山梨県中澤第四晶洞のジルコン

          山梨県中澤第四晶洞のジルコン

1. 初めに

    2009年8月、石友A・Sさんに山梨県北部の水晶産地を案内していただき、「美麗な
   煙水晶と微斜長石」そして「苗木石」を始めとする希元素鉱物を採集できたのは、既報
   の通りである。

   ・山梨県中澤第四晶洞の鉱物
    ( Minerals from Nakazawa No4 Pocket , Yamanashi Pref. )

    「苗木石」が産出した晶洞の続きを掘り、現地で「苗木石(変種ジルコン)」を確認でき
   たものを含め水晶や長石からなる群晶を持ち帰った。塩酸の次に蓚酸で洗浄し、充分
   水洗・乾燥後、実体顕微鏡で片っ端から確認すると、「苗木石」の上に、八面体透明な
   「ジルコン」が結晶している標本が1つだけあった。

    山梨県では、四角い柱状で両端が錐面になった「ジルコン」は普通に産出するのだが
   八面体は珍しく、" Our Collection "に加わった。

    この標本を見ると、このペグマタイト地帯の鉱物の生成順序が、(長石、水晶)→「苗
   木石」→「ジルコン」だった、と推測でき、1,200万年前の壮大なドラマが眼に浮かぶ。

    貴重な産地を案内していただいたA・Sさんに改めて御礼申し上げる。
    ( 2009年8月 採集 )

2. 産地

    この地域について、多くの情報があるので、詳細は割愛する。

3. 産状と採集方法

    これについても、以前のページに詳しく載せているので、割愛する。

4. 産出鉱物

    今回の採集・探査行で採集できたのは、@ 希元素鉱物 A ペグマタイト鉱物
   (水晶、長石、など)である。そのうち、希元素鉱物のジルコンについて紹介する。

 (1) 風信子鉱/ジルコン【ZIRCON:ZrSiO4
      赤黄色、透明、ガラス光沢の八面体結晶で、「苗木石」の上にみられる。古い鉱
     物図鑑を見ると、ジルコンには『風信子鉱(ふうしんしこう)』という何とも風雅な別
     名が与えられている。
      ジルコンのモース硬度は7.5で、水晶とトパズの間の硬さをもち、赤色透明なもの
     は『ヒヤシンス』と呼ばれ宝石に用いられたところからこの名が付いた、とされる。
      Danaの” A System of Mineralogy ”にある結晶図と見比べてみると、柱面に
     相当する”m面”がほとんどないようだ。

        
                採集品                    結晶図
                                【System of Mineralogyから引用】
                            ジルコン

5. おわりに 

 (1) 小さな標本に大きな力
       今回紹介した「ジルコン」は、大きさが全体でも1mmにも満たない小さなものだ。
      しかし、「苗木石」の上に成長しているところから、ペグマタイトの晶洞の中で一番
      最後に生まれたことがわかる。

       「山梨県地質誌」によれば、この地域のペグマタイト鉱物は、1,200万年前に「御
      岳(みたけ)花崗岩」の生成に伴って生まれたと考えられる。
       この標本を見ていると、このペグマタイト地帯の鉱物の生成順序が、(長石、水
      晶)→「苗木石」→「ジルコン」だった、と推測でき、1,200万年前の壮大なドラマが
      眼に浮かぶ。
       小さな標本だが、大きな力があることがお分かりいただけるだろう。これが、私が
      小さな標本も大切に記録残す理由の1つだ。

       貴重な産地を案内していただいたA・Sさんに改めて御礼申し上げる。

6. 参考文献

 1) Edward.S.Dana:A System of Mineralogy 6th Edition , JOHN WILEY & SONS INC.
              1920年
 2) 山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌 山梨県地質図説明書
                            同委員会,昭和45年
 3) 長島 乙吉・弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,1960年
 4) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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