栃木県足尾町鉛沢の紫水晶の近況

       栃木県足尾町鉛沢の紫水晶の近況

1. 初めに

   ちょうど1年前、2005年GWの「ミネラルウオッチング」の一環で、栃木県足尾町の「鉛沢」
  を訪れ、参加者の皆さんには、ほぼ満足の頂ける採集結果であったらしい。
  ( 慾を言えば、キリがない )
   その後も、個人的に訪れた人も多かったらしい。2006年4月、千葉県の石友・Yさんから
  「鉛沢を訪れたが、カチンカチンに凍っていて、表面で2cmのものを見つけただけだった」
  とのメールをいただいた。2005年の冬は例年になく厳しかったせいか、山間部では春の
  訪れが約1ケ月遅いようだ。
   それから半月後、北関東の「水鉛鉛鉱」産地探索に向かう途中、約半年振りに鉛沢を
  訪れてみた。「かじか荘」周辺は、桜の蕾が漸く膨らんだ様子で、私が住む甲府より春が来る
  のが約1ケ月遅いと言うのを実感した。その上、産地に向かう途中、急に”あられ”が降り
  出したのには驚かされた。

     一転、冬景色【白いのは”あられ”】

   産地を訪れると一部に雪が残っているものの、ズリは凍っていなかった。しかし、「2005年
  GW採集会のフォローアップ」で報告した通り、”プロ”の手口で徹底的に採集され尽くした
  感があり、ズリは何回もシャッフルされた状態で、どこを探せば良いか全く見当もつかない。
  今までの記憶を辿り、点々と雪が残る箇所を避け、ここぞと思う場所で採集したところ、産状
  が良く判る「母岩付き」と「5cmの単晶」などいつかの標本を採集できた。

   もう採れないとされる鉛沢ですが、『 もう は 未だなり、未だ は もうなり 』 の古い諺を
  再び思い返しています。
  ( 2006年4月採集)

2. 産地

    既に、情報があると思いますので割愛させていただきます。

3. 産状と採集方法

    これも詳細は割愛させていただきますが、表面を良く観察し、ここぞと思う場所を” ひたすら
   掘るだけ ” でしょうか。

     ズリを掘るSさん母娘【2005年10月】

4. 採集鉱物

 (1)紫水晶【Amethyst:SiO2
     堆積岩の割れ目に侵入した熱水から成長したと考えられる紫水晶の産状を示す、母岩付き
    標本を採集できた。ただ、割れ目が狭いため、頭が壁にぶつかってしまっている。
     これが、鉛沢の紫水晶の大きなものに頭付きが少ない理由であろう。また、運良く、隙間に
    寝そべるように成長したものは、頭が付いていて大きいが、母岩から離れるときに根元が斜めに
    割れることになる。

           
           母岩付き               単晶【5cm】
                      紫水晶

5. おわりに

 (1) 『 もう は 未だなり、未だ は もうなり 』
    2005年GW採集会のフォローアップ以来約5ヶ月ぶりに鉛沢を訪ねてみると、最近は
   ”もう 採れない” との情報が広まったのか、訪れる人も少ないらしく、産地の状況に
   あまり変化が見られなかった。
    「日本鉱物誌」にある長さ15cmの紫水晶を採ろうとすれば多分採れないが
   1、2cmの可愛らしい頭付きなら、まだ採れそうです。

 (2) 長野県湯沼鉱泉周辺では、4月10日ごろにも、雪が降るなど、今年の春の訪れは
    例年より1ケ月前後遅い。恒例となっている「GWのミネラルウオッチング」は
    約1ケ月おそい、「月遅れGWミネラルウオッチング」として開催したいと、考えて
    いる。
     皆さんと、お会いできるのを楽しみにしています。

6. 参考文献

 1)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
 2)和田維四郎著:日本鉱物誌第1版,和田維四郎,明治37年(1904年)
 3)益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年
inserted by FC2 system