千葉県には住んだことがなく、土地勘もないため、少し早めに単身赴任したが
身辺も落ち着いた1月末、「ピンク色の霰石」を求めて長崎鼻を訪れた。
海岸には、黒い古銅輝石安山岩中の転石がゴロゴロしている。それを大ハンマ
で割ると、ソラマメ状の空隙が「セラドン石」で覆われ、ごくごくまれに「霰石」が
ある。
色は白、形は球状がほとんどで、皆さんが欲しがる『ピンク色放射状』の結晶は
極めてまれだ。
今回、運よく、『ピンク色放射状』結晶を採集できた。このことを、愛知県の石友
ヘナK小隊に知らせると、小隊長から『 すごくかわいらしいピンクの霰石ですね。
お仕事の幸先いい感じですね 』、と祝っていただいた。
採集しているときは判らなかったが、この産地は、化石の採集、特に大きな岩
をどかしてその下をツルハシなどで掘ることは禁止されている、とのインターネッ
ト情報もあるので、地元の皆さんとトラブルを起こさないようにしたい。
( 2008年1月採集 )
慣れてくると、転石の表面を見ただけで、”叩く価値がある石か”、かなりの確
率で分かるようになるだろう。
草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」には、石川県恋路海岸の「あられ石」
産地が紹介されおり、われわれも訪れ、ピンク色、不透明、球状のものを採集
したのはHPで既報の通りである。
長崎鼻のものは「紫水晶」を思わせる透明感があり、文句なく素晴らしいもの
(2) セラドン石【CELADONITE:K(Fe3+)(Mg,Fe)Si4O10(OH)2】
@毬栗状・・・・・・・・針状結晶が球状に集合し、”毬栗状”になっている。
ここ、長崎鼻で採集できるものは、結晶が微細な”皮膜状”で、”ビロード状”
その時、波に洗われ角が丸くなった、真っ黒で石にしては軽い標本を採集
今回も、似たような標本を鼻の北側の海岸で多数見つけることができた。
何のことはない、20年近く、「廃油ボール(アスファルト)」が固まったものを
KDさん、『 御免なさい』
(2) 長崎鼻の岩のり
地元の漁業関係者にとっては、”自分たちの畑”みたいな場所なので、そ
ただ、今回私が霰石を採集したあたりの岩には、潮の関係なのか、「岩の
採集しているときは判らなかったが、この産地は、化石の採集、特に大き
( 2004 Year End Mineral Hunting at Noto Kaga Area , Ishikawa Pref. )
である。
安山岩の晶洞内壁を覆っている"青緑色"の鉱物である。
石川県恋路海岸産の「セラドン石」の結晶の形を石川県の石友・Yさんと次の
ように分類した。
( Celadonite of Koiji Seashore -Part 2- , Ishikawa Pref. )
Aスギゴケ状・・・・・針状結晶が、気孔内面を覆い、まるで”青緑色のビロード”
を敷き詰めたように見えるもの。
と呼ぶ範疇に入るだろう。
セラドン石
5. おわりに
(1) 長崎鼻の「琥珀(こはく)」
ここ、長崎鼻を最初に訪れたのは、鉱物採集を始めて間もない、1990年
ごろだった。古い石友の一人、愛知県のKDさんと、「琥珀(こはく)」を求めて
だった。
その当時、ここで「霰石」が採集できるとは露知らず、転石をハンマで叩く
など、考えもしなかった。
し、「石炭(古い時代の植物が炭化したもの)」だと思い込んでいた。割ると
黄色・透明な部分は「琥珀」だろうと勝手に解釈していた。
それらの中に、まだ軟らかいのが1つだけあった。手に持って割ると、内部
は”ヤ二状”で、指にベタベタくっつき、鼻に近づけると、アスファルトの臭い
がした。
偽「琥珀入り石炭」
「琥珀入り石炭」だと思い込んでいたらしい。
鼻の北側の岩の表面は黒い海草に覆われ、女性がそれを採集していた。
話を聞くと、「岩のり」で、この寒い季節に採集し、貴重な現金収入になるら
しい。
岩のり採集
こを荒らされれば、怒るのは当然だろう。
り」が全く見られなかった。
な岩をどかしてその下をツルハシなどで掘ることは禁止されている、とのイン
ターネット情報もあるので、地元の皆さんとトラブルを起こさないようにしたい。
( 「鉱物採集禁止」などの標識もなく、出会った何人かの地元の方から何も
言われなかったのだが・・・・ )
6. 参考文献
1) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
2) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年