群馬県南牧村赤岩・大水鉱山の輝安鉱

群馬県南牧村赤岩・大水鉱山の輝安鉱

1.初めに

 栃木県の石友Tさんに案内していただき、群馬県南牧村三ツ岩岳で
各種の日本式双晶を採集した後、「輝安鉱」で有名な大水鉱山を訪れた。
 矢鱈に堅い母岩に悩まされながらも、輝安鉱の5cm弱の針状集合体や
重晶石などを採集できた。
 しかし、採集できたと聞いたことがある鶏冠石は、見かけなかった。
(2003年5月採集)

2. 産地

 群馬県南牧村赤岩に、「砥沢」があり、沢の上流に坑口が多数あり
ここが産地です。
 全ての坑道を詳細には見ていませんが、坑道の中よりも坑口付近の方が
良いようです。
 三ツ岩岳の日本式双晶産地を発見したH氏は、ここの輝安鉱を採集中の折
沢の転石を叩いたものを自宅で実体顕微鏡で見て、双晶の存在に気付き
沢を遡上して、露頭を発見した、とその経緯を「ペグマタイト」誌に書いて
います。
産地入口【大水鉱山跡の看板】
3. 産状と採集方法
 ここは、珪質岩の裂罅に胚胎した輝安鉱で、針状結晶の集合体が堅い
母岩にヘバリついています。
 母岩ごとタガネとハンマで欠き採るのですが、脈はほぼ垂直、高い位置で
足場も少なく、簡単ではありません。
採集風景
4. 産出鉱物
(1)輝安鉱【Stibnite:Sb2S3】
  長針状結晶が集合体で産しますが、表面は錆びて黒色になったり
  茶褐色の2次鉱物に覆われている。
  また、結晶の隙間や周辺が、黄安華【Stibiconite:Sb3+Sb5+2O6(OH)】で
  黄褐色に色付いている場合もある。
輝安鉱
(2)重晶石【Barite:BaSO4】
  褐鉄鉱の中に埋もれて薄板透明結晶として産します。稀に自形結晶が
  褐鉄鉱の空隙に見られますが、表面を褐鉄鉱で覆われている場合が
  多い。
重晶石
(3)石膏【Gypsum:Ca(SO4)・2H2O】
  褐鉄鉱の表面に1〜3mm程度の透明柱状結晶で産します。
石膏
(4)その他、鶏冠石【Realgar:As4S4】が産出すると、聞いたことが
  ありますが、我々が重点的に採集した坑口付近では、全く見かけ
  ませんでした。

5.おわりに

(1)この産地の近くには、鶏冠石や若林鉱で有名な西牧鉱山や輝安鉱を
  産する中丸鉱山があります。
  輝安鉱は、中丸鉱山の方が、小さいながら、新鮮で頭付き結晶が採集
  し易いでしょう。
(2)ここは、三ツ岩岳の日本式双晶産地とあわせて1日の巡検コースに最適で
   陽が長い夏場なら、頑張れば、西牧鉱山、中丸鉱山も一日で回れます。

6.参考文献

1)星野 由紀夫:群馬県南牧村三ツ岩岳付近から産出した水晶の
         日本式四連晶と貫入三連晶,ペグマタイト 第53号,2002年
2)加藤 昭:二次鉱物読本,関東鉱物同好会,2000年
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