埼玉県長瀞町荒川の砂金と砂白金

埼玉県長瀞町荒川の砂金と砂白金

1.初めに

 石友の東京都のTさんから、「春分の日を中心とした3連休は、遠征ですか?」との
メールを頂いたが、お彼岸には、墓参りなどがあり、採集どころではない筈だった。
 しかし、”採集の虫”(こんなのいるか?)が疼いて帰り道に埼玉県長瀞の荒川で
砂金採集を行った。
 水ぬるむ季節となり、パンニングも苦にならず、以前は一粒も採集できずガッカリで
あったのが、採集要領も分かった今回は、1時間あまりで、十数粒採集でき溜飲を
下げることができた。さらに、今回初めて、砂白金も採集できた。
(2003年3月採集)

2.産地

 砂金を採集できるのは、秩父鉄道の樋口駅から上長瀞駅の間の荒川岸です。
ただし、天然記念物指定区域では採集ができませんし、荒川の川岸には民宿など
個人の家があり、河原に下りるのは思ったほど、簡単ではありません。
 寄居方面からきた場合、「射撃場入口」の表示のある信号の約150m手前の
「アメミヤ建材」で左折し、秩父鉄道の線路を渡り、約100mも行くと小さな
橋があり、その側に駐車し荒川に出ます。

3.産状と採集方法

3.1 産状
 荒川流域は、古くから砂金の産地として知られています。砂金は、上流に
ある金鉱脈に含まれている自然金(山金)が侵食され、砂や小石とともに堆積した
ものです。
 長瀞から上流約50kmには、秩父鉱山があり、閃亜鉛鉱に伴うひも状自然金を
産出し、長瀞の砂金の大部分はここ由来のものと考えられています。
 この砂金の原産地が、2002年に古い石友のOさんが、「ペグマタイト」などに
発表した地点との見方もあります。
 長瀞の蛇紋岩には、苦灰石の脈が走っており、この中から長島乙吉氏と
櫻井博士が自然金を発見しており、一部はこのようなところから来ているのかも
知れません。
 砂金は重いので、基盤岩に溜まりやすく、甌穴(Pothole)と呼ばれる母岩の
くぼみに堆積した土砂の底に溜まっています。
長瀞の甌穴
3.2 採集方法
 川岸の雲母片岩は層状に堆積・変成したので層に沿って割れ目があり、その底に
砂金などの重鉱物が堆積しています。それを採るには、そこに生えている雑草を
根っこごと引き抜き、パンニング皿に入れ、根っこに付いた土砂を綺麗に洗い
溜まった土砂を川の水の中で静かにゆり動かすと、軽い土砂は流れ去り、重たい
砂鉄に混じって砂金などの重鉱物が残ります。
 最後に、砂鉄(磁鉄鉱)と砂金をゆっくりと汰り分けますが、磁石で砂鉄だけを
取り除くのが、初心者には楽かも知れません。
長瀞採集方法

4.産出鉱物

(1)自然金【Native Gold:Au】
 砂金は、不純物の銀などが溶け出し純度が上がり、文字通り黄金色をしています。
長瀞の砂金は、箔状でなく立体的なものが多いようです。
砂金
(2)砂白金【Native Platinum:Pt】
 砂白金(さはくきん)は、蛇紋岩の岩漿鉱物として産出し、母岩の風化によって
荒川の砂礫の中に堆積したと考えられる。
砂白金
(3)胆礬【Chalcanthite:Cu(SO4)・5H2O】
 青〜天青色の腎臓状小球の集合体で産出する。一瞬”秩父長瀞の自然銅”を伴うかと
喜んだのですが、残念ながら自然銅はありませんでした。
胆礬(たんばん)

5.おわりに

(1)春の陽を一杯浴びながら、水ぬるむ川岸で砂金をパンニングしていると
  西部劇に出てくる1シーンを地で行く感じです。
(2) パンニングしていると、釣り針、釣りの鉛の錘などが皿の底に残る事がある。
   砂金採集がメインの東京都のOさんは、「古銭や古釘などが出る砂礫層は
  砂金採集の良ポイント」と言っていたことを、思い出しました。

6.参考文献

1)埼玉県立自然史博物館: 自然史百科 No37 砂金-そのルーツを探る-,1990年
2)日下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
3)加藤 昭:二次鉱物読本,関東鉱物同好会,2000年
4)地団研地学事典編集委員会編:地学事典,平凡社,昭和45年
5)奥山 優:秩父鉱山の自然金-スカルン中の柘榴石に伴う自然金とその産状-
        ペグマタイト 第57号,2002年
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