栃木県小来川鉱山の藍銅鉱

栃木県小来川鉱山の藍銅鉱

1.初めに

「大正6年の小来川鉱山調査報告」を読んで以来、一日も早く、行ってみたい思って
いた。
1月にMさんが、小来川鉱山に行ったところ、一面の雪野原で、目ぼしいものが採集
できなかったそうですが、今年は春の訪れも早く桜の開花宣言も聞かれ、”藍銅鉱”
を目指して、石友のTさん、MさんとYさんに声をかけ、ご一緒することにした。
小来川鉱山の”アズラの森”で、目指す”藍銅鉱”の良品が採集できましたので、
報告します。
小来川鉱山は、故 日下先生の「鉱物採集フィールド・ガイド」にも詳しく記述して
ありますので、参考にされるとよいでしょう。
(2002年3月採集)

2.産地

東北道鹿沼ICでおり、板荷を過ぎ、小来川に向かって走る。小来川温泉を過ぎ、
峠道に差し掛かって間もなく、左に入る林道がある。入口には、チェーンがあるが
山仕事をやっているときには、外されているようです。
林道を約100m行くと、右側にコンクリートを打った平坦地があり、ここに駐車する。
車1台で、4WDであれば、更に500m程上の、昔の沈殿地跡まで乗り入れることができます。
沈殿地跡は、平坦に整地され、林業の作業場になっているようですが、打ち捨てられた、
トロッコや巻上げ機械など、あちこちに鉱山の名残を留めています。
小来川鉱山沈殿地跡【正面のズリの上に”アズラの森”】

3.産状と採集方法

小来川鉱山は、珪質泥岩に貫入した黄銅鉱や黄鉄鉱の鉱脈で、閉山して久しいため、
ズリの鉱石は、褐鉄鉱化しているものが多い。
坑道もあちことに残っていますが、今回は入っていません。
藍銅鉱は、”アズラの森”と呼ぶ、極限られた場所でのみ採集できます。
ズリの表面採集やズリ石を掘り返して”緑色”や”青色”の2次鉱物がついた標本を探します。
”アズラの森”での採集

4.産出鉱物

(1)藍銅鉱【Azurite:2CuCo3/Cu(OH)2】
濃紺色の単斜晶系の単結晶やそれらがバラの花(球顆)状に集合した形で産出する。
緑色の孔雀石と共生したり、表面を孔雀石が覆っているものもある。
藍銅鉱
(2)孔雀石【Malachite:Cu2(CO3)(OH)2】
銅鉱床の酸化帯に産し、皮膜状で産出します。正確に分析したわけではないので、
もしかしたら、珪孔雀石になっているかも知れません。
(珪)孔雀石
(3)黄銅鉱【Chalcopyrite:CuFeS2】
黄鉄鉱と黄銅鉱が緻密に混じり合った形の標本を採集したが、表面は渇鉄鉱で覆われている。
黄銅鉱
(4)銅緑ばん【Melanterite;(Fe,Cu)SO4・7H2O】
淡い緑〜青色で、粒状や鍾乳石状で産出する。
銅緑ばん
この他、2次鉱物のラング石、水亜鉛銅鉱などをMさんが採集しました。

5.おわりに

(1)”アズラの森”は、10m四方くらいの狭い範囲で、回りにはイバラがあり、
この時期以外には、近づくのも大変です。
2年前の夏に訪れた時は、イバラに阻まれ、”アズラの森”を探すことができませんでした。
今回は、機動力があるMさんが、ズリのあちこちを走り回り、探し出してくれ、感謝感激です。
(2)「鉱物採集フィールド・ガイド」によれば、小来川鉱山は、範囲が広く、尾根を越えた
反対側にもズリがあるそうです。
いつか訪れて見たいと考えています。
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