石川県小松市尾小屋鉱山の鉱物

石川県小松市尾小屋鉱山の鉱物

1.初めに

 石川県小松市尾小屋町には、かつて尾小屋鉱山があった。一時は、産銅量で
日本一を記録したこともある栄光の歴史を持った鉱山の一つである。
 しかし、小谷 重三著「尾小屋鉱山争議史」を読むと、その足跡が必ずしも
平坦ではなかったことが、良くわかります。
 「尾小屋鉱山資料館」にあるジオラマを見ると、鉱山は、いくつかの谷から
尾根にまたがる広い範囲に分布していたことが分かります。
  尾小屋鉱山ジオラマ
 平成2年(1990年)大阪で開催された「花の万博」を家族で見た帰りに
北陸地方の鉱物採集をと思い、尾小屋鉱山の本坑や選鉱場の跡を訪ねたが
採集できたのは、紫水晶のカケラ(=紫石英)と褐鉄鉱くらいであった。
 石友のNさん夫妻に尾小屋鉱山(金平金山)での紫水晶、緑鉛鉱採集の
案内していただくことになり、集合時間まで時間があったので、「大曲」の
選鉱場の跡や付近のズリで採集を試みた。
 平成2年(1990年)には、草木がほとんど生えていない広大なズリを
当時小学6年生だった次男と一緒に、あちこち探し回ったのも、今となっては
懐かしい思い出です。
 今回行ってみると、草木が生い茂り、様相が一変していましたが、所々に
見覚えのある場所があり、運良く、鉱山を管理している方がゲートを開けて
入れてくれ、色々な話を伺うことができた。
 今回採集できたのは、「紫水晶のカケラ」「閃亜鉛鉱」そして「黄銅鉱」
だけでしたが、有名鉱山の跡を訪ねることができ、有意義な訪問であった。
(2003年7月採集)

2. 場所

 尾小屋鉱山に向かって進むと、「二ツ屋」の地区があり、そこから林道を
登ると、沈殿池の施設や鉱毒水を堰きとめるダムがあり、その上のほうに
選鉱場跡があり、その周辺にズリが広がっています。
     
         ズリ【道路面】           選鉱場跡
                尾小屋鉱山ズリ

3. 産状と採集方法

 「二ツ屋」から入った広大なズリの場所は『「大曲」と呼ばれ、選鉱場があった』と
かつて尾小屋鉱山で働いていたという方が説明してくれた。
 大谷坑や金平(かねひらと呼んでいた)坑から、鋼索で鉱石がここまで運ばれ
ズリ石は捨てられ、精鉱だけが製煉に回されたようです。
 大きな鉱山の常として、選鉱場の周りに良い標本が落ちていることは稀ですが
この周囲のズリなどから捜します。

4. 採集鉱物

(1)紫水晶【Amethyst:SiO2】
   水晶と呼ぶに値しないかも知れない、紫石英のカケラが稀に見つかります。
   凝灰岩質母岩の石英脈の晶洞部分には、1cm以下の小さな水晶があるが
   残念ながら、紫水晶ではなく、透明水晶です。
     
          紫石英             透明水晶
               尾小屋産水晶
(2)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
   長い間ズリにあったせいか、真っ黒に酸化した状態で産出する「鉄閃亜鉛鉱」と
   新鮮な破断面に透明な「ヤニ鉱」として産するものがあります。
   閃亜鉛鉱には、方鉛鉱が伴うのが普通ですので、方鉛鉱もあると思います。
     
        鉄閃亜鉛鉱         「ヤニ鉱」
              尾小屋産閃亜鉛鉱
(3)黄銅鉱【Calcopyrite:CuFeS2】
   閃亜鉛鉱や黄鉄鉱など混在した状態で産出します。黒銅鉱に変化したものもみられます。
  黄銅鉱

5.おわりに 

(1)鉱山跡の管理をしている方のお話では、尾小屋鉱山の銅鉱石の品位は必ずしも
   高くなかったようです。製錬だけで生き延びるには、内陸にあり、輸送コストや
   環境の問題などもからみ、閉山に追い込まれたようです。
(2)あの時、小学生だった次男がこの春結婚し、時の流れの速さをつくづくと
   感じています。(それだけ、私も年をとったということです。)

6.参考文献

1)澤田 久雄編:日本鉱山総覧,日本書房,昭和15年
2)農商務省鉱山局編:本邦重要鉱山要覧,同局,大正3年
3)日本産業調査会編:最新 大日本鉱山史,同会,昭和15年
4)石川県地方開発事務局編:石川縣地質鑛産誌,同局,昭和28年
5)小谷 重三:尾小屋鉱山争議史,能登印刷,1992年
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