石川県小松市尾小屋鉱山資料館の鉱物

石川県小松市尾小屋鉱山資料館の鉱物

1.初めに

 石川県小松市尾小屋町には、かつて尾小屋鉱山があった。一時は、産銅量で
日本一を記録したこともあった、栄光の歴史を持った鉱山の一つである。
 平成2年(1990年)大阪で開催された「花の万博」を家族で見た帰りに
北陸地方の鉱物採集をと思い、尾小屋鉱山の本坑や選鉱場の跡を訪ねたが
採集できたのは、紫水晶のカケラ(=紫石英)と褐鉄鉱くらいであった。
 石友のNさん夫妻に尾小屋鉱山(金平金山)での紫水晶、緑鉛鉱採集の
案内していただくことになり、集合時間まで時間があったので、「尾小屋鉱山
資料館・マインロード」を見学した。
 資料館では、尾小屋鉱山産の紫水晶や重晶石などの鉱物をみることができ
古い坑道の一部を観光坑道にした「マインロード」では、鉱山の歴史を
学ぶことができます。
 坑道の中は、気温も20℃以下で”ヒンヤリ涼しく”、夏向きの観光
スポットです。
入館料:大人 800円(高校生以下、65歳以上無料)
休館日:水曜日
(2003年7月見学)

2. 場所

 尾小屋鉱山に向かって進むと、「尾小屋鉱山資料館・マインロード」の案内板が
それを見落とさずに進めば、自然に到着します。
  尾小屋鉱山資料館

3. 尾小屋鉱山の歴史

 「尾小屋鉱山資料館・マインロード」の案内パンフレットには、天和2年(1682年)に
 採掘をはじめたとありますが、「本邦重要鉱山要覧」はじめ、私が参考にしている
 文献のほとんどが、明治11年(1878年)ごろ、橘佐平が露頭を発見したとしています。
  明治14年(1881年)に、横山氏が経営することになり、爾来事業拡張を図り
 昭和7年(1932年)に日本鉱業(株)の経営になった。
  大正5年(1916年)が最盛時で、2130トンの銅と35トンの鉛を産出した。
 昭和10年(1935年)には、最盛時は及ばないものの、1606トンの銅を産出した。
 しかし、安価な外国産の鉱石に太刀打ちできなくなり、昭和37年に閉山した。
4. 展示内容

 この資料館では、1階で尾小屋鉱山の地質、鉱石、鉱山の様子が展示してあり
 2階が古文書展示室そして屋外に旧坑道を使った「尾小屋マインロード」がある。

 4.1 1階展示室
(1)プロローグ
   入口には、入場券にも印刷されている、昭和10年ごろとされる尾小屋鉱山の
  全景写真と代表的な鉱石が展示しています。
  入口
   (2)鉱物
   日本や世界の鉱物が展示してありますが、尾小屋鉱山産のものは、紫水晶
  重晶石など数点に過ぎず、国内のほかの鉱山や外国の鉱物が多いのはチョッピリ
  残念です。それでも、最盛期に産出したと思われる「紫水晶」は一見の価値が
  あります。
  紫水晶【子持ち】
  (3)鉱山
   日本、外国の主要鉱山。
(4)採鉱技術
    採鉱を支える探鉱・支保・運搬・排水・照明・送風など各種の技術が紹介して
   あります。
  尾小屋鉱山の探鉱
(5)地質、鉱脈
    尾小屋鉱山の鉱脈、地質図、小松の地質図、日本の地質図などが展示して
   あります。
    尾小屋鉱山は、第三紀層の凝灰岩を安山岩や石英粗面岩が貫いている。
   鉱床は、裂罅充填鉱床であり、黄銅鉱、黄鉄鉱のほかに、閃亜鉛鉱や硫化鉄鉱を
   随伴する。脈石は、石英の含有が多く、方解石や重晶石も伴う。
  尾小屋鉱山の鉱床と地質図
(6)鉱山の様子
    坑内で使われた道具や地形模型(ジオラマ)が展示してあります。
   尾小屋鉱山のジオラマをみると、広大な範囲に坑口、選鉱場、製錬施設が散らばって
   いたことが分かります。
  尾小屋鉱山ジオラマ
(7)採鉱
    採鉱用具、坑内運搬、入坑・排水など
(8)選鉱
    操業系統図、選鉱技術の歴史、選鉱用具が展示してあり、選鉱場は巨大な
   プラントだったことが分かります。
  尾小屋鉱山の選鉱
(9)製錬
    製錬の流れ、製錬の歴史、製錬用具など
   製錬の際に発生する、鉱滓(スラグ)を鋳込んで、ブロック状にしたものが
   あちこちで見かけることができます。
(10)輸送
     尾小屋鉱山のユニークさの1つに、鉱山での必要物資や鉱産品の輸送に
    自社で経営する鉄道を持っていたことでしょう。
     大正4年(1915年)、小松〜尾小屋までの馬車鉄道敷設願いが出され
    翌年、金野馬車鉄道が開業。
     同年、尾小屋鉱山所長・正田順太郎が鉄道敷設免許を受け、大正6年(1917年)に
    敷設工事に着工し、蒸気機関車2両導入したのを皮切りに、客車、貨車を導入し
    大正8年(1919年)旅客運輸営業を開始した。
     しかし、尾小屋鉱山の閉山に伴う利用客の減少もあり、昭和52年(1977年)に
    廃線となってしまった。
     尾小屋鉱山資料館の下には、「ポッポ汽車展示館」があり、No5機関車と2両の
    客車が屋外展示してあります。
  「ポッポ汽車展示館」

 4.2 2階展示室
    2階は、古文書展示室になっているとの事ですが、今回時間の関係でパスして
   しまいました。

 4.3 「尾小屋マインロード」
    尾小屋マインロードは、総延長1kmくらいの範囲が、3つのゾーンに区切られて
    います。
    @「鉱山歴史ゾーン」・・・・江戸時代の坑内作業の様子を原寸大のジオラマで再現
    A「サイエンスゾーン」・・・宇宙空間を思わせる幻想的な空間の中、地球誕生のドラマ
                  地下資源の探索〜活用そして未来の地下空間の利用を
                  知ることができる。
    B「近代鉱山歴史ゾーン」・・明治以降の近代鉱山で働く人々が、落石や出水などに
                  苦労しながら、銅鉱石を採掘していた様子を再現。   「尾小屋マインロード」【入口】
5.おわりに 

(1)尾小屋鉱山の地質から歴史まで一通り見ることができます。
   尾小屋鉱山やその一部であった金平坑、大谷坑などの鉱物展示が増えればと願っています。
   とりわけ、金平鉱山の自然金
   しかし、閉山から40年以上が過ぎ、今から集めるのは難しいのでしょう。

6.参考文献

1)澤田 久雄編:日本鉱山総覧,日本書房,昭和15年
2)農商務省鉱山局編:本邦重要鉱山要覧,同局,大正3年
3)日本産業調査会編:最新 大日本鉱山史,同会,昭和15年
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