山梨県白州町流川鉱山の絹雲母

山梨県白州町流川鉱山の絹雲母

1.初めに

山梨県の北西部には、南アルプス甲斐駒ケ岳山系の3000mを越える峰々が
勇壮な姿を見せている。この東麓には、糸魚川-静岡構造線が走り、この影響から
面白い鉱物が産出する。
流川鉱山では、かつて絹雲母を採掘し、90年(平成2年)2月から坑道を新たに掘り
水篩(すいし)のための作業小屋を建て採掘を再開していましたが、平成4年8月に
訪れたときには坑道は閉じられ、元の荒れ果てた産地に戻っていました。
その後の様子が知りたくなり、10年振りに訪れてみたところ、荒れ果てた作業小屋だけが
残っており、絹雲母だけが採集できました。
(2002年6月採集)

2.産地

韮崎を過ぎ、国道20号線を長野県に向かって走る。白州町にあるサントリーの
ウィスキー蒸留所を過ぎ、約1km先の流川(ながれかわ)に掛かる橋を渡ると
すぐに、「下教来石(しもきょうらいいし)」の信号がある。
ここを左に折れ、緩やかな坂道を約2.2km行くと、三叉路がある。真ん中の
舗装していない道を行くと流川の左岸に出て、巨大な砂防ダムが見えてくる。
三叉路から約600m行くと道は流川を横切るようになる。この手前に車をとめ
上流へ約200m行くと、流川の左岸一段高いところに作業小屋が残っている。
流川鉱山跡【2002年】
この鉱山は閉山していましたが、六倉研(株)が化粧品用の絹雲母を目的に、
90年(平成2年)2月から坑道を新たに掘り、水篩(すいし)のための作業小屋を
建て採掘を再開していましたが、平成4年8月に訪れたときには坑道は閉じられ、
元の荒れ果てた産地に戻っていました。
流川鉱山坑口【1990年】

3.産状と採集方法

この一帯は、花崗岩が分布しており、表面は風化してマサ化しています。
坑道がなくなった今、採集はズリで行います。小高くなったズリを掘ると絹雲母の
層が現れ、ここから採集します。
流川鉱山のズリ【薄いピンク色の層が絹雲母】

4.産出鉱物

(1)絹雲母【Sericite:KnAl2(Si,Al)4O10(OH)2n】
白〜赤桃色を呈し、石英(水晶)を含む方解石の脈石の間に層をなして粘土状で産出しました。
薄いピンク色は、鏡鉄鉱の影響と言われています。
絹雲母【水晶が埋没している】
以前、黄鉄鉱の結晶が採集できたのですが、今回、見当たりませんでした。

5.おわりに

(1)平成の時代になって、新たに坑道を掘りはじめる光景を目の当たりにできたのは
貴重な経験でした。
しかし、開坑から閉山まで、もっとこまめに記録に残しておけば良かったと悔やんでいます。
(2)坑道を採掘していたとき、ここで働いていた人の話では、石英質の脈石の間から、
希に自然金(山金)が発見されるとの事でした。
鉱山が閉山になって久しい今となっては、確かめるすべもありません。
(3)「教来石(きょうらいいし)」の地名は、もともと”聖石(きよらいし)”で、国の境に
埋めた石に由来すると何かで読んだ記憶があります。
そう言われれば、ここから数キロ先には”国界橋”があり、長野県との県境になっています。

6.参考文献

1)田中 収編著:山梨県 地学のガイド,コロナ社,1988年
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