山梨県大月市大島の灰長石巨晶

山梨県大月市大島の灰長石巨晶

1.初めに

山梨県には、乙女鉱山の「日本式双晶」、塩山市竹森「ススキ入り水晶」など
その姿・形の美しさで全国的に有名になっている鉱物がたくさんあります。
灰長石は、造岩鉱物の一種で派手さこそありませんが山梨県大月市大島産のものは
このような大きな結晶で産出することが珍しく、地質学的に貴重で山梨県の
自然記念物に指定されています。
指定地の隣の沢では、いまでも2〜3cmの灰長石の巨晶が採集できます。
(2002年8月採集)

2.産地

大月の市街から国道20号線を東京方面に向かい、猿橋の手前でJR中央線を
跨ぎます 。約200mも行くと左に、コンビニがあり、そこを左折すると
桂川(相模川)に掛かる橋を渡り、中央自動車道の橋梁の真下をくぐり、葛野川に
掛かる葛野橋を渡ります。緩やかな坂道を上るとT字路になり、左折し約700mも
行くと左に「大島」のバス停、右に火の見櫓があります。
火の見櫓の手前の急な坂を約150mも上ると前方に神社があり、旧道が横切って
おり、この手前に駐車します。
神社の前には幅1m位の沢が流れており、この沢の上流が産地です。
大島の灰長石産地

3.産状と採集方法

ここの灰長石は、「大島塩基性火山岩体」と呼ばれる赤褐色〜暗灰色の粗粒の
玄武岩質母岩(橄欖石ドレライト)のなかに白色の斑晶として産出します。
沢の転石から母岩を探し、ハンマで割って採集します。

4.産出鉱物

(1)灰長石【Anorthite;CaAl2Si2O4(Ab,An)】
カルシウムに富む斜長石の一種で、通常1〜2cmで希に5cmに及ぶものも産出し
大きさの点では、日本屈指の灰長石です。
母岩が硬く、灰長石にはへき開があるため、母岩を割ると、斑晶も割れてしまい
自形結晶を得るのは難しい。
母岩には、橄欖石の斑晶や微晶が変質した紅褐色の軟らかい含水珪酸塩鉱物の
「イディングス石」が含まれています。

     巨晶【30mm】    灰長石の断面【赤:イディングス石】
            大島産灰長石標本

5.おわりに

(1)狭く曲がりくねった旧道を西に約200mも行くと、右に上る小道があり
これを約100mものぼると右手に自然記念物産地の露頭と案内板があります。
露頭は石垣の一部になっており、案内板の説明の最後に『この灰長石を損傷するような
行為をすると条例により罰せられます』とあります。
そんな訳で、櫻井・加藤両先生共著の「鉱物採集の旅」で「山梨県大月市大島の
灰長石と中沸石」のタイトルで紹介してある灰長石産地は、ここと違って採石場跡です。
巨晶の露頭を決して叩かないようにお願いします。
自然記念物産地【案内板】
(2)灰長石のほかの産地としては、北海道余市町フゴッペ沢や東京都三宅島が
有名です。これらの産地では自形結晶として産し、結晶火山弾が起源といわれています。
北海道は遠すぎ、三宅島は噴火騒ぎでいつ採集できるか目処も立たず、その点ここ
大島の灰長石は東京からも近く、今でも採集できる貴重な産地です。

6.参考文献

1)西宮克彦編著:山梨の自然をめぐって,築地書館,1984年
2)櫻井欽一、加藤昭共著:鉱物採集の旅-関東地方とその周辺-
  築地書館,1972年
3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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