日光鉱山の斜開銅鉱

日光鉱山の斜開銅鉱

1.初めに

滋賀県に住む石友のNさんから、「栃木県で斜開銅鉱を採集した人がいる。
しかも、人頭大のモコモコした標本」とのメールが入った。
「栃木県の銅の鉱山なら、足尾、小来川、日光のいずれかだろう」と返信した。
この話を東京の石友のMさんにもした。
斜開銅鉱は、銅の砒酸塩鉱物で、関東周辺では採集したと聞いたことがなく、
広島県の瀬戸田鉱山でしか採集できないものと思っていた。
足尾、小来川は、最近も行ったがそんな気配が無く、日光鉱山は場所がわからず、
行ったことが無かったが、可能性があるのは、日光鉱山だろうと思っていた。
その後、Mさんからメールがあり、「斜開銅鉱の産地は日光鉱山で、案内します」とのこと。
2人で日光鉱山を訪れたところ、ここの斜開銅鉱を最初に発見したという
地元のSさんが居合わせ、日光鉱山の全部のズリを案内していただき、斜開銅鉱
ブロシャン銅鉱など美しい銅の2次鉱物を採集できた。
(2002年4月採集)

2.産地

日光鉱山は、塩谷郡塩谷町にあり、東北道の「矢板IC」から、矢板那須線沿いに北上し
461号線で玉生を通り約2kmで左に入る。
約100先で林道に入ると、その行き止まりが日光鉱山の第一坑である(産地A)。
ここから山をはさんだ北側に第二坑のズリ(産地B)があり、山を挟んだ西南にも大きな
ズリ(産地C)が残っているなど、規模の大きさが偲ばれる。
日光鉱山【産地Aの坑口とズリ】
日光鉱山【産地Bのズリ】
日光鉱山【産地Cのズリ】

3.産状と採集方法

ここは、珪質粘板岩に胚胎した黄銅鉱脈で、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱や方鉛鉱なども共生する。
斜開銅鉱は産地Aでのみ採集可能で、ここの斜開銅鉱は、銅と砒素を含む地下水が、凝灰
角礫岩に染み込んで、斜開銅鉱はじめ、銅の2次鉱物を生成したと推論する
採集方法は、坑道内壁を、タガネとハンマで崩すか坑外のズリを掘って探すかですが
坑道内で採集したものの方が新鮮です。
坑道内産地
緑〜空色〜青〜群青〜黒まで、色とりどりの2次鉱物が見られる。

4.産出鉱物

(1) 斜開銅鉱【Clinoclase;Cu3(AsO4)(OH)3】
斜開銅鉱は、銅の砒酸塩鉱物で、ここでは、皮膜と球果のものが見られます。
皮膜のものの断面は、矢はず状で、球果の破断面は斜開銅鉱特有の菊花状になっています。
斜開銅鉱【放射状花びら】
このほか、コルンウオール石、胆ばん、孔雀石 、黒銅鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、
方鉛鉱などが採集できました。

左:コルンウオール石  右:黄銅鉱【閃亜鉛鉱、方鉛鉱と共生】

左:孔雀石【絹糸状,産地C】右:孔雀石【水晶と共生,産地A】

5.おわりに

(1)小さな産地ですから、大勢が押しかけると、あっと言う間に、絶産になって
しまう恐れがあり、産地の詳しい場所は示しませんでした。ご了解ください。
(2)少し前まで、461号線沿いに「日光鉱山」のプレハブ建物があり、
その裏手の山際にコンクリートで封された坑口があり、ここが日光鉱山だとばかり
思っていた。
Sさんによれば、ここは天頂鉱山だったそうです。言われてみれば、このあたりの地名は
天頂です。

左:日光鉱山建物跡     右:天頂鉱山通洞坑
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