茨城県高萩市下大能の希元素鉱物

1. 初めに

   茨城県北部には、長島 乙吉・弘三両氏の「日本希元素鉱物」に紹介された
  希元素鉱物が採れるペグマタイト堀場跡がいくつかある。
   その1つが、高萩市下大能(しもおの)ヒイシで、「乙吉氏が昭和13年(1938年)頃
  畑 晋、飯盛 武夫両氏と同行し、その時は露頭しかなく、小さなフェルグソン石を
  採集したのみであった。
   戦後、ここは開発され、昭和28年(1953年)乙吉氏らが木村 幹氏と訪れ、調査した
  ところ、微斜長石中にサマルスキー石らしい鉱物、フェルグソン石、褐簾石、変種
  ジルコン、モナズ石、そして緑柱石を採集した」 とある。
   この産地には、愛知県の石友・KDさんと1998年12月に訪れたのが最初で、その後
  私の茨城県への転勤に伴い身近な産地の1つになり、何回か訪れ、その度に各種の
  希元素鉱物を採集していた。しかし、2002年に山梨県甲府に戻ってからは、スッカリ
  足が遠のいていた。
   2005年夏、岐阜県苗木地方でパンニングにより念願の「苗木石」をいくつか採集でき
  たのを皮切りに、各地の希元素鉱物産地でパンニングの威力を実感し、下大能でも
  採集できるのではないかと思い、4年ぶりに訪れた。
   その結果、「鉄コルンブ石」「フェルグソン石」「褐簾石」「変種ジルコン」「モナズ石」
  そしてこの産地としては初めての報告と思われる「球状ゼノタイム」を採集でき
  ようやく「日本希元素鉱物」に記載された希元素鉱物の多くを確認できた。
   以前と同じような”フルイ掛け”や表面採集だけでは、希元素鉱物の採集は難しく
  ここでも「パンニング」の効用をつくずくと思い知った。
   長島先生の足跡を辿る、楽しい一日であった。
  ( 2005年12月採集 )

2. 産地

   「日本希元素鉱物」には、いくつかの堀場が記載してありますが、今回私が採集した
  場所は「下大能ヒイシ」で、大きな堀場跡が残されている。
   しかし、産地は藪に変わりつつあり、近い将来、ここにペグマタイト堀場があったことすら
  忘れ去られそうです。

    堀場跡

3. 産状と採集方法

   ここは、肉肌色の微斜長石、真っ白い曹長石、石英(白、煙)、白雲母、黒雲母からなる
  ペグマタイト脈の珪長石を採掘したと思われる。ズリ石が山腹に堆積しており、それを
  沢まで運び、パンニングする。

       
        ペグマタイト           パンニングする沢
   【黒色部は塊状鉄礬柘榴石】

4. 産出鉱物

 鉱 物 名
 (英語名)
  化 学 式   説    明 採 集 標 本 備  考
フェルグソン石
(Fergusonite)
YNbO4  灰〜茶褐色の分解物に
覆われた四角柱状で
徐々に尖り(細くなり)
頂上部には四角い
平坦面が見られる。
   希元素鉱物の中で
最も多量に
産する

 強い放射能

ジルコン
(Zircon)
ZrSiO4  黄褐色ガラス光沢で
独特の油脂感がある。
 柱面は発達せず
ほとんど錐面のみからなる
八面体に近い形を示す。
 やや強い
放射能
変種ジルコン
(Altered Zircon)

 苗木石
 (Naegite)

(Zr,Hf,Y,etc)(Si,Nb,Ta)O4  緑褐色半透明柱状
結晶が平行連晶をなし
扇状に並ぶ
 やや強い
放射能
ゼノタイム
(Xenotime)
YPO4  灰褐色半球状の集合で
ジルコンと共生する
 右側の錐面を
示すのが
ジルコン
鉄コルンブ石
(Ferro-Columbite)
(Fe,Mn,Mg)
(Nb,Ta,Ti,Zr)2O6
 真っ黒い亜金属光沢を
示す板状結晶の集合で
産する。
 
モナズ石
(Monazite-(Ce))
CePO4  黄褐色透明〜半透明の
ガラス光沢を示す板状結晶
で産する。
   
褐簾石
(Allanite[)
(Ca,Ce,Y)2
(Al,Fe'',Fe''')3
(SiO4)3(OH)
 黒褐色亜金属〜樹脂光沢を
帯びた柱状結晶で産する。
 
磁鉄鉱
(Magnetite)
Fe''Fe'''2O4  長石に挟まれ黒色
亜金属光沢の層状
〜塊状で産しまれに
八面体の自形結晶で
産する。
 強い磁性を示す。

 「日本希元素鉱物」に
”一本杉で美晶を産す”と
ある。


  八面体自形結晶【13mm】
 
鉄礬柘榴石
(Almandine)
Fe''3Al2(SiO4)3  大きなものは長石に
挟まれ黒色の層状
〜塊状で産し、まれに
結晶面の数面が見られる
ことがある。
 小さなものは、真紅、透明の
24面体で、表面に結晶
成長時の累帯構造を
残すものが多い。

 結晶面が数面見られる
      【20mm】


       ”刃状”結晶


     累帯構造を示す

 

5. おわりに 

 (1)モナズ石、ゼノタイムなど燐(P)を含む燐酸塩鉱物も採集できることがわかり
   新鉱物(?)も期待でき、暖かくなったら再訪を考えています。

 (2)ここは、何回か訪れていますが採集している人に会った事がない、忘れられた(?)
   産地のようです。
   ( もっとも、堀返した跡があるので、誰か彼かは来ているようです )
    ここは、南斜面に面し、陽が差して風さえなければ冬でも採集が可能です。

 (3)妻が車の中で待っていると、落ち葉を集めにきた近くに住む人が、「ここでは
   昔、石灰を掘っていた 」 と真顔で教えてくれたそうです。あァ!!

6. 参考文献

 1)長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,1960年
 2)長島 弘三、鈴木 保光:茨城県里美村湯平のコルンブ石について 
                  地学研究第32巻7〜12合併号,日本地学研究会,1981年
 3)松原 聰:日本産鉱物種,砿物情報,1992年
 4)柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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