第37回 名古屋ミネラルショー








            第39回 名古屋ミネラルショー

1. はじめに

    2017年の名古屋ミネラルショーがいつ開催されるのか早くから気になっていた。従来8月の最終土曜日・日曜日に
   開催されていたが、2016年は東京の「ミネラルマーケット」や「新宿ミネラルショー」に対抗した訳でもあるまいが2ケ月
   早い6月に開催された。このとき私は「地球一周の旅」の途上、カリブ海を航海していて参加できなかった。

    2017年は会場の改装が終わり、例年通り8月の最終土曜日・日曜日に開催されると知り、往復600キロの日帰り
   は厳しい歳になり、1泊2日で訪れることにした。
    金曜日に甲府を発ち、「中津川市鉱物博物館」で開催中の展示を見て、気になっていた産地でミネラル・ウオッ
   チングを楽しみ、恵那のいつものホテルに宿泊した。
    土曜日はNHKの朝ドラを観てゆっくりホテルの朝食を摂ったあと名古屋に向かった。そんなわけで会場に着いたのは
   11時近かった。

    「欲しいものはない」、」と言いながら、”駄々っ子”と同じで”見れば欲しくなる” MH の困った性で、気がつけば
   数点が袋に入っていた。
    会場では東海や関西地区の石友にもお会いでき、楽しいひと時を過ごし、山梨に戻った。
    ( 2017年8月 現金採集 )

2. 場所と規模

    例年、名古屋市千種区吹上にある、名古屋中小企業振興会館(名古屋吹上ホール)の2Fで開催されている。
   名古屋高速の料金が高いのと2015年にナビにアチコチ引き回された嫌な記憶があって、多治見ICで中央道を降り
   下道を”トロトロ”走ったので11時近くに着いた。会館の駐車場(30分 200円)に入れ、そこから徒歩2、3分歩けば
   会場だ。

       
                 吹上ホール                   ホール内の案内板
    

    入り口でもらったパンフレットによれば、出展業者(89)、団体・同好会(6)、個人出展者(24)と東京のミネラル・
   マーケットとミネラルショーを合わせたような出展者構成で、これも”名古屋らしさ”なのだろうか。
    会場は広い1フロアーで明るく歩くスペースも広く取ってあるのでミネラル・マーケットのような息苦しさはない。お客も
   若い(?)女性が多いようだ。
    ○○が好きな女性を「○○ガール」や「○○女」などと呼ぶようだが、石好きな女性をまさか「石女」とは言わないだろう。
   これは、「うまずめ」と読み、古い時代、(男性側に原因があっても)子を生めない女性につけられた蔑称だからだ。

       
                   会場                     お宝を探す女性たち
     

3. 購入品

    今回購入したのは、次のような鉱物標本だけだった。

No 鉱物名
(英語名)
産地 写真と説明 備    考
1 安銀鉱とバリシア石
(DYSCRASITE
& VZRISCITE)
札幌市小別沢鉱山
  
 
2 ジルコン
(ZIRCON)
新潟県糸魚川市
  
翡翠輝石に伴う
3 チタン石
(TITANITE)
高知県土佐清水市
  
蛍石も随伴
4 葉片状磁鉄鉱
(MAGNETITE)
福岡県磁石山
  
磁石に吸引
葉片状磁鉄鉱は
秩父鉱山で採集
5 オパール
(OPAL)
長崎県彼杵(そのぎ)鉱山
  
 「立山に産する玉滴石」には、
「碧玉蛋白石質褐鉄鉱」とある。
6 水晶
(QUARTZ)
大分県尾平鉱山
  
櫻(さくら)構造

    No6の「櫻構造」と名付けられた、C軸に垂直な面がしめす結晶成長過程の模様に興味を惹かれ、厚さ1ミリほどに
  輪切りしたものを1,000円で購入した。詳細を知りたいと話すと、2016年の日本鉱物科学会総会での発表予稿を
  見せてくれた。コピーが欲しくなったがホールにはコピー機がないというので、500mほど離れたコンビニまで行ってコピー
  してきた。

    
                           発表予稿

    このような構造を持つ水晶は尾平鉱山以外の国内外のスカルン鉱山のもので観察できるという。長野県産などの
   水晶でも観察できる可能性がありそうだ。

4. 特別展示

    会場の入り口近くに、『猪飼コレクション』が展示してあり、その脇で展示図録などを販売していた。図録類は
   写真の出来栄えが今一つなので購入を見送り、断って写真だけ撮らせてもらった。

    
                           猪飼コレクション展示

    展示品の中で私の眼を惹いた標本2点を紹介する。1つは、ミネラル・ウオッチングで訪れたことがある長野県川上
   村「穴沢(あなざわ)の電気石」だ。完形品が2個展示してあった。これほどの品は現在ではなかなか採集できない
   だろうと思いきや、妻がズリで拾ったのだから世の中判らないものだ。
    地元の人は、「産地は赤面山(あかずらやま)でなくて、穴沢(あなざわ)」と言っている。また、「鉄電気石」と
   表示してあるが、「苦土電気石」だろう。兵庫県の石友・N夫妻のご厚意で入手できた、2017年に出版された山田
   さんの「日本の鉱物産地総覧」ではこの辺りを正確に記述している。

    もう1点は、群馬県「茂倉沢の長島石」だ。母岩の大きさは20センチ以上あり、長島石の針状結晶が6か所に
   観察できる逸品だ。

        
               苦土電気石                             長島石
            【長野県川上村穴沢】                    【群馬県桐生市茂倉沢鉱山】

5. おわりに

 (1) 「一期一会」
      1年半ぶりに名古屋に行くので、闘病中のSさんの体調が良ければお会いしたいとメールしておいた。Sにはお会
     いできなかったが、奥さんにお会したところ元気そうなので安心した。Sさんには、秋のミネラル・ウオッチングでお会
     いできそうだ。
      標本を物色に来た愛知の石友や出店している東海・関西の石友にもお会いでき、短い時間だったが楽しい
     ひと時を過ごし名古屋を後にした。

      多くの石友には秋のミネラル・ウオッチングでお会いできる予定だ。

 (2) 『年寄り笑うな・・・・・・』
      関東地方の産地へ車を走らせているとき、道端に『こども叱(しか)るな来た道じゃ 年寄り笑うな行く道じゃ』
     と書いた標語板(?)が建っていた。茨城県に単身赴任していた時だから20年近く前の話で、50歳になったか
     ならないかだったから、歳をとるということに実感がなく、「フ〜ン」、と見て通り過ぎた。

      妻の母の介護にかかわるようになって1年になろうとしている。痴呆が進んだ母親の日常を見ていると何年後か
     の自分を見ているようで怖い面もあるが、何事にも好奇心が旺盛な私は興味深い方が先に立つ。
      (同性でしかも血がつながっている(=同じ遺伝子を持つ)妻は、複雑な気持ちのようだ)

      まさに、20年近く昔見た「標語」が身に染みるようになってきた。週に何回か決まった曜日にディサービスを受け
     ている母親にとって、その日の行動を決める最も重要な情報の”今日が何曜日か”が判らないのだ。
      痴呆度のテストでまず尋ねられる(らしい)、「今日は何月何日、何曜日ですか」に正しく答えられないのだ。
     曜日が判るようにと、時刻以外に月日、曜日、気温などが判るデジタル時計を最近買ってあげたのだが、
     ”月日や曜日を知るにはこの時計を見る”ということを何回教えても思い出せないのだ。

      
                  母親の予定表と時計

      私も、「今日が何月何日で、何曜日か」、とっさには判らないことがある。朝届いた新聞、テレビをみたり、PC
     画面や携帯、それらがない畑などではデジカメなどでこれらの情報を得られることを知っているし、そのやり方も
     判っているので生活で困ることはない。しかし、使ったことがないスマホを与えられて「今日が何曜日か」を調べら
     れる自信はない。

      『転ばぬ先の杖』、という諺があるが、転んでしまってからでは杖は役に立たないと思い知った。電子機器
     に限らず、若い時から使い慣れていないと、年老いて必要になった時に教えられても、使い方を覚えられない。

      何事にせよ、”準備する、備えておく”に早すぎることはないのだ。膝や足腰を痛めて立ち居振る舞いに不便を
     感じている人が多いのを目にし、わが家も床に座る和式から椅子に座る洋式の生活に切り替えた。物置台と
     してしか機能していなかったダイニング・キッチンのテーブルと椅子をリビングに据え、使っていた座卓を仕舞ったの
     だ。
      もともと会社での机・椅子生活が長かったのだから、この方がPCを操作するのも楽だし、PCを出しっぱなしのまま
     テーブルの空きスペースで切手の整理やスクラップブックの作成などができるので、作業性も良い。
      何より2つのテーブルが1つになって、空きスペースが生まれ、狭い室内が少し広く感じられる効果が大きい。

6. 参考文献

 1) 立山カルデラ砂防博物館:立山に産する玉滴石 オパールの世界,同館,1999年
 2) 岡田 俊朗 et al:大分県尾平鉱山産水晶に見られる櫻構造について,日本鉱物科学会,2016年
 3) 山田 滋夫:日本お鉱物産地総覧,つゆねこ企画,2017年
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