長野県北部の水晶









               長野県北部の水晶

1. 初めに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWと
   秋の年2回、定期的にミネラル・ウオッチングを開催するようになって9年目を迎えた。
    今回は、「長野県の水晶産地をたずねて」と題して、初日に長野県北部の有名産地を
   19名の皆さんと訪れた。

    産地を離れる前、『地質巡検』、として砂岩や礫岩などの堆積岩に縦に貫入した石英
   脈に水晶ができたことを皆さんに確認していただいた。

         
          地質観察           水晶の産状
                  産地巡検

    参加者の多くが、女性、子どもそして熟年男性で、露頭を叩くなど思いもよらないことで
   皆さん、2年前に良品が出たポイントのズリに散らばって採集した。
    ここは、すでに大勢の人が訪れ、”ズリのズリ”のようになっていて、皆さん苦戦したよ
   うだが、『松茸水晶の王』の異名が定着しつつある滋賀・Oさんはじめ皆さん”標本サイズ”
   を手にされたようだ。

     「松茸水晶」【採集・撮影:Oさん】

    水晶しか興味がなく、晶洞探査の”嗅覚”は私の石友の中で1、2を争う石友・ASさんと
   露頭での産状観察とあわよくば採集すべく、再び訪れた。何箇所か移動しながら、ポイ
   ントを探した結果、次のような2つの産状が観察できた。

    (1) 堆積岩に縦に貫入した石英脈に伴うタイプ
    (2) 『崩落したガマ(晶洞)』タイプ

    両方の産状から、それぞれの代表的な標本を採集することができた。同行いただいた
   石友・ASさんに、厚く御礼申し上げる。
    ( 2009年11月 観察 )

2. 産地

    ここは、有名な産地で、インターネットなどにも情報がたくさんあるので割愛する。われ
   われの後から、大阪ナンバーの車で採集にきた一行がいたほどだ。

3. 産状と採集方法

    林道沿いに何箇所か移動しながら、ポイントを探した結果、次のような2つの産状が観
   察できた。

    (1) 堆積岩に縦に貫入した石英脈に伴うタイプ

      


石英脈が太くなった部分に
黄褐色や黒色の”ガマ粘土”が
見られ、その中に水晶が産出
する

柔らかいので、ドライバーで、
”ホジホジ”すると、次々に
出てくる。


    (2) 『崩落したガマ(晶洞)』タイプ

      


水晶が生まれたガマ(晶洞)が
崩落し、中にあった水晶が、
斜面の下に転げ落ちて、地山の
土に中に埋もれている。

地山が固く粘結しているので、
ツルハシや熊手で掘り進むと、
”ポツポツ”と出てくる。


     両方の産状から、それぞれの代表的な標本を採集することができた。初めての産状
    なので、石英片まで持ち帰ったが、”頭付き1級標本”は少なかった。

      
          崩落ガマ  石英脈
              採集品

4. 採集鉱物

    ここで採集できるのは、「水晶」のみだ。「松茸水晶」など形がおもしろいものや「内包
   物(インクルージョン)入り水晶」がある。
    これらから、この産地での成長過程で、成長が休止する時期があり、時期によって
   熱水の組成に変化があったことがうかがえる。

  区 分 小区分     写   真 備 考
母岩付き三角柱状 母岩は砂岩で
珪化作用を受けている。

1面おきに結晶面が
発達し上から
見ると三角形を
示す

両錐       両端に錐面が
見られる。

”ファンタスティック”
な標本

松茸正常    ”軸”の上に”傘”が
ついた一般的なもの
       ”軸”の上が”先細り”に
なったもの
内包物
(インクルージョン)
入り
銀白色葉片状
             全体


             拡大

磁硫鉄鉱
または
硫砒鉄鉱
と思われる。
気泡状 水(液体)と
気泡(ガス)が
内包されている。

5. おわりに

 (1) フォローアップ・ミネラル・ウオッチング
      秋のミネラル・ウオッチングに何人(ファミリー)かの常連さんが都合で参加できなか
     った。ミネラル・ウオッチングを終えて帰宅した夫の標本を見た妻子やHPを見て、ぜひ
     訪れてみたい、という声が強い。

      ”ズリのズリのまたズリ”になっているかも知れないが、まだ採れる可能性もあり
     産地のその後の確認も含め、『2009年の採集納め』にでも訪れてみたいと思って
     いる。
     ( いつ、千葉から山梨に戻れるかが問題だが・・・・・ )

6. 参考文献

 1) 山田 滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
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