今まで訪れる機会がないまま、それからあっという間に数年が過ぎた。12月初め、長野
県の石友・”YY(わいわい)コンビ”から、『 麻績で水晶が採れているから行かザ 』、と
誘っていただいた。
何でも、小Yさんの友人・Oさんからの電話で、『 3日間掘って、数百本の単晶と素晴
らしい群晶を出した 』 らしい。
長坂ICで”YYコンビ”と落ち合い、私の車で麻績ICまで行き、産地を探しながら林道を
登って行くと、先行したOさんに会った。既にひと採集終えたところで、採集品を見せて
いただいた。『 小さい!!』、これなら3日かけて数百本採ったのも理解できる。向山
鉱山や川上村の巨晶、美晶を見慣れてしまった私たちの眼には、『 麻績のゴミ水晶 』
としか映らなかった。
Oさんが数百本採集した場所に案内してもらった。ここは、林道を造るときに削った
山肌にあった晶洞から水晶が出たようで、その周辺が掘り込まれている。最近、林道の
整備で、道端に崩れ落ちていたズリの土砂を重機で崖下に落としたようだ。
( 日本式双晶で有名になった、「三ツ岩岳」と似た産地 )
大Yさんが露頭を叩いたが石英脈自体が細く、ガマ(晶洞)が開く可能性もなく、ズリで
41mmの両錐松茸水晶筆頭に、1、2cmも含め小さいながら20本ほど頭付を採集した。
次の採集ポイントは、幅1m近い縦の割れ目が入った場所で、脈を追いかけて叩いた
り、ズリを掘ったりして、母岩付きや単晶を数個採集しただけだった。
林道沿いを一通り見て回ったが、大きなガマ(晶洞)が開きそうな気配が感じられず
産地を後にした。産地は林道沿いにあり、アクセスが容易で、女性や子どもでもズリで
1、2cmの小さな水晶なら春になれば拾えそうだ。(既にズリの一部は凍結)
案内いただいたOさんと、同行いただいた”YYコンビ”に厚く御礼申し上げる。
( 2007年12月採集 )
林道と室沢が交わる付近では第三紀層をヒン岩の岩体が貫いており、ヒン岩の岩脈
ポイント1:砂礫岩の割れ目に水晶が見つかる。石英脈と言えるほど塊状の石英
ポイント2:岩盤に1m位の幅の割れ目があり、この割れ目の一部に水晶を産した。
ポイント1からポイント2にかけての露頭には同じ産状のものが見られるが、あまり
第2室沢橋付近にはヒン岩が派手に露出しており、険しい地形となっている。沢に
の周囲から水晶が見つかる。ここの水晶は透明で結晶面の輝きが良いもので、負晶や
気泡、水入りが多く見られる。なお、ヒン岩の中には径10cm位までの気孔があり、内
側は「葡萄石」に覆われており、その表面には方解石や緑廉石の細かい放射状集合
体などが見られる場合がある。
の量が多くなくて、母岩に直接水晶が着生する。晶洞があれば5〜6cm
位の長柱状の結晶が得られる。崖が崩れやすいので注意が必要。
かなり掘り込まれたために今は産出は一段落している模様だ。
最大で約15cmのものが得られている。希に中心部が非常に淡い紫色
を帯びるものがあるが、紫水晶といえる程ではない。
量はない。なお、林道の下の土砂からも見つけることができる。
崩落した岩塊に晶洞を見る場合がある。
以上を「予備知識」として産地を訪れた。
この産地に既に数回通っているOさんの案内で、「ポイント2」と「第2室沢橋の奥
林道」の2箇所で採集した。
”桃太郎の家来”「キジ」「猿」「犬」トリオは、持ち前の知恵、嗅覚を活かし、手付か
ずのズリを発見しそこを掘り、さらに露頭を掘り込みガマ(晶洞)を開け、各種の水晶
の標本を採集できた。
区 分 | 標 本 例 | 備 考 | 母岩付き QUARTZ on mother rock |
母岩付き【横 25mm】 |
母岩は砂岩で 脈と呼べない 薄い石英の上に 水晶が成長 |
両錐 ( Double Point) |
両錐【全長 41mm】 |
松茸水晶に なっている |
松茸水晶 (Scepter QUARTZ) |
通常松茸【全長 22mm】
|
ポイント2では 約30%が松茸水晶 |
このほか、「葡萄石」や「緑簾石」が観察できるという情報もあるが、見られなかった。
(1) 産地情報
ミネラル・ウオッチングに行くに先立って、産地の情報の有無が採集結果に大きく
影響することは、読者の皆様が日ごろ痛感されていることと思う。
産地情報が耳に入った頃には、良品は採り尽くされた後、というのも良く聞く話で
ある。
私の場合、お蔭さまで多くの石友からの産地情報と、いつでも産地に出動できる
身軽さに恵まれ、タイミングよく産地を訪れることができ、それが良い結果を生ん
でいるようだ。
今回、鉱物採集を始めて間もないOさんの情報で産地を訪れたが、情報を元に
私が想い描いた産地像と現実の乖離が甚だしかった。
3日間掘った・・・・・・・・・・・『ガマ(晶洞)を開けて、掘りつくすのに3日かかった』
数百本 ・・・・・・・・・・・・・・・『持ち帰ったのが、頭付きの5、6cm以上だけで数百本』
と勝手に想像を膨らませ、続きの脈を掘ってガマ(晶洞)を開ければ、10cmオー
バーや立派な群晶も夢ではないと思ったのだが、『 1日やって、1、2cmの頭なしも
入れて数十本 』 、が現実だった。
(2) もっとも、このような機会がなければ、麻績村の水晶産地を訪れることもなかった
だろう。「麻績」を「おみ」と読むことすらできなかったかも知れない。
産地をつぶさに観察の上、代表的な標本を採集でき、案内いただいたOさんと
同行いただいた”YYコンビ”に厚く御礼申し上げる。