群馬県下仁田町中丸鉱山東坑の輝安鉱

群馬県下仁田町中丸鉱山東坑の輝安鉱

1.初めに

2002年7月の「鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-」の最終訪問地として
津具鉱山を訪れたが、目的とした輝安鉱はYさんとO君が1個ずつ採集しただけで
私はカケラも採集できなかった。
そんな訳で、採集会の後も輝安鉱には未練があり、私が住む山梨県からあまり遠くない
群馬県下仁田町中丸鉱山東坑で輝安鉱を採集したことを思い出し、10年ぶりで訪れた。
7月の台風でズリが洗われ、新たなズリ石が表面に顔を出し、表面採集でも良品が
得られ、ズリ石を割り晶洞中の頭付き輝安鉱結晶をはじめ、輝安鉱の2次鉱物
閃亜鉛鉱、重晶石などをこの産地の代表的な標本を採集できた。
(2002年8月採集)

2.産地

山梨からは、清里を経て長野県佐久市から254号線(通称コスモス街道)で
群馬県下仁田町に向かう。県境の内山トンネルを抜け、10km余り行くと
「空沢橋(からさわばし?)」があり、その先左にある食堂「大竹」の駐車場に
駐車させてもらう。
「空沢橋」
「空沢橋」寄りの駐車場脇から畑の縁を約30m登り、「ビワ」の木の脇を抜けると
沢に沿って山道があり、ここを約50mのぼり、沢に下りる。
このあたりから「空沢橋」上流約300mにある坑口までの沢にズリ石が豊富に
残されている。
坑口
沢の中のズリ【坑口前から下を見る】
    中丸鉱山東坑の産地

3.産状と採集方法

「日本鉱山誌」によれば、『1954年(昭和29年)には野上鉱業(株)が
稼行しており、アンチモン品位7%の粗鉱2t/月出荷。
第三紀安山岩中の裂罅充填粘土質脈、別に銅、鉛、亜鉛脈あり』とありますが
粘土は見当たらず、非常に硬い珪質母岩に脈状に輝安鉱が入っています。
採集方法は、表面に真っ黒い輝安鉱の脈や塊が見られる白褐色の母岩を探し
割ってみる。脈の太いところに晶洞があり、希に頭付き結晶が採れます。
母岩が硬く、ハンマで叩くと破片が顔面に飛んできますので、眼を保護する
メガネかゴーグルを必ず着用してください。
表面採集でも、放射状の結晶が見られる良いものが採集できるでしょう。
場所によっては、動かなくても数個の標本が眼に入るほど輝安鉱は沢山あります。

4.産出鉱物

(1)輝安鉱【Stibnite:Sb2S3】
柱状、針状これらの集塊状で産出する。柱、針状のものの表面には、垂直な条線が
ある。晶洞にある新鮮なものは銀白色であるが、ズリにあるものは表面が錆びて黒く
なっている。
愛媛県市之川鉱山から産出した輝安鉱の巨大な結晶は、乙女鉱山の日本式双晶と
ならんで、日本の代表的な鉱物といわれる。
黄鉄鉱が共生することから、ベルチェ鉱【Berthierite:FeSb2S4】も共生すると
考えられるが、肉眼での判定は難しい。

  左:頭付き結晶        右:針状結晶
       中丸鉱山東坑産輝安鉱
輝安鉱に接する石英の晶洞に輝安鉱のような針状結晶で、先端が”赤紫色”の鉱物が
極めて希に産出する。輝安鉱(ベルチェ鉱)の仮晶をなす紅安鉱【Kermesite:Sb2S2O】か
単に赤紫色の黄安華なのか判断できずにいます。
紅安鉱?
(2)黄安華【Stibiconite:SbSb2O6OH】
輝安鉱(ベルチェ鉱)の2次鉱物として、白〜黄褐色の粉末、皮膜状で産する。
CaやNaを含むこともあり、成分は一定しないとされる。
黄安華
(3)重晶石【Barite:BaSO4】
薄板状結晶で、石英の晶洞中や鉱脈の中に産出する。晶洞の中のものは、透明で美しい。
輝安鉱が板状結晶を貫いている標本もあり、重晶石は熱水性石英脈の最終期に輝安鉱より
遅く生成したと考えられる。
重晶石
(4)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
鉱脈の中に、淡黄色〜黒色の結晶面、へき開面を示している。重晶石(?)が溶けた
ヌケガラ石英の表面に八面体を初めとする自形結晶が付いたものも採集できる。
閃亜鉛鉱
(5)方鉛鉱【Galena:PbS】
鉱脈の中に、特有の鉛灰色のへき開面を示す標本を採集したが、量的には多くない。
方鉛鉱
(6)黄鉄鉱【Pyrite:FeS2】
鉱脈の中に、五角十二面体の結晶をなすものを採集した。
黄鉄鉱

5.おわりに

(1)ここだけを訪れるのはもったいなく、すぐ近くにある「鶏冠石」で有名な
西牧鉱山とペアで回ると良いでしょう。
輝安鉱の良品を採集でき、津具鉱山のフラストレーションを解消できた一日でした。
(2)国道254号線は通称コスモス街道と呼ばれ、道路脇には、コスモス(秋桜)が
咲き誇り、秋の到来を告げていました。
(私が訪れた翌日が、暦の上の”立秋”でした。)
コスモス街道の秋桜

6.参考文献

1)日本鉱物誌編集委員会編:日本鉱物誌 I-a,東京地学協会,昭和30年
2)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
4)木下亀城:原色鉱石図鑑,保育社,1989年
5)梅沢俊一:鉱物産地をたずねて<増補改訂版>,梅沢俊一,1995年
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