2009年5月 長野県川上村シオサブ沢源頭(小川山)の近況

               2009年5月
   長野県川上村シオサブ沢源頭(小川山)の近況

1. 初めに

   金峰山の北、長野県川上村小川山には、一面水晶だらけの場所があり、過去何回
  かミネラル・ウオッチングで訪れ、綺麗な水晶が女性や子どもでも比較的簡単に採集
  でき、好評を博していた。

   5月のGWに皆さんと訪れるのが恒例になっていて、2007年も訪れたが、残雪が多く
  途中から引き返さざるを得なかった。
   ( 地球は温暖化になっていると言われているのだが・・・?? )
   2009年6月に予定している「月遅れGWミネラル・ウオッチング」の下見を兼ねて、ほぼ
  2年振りに石友・小Yさんと訪れた。

   標高2,300m前後の産地は晴れていても肌寒く、緑のコケの下には、雪と分厚い氷が
  融けずに残っていて、露頭や先人が崩したズリでの採集となった。

       
           雪、氷が残る         金峰山方面の眺め
                      産地

   露頭の晶洞(ガマ)を開けると、「5cmの”ピカピカ”単晶」が姿を現し、ズリでは先人が
  残した(気付かなかった?)、「両翼5cmの日本式双晶」が採集でき、満足して湯沼鉱泉
  に引き上げた。

   社長に見せると、『 まあまあダな』、の褒め言葉(?)が返ってきた。湯沼鉱泉の水芭蕉
  は盛りを過ぎた、とは言え可憐な姿を見せてくれた。また、熊子が生んだ川上犬の”モコ
  モコ”は1匹は貰われて行っていなかったが、3匹が足元にまとわり着いて可愛らしい。

   6月の「月遅れGWミネラル・ウオッチング」で30名近い石友とお会いできるのを楽しみ
  にしている。同行・案内いただいた小Yさんに厚く御礼申し上げる。
    ( 2009年5月採集 )

2. 産地

   この産地は、「ペグマタイト」誌に地図入りで発表されているので、簡単にたどり着け
  ると思う。沢の脇や緑の苔の間には、踏み分け道ができていて、迷うこともなさそうだ。
   なお、この産地名が「小川山」となっているが、地元の小Yさんから、「シオサブ沢源頭」
  と呼ぶのが正しい、と教えていただいた。

3. 産状と採集方法

   ここの水晶は花崗岩や珪質岩の石英脈に胚胎した晶洞にあり、長い間に露頭が自
  然に崩落している箇所も多い。しかし、長い間訪れる人がいなかったせいか、2002年
  ごろは露頭や転石の表面を苔が覆い、”緑の絨毯”を敷き詰めたようだった。

   ところが、この数年の間に、露頭が大々的に崩され、赤茶色の痛々しい姿をあらわに
  している。

     荒廃した露頭【2007年10月】

4. 産出鉱物

 (1) 水晶/石英【Rock Crystal/QUARTZ:SiO2
      この産地の水晶の特長は次の2点であろう。

     @ 『ハーキマダイヤ』を思わせるの高い透明度
         透明度が高い透明水晶からやや煙かかった水晶まで、各種の水晶が観察で
        きる。

           単晶【縦 5cm】

     A 「エステレル双晶」を初めとする各種の双晶
         ここでは、「エステレル双晶」があまりにも有名になっている。その蔭に隠れ
        ているが、私が初めて国内での産出を報告した「ベローダ式双晶」もある。
         ( エステレル双晶という名称は、フランス南部 Cannes近郊の”Esterel”から
          産する高温石英の双晶に様式に付けられた名称である。
           ちなみに、水晶に見られる同じ様式の双晶の正式名称は ”Reichenstein
          -Grieserntal Low"
と名付けられている )

        ・2003年11月 ミニ採集会 -小川山の双晶を求めて-
         ( Mineral Hunting Tour in Nov. 2003
          Hunting Various Types of Twins at Mt.Ogawa , Nagana Pref.)

         しかし、誰しもが欲しがるのは何と言っても「日本式双晶」だろう。今回、ズリに
        落ちていた群晶を何の気なしに手にとって見ると「両翼5cmの日本式双晶」だっ
        た。

           日本式双晶【横 8cm】

 (2) 武石/褐鉄鉱【Buseki/Limonite:―】
      褐鉄鉱は、『 褐色の水酸化鉄鉱物、主に針鉄鉱(brownish iron hydrooxideminerals
      mainly GOETHITE【FeOOH】』、と定義されている。
      晶洞を充填する黄鉄鉱が長い間に風化し針鉄鉱に変化したが芯の部分には金色
     の黄鉄鉱が残っていて、黄褐色の針鉄鉱とのコントラストがおもしろい。

       武石【横 10cm】

5. おわりに

 (1) 厳しい産地
      今回、小Yさんに案内してもらった場所は、過去に訪れた場所よりも標高で約200m
     高い位置にあった。そのため、健脚を自負する小Yさんと一緒でも、金峰(きんぽう)
     山荘からの歩きが片道タップリ3時間もかかった。

      6月の「月遅れGWミネラル・ウオッチング」で訪れるのが恐ろしい。

 (2) 信州峠を越え川上村に入ると朝6時の気温が既に18℃だった。2ケ月前、8時でも
    マイナス1℃だったのを考えると、この間に暖かくなったものだ、と感慨深い。

     湯沼鉱泉に行くと、水芭蕉は盛りを過ぎた、とは言え晩生(おくて)の株が可憐な花
    をつけた姿を水辺に見せてくれた。また、熊子が生んだ川上犬の”モコモコ”は1匹は
    貰われて行っていなかったが、3匹が足元にまとわり着いて可愛らしい。

     6月の「月遅れGWミネラル・ウオッチング」では、皆さんを歓迎してくれるはずだ。

         
            水芭蕉               川上犬
                     湯沼鉱泉2題

6. 参考文献

 1) 松原 聰:新鉱物発見物語,岩波書店,2006年
 2) 原田 明ほか:長野県川上村小川山の水晶産地 ペグマタイト第76号,同誌,2006年
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