七尾市小島町の石灰土

         石川県七尾市小島町の石灰土

1. 初めに

  拙HP「雲山(ウンサン)金鉱」の中で、1941年(昭和16年)に益富先生が編纂された
 鉱物標本「日本鉱物資源標本」 120種の一覧を掲載したところ、『No90 石川縣七尾産 石灰土』
 に地元七尾市に住む石友・Yさんが興味を持ち、産地を突き止めてくれた。
  「能登・加賀の鉱物を訪ねて 第2弾」で、産地を案内していただき、”原産地標本”
 採集することができた。
  案内していただいた、Yさんに厚く御礼を申し上げます。
  (2005年7月採集)

2. 産地

  益富先生の「説明書」には、石灰土の産地として『石川縣鹿島郡西湊村七尾』とある。Yさんが
 調べてくれたところでは、『現在の小島町あたりらしい。(海岸から少ししか離れていない
 国道249号線沿いの)「妙観院」さんの境内で、登り口周辺で見られます。駐車スペースも
 十分あり、チョット寄ってみるのには都合が良い』
とあった通りの産地です。

3. 産状と採集方法

    Yさんによれば、『昔は海だった所が隆起した所です。波に浸食された状態も
   確認出来ます。』
と事前情報にあった通り、粉状〜鱗状の化石の遺骸の中に最大2mm程度の
   石英粒が混じる砂岩層で、海岸近くに堆積したものが隆起したと思われる。
    お寺さんの境内なので、崖下に落ちている小さな塊を1つだけ頂いてきました。

     「妙観院」下の露頭

4. 採集鉱物

 (1)石灰土【Calcareous earth:−】
     益富先生の「説明書」には次のように解説されています。
     『第三紀層中に層状をなす。蘚蟲類其他の化石の遺骸よりなる。七尾セメント会社にては
      この土をセメントの原料に供す』

     今回採集したものと見比べてみると、「日本鉱物資源標本」の方は、@粒が極めて小さく
    ”均質な粉状” A石英粒が見られない などから、フルイ掛けや粉砕などの前処理を
    した上で、「管ビン」に納めたもの、と推測される。
     

         
     「日本鉱物資源標本」         採集品【2005年7月】
                     石灰土

5. おわりに

 (1)以前は、この石灰土をセメント会社が採掘していたようですが、現在はこの付近一帯が
   市街地になっており、採掘はしていません。
    七尾市郊外には、現在でも珪藻土を採掘している場所があり、国道沿いにそれらを
   眺めることができます。

     珪藻土採掘場

    七尾駅から真北、海岸近くの「食祭市場」では、能登半島の物産として新鮮な海産物
   地酒、陶器、漆器などに混じって、「珪藻土の七輪」を売っています。

 (2)鉱物標本としての面白みは、はなはだ疑問で、このページをみて採集に行こうと思われる
   人はいないような気がします。
   (事実、一緒に行ったメンバーは、私以外、誰一人ここでは標本を採集しなかった。)
    私の場合、益富先生が編纂された120種の資源鉱物に挙げられていた産地を訪れ
   ”原産地標本”を採集でき満足している。
    案内いただいたYさんに、改めて御礼申し上げます。

6.参考文献

1)益富 寿之助:日本鉱物資源標本 説明書,日本鉱山科学研究所,昭和16年
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