2007年10月 長野県川上村シオサブ沢源頭(小川山)の近況

               2007年10月
   長野県川上村シオサブ沢源頭(小川山)の近況

1. 初めに

   金峰山の北、長野県川上村小川山には、一面水晶だらけの場所があり、過去何回
  かミネラル・ウオッチングで訪れ、綺麗な水晶が女性や子どもでも比較的簡単に採集
  でき、好評を博していた。

   例年、5月のGWに皆さんと訪れるのを恒例にしており、2007年も訪れたが、残雪が
  多く、途中から引き返さざるを得なかった。

   産地の様子を知りたく、10月末に今年初めて小川山を石友・Yさん、その友人・M氏
  と訪れた。
   産地に着いて驚いた。緑のコケがむしり取られ、露頭が広い範囲にわたって崩され
  かつてあった坑道も埋もれてしまっていた。
   スッカリ採集意欲をそがれ、転石から晶洞部分を掻きとって早々に退散した。

   この産地の水晶は美しく、ネットオークションでは人気が高いらしく、 ”売るために
  採る輩”
も横行して、「金峰山」を隠れ蓑にし、その名前で出品しているらしい。

   産地は国有林で、余りに荒らされているので、長野県の営林関係の官庁が調査・取
  締りに乗り出した、とも聞いている。

   目ぼしい採集品がなかったので、この日の採集記録はそのままにしておいたが、松原
  先生の「新鉱物発見物語」にならうと、『ある時間における地球の歴史的断片の記録
  であり、ミネラル・ウオッチングの結果を遅ればせながらまとめてアップした。ここでは、
  コメントを差し挟まず、現状をお伝えしたい。
    ( 2007年10月観察 )

2. 産地

   この産地は、「ペグマタイト」誌に地図入りで発表されているので、簡単にたどり着け
  ると思う。沢の脇には、踏み分け道ができていて、迷うこともなさそうだ。
   なお、この産地名が「小川山」となっているが、地元のYさんから、「シオサブ沢源頭」
  と呼ぶのが正しい、と教えていただいた。

3. 産状と採集方法

   ここの水晶は花崗岩や珪質岩の石英脈に胚胎した晶洞にあり、長い間に露頭が自
  然に崩落している箇所も多い。しかし、長い間訪れる人がいなかったせいか、2002年
  ごろは露頭や転石の表面を苔が覆い、”緑の絨毯”を敷き詰めたようだった。

   ところが、この1、2年の間に、露頭が大々的に崩され、赤茶色の痛々しい姿をあらわ
  にしている。

     荒廃した露頭【2007年10月】

4. 産出鉱物

 (1) 水晶/石英【Rock Crystal/QUARTZ:SiO2
      この産地の水晶の単晶や群晶は、ネットオークションなどに「金峰山」の名前で
     出ているので眼にする事も多いと思うので、詳細は割愛する。

5. おわりに

 (1) 2002年にミネラル・ウオッチングで訪れたときには、手付かずの露頭やズリが
    沢山残っていた。
     その後も目立った変化は感じられなかったが、今回、約1年半ぶりに訪れて、産
    地の荒廃ぶりには唖然とした。

     この様子を湯沼鉱泉社長に伝えると、「俺も最近行っていないから現状がわから
    ないが、そんなに酷いのか」、と暗い表情だった。

 (2) 産地には標本を包んで余った、と思われる新聞紙が放棄されていた。それには、
    『○○新聞・大阪版』とあった。
     この露頭を徹底的に崩したのがこの新聞を遺棄した人(たち?)だ、とは断言で
    きないが・・・・・・。

     最近、小川山の荒廃ぶりは長野県の国有林を管轄する官庁の知るところとな
    ったようで、この産地の水晶を売っている輩の調査・取締りに動き出した、と聞いて
    いる。

6. 参考文献

 1) 松原 聰:新鉱物発見物語,岩波書店,2006年
 2) 原田 明ほか:長野県川上村小川山の水晶産地 ペグマタイト第76号,同誌,2006年
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