福島県石川町野木沢の鉱物

福島県石川町野木沢の鉱物

1.初めに

「日本希元素鉱物」によれば、福島県石川町野木沢地区には、いくつもの
珪長石鉱山があり、水田の下に斜坑を掘り、ポンプで坑内水を汲み上げて
珪長石を採掘していた。
ここでは珪長石のほかに、閃ウラン鉱、変種ジルコン、モナズ石などの放射能
鉱物の立派なものが産出し、櫻井博士や加藤昭氏が熱心に研究されたそうです。
放射能鉱物は採集できませんでしたが、扁平、24面体で透明感の有る鉄バン
柘榴石や緑柱石が採集できました。
(2002年4月採集)

2.産地

「日本希元素鉱物」の記述によれば、大橋川に沿って右手に塩沢大石の堀場が
さらに数百メートル細い道を行くと左手に黒江(粕谷)鉱山があった。
これらが本格的に採掘されたのは戦後で、石川としては新しい産地だったようです。
塩沢鉱山跡

3.産状と採集方法

ここは、ペグマタイト脈で幅が広いところでは6m位あり、延長50mの
レンズ状で、真ん中から放射能鉱物の良品が産出した。
しかし、これらの坑道は、現在水没あるいは埋め戻されてしまった。
ズリの土砂を川の中でフルイがけして、各種の鉱物を採集します。

4.産出鉱物

(1)鉄バン石榴石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3】
ここの鉄バン石榴石は、石川特有の鉄錆色の大きな結晶のほかに、扁平な24面体で
透明感の有る標本がが採集できました。
下の写真を見ていただければ、石友のO氏が、一番美しい柘榴石だと自慢する気持ちが
良く分かっていただけると思います。

左:透明石榴石【上から】    右:【横から】
ここでは、柘榴石の巨晶がでたといわれ、今回55mmで一部透明感のある扁平な
大きな標本も採集できました。
石榴石の巨晶【55mm】
(2)緑柱石【Beryl:Be3Al2Si6O18】
石川町の緑柱石は、白〜緑〜青まで色の変化が大きいのですが、今回採集できたのは
緑柱石の名に相応しい色合いです。
緑柱石
(3)白雲母【Muscovite:KAl2Si3O10(OH)2】
日本の白雲母は大きな単一結晶が少ないと言われますが、大きいものは10cmを越え
単一結晶としても産出する。
白雲母【自形結晶】
このほかに、母岩付き電気石などが採集できましたが、放射能鉱物は見つかり
ませんでした。(見逃している?)

5.おわりに

(1)採集していると地元のお年寄りが次々と来て、鉱山が華やかなりし戦前、戦後の
様子を話してくれました。
ここで働いたことがあると言う男性の口から、「モナザイト」「コルンブ」「ジルコン」など
放射性鉱物の名前がすらすらと出てきたのにはビックリし、「放射性鉱物は、黒雲母と長石の
境目にある」と教えていただいた。
ここは、最初放射性鉱物を採集していたそうで、場所によっては、「陸軍」の旗が立ち、派遣将校が
駐在した鉱山もあったそうです。
戦後は良質の珪石が採掘できたので、朝鮮戦争のころ(昭和26年)、双眼鏡用の光学ガラスの
原料として盛んに採掘したそうです。
その当時は、いつでも採れると思い、鉱物採集に来た学生にお土産に標本を沢山あげたという、
羨ましい話も聞きました。
初期の頃は、個人が、自分の地所で採掘していたようですが、その後、鉱業権が設定され
他所の人が入り込み、昭和40年代には終焉を迎えたようです。
最後の頃には、坑道の支柱として残してあった良質な珪長石まで採掘したため、坑道は
陥没あるいは水没しているところが多いようです。
(2)通りかかった老女が、立ち話の最後に「良い石を採っていがんせ(福島弁で、
行きなさい)」と言って別れたのが印象的でした。
(3)こういった貴重な話を当時を知る人達から直接伺えるのは、後何年
あるのだろうか・・・・・・。
inserted by FC2 system