私が知っている山梨県のザクロ石産地とそこで採集できる標本は次のようなもので
あることを伝えた。
産 地 | 鉱 物 種 | 採 集 標 本 | 備 考 | 甲府市竹日向 | 鉄礬ザクロ石 | 塊状、最大10mm結晶面は稀 | 甲府市白山 | 鉄礬ザクロ石 | 塊状、最大10mm 大きなものは鉄錆に 覆われている
自宅の裏山 |
甲府市黒平 | 鉄礬ザクロ石 | 最大8mm 山梨県で一番の美晶 産出は極めて稀 |
富士河口湖町 | 鉄礬ザクロ石 | 標本未入手 |
「鉱物観察ガイド」にある 未訪問産地 |
簡単に採集できる標本は今ひとつだし、ということで、私が未だ行ったことがない
「長浜」を訪れることになった。ただ、この日は、下部町にある湯之奥金山博物館恒例の
「第8回砂金堀り大会」があり、記録係のボランティアが終わって現地でIさんと会う約束
をした。
「砂金堀り大会」の会場で会った横浜市のKさん夫妻、愛知県のSさん一家にこの話を
したところ、「参加したい」、というので急遽 『ミニ・ミネラル・ウオッチング』開催となった。
先行したIさんが産地を突き止めておいてくれたお蔭で、産地に直行した。杉林の中の
「ここが産地??」と思うよう場所で石英安山岩の転石の中に最大2mmの鉄礬ザクロ石
が点在する。小さな粒のものは”紅色”が美しく、2mmサイズのものは”黒光り”して24面
の輝きが美しい。
新しい産地訪問のキッカケを作ってくれたIさん、ご一緒したK夫妻、S一家に厚く御礼
申し上げる。
( 2008年8月 採集 )
産地に行って困惑したのは、露頭らしきものが全く見当たらず、杉林の中の踏み分け<
道沿いに石英安山岩の岩塊と岩片が見られるだけである。
岩塊の中には、削岩機で孔を穿ったものが見られ、ここでは近代になって採石が行わ
れたようだ。
「鉱物観察ガイド」によれば、国内のザクロ石を産する火成岩とそこに見られる種類に
ついて次のように記述している。
母岩 | ザクロ石の種類 | 主な産地 | 備 考 | 花崗岩ペグマタイト | 鉄礬ザクロ石 | 茨城県山の尾 | 山梨県竹日向 | 山梨県黒平 | 満礬ザクロ石 | 岩手県岩泉 | 石英安山岩 (デイサイト) | 鉄礬ザクロ石 | 山梨県長浜 | 今回訪れた産地 | 流紋岩 | 満礬ザクロ石 | 長野県和田峠 | 有名なザクロ石産地 | 安山岩 | 鉄礬ザクロ石 | 大阪府二上山 | サファイアも産する |
「鉱物観察ガイド」には、安山岩や流紋岩に伴うザクロ石の成因について3つの説を
紹介している。
@ 岩漿(がんしょう)自身からの結晶鉱物
A 岩漿が取り込んだ外来岩片を消化し、その結果導かれた特殊な岩漿から
作られた。
B 岩漿がザクロ石の結晶そのものを取り込んだ。
長浜の鉄礬ザクロ石は、次のような理由からAなのだろう。
1) ザクロ石が斜長石(中性長石)の集合に常に接している。→ notB
2) 普通の石英安山岩にたいてい少量は存在する磁鉄鉱がほとんど含まれていない。
→ 岩漿だけでは鉄礬ザクロ石ができない。 → not@
3) 外来岩片の形跡がほとんど見当たらない。
ここでの採集は、岩塊や岩片の表面を観察し、大き目、と言っても最大2mm程度だが
ザクロ石が見える部分をハンマで掻き採る。
以前、加藤先生の講演会で配布された鉄礬ザクロ石は大きさが4、5mmあり、産
地は長浜と同じ富士河口湖町だが、確か▲▲とあったと記憶している。妻の友人で
富士河口湖町出身の人が「子どもころ、ザクロ石を採ったことがある」、と話している
のでこの産地を探してみたいと考えている。