2004年 鉱物採集納め -Part2- 能登・加賀の鉱物<

       2004年 鉱物採集納め -Part2-
           能登・加賀の鉱物

1. 初めに

 2004年を表す漢字は『災』であった。浅間山の噴火、度重なる台風の襲来そして中越地震
さらにスマトラ島沖巨大地震とこれでもかこれでもかと襲いかかってきた。
 一方、2004年を代表する鉱物は、奈良県川迫(こうせ)鉱山のレインボー柘榴石などカラフル
なものがあったが、『鉱物の色』といえば栃木県足尾町鉛沢の紫水晶に代表される『紫』では
なかっただろうか。
 オークションでは5cmの単晶に3万円を超える値段がついたと石友から聞き、驚くやら
呆れるやらであった。
 しかし、”紫”には人を惹きつける妖しい光があるようです。
 2004年 鉱物採集納め -Part2- として、石川県の石友・Yさんに能登半島の鉱物産地を
案内して頂き、能登半島での採集鉱物標本第1号として、「恋路海岸のピンク(紫)色の霰石」
採集できた。翌日は名古屋市のSさんご一家の案内で「尾小屋鉱山金平坑の紫水晶」を採集でき
2004年の鉱物採集を締めくくることができた。
 案内していただいたYさんとSさんご一家、そして同行していただいた兵庫県のNさんご夫妻に
厚く御礼申し上げます。
(2004年12月採集)

2. 【ピンクの霰石を求めて】

(1)目指せ、能登半島!!
 退庁、帰宅後18時に甲府の自宅を出て、中央高速塩尻北で下り、安房トンネルを抜け
岐阜県に入ると暖冬とは言え薄っすらと雪化粧している。それでも気温は2、3℃はある。
 神岡を抜け富山ICから北陸道に入り、小杉ICでおり、翌日の集合場所の羽咋郡押水町を目指す。
 途中富山県境の峠道には雪が残り、雨も降り出してきた。23時に、パーキング到着、車中泊。
 能登半島に来たのは、10年以上前であり、鉱物採集で訪れるのは初めてなので興奮して(?)
なかなか寝付かれなかった。夜中に目が醒めると、時折激しい雨が降っている。
 危うし、”晴れ男”

(2)「能登空港」にチョット寄り道
   案内のYさん、兵庫のNさんご夫妻との待ち合わせまで時間があったので、「すしべん」で
  朝食を済ます。うどん付きの定食を食べると、満腹で動くのも大儀なくらい。
   やがて、皆さん集合してこられたので、この日の作戦会議。
   恋路海岸の霰石→珠洲市の「子ぶり石」の産地を案内していただくことにした。
     出発するころには、空は雲ひとつない青空に変わり、”晴れ男”健在であった。

   能登有料道路を北上し、穴水ICでおり、恋路海岸のある内浦町を目指す。やがて右手に
  能登空港があることに気付き、ここを見学しながらチョット早めの昼食とすることにした。
   能登空港は開港間もないこともあり、綺麗なローカル空港で、レストランで地元の
  名産「カキフライ」を戴いた。

     能登空港

  (3)「恋路海岸の霰石」
   有料道路の延長かと思われる「広域農道」を平均時速80〜100kmで走ると、やがて
  「恋路海岸」の標識が見え、それに従って海岸に行くと、「鉱物採集フィールドガイド」で
   見慣れた風景が目に飛び込んでくる。

         
          恋路海岸              採集風景
                  「霰石」産地

      以前、Nさんご夫妻が「霰石」を採集した付近に移動し、海の中のそれらしい石を
   叩くが中々放射状の結晶をした「霰石」が出てこない。
    一抱えもある岩の角を2kgハンマーで”ダメ元”で叩くと、一瞬”ピンク色”
   目に飛び込んできた。
    後は、割れば必ずと言ってよい位に、「ピンク色の霰石」が採集でき、新聞紙に
   シッカリくるんで持ち帰ることにした。
    ”ピンク”以外に、”緑色”や”白”の霰石もある。霰石以外では、「輝沸石」と
   「玉髄」が採集できた。
   (”霰石”と”玉髄”の見分け方を調べて、出掛けられることをお奨めします。)

         
          ピンク                緑
                  恋路海岸産「霰石」

  (4)「珠洲の子ぶり石」
    今回の能登半島鉱物採集で一番採集したかったのは、益富博士の「鉱物」にも紹介
   されている珪酸塩鉱物の「子ぶり石」であった。
    珠洲市周辺の珪藻土を含む地層に産する「子ぶり石」は、同じものが2つとない
   愛くるしい形をしており、是非採集してみたいと考えていた。
    Yさんが予め下見してくれた御蔭で、迷うことなく産地に到達でき、時間の許す限り
   採集することができた。
    ”大ぶり”の「子ぶり石」は、生成後の地殻変動のストレスでヒビが入ったり
   割れたものが多く、むしろ小さな結晶には比較的完全なものがあった。

         
       産地【撮影:Nさん】            こぶり石
                   「子ぶり石」

  (5)小松市内で”クリスマスぱ〜ちぃ”
    この日は、名古屋市のSさん一家と小松駅前のホテルで合流する予定であった。能登有料
   道路を一路南下、金沢森本ICから北陸道に入り、小松ICで下り、小松駅前のホテルに到着
   したのは約束の時間から1時間近く過ぎていた。
    このホテルはSさんが開拓してくれた超低料金・高級ホテルで、朝食付き3人部屋で7千円
   余りである。部屋に荷物を運び入れるのももどかしく、全員そろってホテル2階の居酒屋に
   向かう。
    この日は12月25日で、”クリスマスぱ〜ちぃ”がスタート。お腹一杯食べ、いい加減
   呑んでも安い。ホテルに戻り、「談話室」をお借りし、持ち寄った酒肴で2次会がスタート。
    ホテルの方から”騒がないで下さい♯♯!!”と注意されるほどの盛り上がりであった。

     ”クリスマスぱ〜ちぃ”【撮影:Nさん】

    Sさん一家は、スキー場から直行したが早く着いたので、翌日回る予定の金平坑を下見して
   採集した「紫水晶」を披露してくれ、これで明日のスケジュールは決まった。
    「標本玉手箱」で皆さんが2004年に採集した標本を配布・交換し、”ぱ〜ちぃ”はお開きとなった。

3. 【金平坑の紫水晶を求めて】

(1)とうとう雨が降ってきた
    朝起きると前の日と打って変わって、シトシトと冷たい雨が降っている。朝食を済ませ
   Sさん一家の案内で金平坑に向かう。最近、沢沿いの樹木が切り倒され、アチコチに隠れて
   いた坑道が姿を現わし、それらの前や沢の中で紫水晶が採集できる。

         
    坑道跡【入口は塞いである】           採集風景
                  「金平坑」

(2)これぞ紫水晶!!
    時折、雨が止み、青空も見え”晴れ男”健在かと思われたが、霧雨が降るなど、一進一退の
   空模様であった。
    それとは関係なく、ズリでは、私が写真のような群晶と単晶を見つけたかと思うと
   Sさんが、『あった!!』と叫び声を上げた。Sさんの奥さんに言わせると、普段冷静沈着な
   Sさんがこのような叫び声を上げるのは珍しいとのこと。皆んなが駆け寄ってみると、私が
   採集した単晶が何本か束になった様な群晶を手にしていた。
    この日は、Sさんのご主人の”エヘン”の日でした。

         
           群晶                単晶
                   「金平坑」産紫水晶

4. いざ、帰りなん

  いつもながら、紫水晶に心引かれながらも、山沿いは大雪との予報が出ていたこともあり
 山越え組の私たち夫婦は、早めに失礼する事にした。
  行きとは逆のコースで、北陸道の富山ICで下り、神岡を通り、安房トンネルを抜け
 松本ICから中央道で、甲府に着いたのは、17時過ぎであった。途中、思ったほど雪が
 なかったのは、幸いであった。
  今回、総走行距離は、1000km余りであった。

5.おわりに

(1)2004年の鉱物採集納め-Part2-として、初めて能登半島での鉱物採集を楽しんだ。
   「恋路海岸のピンク色霰石」をたいした苦労もなく採集でき、さらに、過去何回か訪れた
   「尾小屋鉱山・金平坑」では、この産地を代表する「紫水晶」を採集できた。
   おかげさまで、2004年の採集納めを堪能することができた。
    案内していただいたYさんとSさんご一家、そして同行していただいた兵庫県のNさん
   ご夫妻に厚く御礼申し上げます。
(2)観光旅行で能登半島に行ったのは、結婚する前の30年以上昔であった。その頃に比べ
   高速道路や空港ができるなど、能登半島へのアクセスは格段に良くなっている。
    文献には「宝達山の蛍石」「能登鉱山の石膏」など、能登半島には有名な産地があるよう
   なので、いつかジックリ回ってみたいと考えている。

6.参考文献

1)益富 寿之助:鉱物,保育社,昭和60年
2)草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
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