岐阜県苗木地方の「砂金」 その2











        岐阜県苗木地方の「砂金」 その2

1. はじめに

    2010年3月から千葉県の某電子部品メーカに技術コンサルタントとして赴任し半年にな
   ろうとしている。技術(広い意味で科学)で大切なことの1つに『再現性』が挙げられるだろ
   う。
    たとえば、純水を電気分解すると酸素(O)と水素(H)が得られる。この実験は、小学生
   がやってもノーベル賞を受賞した科学者がやっても同じ結果になる。会社では、入社3ケ
   月の社員と10年選手が同じ物を作ったとすると、同じ時間内に同じ品質のものができる
   ようにするのが技術なのだ。

    さて、2010年8月下旬、石友・K夫妻と苗木地方のミネラル・ウオッチングをご一緒し、
   私は、『苗木地方の砂金』を採集できた。

    ・岐阜県苗木地方の 「 砂金(自然金) 」
    ( Placer Gold(GOLD) from Naegi Area , Nakatugawa City , Gifu Pref. )

    ここで気になる事があった。4人で行って、採集したのは妻を除く3人だったが、『砂金』
   を採集できたのは別に自慢する訳ではないが私1人だった。このように、採集できるのが
   ”まぐれ”と受け止められても仕方がないような場合、ここを『産地』と呼んで良いのだろう
   か、というのが第1の疑問だった。
    しかも、採集できたのは砂金3粒(標本整理の段階で1粒紛失し2粒)、木錫1粒しかなく
   こんなに産出量が少ない場所が『産地』になるのだろうか、と言うのが第2の疑問だった。

    このとき思い浮かんだのが『再現性』をチェックするだった。つまり、もう一度同じ場所を
   訪れ同じ鉱物が採集できれば『産地』と呼べるのではないかと考えた。できることなら、私
   以外の人が採集してくれれば何も言うことがない。
    こんな訳で、2010年9月、妻と2人で再び苗木地方を訪れた。朝涼しい内に決着をつけ
   るべく朝5時に甲府を出て、8時過ぎにはパンニングを始めていた。

    なかなか「砂金」は姿を見せなかったが、1粒目が”キラリ”と光ったのはパンニングを始
   めて1時間ほど経ってからだった。さらにパンニングを続け、2粒目が姿を見せたのはお昼
   近くだった。
    これで何とか日を置いても採集できるという『再現性』は確認できた。帰宅後、錫石を茶
   漉しでフルイ掛けしたやゝ大きめのものの中から1粒だが「木錫」を見つけ出せ、こちらも
   『再現性』は確認できた。

    長島乙吉氏の「苗木地方の鉱物」に、砂金を採集できるのは、「Y川」、「B川」とあるので
   中津川鉱物博物館や地元で聞き込んだのだが、「ここです」、という答えは得られなかっ
   た。おまけに、同じ名前が何箇所かある事がわかり、ますます混乱している。木錫産地と
   される「D川」も同様だった。
    こうなると、ミネラル・ウオッチングをこの地で開催し、技術とは程遠い、『おおぜいの眼』
   で探すしかなさそうだ。
   ( 2010年8月探査、9月再訪 )

2. 産地

    長島 乙吉氏の「苗木地方の鉱物」にある産地なのか確信が持てなくなった。なぜなら、
   同じ名前の場所がいくつかある事が今回の探査で明らかになったからだ。

3. 産状と採集方法

    川や沢の土砂をパンニング皿に入れ、揺り分けるだけだ。今回探査した、沢筋にペグマ
   タイト(巨晶花崗岩)の露頭があり、晶洞部分をハンマとタガネで欠き採ると、「煙水晶」、
   「月長石(曹灰長石)」、「緑柱石」、「ゼノタイム」など各種の鉱物が得られた。

4. 採集鉱物

 (1) 砂金/自然金【Placer Gold/GOLD:Au】
      黄金色、葉片状や小さな塊状で産出する。この産地のものは厚みがあり、重量感が
     ある。
      今回、2粒採集したが、標本採集の段階で1粒紛失してしまうほど小さなものだ。

       砂金(自然金)

 (2) 木錫/錫石【Wood Tin/CASSITERITE:SnO2
      苗木地方でパンニングで採集できる錫石のほとんどが黒〜赤〜褐色で、結晶面が
     いくつか残っているものが多い。
      「木錫」は、黄褐色〜白色の年輪に見立てられる同心円状の模様があるところから
     見た目が「珪化木」に似ているので名づけられたらしい。
      今回も、現地では気づかなかったが、帰宅後、『精密パンニング』→乾燥→茶漉しで
     ふるい掛け→大きな粒を実体顕微鏡で観察して、1粒だけ確認できた。

       
             今回          前回
                木錫(もくしゃく)

5. おわりに

 (1) 『再現性』
      2010年8月に訪れたと同じ場所で「砂金」、「木錫」が半月後にも採集でき、私自身は
     『再現性を』確認できた。ただ、採集できたのが私以外に誰もいない。
      これでは、『産地発見者以外でも採集できる』、という産地の認定条件を満たしてい
     ない。
      草下さんの「鉱物採集フィールド・ガイド」に、『・・・・・、採りもしない鉱物を「採った」と
     いって嘘をついたり・・・・・・・・』
、との記述があり、身近にそのような人がいたことを匂
     わせているが、私しか採集できていないのでは、この例のように思われても反論の余
     地もない。

      かくなる上は、ここでミネラル・ウオッチングを開催し、できるだけ多くの人に産出を確
    認していただくのがベストだと思い始めている。

 (2) 滋賀県の砂金と木錫
      前回の「苗木地方の砂金」のページを読んだ滋賀県の古い石友・N氏からメールと
     共に滋賀県産の「砂金」、「木錫」などの写真を送っていただいた。
      砂金は、苗木のものと同じ、厚みのあるタイプだが、木錫は産状が違うようだ。滋賀
     県の産地は、ミネラル・ウオッチングで地元のNさんに「中沢晶洞」を案内していただい
     2004年7月以来訪れていない。
      もう一度、訪れてみたいと思っている。

6. 参考文献

 1) 藤浪 紫峰
    桜井 欽一:おにみかげ紀行 我等の鉱物,昭和8年〜昭和9年
 2) 長島 乙吉:苗木地方の鉱物,岐阜県中津川市教育委員会,昭和41年
 3) 草下 英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社,1988年
 4) 中津川鉱物博物館:第11会 企画展 石に聞こう! 20億年のあゆみ −岐阜県の石−
                 同館,平成19年
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