと
考えております。商売人にごっそりと持って行かれるよりも、いろいろな人が少しずつ
採集して楽しめるような、そんなスタイルで産地保全ができるように、すべての方が
努力してくれるのを願ってやみません。

私は産地でバカスカ露頭を叩くのは得意ではありませんが、素手で表面(?)採集だけでも
乙女で日本式双晶がとれることもありますから。

つらつらと長文を書いてしまいましたが、ご活躍を期待しております。』

6.参考文献

1)中川清:山梨県の水晶 「水晶」-水晶特集号-,鉱物同志会,1998年
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